BanG Dream!~1人ぼっちな2人~完結   作:レイハントン

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こんにちは。

今日はライブビューイング見てきました!
次は現地で見たいです!

そんなこんなで最終話です!



最終話 1人ぼっちから2人へ──

 あの時、私は確実に誰かに押された。 

 

 宙に舞った私を体を張って守ってくれた彼は───

 

 

 

 

 事件の日の翌日。

放課後、市ヶ谷くんのお見舞いに来ています。目を覚まさない彼を見守って早くも1時間が経ちました。時間というのは早いものですね。

 

 病室の一角。頭に包帯が巻かれた市ヶ谷くんがベッドに横たわる。

ピッ…ピッと高い音が一定のリズムを刻む中、同じようにポタ…ポタ…ポタと一定のリズムを刻みながら落ちる点滴。

事件後のことは正直あまり覚えていません。誰が先生を呼んでくれたのかも。誰が救急車を呼んでくれたのかも………。

 

 でも1つだけ………ただひたすら彼の名前を呼び続けたことははっきりと覚えているわ。

病室に駆けつけた有咲さんの驚いていた表情も………。

 

 私は今、絶望しきった視線を市ヶ谷くんに向けていると思う。

れもっと自分がしっかりしていれば市ヶ谷くんがこんなことにならずに済んだはず。それなのに私は………。

 

「ごめんなさい………ごめんなさい」

 

 自然と制服のスカートを握る力が強くなる。ダムが崩れたように涙が止まらなかった。

 

 

 

─────────☆

 

 なんでだろう。ずっと嫌いだった兄貴が入院しただけなのにこんなに心配して・・・・バカみたい。

 

 心の中で毒づくも、私は病院へと足を運んでいた。

 

 昨日と同じ場所。だけど騒がしくなく緩やかな時間が病院内に流れている。

真っ直ぐ兄貴が眠ているであろう病室に向かった。

 

 病室に近づくほど、運ばれる兄貴の姿が鮮明に蘇ってくる。

いっつも誰かを助けるのに体張って、自分が無理して怪我をして。氷川先輩と出会って、中学を境に兄貴はそんな風に変わった。

昔みたいに言葉からトゲは感じられない。本気で口喧嘩しているように見えて、兄貴は私をいつもあしらっていた。

 

 でも……居ないよりは、居た方がマシかな。一応兄貴だし。

 

 思い切って病室のドアを開けた。

兄貴と同じ部屋の人は3人居る。でも、この時間帯は家族の人と会ってるみたいでカーテンがしまっていた。同じように兄貴が寝ている空間も。

 

 大きな音を立てないようにドアを優しく閉めて兄貴の元へと向かう。そっとカーテンを開けると、目の周りが少し腫れている氷川先輩が座っていた。

 

「市ヶ谷…さん」

 

「・・・わざわざ来てくれたんですか?」

 

「ええ…。心配で……」

 

 泣いてたこと隠さないんだ。それともそこまで気が回らないだけ?

 

「市ヶ谷さん。本当に──」

 

「謝らないでください」

 

 弱々しい視線を私に向けてきた瞬間、悟ってまった。謝ってくるって。

反射的に言った言葉に自分でも驚いた。なんで謝られるのが嫌だったんだろう………。

 

 そこから言葉を見つけるのがすごく難しかったけど、なんとか言葉を見つけだした。

 

「後悔はしていないと思います。バカ兄貴のことですから、目覚めたらヘラヘラしてますよ。みんなに心配されないように」

 

 人を助けようとするくせに、自分のことになると心配されないようにしてさ。でも、バレバレなんだよね。隠すの下手くそかよって言いたくなる。

 

 だからこそ………。

 

「氷川先輩はいつも通りで居てください。目が覚めてまで辛そうな顔してたら、兄貴が絶対心配します」

 

「…………そうかも…しれませんね。いつもこの人は私を───」

 

 そこまで言ったところで氷川先輩の顔が真っ赤に染まっていく。

 

「ひ、氷川先輩?!」

 

「だ、大丈夫です・・・大丈夫ですから」

 

 だ、大丈夫に見えねぇ。ぜってー倒れる前になんかしたな。でも、チキンそのものみたいな兄貴が氷川先輩になにかしたとも思え・・・なくもなねぇな。あのクソ兄貴ならやりかねない。

 

「本当に大丈夫ですから。………今日はもう少し居ます」

 

「そうですか。私はこれで」

 

 会釈して私は病室をあとにした。

 

 とりあえず兄貴が起きたら問いただす。何事にも動じなさそうな氷川先輩の顔が真っ赤になるなんてぜってぇなんかしたはず。

 

 

 

 

 

────────☆

 

 現実は時に残酷で──時に夢を見せてくれる。

 

 氷川紗夜。現実は彼女に夢を見させてはくれなかった。

 

 

 

「君は………誰?」

 

 

 

 ずっと心配していた彼、市ヶ谷彰兎が目を覚ました───までは良かった。

彼の第一声に紗夜は思わず自分の耳を疑った。ふざけているだけかもしれない。そんな可能性の欠片もないことを思う。

 

「冗談…よね? ………市ヶ谷くん」

 

 震える声。溢れ出てきそうな涙をぐっとこらえて彼の言葉を待つ。

紗夜を見つめて数秒。彼が出した言葉は・・・。

 

「市…ヶ谷? それが俺…の名前?」

 

 限界だった。こらえていた涙がどっと溢れ出して頬を伝う。

 

 紗夜の頭の中では走馬灯のように彼と過ごした日々が駆け巡っていた。

 

 出会った日のこと。

 

 一緒に遊んだこと。

 

 喧嘩したこと。

 

 そして告白されたこと。

 

 紗夜の事になるとしつこいくらいに気にかけてくれた彼はもう………居ない。

 

「ど、どうして泣いてるの?」

 

 なぜ目の前で泣いているのか。今の彼にわかるはずもない。そもそも病室で寝ていることも、彼女が居ることも理解出来てはいなかった。

そんな彼だが、泣いている紗夜をそっと抱きしめた。

 

「ごめん。よくわからないけど………こうしなくちゃいけないって思ったから」

 

 自分がどこの誰なのかなんて今はどうでもいい。目の前で泣いている彼女をほおっておけなかった。記憶を失っても市ヶ谷彰兎の根本は変わってはいない。

 

「ありがとう………彰兎」

 

「彰兎…?」

 

「ええ。市ヶ谷彰兎。あなたの名前よ」

 

 紗夜はそう言うと両手を彼の背中に回す。少し冷静になれた彼女は身をそのまま彼に預ける。

 

 たとえ記憶がなくても彼は彼のまま。

 

 自分の命を救ってくれた彼を支える。そう心に誓った紗夜。

 

「そういえば…君の名前は? 俺とどういう関係?」

 

 紗夜を解放して聞いた。

ここまで泣いてくれた彼女の存在が純粋に気になった。

 

「氷川紗夜。関係は………」

 

 ふと告白されたことを思い出した。まだあの時の答えを出していない。

 

 

 

「恋人」

 

 

 

 もっと早く答えを出せていれば記憶を失う前の彼に聞かせてあげられたかもしれない。

 

 それだけが心残りだった。

 

 これから恋人としての関係を築いていく。今から作り上げていけばいい。

 

「だから…なんとなく君を覚えていたのか」

 

「なんとなく?」

 

「名前すら思い出せないのに、君の姿だけはぼんやり覚えてるんだ」

 

「そう…。どうしてかしらね」

 

 腕を組んで考える彰兎を見つめながら微笑む紗夜。

 

 

 

 時間はかかったが、たどり着けたのかもしれない。

 

 

 

 2人の望んだ未来に。

 

 

 

 

 

 

 月日は流れあっという間に1ヶ月が経った。

目が覚めてからは驚くことばかりで彰兎自身気が滅入っていた。しかし紗夜に支えられてなんとかいつも通りの生活を送っている。

 

 あまり仲良くない妹。ネトゲで知り合った友達。なぜか辛辣な態度をとってくる歌姫。変わらずフレンドリーに接してくる友達。紗夜との関係をからかってくる友達。1度だけ一緒に水族館に行った友達。

 

 広い交友関係に自分自身驚いた。記憶をなくしてもこれだけの人が変わらず接してくる。こんなに嬉しいことはない。

 

「ありがたいな」

 

「急にどうしたの?」

 

 彰兎と紗夜は2人でライブハウスCircleのカフェに来ていた。

そんな中彰兎は1人、コーヒーを眺めて言ったのだ。

 

「俺には前の記憶がないのにさ。みんな見捨てずいろんなことを教えてくれたから」

 

「それだけ彰兎のことを慕っているのよ」

 

「そうかな?」

 

「そうよ。心配し過ぎ」

 

 紗夜はふふっと微笑んで紅茶の入ったカップを口に運んだ。

 

 いろいろ問題はあったが2人がデートをするのもこれで5回目。紗夜に対して恋を抱いていなかった彰兎。こんな気持ちのまま居ていいのかとすら思った。しかし何回も会ううちに心は変わっていったのだ。

 

「紗夜。いろいろありがとな」

 

「急に?」

 

「急に。……ケーキかなにか買ってくるよ」

 

 そう言って立ち上がろうとするが先に紗夜が立ち上がった。

 

「いつもあなたが買ってきてくれているんだからたまには私が」

 

「そうか? じゃあ頼もうかな」

 

 もう一度椅子に座り直して席から離れていく紗夜の背中を見つめた。

 

「綺麗な人ね」

 

「ああ………って誰だ君は?」

 

 右側から声が聞こえた。視線を向けると藤紫色の長い髪の女性が1人。

 

「私? さぁ…覚えてない?」

 

「・・・すいません。記憶喪失で記憶が曖昧で」

 

「そう………」

 

 女性は不気味な笑顔を浮かべてその場を離れていった。

 

「なんだったんだ? あの人」

 

 離れていく女性の背中をただ見つめるしか出来なかった彰兎。

 

 

 

 

 

「今度は確実に………ね?」

 

 

 

 

───────☆

 

 急に話かけてきた不思議な人の背中を見送った俺は、視線を紗夜に向けた。

まだ列に並んでいる所だ。

 

「あれ? 彰兎じゃん」

 

 この声は。

 

「リサか。奇遇だな」

 

 俺の視界に入ってきたのは紗夜のバンド仲間の今井リサ。いろいろ教えてくれた人の1人だ。

よく気が利いておせっかい焼きの良い人。

 

「お熱いね~。今日もデート?」

 

「その言い方やめてくれよ……恥ずかしいから」

 

「ごめんごめん。お似合いのカップルだと思うよ?」

 

 お似合いね……。周りの人からよく言われるんだけど、そんなにお似合いか? 昔からずっと一緒に居たってことは聞いたけどどんな感じだったんだろう。

 

「そんなお似合───」

 

 

 

「今井さん?」

 

 

 

 誰かの声が俺の言葉をさえぎった。

 

「矢野倉くん……」

 

「久しぶり。元気?」

 

「もちろん♪ 矢野倉くんも元気そうだね」

 

 なんだろう・・・この感じ。リサらしくないって言うか……なんて言うか。急に気まずくなった?

 

 話づらそうなリサを横目に俺は矢野倉と呼ばれた男に視線を向けた。

 

「あ、すいません。僕はこれで失礼するよ」

 

 別に早くどっか行けって思ったわけではないんだけどな。そう見えてしまったなら申し訳ない。

 

「今の人は?」

 

 そそくさとその場をあとにする男の背中を眺めならリサに質問者した。

 

「えっと~……その」

 

「言いたくないなら別に大丈夫」

 

「ううん。去年の5月頃告白してきた人なんだ~。断ったんだけど」

 

 そう話すリサの表情はどこか強張っていた。

 

 なぜかはわからない。

 

 だけどなにかありそう。

 

 そう感じて仕方なかった。

 

 




短くて申し訳ないです。最後に紗夜さんの小さな嘘という名の返事を彰兎に返しました!

遠藤ゆりかさんが引退ということで、最後に後日談としてリサ編をやろうと思っています! 記憶をなくした彰兎はどう助けるのか。紗夜とどうなっていくのか。お楽しみに!

Roseliaは5人から6人へ───
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