茂野吾郎を甲子園に連れて行きたい   作:破壊王子

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この小説はMAJORの二次創作です。

球也くんのバッティングフォームは、2010年の『読売ジャイアンツ』阿部慎之助選手のフォームを想像していただけると嬉しいです。


【第14球】エース

 

 

 

 推定身長180㎝。

 

 しかしそれはあくまで〝平地〟での話だ。

 マウンドに立った時の彼はさらに大きく、強大に見えた。打席に立っている時にも茂野先輩からは威圧感を感じたが、ソレ(・・)とは比べ物にならない程にマウンド上の茂野先輩は様になっていた。

 

 

 これぞまさにエースの威圧感。

 

 

 対人間の打席には久し振りに立つ。あの眉村以来だ。打てるイメージは湧かないが、それでも打つしかない。

 

 

「いくぜ…球也!」

 

 

 彼は大きく振りかぶる。そして大きく右足を上げた。オレもバットを揺らしながらタイミングを取る。初球だろうと関係ない、全力でフルスイングだ。

 

 

「…っ!」

 

 

 心に決めた通りに全力でフルスイングした。しかしオレの振ったバットにボールが当たることはなく、虚しくミットに収まった。

 

 

 速い。

 

 考えられないくらいに。恐らくオレが人生で対戦する左腕で、1番速い相手になるだろう。バッターを相手にすると、先程のピッチングより遥かに速く感じた。

 

 

「おらぁッ!」

 

 

 2球目。

 

 これもフルスイングしたがやはりバットにボールは当たらない。何故だ?ストレートとわかっているのに。

 本来なら追い込まれた時点で軽打に切り替えるのも1つの手だ。しかし───違う。

 

 オレの求めている4番はそんなものではないし、求められているのも違うだろう。どんな状況下であろうとフルスイング。結果がボテボテの内野安打だろうと良い。たった一振りで流れを変えるバッティングができる4番、それをオレは目指したい。

 

 

「これで…終わりだッ!」

 

 

 茂野先輩の真っ直ぐが襲いかかってくる。オレへじゃなく、ホームベースのど真ん中へと。

 

 

「フンッ!」

 

 

 3回目のフルスイング。それは変わらない。変わったのは───

 

 

「なッ……」

 

「へッ!当てやがったよ、こいつ……」

 

 

 当たった。初めて当たった。ボールはバットに掠った後、バックネットに激しくめり込んだ。

 硬球をバットに当てたのは小学生以来か?手がビリビリする。手袋をしていても電撃を食らったみたいに痛んだ。

 

 茂野先輩も清水先輩も驚いてはいたが、茂野先輩はそれ以上になんだか嬉しそうでもあった。

 しかしただファールになっただけ。依然として追い込まれている状況は変わらない。

 

 だけど───なんだか少し気持ちが落ち着いた。

 茂野先輩の球は物凄い。物凄いけれど、決して当たらないというわけではない。どんなに凄いピッチャーでも打たれない事はないんだ。

 

 

 4球目。

 

 

 これもバットに当てることができた。同じように打球はバックネットにめり込む。

 5球目6球目、そして7球目もファールになり、その中でオレはあることに気づいた。

 

 

『だんだんタイミングが合ってきた』

 

 

 スイングするにつれ、茂野先輩のストレートとタイミングが合ってきた。打球は少しずつ前に飛ぶようになり、7球目に至っては一塁線ギリギリのライナーになっていた。

 

 

 オレは確信した。〝次が勝負〟だと。

 

 打席に立つにあたって、1番の勝負時というものはたまにわかる。それは次の1球と思う時もあれば、甘い球も見逃した時に感じる『ああ、今の球だ』と前の1球の時もある。前の1球の際は大体コントロールがいいピッチャーの時で、打席に1球あるかないかの甘いボールを見逃した時によく感じるかな。

 

 この打席の勝負時が次の1球だ。これを逃すともうチャンスはない。今追い込んでいるのはオレの方だ。

 

 絶対に仕留める(打つ)

 

 

 

 

 

「─────」

 

 

 

 

 

 振りかぶりながら茂野先輩が何か呟いた。

 

 

 

 ───その瞬間、オレの気付いた時にはもうボールがキャッチャーミットに収まっていた。オレはスイングをすることすらできなかった。清水先輩は今日1番驚いた表情をしながら尻餅をついている。

 

 違う。

 

 今のストレートは前の7球とは明らかに違う。いや前の7球も手を抜いていたわけではないと思う。しかしそれでも最後の球は何かが違った。

 

 

「へっ!俺の勝ちだな球也!」

 

 

 そう言いながらバッターボックスへと歩み寄ってくる茂野先輩。なんというか…どっと疲れた。たった1打席でこんなに心身ともに疲れたのは初めてだ。

 

 

「お、終わったのか…」

 

 

 清水先輩はマスクを外して寝転がった。この物凄いストレートを捕っていた清水先輩はオレより何倍も疲れてるだろうな。

 

 

「どうだ?俺の凄さがわかっただろ?」

 

 

 痛いほどわかった。まさかここまでとは…藤井先輩には悪いけど、あの時投げていた球とは比べ物にならない。

 

 

「…本田、わたし先に帰るな」

 

「ん?わかった。明日も頼むぜ清水」

 

 

 清水先輩は急いで荷物をまとめ、急ぎ足で帰って行った。その際にオレには清水先輩が左手を庇っているように見えた。まさか今ので痛めたのか?数球で?いや…あの球威ならそうなっても仕方ないかもしれない。

 

 

「なんだアイツ。用事でもあったのか?」

 

 

 しかし茂野先輩は全くそれに気付いていなかった。なんというか、茂野先輩は清水先輩に対して雑な対応というか…信頼してるというか…よくわからない関係だ。

 

 

「あの、オレもそろそろ帰ります。明日朝の8時に学校へ集合でしたよね?」

 

「あー…そういやそうだったな」

 

 

 

 明日も早いという事もあり、オレと茂野先輩はそろそろ帰ることにした。家が近いという事もあり、一緒に帰る形で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわ〜…もうボロボロだなコレ」

 

「なんだそりゃ。替えはねえのか?」

 

 

 オレは自分のバッティング手袋をみながら歩いていた。中学から使っているモノだったから所々穴が空いているし、色も変色していた。

 

 

「替えはないんですよね。ぼちぼち新しいの買おうと思ってたんですけど、その…辞めちゃったし」

 

「ふーん…」

 

 

 そんな話をしていると、茂野先輩は立ち止まった。どうやら家に着いたみたいだ。

 

 デカイ。すっごくデカイ家だ。お金持ちの息子なのかな先輩は。

 

 

「じゃあまた明日───」

 

 

 そう言い残して帰ろうとしたが、茂野先輩に呼び止められて後ろを振り向いた。

 

 

「球也。俺、使ってない手袋あるからやるよ。持ってくるから少し待ってろ」

 

「え?いやでも……」

 

 

 先輩はオレの返答を聞かずに家へと入っていった。使ってないとはいえ、貰うのはなんか悪いなあ。

 

 

 

 

 

 そのままずっと家の門の前で立っていた。5分くらい経ったかな。それでも茂野先輩は戻ってこない。もしかしてオレを待たせてるのを忘れた?いや流石にそれはないか。

 

 

 

 

「ん?ウチに何か用か?」

 

「あっ…」

 

 

 ボーッと立ち尽くしていたら家の人が帰ってきた。なんだか気まずい。茂野先輩のお父さんかな。なんだかあんまり似てな───

 

 え……この人もしかして……

 

 

「あの…『横浜マリンスターズ』のピッチャーだった茂野選手…ですか?」

 

「え?ああ、そうだが」

 

 

 

 なんてこった……

 

 茂野先輩はあの大投手、茂野英毅投手の息子だったのか。どうりであの野球センスか。

凄い。茂野先輩には驚く事が多すぎる。サインがほしいけどさすがにこんな所ではねだれないな……色紙もないし。

 

 

「ところで君は?」

 

「オレは茂野先輩にここで待っているように言われて…」

 

 

 茂野先輩ホントに遅いな。手袋何処にしまったか忘れたのかな。

 

 

「ああ吾郎の友達か。ならこんな所で立ってないで家に入りなさい」

 

「え?いやオレはここで…」

 

「遠慮しないでいい。ほら、入りなさい」

 

 

 何故かオレは大投手に背中を押されながら、大きな家の中へと入ってしまった。

 




はい、第14球でした。

MAJORは漫画とアニメで色々と設定が変わるので、ごっちゃになる事があって大変です。

ではお疲れ様でした。
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