BanG Dream!~1人ぼっちな2人~完結   作:レイハントン

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こんにちは

クライブ編と、言いたかったです。


12話 唯一のもの

 氷川紗夜──俺の中で彼女の存在は大きく変わっていた。

 

 出会った時は同じ境遇に近くて共感出来る友達。

 

 中学の時は少し溝が出来たような気がする。いや……お互いのことは話さなくてもわかっているから、話す機会がなかったのかもしれない。

 

 高校1年生。溝はもっと深まったような気がする。

相談される機会が減って、俺は氷川に何もしてやれないんじゃないか? と考えることもあった。

 

 

 

 今は……わからない。

 

 

 

 …友達? …親友? …ただの相談相手? どれも違う気がする。

 

 俺と氷川の関係は友達、親友って言葉で片付けられるものなのか、と言われると違う。

自分より上な妹にコンプレックスを抱いている人間は居るだろう。だけど、その中でも抱いてることが同じとは限らない。

けど氷川と俺は奇跡的に同じだった。だからお互い相談に乗ることが出来たんだ。

 

 ただの相談相手でもない。

 

 じゃあなんだ? 

 

「わからない………」

 

 そう答えるしかない。

そう答えざるを得ない。

 

「わからない? なに寝ぼけたこと言ってるの……あんな近くに居てわからないとか有り得ない」

 

 冷たい言葉に返す言葉もない。

 

 だけど“わからない”のが俺の本音だ。変えるつもりも嘘を言ったつもりもない。

いったいどこで変わったのかもすら……わからないんだ。

 

「あっそ……もういいわ」

 

 そう聞こえると背中に感じていた違和感がなくなり、近くに居る気配も感じなくなった。

後ろに振り返るも、すでに相手の姿はなくライブに夢中のお客さんだけ。

 

 全てが謎過ぎる。

 

 氷川のことを紗夜様って呼ぶ辺り、相当なストーカーかファン。何回かライブをしている氷川なら熱狂的なファンが居ても頷ける。

問題は俺に聞いてきたことだ。

 

 

『紗夜様のことをどう思ってるか』

 

 

 少し経った今でも鮮明に蘇るあの冷たい声。

耳元で囁くように語りかけてくる中、たまに吐息が耳にかかった。それが余計に不気味に感じた。

 

 ライブ中にも関わらず、俺は演奏者達に背を向けている。氷川達から見ると一番目立っているだろう。

 

 本気でライブをしている氷川達に失礼だよな………。

こんなモヤモヤするのは久しぶりだ。

 

 

 

 前に振り返ることなく俺はライブ会場を出て行った。

 

 

 

 悪い……氷川。

 

 

 

 

 

 あの日が来るまで……あと3日。

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

 結局真っ直ぐ帰らず遠回りして帰ってきた。氷川には先に帰ることをメッセージで伝えたから大丈夫だと思う。

考えたおかげで少しスッキリしたし、よしとしよう。

 

「おかえり。ずいぶん遅かったのね」

 

 奥からばあちゃんがいつもみたいに出迎えてくれた。

 

「あ、うん。考え事ついでに遠回りしてきた」

 

 靴を脱ぎながら答える。

 

「帰ってきてすぐで悪いんだけどね。有咲呼んできてくれるかい?」

 

「……ん? わかった」

 

 脱ぎかけてた靴を履き直すのが面倒だった俺はかかとを踏んだまま玄関を出た。

 

 どこに居るのか言ってくれなかったけど、呼んできてと言うことは蔵だろう。部屋に居たら部屋に居るって言ってくれるし。

つまり今も有咲は蔵で何かをやっているわけだ。人って変わるもんだな。

前なら、俺が帰ってきた時間帯にはご飯を食べ終えてるはずなのに。

 

 蔵の中に入ると、小さいキーボードの音が聞こえてきた。

地下に通じるドアを開けると、音が大きく聞こえてくる。

階段を降りると、俺に気付いたのか演奏が止まった。

 

「兄貴…。遅かったじゃん」

 

「ちょっと遠回りして帰ってきたから。お前こそこんな時間まで練習か?」

 

「別に。ちょっと確認してただけ」

 

 嘘つけ。

 

 有咲は嘘をつくと必ずそっぽをむく……ことが多い。

あとはなんとなくだけど嘘がわかる。ずっと一緒に居るからかな?

 

「兄貴って明日暇だよな?」

 

「おい妹、なに勝手に人の予定決めつけてんの?」

 

「なんだよクソ兄貴、最近暇してんじゃん」

 

 クソ。返す言葉もねぇよ。

 

「明日ライブすんだけど……どう?」

 

「・・・・あ? ライブ?」

 

「そう。だからどうって話」

 

 ライブの話を聞いた瞬間、俺はここ最近の記憶を遡ってあることを思い出した。

 

 あれは確か………。

 

 

 

 

 

 

 数日前。

 

 今日はというか、ここ最近昼休みが暇で暇でしょうがないから散歩しいてる。

理由は1つ。氷川が昼休みもギターの練習をしているからだ。

 

 ほら…邪魔したらあれだろ? 角生やして怒られるから。

・・・それは冗談だとして、やっぱり邪魔をするのはよくないって普通に思ったからこうして校内を散歩してるってわけだ。

 

「「ええーー?!」」

 

 ちょうど中庭に出ると、聞き覚えがありすぎる声が聞こえてきた。

声のする方へ向かうと、芝生の上で寝転がる戸山さん、山吹さん、花園さんの3人とそれを見て

驚いてる牛込さんと妹。

 

「なんだこの状況……」

 

「彰兎先輩! おたえに彼氏がー!」

 

「ん? ん? 彼氏?」

 

 やっべ……全然話が見えて来ないんだけど。

ただわかるのはイチャイチャしてたってことだけだな。ダメじゃん……。

 

「あっくん先輩もクライブ来ますか?」

 

「クライブ? な、なにそれ……」

 

 あれかな? 突き刺して、斬り上げて、斬り下ろすコンビネーションの技の名前か?

わからない人は、某ファンタジーゲームの7番目の主人公の技を調べてみよう。興味ないね…って?

 

「蔵でライブだからクライブ。そんなのもわかんねぇの?」

 

「なんでそういう言い方しか出来ないんだよ。もっと言い方あんだろ?」

 

「そうですねー」

 

 コイツ……。俺の前では平常運転かよ。今度クラスの前でからかってやろうかな。

 

 

 

 

 

 

 

 ってなわけで、明日がクライブらしい。

結局花園さんの話はよくわからなかったし、クライブの日にちもこうして今知った。

あのあとはひたすらわけのわからない漫才を見させられた。ツッコミは有咲1人だったけど。

 

「まぁいいけど。お前の言うとおり暇だし」

 

「結局暇じゃん。……それとゆり先輩来るって」

 

「ゆり先輩って3年の牛込ゆり先輩のことか?」

 

「知ってんの?」

 

「前に話したことがあってな」

 

 牛込ゆり先輩。1つ上の先輩で牛込りみちゃんのお姉さんだ。

バンド、Glitter Greenのギターボーカル。

文武両道な良い先輩だ。

 

 で、その牛込先輩が来るわけか。

 

「あとは山吹さんくらいかな」

 

「そっか。んじゃあ明日は大賑わいだな」

 

「……うん。で、何しに来たわけ?」

 

 来た理由を聞かれて、危うく本来の目的を忘れるところだった。

 

「ばあちゃんに呼んできてって頼まれて来たの忘れるところだった」

 

「ダメじゃん……」

 

 まぁ…ダメだな。

 

 

 

 

 

 蔵をあとにした俺と有咲は家に戻って夜ご飯を2人で食べた。ばあちゃんは先に食べたんだと。

……仲が悪いわりには一緒にご飯食べたり、話したりするからそれほど仲は悪くないんじゃないかって思ったりする。

 

 小さい頃はどんな感じだったっけ。

 

 ……食い終わったら洗い物しないとな。余計な仕事増やしちゃばあちゃんが大変だ。

意外にも有咲が手伝ってくれたのはビックリしたのはここだけの話。

 

 

 

 

 

 部屋に戻った俺はベッドで休憩していた。

1人の時間が出来るとどうしてもライブのことを思い出してしまう。

 

 ……結局考えたけど答えは出なかった。

答えを知ってる人居たりしないかな………。

 

「うっ………タイミング良すぎだろ」

 

 ポケットに入ってるスマホが震え、取り出して見ると電話がかかってきていた。

かけてきた相手は氷川。

 

 通話ボタンを押して電話に出た。

 

「もしもし。……どうした?」

 

『どうしたじゃないわよ……どうして帰ったの?』

 

 見てたのか……。先に帰るってメッセージ送ったんだけど。

まさかこうして連絡が来るとは思ってなかった。

 

「……悪い。ちょっと用事が──」

 

『いつもそう言って……どうして隠すの?』

 

 なんだ……? 今日の氷川…様子が違う。

いつも俺が帰る理由なんて聞いてこないのに。

 

『あなたの様子……おかしかった』

 

 気付いてたのか……。

 

『あの子は…誰?』

 

 あの子……それは俺の後ろに立っていた人のことだろう。

ライブ中にいったいどこ見てるんだよ……。しっかり集中しないとダメだろ。

 

 ・・・ここで全部話すか? なに1つわかってないのに危険過ぎる。過激な氷川のファンだったら俺にだけじゃない……氷川にだって被害が及ぶかもしれない。

でも、話しておけば少しは身を守れるか?

 

 どうする……? ここは自分よりも相手を優先するか。

 

「俺もわからないんだ。でも、相手は氷川のファンって言ってた」

 

『私のファン?』

 

「ああ。心当たりあるか? だいぶ熱狂的なファンみたいだし」

 

『………もしかして』

 

 お? 心当たりがあるみたいだな。

 

 もしその心当たりの人物が、俺に話しかけてきた人物と同じなら……名前がわかるかもしれない。

どんな相手かわかれば…はなしが聞ける。

 

『美川早紀さん……同じ学校の。暗くて顔はわからなかったけど、思い浮かぶファンはその人よ』

 

「美川さんか…わかった。全部終わったら必ず氷川に話すから。それまでは待ってくれ」

 

『………わかりました。約束…よ?』

 

「もちろん。……じゃあ」

 

 電話を切りスマホを持ったまま天井を見上げた。

 

 あと少し……もう少しでたどり着く。

 

 

 

 

 

 

 クライブ当日。

 

 人が集まるのがだいたい10時頃。1時間前に起きればいいと思っていた。

 

 しかし目覚ましが鳴る前に目が覚めてしまった。別に目が覚めるのは一向に構わないけど、なぜだか俺までそわそわしてる。

ライブをするのは有咲達なのになぜだろう………。

家を出てから、テレビ消したっけ? とか電気消したっけ? って心配するのと同じような感じ。

 

 もしかすると・・・俺は有咲の心配をしてるのか?

 

 確かに失敗しろなんて思ってないし、逆に何事なく終わってほしいって思いの方が強い。

人の気持ちって案外変わりやすいのかもな。

嫌い嫌いって思ってたはずなのにいつの間にか心配するようになって………。

 

「用意するか………」

 

 寝癖を直すついでに風呂に入りますかね。

ネトゲやってたら入るの忘れちまったよ……。

 

 

 

 

 

 風呂を済ませ、私服に着替えて髪の毛を乾かしてからリビングに行くとすでに有咲が準備万端の状態でテレビを見ていた。

 

「緊張してるだろ」

 

「は?! べ、別に!」

 

 嘘つけ。まるわかりなんだよ。

なんかいつも以上に気合いが入ってるような気がするのは俺だけだろうか。

いやいや。ライブだからいつもより気合い入ってるな。

それは良いことだからいいか。

俺もギルド対抗戦の時は気合い入れて画面とにらめっこしてるし。

 

 そんな有咲を横目にテーブル着いて、用意された朝ご飯を食べ始めた。

今日のメニューはご飯。ほうれん草の味噌汁。焼いた鮭。漬け物。いつも出てくるメニューだ。

 

 ご飯を食べていると、テーブルに置いたスマホの画面にメッセージが表示された。

送り主は丸山。朝からご苦労様だこと。

 

 メッセージを開くと画像が表示される。

 

「………っ!?」

 

 送られてきた画像は丸山、白鷺、白髪の女の子、茶髪の女の子、そして──

 

 

 

 

 氷川の妹…氷川日菜が映っているポスターの画像だった。

 

 

 

 

 自分の目を疑った。ベタに何度も目を擦ったり、ほっぺたをつねったりした。

それでも夢じゃなければ、画像が変わるわけでもない。

はっきりと氷川日菜が写っている。

 

 ポスターにはアイドルバンド Pastel*Palettesとでかでかと書いてある。

しっかり担当楽器まで書いてあり、1つ1つ確認していく。

ここまで来ると最悪な状況は避けたい。

 

 ボーカルは丸山…ギターは……。

 

「氷川…日菜」

 

 最悪な状況……氷川。大丈夫…だよな? 自分の道を見失ったりしないでくれよ?

 

「兄貴? どうかしたの?」

 

「いや…別に」

 

 その場で丸山に返事を返すことなく画面を閉じた。

 

 前に言ってたな……氷川の妹はずっと氷川に憧れてるって。だからバンドでギターなのか? 氷川と同じことをするために……。

 

 別に同じことをするなとは微塵も思ってない。人がなにしようがその人の勝手だから。

 

 俺が心配する理由は1つ。自分のたった1つの取り柄が重なってしまった氷川がどう思うかだ。

 

 

『私には…ギターしかないですから……』

 

 

 なんであの時はっきり否定してやれなかったんだよ。

まだ氷川自身が重く受け止めてるとは限らないのに、勝手に決めつけるのはよくない。でも……たぶん氷川は重く受け止めるだろう。

だからなに? と軽くひと蹴り出来るならそこまで悩まない。

 

「兄貴……? 怖い顔してるけどなんかあったの?」

 

「いや……有咲は自分の一番得意なことを俺が真似したらどう思う?」

 

「はぁ? どんな質問だよ……」

 

「いいから。答えてくれ」

 

 全て同じ状況とは限らないけど少しは同じだ。

何か掴めればいいけど。

 

「……なんで真似するの? って思う。兄貴だって、ネトゲで同じことされたら真似されたって思わない?」

 

 確かに。まるっきり同じことされたら真似されたって思う。相手がどんな気持ちだろうと。

 

 それをどう受け止めるんだろう・・・嫌なのか。すごく嫌なのか。

 

 ふと、前にあこに相談されたことを思い出した。

 

 

 

『お姉ちゃんのことを話したら、紗夜さんに怒られちゃった……どうしてかな?』

 

 

 

 確か……あれはあこが巴さんの話をした時に怒った。

 

「行ってあげれば? 氷川先輩の所に」

 

「良いのか? これからライブなのに」

 

「そんな怖い顔してる人、ライブに居たら迷惑」

 

「悪い……今度聴かせてくれ」

 

 ご飯を食べてる途中なのを忘れて俺はスマホを片手に家を出た。

 

 

 

 間に合ってくれ──あの時の俺みたいに、心から溢れてくる言葉を全て吐き出す前に止めないと!

 

 

 

 頭の片隅には自分の母親に向かって言った卑劣な言葉が残っていた。

 

 

 

 

 

 




次回はあの出来事が───!

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