BanG Dream!~1人ぼっちな2人~完結 作:レイハントン
「また来たのね……。何度も言うけど断るわ」
あこのお願いを速攻却下する友希那。またということは何度も来てるのか?
「ちょっとストップ。オレがついていけないから説明プリーズ」
「あれ? なんで修平が?」
頭を上げると今気付いたみたいにとぼける。絶対気付いてたよな?
「先輩付けろって! 2歳年上!」
「ヤダ! 修平は先輩って感じしないもん!」
「なんじゃそりゃ。どこらへんが先輩って感じがしないんだ?! 言ってみろ!」
「そういうところ!」
この野郎……。年下だからってなんでも許されると思うなよ?
このオレに敵対心むき出しなのが宇田川あこ。
妹の幼なじみの妹。姉の名前は宇田川巴。商店街じゃ結構有名な姉妹だ。
中二病、ゲーム好き、元気という要素の持ち主。ゲームが好きだから合うかもと思ったが、なんか知らんがいつの間にか嫌われてた。
本当に謎だ。
「あれ? あれ? ……もーっ! 修平のせいで友希那さん行っちゃったじゃん!」
「はっ?! あの野郎、あこを押し付けて自分だけどっか行きやがったな!!」
オレにしか出来ないことってこういうことか。納得だ。………って出来るか!!
「もういいもん。お兄ちゃんに頼るからっ!」
「あーそうですかー! 勝手にしろ!」
そう言うとあこはスマホを取り出して誰かにメッセージを送ろうとしていた。
その画面に一瞬見えた名前は、お兄ちゃん。いったい誰だかわからないけど。
かなりの頻度で連絡取り合ってるみたいだ。よくこんな奴と仲良く出来るよな~。
「ふん。あこ、もう行くから」
「勝手にしろー」
「べーだっ!」
最後にあっかんべーをしていく辺りまだまだ子供だな。
別に悔しくないもん!
………今日はつぐみの所にでも行くかな。
─────────☆
「ん? ……あこからだ」
氷川と一緒にCircleのスタジオで湊と待ち合わせをしていると、あこからメッセージがきた。内容からしてなにかあったっぽい。
『友希那さんに追い返えされちゃった………。それにまたあいつに会ったし!』
『ドンマイ。そういう事もあるって』
『お兄ちゃんと話たいよ~。今どこに居るの?』
おっ…おう。その湊を待ってるなんて言ったらどうなる。確実にこっち来るよな~。
そもそも俺も追い返されそうだし、ここはあこの話を聞いてやるか。
『ちょうど用事でCircleの近くに居るから、そこのカフェに来てくれ』
『わかった!』
返事早いな………。まぁ丸山よりは遅いか。
あいつメッセージ来て返すとすぐ既読つくからな。やりとり早く終わってこっちは助かるけど。
画面を消してポケットにしまい、先に練習を始めている氷川に視線を向ける。
俺の視線に気付くことなくスコアを見ながらギターの練習に没頭している氷川。
ふと前に言ってたことを思いだした。
『私にはギターしか…ないですから』
「そんなわけ…あるかよ」
ボソッと呟いた俺の言葉はギターの音でかき消されてゆく。
「どうかしましたか? じっと見つめられると、練習しづらいのですが」
「悪い悪い。ちょっと考えごと」
「考えごと?」
まさか考えごとを聞かれるとは思ってなかった俺は適当に誤魔化す。
「夕方のハヤテの散歩は俺が行こうかなって」
「市ヶ谷くんにだけ押し付けるわけには」
「いいっていいって。氷川はバンドに集中してくれ」
「でも……。朝の散歩くらいは行きます」
「たまにで大丈夫だよ」
ハヤテも寂しくなるな~。氷川には異常に懐いてるし。もう俺のところには呼んでも来ない。
笑うしかないよ………ははは。
そう考えていると、スタジオのドアが開いた。
「遅くなってごめんなさいね。練習を始めましょう」
入ってくるなり俺を居ないものとして扱うところ、相変わらずのようだ。
「湊、話がある」
「私にはない。帰ってくれる?」
変わらず冷たい態度と口調でこっちを追い詰めてくる。
だが今日の俺はここで引くわけにはいかない。
「早く帰るためにも話を聞いてくれよ。時間はとらせない」
「………わかったわ」
湊の了承は得られた。次に俺は氷川に向き合う。
「悪いけど席外してくれるか?」
「え? ………わかりました」
一瞬驚いた表情を見せたが、何かを察してくれた氷川はギターを置いてスタジオをあとにしてくれた。
察しが良くて助かる。
氷川が出て行ったのを確認し、改めて湊に向き合う。
「いったい何の話? 私…音楽以外は興味ないわよ」
「違う違う。勘違いするなって。頼みごとがあるんだよ」
「頼みごと?」
「ああ」
俺は1回深呼吸してから、頭を下げた。
「氷川を……FUTURE WARLD FES.に連れて行ってくれ」
数分の無音。そして返ってきた答えは───
「そんなこと、言われなくたって出場してみせる。紗夜だけじゃない。私の夢でもあるの。だから邪魔しないでくれる?」
頭を上げてその真っ直ぐな瞳を見つめる。どうやら本気みたいだ。
「わかってる。それだけ言いに来たんだ。もうここへ来ることはない」
「そう」
「この話…氷川には上手く伝えるから内緒で頼む」
「仕方ないわね」
これで伝えることは伝えた。
あとはなにも心配することはない。全部湊がやってくれるだろうし。
自分の鞄を持ってスタジオを出て行く。
スタジオの入り口のすぐそばに氷川は立っていた。外で盗み聞きをしていたとかは……ないと思う。
氷川はそういうことをする人ではないし。
「話は終わったんですか?」
「終わったよ……全部。練習頑張れよな。何かあったら言ってくれ」
それだけ言い残して俺はCircleの入り口の方へと向かう。
「それってどういう意味?」
1度足を止めるが、振り返らずに答える。
今、振り返ってしまったらせっかく決めたことを曲げてしまうような気がするから。
「練習に集中してくれって話だ。やっと見つけたんだろ? 自分の居場所」
「それは…そうだけど……」
「ずっとそばに居るのは無理だ。……だから見守ってる」
せっかく見つけた居場所にずっと居てほしい。今まで思うようにしたいことを出来なかった分、氷川にはしていもらいたいんだ。
もちろん俺が全く氷川と接しなくなれば心配される。
だから今までと変わらず。…でも少しだけ距離を取る。
俺はいつの間にか……1人で突っ走っていたんだ。
ずっと氷川の隣に居ると思っていたのに………。
Circleを出た俺は外にあるカフェへに向かい、あこが来るまで立って待つことにした。
「お兄ちゃ~ん」
カフェに着くなり腕に抱きついてくるあこを視界の端に捉えつつ周りを確認。
お客さんの数はそんなに多くなかったのが幸いして、人目につくことはなかった。
「わかったから離れてくれ」
「友希那さんにも断られちゃった~」
「はいはい。話、聞くからとりあえず座ろう。な?」
「うん……」
腕から離れていくあこの表情は暗かった。アイツという奴にあったのが嫌だったのか、湊に断られたのが嫌だったのか。
どっちかは聞いてみないとなんとも言えない。
テーブルにつき、メニューを開いた。
「なんか飲むか?」
「えっ? いいの?」
「いいっていいって。その代わりいつまでも落ち込むなよ?」
「うん♪ ありがとお兄ちゃん!」
さっきとは対称的に明るい表情へと変わり、メニューを広げて楽しそうに眺める。
するとミルクティーを指差す。
「これ!」
「ミルクティーな。じゃあ買ってくるから大人しく待ってろよ?」
「はーい♪」
メニューを閉じて椅子から立ち上がってカウンターに向かった。
ちょうどお客さんが並んで居なかったため、すぐに注文することが出来る。
「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?」
「ミルクティーとカフェオレを1つずつ。以上で」
「はい。お会計432円になります」
財布から500円を取り出して、カウンターに置いて、レシートとお釣りをもらう。
カウンターの左側に移動してカフェオレとミルクティーが出来るのを待った。
ふとあこを見ると俺が閉じたはずのメニューを開いて眺めていた。
ケーキとか言わない……よな?
「お待たせいたしました」
ミルクティーとカフェオレが乗っているトレイを持って、メニュー開いているあこの元へと向かう。
戻ると意外にもあこはメニューを閉じた。
空いたスペースにトレイを置く。
てっきり他の物でもおねだりしてくるのかと思ったわ。有咲だったら拒否るけど、あこだったら良いやと思う自分がいる。
「ほれ、買ってきたぞ」
「ありがとっ」
ミルクティーを渡すと嬉しそうに受け取る。それもつかの間すぐにあこの愚痴が始まった。
「聞いてよお兄ちゃん! またアイツがあこのことからかって来たんだよ!」
「今度はどんなこと言われたんだ?」
「先輩付けろーとか、友希那さんに話があったのに邪魔されたし」
「それは災難だったな。結構会う頻度高くないか?」
「だって同じ学校なんだもん!」
あこと同じ学校。つまり、羽丘学園の生徒。前に愚痴を聞いた時に俺と同じ歳には見えないって言ってたな。なら高校2年生か。
聞いてる限りだと、相手が全て悪いかと言ったら違う。あこだって悪いところはある。
人間誰しも悪いところはあるものだ。自分の短所なんて考えれば考える程出てくる。
「まぁまぁ。あこだって、いつも冷たい態度とるからだろ? 嫌いなのはわかるけど、たまには普通に接してみたらどうだ?」
「それは…そうだけど……。じゃあどうすればいいの?」
「そうだな~。相手に反発しなければいいんじゃないか?」
「反発……でも、先輩って感じしないもん。いっつもお姉ちゃん達に迷惑かけてさっ!」
おいおい……いったいどんな奴だ? あこにここまで嫌われてる奴は。
聞いてる限り俺も合わなそうだから勘弁してほしいね。
「ソイツが悪いってのはわかったから。今日はここまでにしておこう」
「え~! もっと聞いてよー。ぶーぶー」
ほっぺたを膨らましてもっと聞けと講義してくるあこ。こんな時の対処法は………。
「こないだあこが欲しいって言ってた防具の素材のモンスター攻略出来たぞ」
「ホント?! どうやって倒したの?!」
「まぁまぁ、落ち着けって。詳しく話してやるから」
ここからは専門用語が飛び交ってしまうので割愛……。
結局俺は、この日から氷川と湊の練習には顔を出してない。
前よりは氷川と一緒に居る時間は減ったのが現状だ。
放課後、休みの日は特に。
俺としてはすごく嬉しい。別に氷川が嫌いとかじゃないぞ? バンド活動を出来ているって点が嬉しいんだ。
どれだけ頑張ったって、氷川の努力が実を結ぶことはなかったから。
だけど湊なら……氷川の夢を叶えてくれるはずだ。俺じゃ絶対に叶えてあげられない……氷川の夢を。
そのために俺が出来ること。それは氷川の居場所を守ることだ。
────────☆
花咲川学園
屋上から出た私と市ヶ谷くんは階段を降りて、自分の教室へと向かう。
1段下の階段に足を踏み出そうとした瞬間──背中に違和感を感じた。
誰かに押されるような感覚。
「え?」
宙にふわっと体が浮く。
「氷川!!」
一瞬だった。
数十段ある階段を転げ落ちていく。だけど体にあまり痛みはなかった。
隣に居た私の大切な人が守ってくれたから。
「……っ」
目を開けると目の前には、意識を失っているのか目を瞑る市ヶ谷くんの顔。
顔が少し熱くなる感覚に襲われた私は、そっと上半身だけを起こす。
頭が……クラクラする……。
左手を床に着いて、右手で市ヶ谷くんを軽く揺する。
「市ヶ谷くん? 大丈──」
左手に暖かい感覚。そのまま自分の顔の前に持ってくる。
「え………? 嘘…市ヶ谷くん?!」
真っ赤に染まる左手からポタ……ポタ……と自分か市ヶ谷くんの血が流れる。
すぐに視線を床に向ける。
自分の体にかなりの痛みがない時点で気付くべきだった。
「嫌よ……! 市ヶ谷くん?! 目を開けてよ!!」
頭から血を流す市ヶ谷くんに私は……なにもしてあげられなかった。
話は……3日前に遡る。
羽沢修平に関しては次回で人物紹介しようと思っています。
これでRoselia結成編は終わりです。これの続きが気になる方は、Roseliaのバンドストーリーを是非。
彰兎にいったい何があったのか………。紗夜を押した人物とは誰なのか。