茂野吾郎を甲子園に連れて行きたい   作:破壊王子

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この小説はMAJORの二次創作です。

現実の高校野球では次々と甲子園に出場する高校が決まってますね。ただ熱中症だけには気をつけて試合に臨んでほしいです。


【第16球】プレイボール

 

 

 

 

「えっ?高橋が来れない?」

 

 

 グラウンドに向かっている時に、野口がオレにそう伝えた。存在感が薄いから着替えている時に気が付かなかったよ。

 昨日の夜から熱っぽかったらしく、今日の朝に体温を測ったら38℃を超えていたらしい。

 これは困った。清水先輩を入れたらギリギリ9人にはなるけど、素人がいきなり野球の試合をして怪我をしない保証はない。1人でも控えが欲しかった。

 

 しかし体調が優れないなら仕方ない。無理して悪化したらそれこそ何にも意味を持たないし、他のみんなにも心配をかけるだけだろう。9人でもやるしかない。

 

 

「…フン、早くもチーム崩壊の芽が出てるんじゃねえか?まあ…俺たちは最初(ハナ)っからチームなんかじゃねえけどな」

 

今は(・・)な。けど安心しろよ田代。お前達にも野球させてやっから」

 

 

 嫌味っぽく田代先輩が一言を放つが、茂野先輩は全くそれを気にしない。勝つことを確信している目をしていた。いや、『勝つこと』というよりは、自分が『負けるわけない』という目かもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから軽いアップをし、いよいよ試合開始直前まで来た。

 

 そして先発オーダーが発表された。

 

 

 1番 ピッチャー 茂野

 2番 キャッチャー 清水

 3番 ファースト 藤井

 4番 ショート 秋浦

 5番 サード 田代

 6番 セカンド 内山

 7番 ライト 宮崎

 8番 センター 野口

 9番 レフト 山本

 

 

 

 ……うん。わかっちゃいたけど酷い。

 

 このオーダーは茂野先輩が決めたものだけど、正直このメンバーじゃどう組んだって変わらないと思う。しいてオレが1つ突っ込みたい所があるとすれば、1番を茂野先輩にするなら2番はオレで良かったんではないかという所だ。清水先輩は素人じゃないけどソフトボールを中心にやってるし、藤井先輩は単なる実力不足ということでいちいち2人をオレの前に入れ込む必要がない。間違いなく繋がりが無い打線だという事はわかるから、せめてオレと茂野先輩をくっ付けた打順にした方がまだ得点力が上がるんじゃないかなと少し思った。

 でもまあそれは、オレに『聖秀の4番』を打って欲しいという事で、今からもう慣らしたいという茂野の考えだろう。オレはその期待に応えるしかない。

 

 

「頑張ってねー!ダーリン!」

 

「ああ……勝ちに行くぜ。ぜってー勝つ。それでお前ら全員に野球をやってもらう!」

 

 

 茂野先輩は最後にもう一度3年の3人と、1年2人にそう宣言した。

 まだベンチ内だが、茂野先輩の集中力は怖いくらいに伝わってくる。絶対に負けられない。そんな想いが語らなくても彼の背中から感じられた。

 

 

「両チーム、整列してください」

 

 

 審判の一言でみんながベンチの前に並んだ。審判といっても、即席の練習試合だから帝仁の控え選手だけど。

 

 

「さあ!行くぜお前ら!」

 

 

 そして茂野先輩の掛け声とともに、オレ達はグラウンドに整列した。練習試合とはいえ、『聖秀野球部』の初めての試合がこれから開始される。

 

 

 

「礼!」

「お願いします!」

 

 

 

 【先攻】帝仁高校

 【後攻】聖秀学院高校

 

 

 オレ達は走って守備位置についた。しかし田代先輩などはダラダラと歩きながら向かっていき、それをみた帝仁の選手は指を指して笑っていた。

 

 

 

「1番 ショート、田中くん」

 

 

 ウグイス嬢のコールと共に相手の選手がバッターボックスに入った。帝仁の監督や選手は楽勝そうな雰囲気を醸し出しているが、大丈夫か?そんなに余裕で。

 

 

「プレイボール」

 

 

 茂野先輩はロージンを拾い、手に馴染ませてからマウンド横に落とした。

 そしてゆっくりワインドアップをして、第1球を投げた。

 

 

 真っ直ぐだ。

 

 

 その真っ直ぐ(ストレート)は、ど真ん中のコースに決まった。綺麗なほどに。

 

 

 

 

 

 

 ────驚いただろう?

 

 

 オレはそう思って360°の角度を見比べてみた。すると、ショートのオレと清水先輩以外、全員が口を開けて驚いていたのがわかった。

 

 

「す、ストライク…!」

 

 

 審判すらも驚きすぎてコールが遅めになっていた。みんなが何故こんなに驚いているのか、それは簡単な話だ。

 

 

 

 ボールのスピード。

 これだけだ。たったこれだけの話だが、その場にいる野球というものを熟知している経験者はもちろん、普段TVで野球を全く見ない者でさえ、茂野先輩は一瞬、いや1球で驚愕させた。

 

 

 2球目、3球目も同じコースだったが、相手バッターはスイングする事もなく三振に終わった。

 

 

「な、なんだこのスピードは…!」

「なんでこんな化け物が聖秀にいる!?」

 

 

 ショートに居るオレにさえ聴こえるくらいに、相手ベンチが騒がしくなっている。そりゃそうだ。元女子校の無名チームに、150㎞投げる左腕が居たらプロのスカウトだって驚くに違いない。

 

 2番も3番も同じように見逃し三振で、帝仁の1回表の攻撃は終わった。

 

「フンッ…!」

 

 

 どうだ見たか!と言わんばかりに胸を張って、茂野先輩はベンチに下がっていった。守っているオレ達も、その茂野先輩に続いてベンチに下がっていく。

 その時オレはふと田代先輩の顔を見てみた。そこには先程のような余裕はなく、少し焦りが見えた。あと、なんだろう……なんとも言えない表情をしている。

 

 

「キャー!ダーリンカッコいー!!!」

 

「ヘッ…いやぁ〜!俺は普通に生きてるだけなんだけどね〜!」

 

 

 自信と余裕の入り混じった顔をしながら、茂野先輩は髪をかきあげてそう答える。言っては悪いが少しだけムカつく。だけどこれは口に出さない。脳内で思っているだけだから何も悪くはない。うん、オレは悪くない。

 

 盛り上がっていた茂野先輩だったが、自分が先頭バッターという事に気付き、バットとヘルメットを持って打席に向かった。なんだかいかにも打ちそうな雰囲気だ。

 

 

「お前ら、損な賭けにのっちまったな」

 

「なに?」

 

 

 ベンチに座っている藤井先輩が、突っ立っている田代先輩達に話しかける。

 

 

 

 

 

「1番 ピッチャー、茂野くん」

 

 

 そんな中、ウグイス嬢のコールと共に茂野先輩がバッターボックスに入った。もちろん右打席だ。フォームといい、雰囲気といい、完全に強打者のソレ(・・)だ。

 

 

「フンッ!」

 

 

 ピッチャーが第1球を投げた。真ん中高めのストレートだ。先頭バッターへと初球としては不用意にも程があるが、ピッチャー相手にはこれで十分と考えたんだろう。

 

 

 だが、それは大きなミスだった。

 

 

 カキィン!と大きな音が響く。高校球児ならこの音を飽きるくらいに聞いているはず。これはボールがバットの真芯に当たった音だ。

 

 え?とピッチャーがすぐさま振り向くが、打ち上がったボールはその数秒後にセンターにある柵をゆうに超えた。そう、ホームランだ。

 

 

「き…キャー!!!すごーい!カッコいいダーリン!」

 

 

 そもそも打てないピッチャーを1番バッターに置くはずがないだろう。帝仁バッテリーの底が知れるな。

 

 

 

 

 

 一番最初に声を上げたのは相手の選手でもこちらの選手でもなく、マネージャーの中村先輩だった。

 その中村先輩に続いて清水先輩も少々気持ちを抑えながらも喜んでいる。

 

 

「茂野が聖秀(ウチ)に来る前…何処に居たか知ってるか?」

 

「……」

 

 

 黙り込む3人。騒がしくなっているのは中村先輩と山田先生だけで、後は向こうのベンチも唖然として応援の声も出ていない。

 

 

「海堂だよ、海堂…!」

 

「なッ!?」

 

 

『海堂』

 

 そう聞いた田代先輩は目を見開いて驚いた。その驚きっぷりは、先程初めて茂野先輩の真っ直ぐを見た時にも引けを取らない。

 

 一方の内山先輩と宮崎先輩は、「海堂?」と首を傾げている。無理もない。野球に興味がなければ、海堂が全国屈指の強豪校などという事実を知る由もない。

 

 

 

 あれ……じゃあなんで田代先輩は……

 

 

 

 

 

「ダーリンほんとにすごーい!」

 

「素晴らしいですねぇノゴロー君!私、こんなに近くでホームランを見たのは初めてですよ!」

 

「へへ…まあな」

 

 

 茂野先輩がダイヤモンドを一周して戻ってきた。そしてヘルメットを脱ぎ、それを軽く田代先輩に放った。

 田代先輩は驚きつつもそれを楽々と捕った。そしてそれを強く握りながら茂野先輩を睨む。

 

 

「てめぇ…海堂から転校してきただと!」

 

「ああ、だがもうそんな事は関係ねえ。俺は聖秀の茂野吾郎(・・・・・・・)だ。お前らと一緒にこのユニフォームを着て甲子園に行く。だからぜってー負けやしねえ……覚悟しろよ、田代!」

 

 

 今までの宣言は、正直他の者からみたら『口だけ』に見えただろう。いきなり現れた馬鹿が変なことを言い出した、と。しかし今の言葉は今までとは違う。

 しっかりと見せつけたからだ。何を?それは茂野先輩の意地と能力をだ。これを見せられた後だと説得力がまるで違う。『このまま勝ってしまうかも……』そんな思いが恐らく田代先輩の脳裏にも浮かんだと思う。

 

 

 

「 く……ッ!」

 

 

 そんな自分に腹が立ったのか、田代先輩は強く歯を食いしばり、持っていたヘルメットを地面に叩きつけた。

 

 オレは田代先輩の目から〝納得がいかない〟という感情を読み取ることができたが、茂野先輩は何を感じたのだろうか。

 




はい、第16球でした。

野球の試合を文にするのって難しいですね…おかしな所も多分これからいくつも出てくると思いますが、言ってもらえれば直せるように努力します。優しく見守ってくれると嬉しいです!

ではお疲れ様でした。
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