茂野吾郎を甲子園に連れて行きたい   作:破壊王子

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この小説はMAJORの二次創作です。

ここから球也くんの中学時代の話に入ります。
一人称の物語は慣れていないので難しいです。


【第4球】馴れ合い

 

 ──苦しい。

 

 

  全速力でこんなに長い距離を走ったのは久し振りだ。

  最後にこんなに走ったのはいつだろう…いや、それすら思い出したくない。

 

  あの場に居たくなかった。それだけだ。たったそれだけの事だが、オレからしたらそれは何よりも大事な事だった

 

  あっという間に家に着き、ドアを開けたらすぐに二階へ駆け上がった。母さんの「おかえり〜」という声も聞こえたけど、ごめん、今は返事をする余裕がない。

  そして昨日みたいにボスッ とベッドに倒れこみ、目を瞑って何も考えないようにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────

 ───

 ─

 

 

 

 

『おいセカンドッ!ファーストのカバーに入れって何回も言ってるだろッ!なんでこんな当たり前のことができないんだッ!』

 

 

  オレがそう声を荒らげると、決まって後輩達は背筋をビクッと伸ばしていた。折角ノックをしてやってるのに、こんなプレーを見せられるとこっちもたまったもんじゃない。

  大会まで残り1週間。やれるべき事は全てやった…とはとてもじゃないが言い切れない。むしろまだまだやる事はある。

 

 

『球也…そう怒るなよ。1年生みんなお前に怯えてるぞ』

 

 

  怒るに決まってんだろ。三振やエラーならわかるが、カバーに失敗はない。やれるべき事をやってないんだよこいつらは。

  練習でやってない事が試合で出来るわけない。オレはお前達にホームランを打てって言ってるわけじゃない。ただ、当たり前のことをしてチームに貢献しろと言っているだけだ。

 

  なのにこいつらときたら…守備のカバーはしない。打っても全力疾走しない。それどころか遅刻はするわ、挙げ句の果てには、もう大会まで残り1週間しかないというのに練習にも来ない1年生がいる。

 

  いや1年生だけではない。2年もオレを含めて5人いるが、その内3人もやる気というか勝つ気が感じられない。ただ練習してるだけ、という雰囲気が全体に漂っている。

  なんだ?せっかく1年生が10人も入って大会にもエントリーできるようになったのに…勝つ気がないのか?

 

 

『オレは勝ちたいだけだ。まさか3年が1人もいないからって負けてもいいと思ってるのか?』

 

 

『そうじゃないけど…』

 

 

  そうだろ。本当に勝ちたいと思ってる奴らがこんなプレーをする筈ない。負けたら終わりの夏だぞ?3年になる来年もあるとはいえ、2年の夏は今年しかないんだ。オレはチャンスが有るなら絶対に勝ちに行きたい。

 

  しかしチームメイトのこいつらがこの調子…まあいいさ。オレともう1人以外全員中学から野球を始めて、大した実力もない。だからこいつらには大して期待していない。ただ最低限ミスをしないでくれたらそれでいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ─────────

 

 

 

  日がもう落ち始めてきたので部員を全員帰らせた。いや、正確に言えば帰りたそうにしてたから帰らせただけだけど。

 

  しかしオレはまだまだグラウンドで練習を続ける。あいつらに打ってやった無駄なノックの時間がなければもっと素振りができるのに…と考えたら無性にイライラしてきた。しかしそのイライラも素振りをする事で解消していた。

 

  ストレート、スライダー、カーブ、フォークと、相手がその球を投げてきたらどのような軌道でスイングをするかを考えながら振っている。

  しかし想像には限界がある。中学でも一流のピッチャーならば、変化球をコースの隅に投げ分けることができるし、そもそも一球一球の変化量も完全に同じというわけではない。

 

 

 ──痛っ。

 

 

  手を見ると豆がまた潰れていた。こんな簡単に潰れるなよ…人間って案外脆いもんだ。

 確か救急箱にテープがあったな…

 

 

 

『球也』

 

 

『おッ!? … なんだ宗吾(そうご)か。ビックリさせんなよ』

 

 

  薄暗くなってきた中、グラウンドに居るのはオレだけと思ってたからめちゃくちゃビックリしたじゃねえか!宗吾はいつもこうだ。神出鬼没というかなんというか… いつもやけに冷静だし、何考えてるかわかんないし、こいつだけ他の奴らと毛色が違う。

  今日も練習サボって何してたんだ。まぁエースの宗吾には試合で相手を抑えてくれりゃ文句はない。

 

  リトルで全国大会ベスト8にまで入ったチームのエース『池田宗吾(いけだそうご)』…こいつなら練習なんてしなくても、そこらの中学生なんて簡単に抑えられる。

 

 

『まだ練習続けるのか?』

 

 

『当たり前だろ。

 お前は最近サボってばっかだな。まぁ別にお前には心配してないけど、ピッチングくらいはしてた方がいいんじゃないか?』

 

 

  いやいやホントに心配はしてない。むしろ心配してるのはキャッチャーの山下の方だ。ストレートはしっかり捕れるんだが、変化球をポロポロエラーしている。まぁキャッチャー初めて1年そこそこくらいだからそれは仕方がないと思ってるけど、あんまりポロポロされても試合が成り立たない。だから正直2人でピッチング練習はしてほしい。

 

  オレがキャッチャーをしてもいいのだが、それだと内野陣が酷くなりすぎる。それならキャッチャーを山下に任せた方がまだマシだ。山下は動きが鈍いから二遊間は無理そうだしな。

 

 

『まぁどうでもいいけど、来週の試合はちゃんと頼むぜ。お前が投げてオレが打つ。それで勝てるんだからよ』

 

 

『…球也はそれでいいのか?確かに1回戦、2回戦は余裕かもしれないけど…勝ち進めば予選の決勝で全国優勝候補の海堂附属中だっているじゃないか』

 

 

  …確かに海堂附属は強い。一人一人のレベルが高すぎるし、チームの層も厚い。総合的に見たらウチ、『藤城中(ふじしろちゅう)』に勝ち目なんてないかもしれない。でも逆に言えばその海堂附属を倒したら全国にいけるも当然じゃないか。オレは絶対に勝ちたい。

 

 

『海堂附属がなんだ。例え他の奴らが役に立たなくても、お前が21個三振をとって、オレがホームランを打ちゃあ勝てるんだよ』

 

 

  これがオレの本音だ。

 

  正直オレはそう簡単に打てないかもしれないが、海堂附属も宗吾の球をそんな簡単に打てるわけない。断言してやる。オレはともかく宗吾は確実に海堂附属にも通用する。

 

  そもそもサウスポーで、様々な変化球が投げられるサイドスローが通用しない筈がない。

  球のキレもノビも申し分ない。オレは3打席立っても3三振の自信があるね。

 

 

『他の連中は?まともに練習させなくていいのか?』

 

 

『知らねえよ。誘っても来ないし、来てもまともに練習しないんだから無駄だろ。時間の無駄になるからオレはオレの練習をする』

 

 

『……』

 

 

 

  なんだその顔は。

 

  呆れてるのか?失望してるのか?まぁどっちでもいいけど。あいつらに合わせてたらオレまで腐っちまう。

  そもそも宗吾だって練習に来てねえじゃねえか。それでそんな顔されたってオレもどうしようもねえよ。

 

 

『ダメだよ、球也。それじゃ勝てない。いや勝っても楽しくない』

 

 

『…何が言いたいんだ?練習したくないって言ってる奴らをオレにどうしろっていうんだ。そんな奴らでもオレ達がいれば勝たせてやれるんだからいいじゃん』

 

 

  オレは神様じゃない。練習をしたくないと言ってる奴に練習をしたいと言わせることはできない。例え言わせることができたとしても、それこそ本音ではないからダメだろう。野球は自分が本当にやりたいと思ってなくちゃ楽しくない。

 

  それなのに宗吾ときたら…オレに何を期待してるんだ?キャプテンをやってくれと言われたからやってるが、他の奴らがそれに応えようとしないなら、オレだってやってる意味を見失いそうになるよ。

 

 

 

『1年も2年もみんなお前に怯えてる。

 エラーしたら怒る、三振したら怒るって』

 

 

『怒ってない。オレが怒るのは当たり前の事が出来てなかった時だけだよ』

 

 

『球也はそう思ってるかもしれないけど、口調が怖いんだよ。だからみんなお前が怒ってると勘違いしてるんだ。

 だからお前を怒らせてはいけないと思って、身体が固まって当たり前のプレーもできなくなってるんじゃないかな』

 

 

 

  なんだそれは。

 

  そんなの知らない。

  一言言ってくれればいいじゃないか。1年はまだしも、2年のあいつらもオレをそんな目で見てるのか?確かにそんなビクビクしながら野球をやってたとしても楽しくはないだろうな。

 

 

 

『球也は賢いからここまで言えばわかるだろ?だからせめて残りの期間くらいみんなでしっかり練習を───』

 

 

『やだね』

 

 

『え?』

 

 

  馬鹿にしてんのか。オレにあいつらの顔色を伺って練習しろと?ふざけんじゃねえよ。

  仲良しこよしのチームが勝てるわけない。オレがあいつらの気持ちを汲んでいないのは認める。認めるけど、逆もまた然りじゃないか。あいつらもオレのことを理解していない。理解しようともしていない。

 

  オレはもっと高いレベルで野球がしたいんだ。予選を勝ち抜き、県大会に進んで、そして全国大会に行く。ゆくゆくは強い高校から特待生に選んでもらって、海堂高校を倒したい。こいつらと同じ高校に行ってお遊びの野球を続けるほどオレはお人好しじゃない。いや、そんな事はこいつらもオレも望んでない。

 

  とにかく今は勝てればいい。そのためにもあいつらには人数合わせとして居てもらわないと困る。けど結局はオレと宗吾頼りになるはずだ。結果を出して認めさせてやる方が早い。あいつらだって県大会、全国大会にはきっと行きたいと思ってるはずだからな。

 

  2年の夏で勝てば、来年には野球の上手い1年生も恐らく入ってくる。それまでには現1年生、2年には居てもらわないと。

 

 

 

『オレはそろそろ上がるよ。お前も練習に来たくないなら来なくていいけど、試合にはちゃんと出ろよ』

 

 

『球也…』

 

 

『じゃあな』

 

 

 

 ───そんな顔するなよ宗吾。

 

  お前もオレと同じだろ?お前程凄いやつなら絶対に勝ちたいと思うはず。こんな所で埋もれていい奴らじゃないんだよオレ達は。

  結果が全てだ。〝馴れ合いの球遊び〟をオレは野球なんて認めない。絶対に這い上がってやる。宗吾、お前も絶対について来いよ。

 

 

 

  部室に戻ろうとした時、宗吾が何か小声でオレに訴えかけている気がしたが、恐らく気のせいだろう───

 




はい、第4球でした。

正直、MAJORらしい畜生なキャラになっていると思います。真面目ないい子を書くのももちろんいいんですが、畜生キャラを書くのはそれ以上に楽しいことに気づきました。

ではお疲れ様でした。
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