BanG Dream!~1人ぼっちな2人~完結 作:レイハントン
さて3話ですよ。主人公と紗夜さん回の続きですぞ~!
ハプニングは唐突に………
「市ヶ谷くんには悪いことしちゃたわね」
子犬の頭を撫でながらボソッと呟く。
頭を撫でられるのが気持ちいいのかしら。
昨日の帰り道。市ヶ谷くんと別れてすぐ、私が拾ったのは、ちょうど鞄くらいの大きさの捨てられていた柴犬の子犬。
ダンボール箱に拾ってください………テレビで見るような展開ね。
きっと市ヶ谷くんも同じようなことを言うのかしら。
ここに来るまで罪悪感で胸が押しつぶされそうだった。
朝遅れたこと。この子をどうするか悩みがあるのに彼に相談しなかったこと。数えると切りがない。
でも…嘘をついて来てしまった以上後戻りは出来ない。
それに市ヶ谷くんのことだから今頃家でネットゲームでもやっているでしょ。
そういえば今日も白金さんと楽しそうに話していたし。
私と一緒に居る時よりも…白金さんとゲームの話をしてる方が楽しそうだった──なんなのかしら。
この針で刺されたような感覚は。
「ワン! ワン!」
「あっ、ごめんなさい。お腹空いてるよわね」
持ってきた2つの小皿を地面に置くと、エサを貰えると思ったのか子犬が暴れ始めた。
「そんなにお腹空いてたの?」
さっき買ったエサの入った袋の封を切って片方の小皿に適量入れてあげ。それをダンボールの中に入れると尻尾を嬉しそうに振りながら食べ始めた。
もう1つの小皿には水を入れてからダンボールにそーっと入れる。
すると嬉しそうに私の手をペロペロと舐め始めた。
その姿で私の心は握りつぶされそうな気持ちで一杯になって、自然と目尻から涙が一滴垂れた。
なぜ飼うと決めたのにこうも簡単に捨てられるの? 誰かが絶対に拾ってくれるって確証があったから?
それとも保健所で処分してもらうため?
どっちにしても酷すぎる。
………私はどうしたら──
「無責任な人があなたを1人にしてしまったのよね…ごめんなさい………」
「なんでお前が謝るんだよ…氷川」
足音と共に聞こえてきた声。たぶん…いえ。私が一番聞きたかった声。
ゆっくり振り返ると、いつもの帰り道で見る制服を着崩した市ヶ谷くんの姿。
───────☆
俺は不思議でしょうがなかった。自分が捨てた訳でもないのに、氷川自身が犯した罪のように涙を流しているのが。
お前は優し過ぎるんだよ………なんでも自分1人で抱え込んで。誰にも相談せずに解決しようとしてさ。
今回の問題だって最後まで1人でやりきるには大変だ。
そんなお前を助けたい──
「ったく。何かと思えば、子犬拾って世話してた…か」
「悪いですか? あなただってこうしますよね?」
「ん~そうだな…俺も同じように助けたと思う」
冷たい目で俺を見つめる氷川の元まで歩いてしゃがみこんだ。
近くで見るとやっぱ美人だよな。俺はこんな人と普段から一緒に居るのか………。
それってどうなんだ?
そんなことを考えつつポケットからハンカチを出してそっと涙を吹いた。
「でもちゃんと氷川に相談したと思うんだ」
「………本当に?」
「ああ。……氷川…俺はそんなに役に立たないか? 居るだけ無駄か?」
「そんなことは………」
視線を逸らす彼女の視界にはどうやら俺は映ってないらしい。
確かに今までの行動を考えると頼りないのは明白。
それでも俺は──氷川を。子犬を救いたい。
困ってる人を助けられない惨めな思いはしたくないから。
「市ヶ谷くん……私」
「とりあえずその子犬をどうしたいんだ? 選択肢は2つ」
「2つ?」
「ああ。1つは保健所行き。2つ目は──俺と氷川で里親を探す」
正直保健所行きの選択肢は無いも同然。送ったら最後になっちまうからな。
それでも氷川が望むなら否定はしない。
でも…いや、絶対に氷川は後者を選ぶはずだ。
「里親…私と市ヶ谷くんで見つけられると思いますか?」
「んなもんやってみなくちゃだろ? 諦めてる奴には絶対に出来ない。お前はどう思う?」
立ち上がり氷川にそっと手を差し伸べた。
「もちろん…同感です」
やる気に満ちた表情を浮かべ、綺麗な手が俺の手にそっと重なり優しく握りしめて引っ張る。氷川が立ち上がるのを支えてから手を離した。
「んじゃ。そうと決まればまずはその子犬を家に運ぶぞ」
「え? 大丈夫なんですか?」
「もとはそうするつもりだったから問題ない。ここじゃいろいろ都合悪いだろ?」
「そうですね。ありがとうございます」
嬉しいのか普段あんまりお目にかかれない素直な笑顔に思わず視線を逸らしてしまった。
「良いって良いって」
それを悟られないように振り返って答えた。
今日1番の笑顔を見れた気がする。
まだ解決したわけじゃないけど、今回の目標はなんとか達成だな。
これから先、忙しくなるけど1つずつ確実に解決していきますか。
氷川の笑顔……反則だろ。
「嬉しそうだな」
「そ、そんなことは//」
いやいや。そんなことしかないだろ。
子犬抱えて嬉しそうにしてるのをこの至近距離でわからないってなると目がいかれてることになる。
「ところで、どうやって里親を探すんですか?」
「ん~とりあ…えず。ポスターとチラシを作って商店街とかで配るくらいかな」
あとは学校とかにも貼りたいな。飼ってくれる人が居るかもしれないし。
ポスターとチラシはどう作るかだよな~。そういう経験少ないからなんとかなるか不安だ。
「ポスターとチラシなら私が作ります」
「マジか。・・・・なら任せる。1枚だけ作ってくれればあとはコピーするから」
「わかりました」
「頼むな」
チラシとポスターは大丈夫だとしてだ。
他に問題があるのは・・・預かる場所の問題だよな~。
外に出しておくわけにもいかないし、かと言って家の中に入れておけば有咲がなんて言うか。
物置漁ればなんか出てくるかな。
「散歩はどうします?」
「散歩か。適当な時間に行くで良いんじゃね?」
「そこを疎かにして大丈夫なんですか?」
「あー大丈夫大丈夫。習慣化すると面倒だし」
と、説明しても理解してもらえるはずもない。
氷川を見ると頭からハテナマークが出てるんじゃないかと錯覚するほど疑問な表情だった。
ここからの話は結構本当だぞ?
「散歩を習慣化すると犬も体内時計でわかっちまうんだ。もうすぐ散歩だってな。でも行けない日が何日か続けばストレスになる」
「つまりストレスを与えないため?」
「そうそう。ストレス溜まると吠えるタイプもあるからな。それじゃあ近所迷惑だろ?」
「確かに」
ってなわけで散歩は朝早くなんて俺に出来るわけがないからこういう本当の理由を盾にして防ごうという魂胆だ。
「前から思っていたのですが、なぜそんな知識が?」
「本とかネットサーフィンとかしてたから。無駄に知識だけはあるんだよ」
「無駄ではないと思いますよ。こうして今役にたっているので」
「そう言ってもらえると助かる」
ん~でも知識があって損をしたことはないかも。ネトゲやるためにパソコンに詳しくなったことで、白金の役にたてた。
そしてこうして今役にたっている。
「他にやることはありますか?」
「そうだな・・・・・あとは進みながら考えよう」
「はい」
里親が絶対に見つかる保証はない。
見つからなかったことを考えて俺は個人で準備しておくかね。
もう…氷川の涙は見たくないし。
隣で嬉しそうに子犬を抱える氷川を見ながらそっと心に誓った。
「ってなわけでー。しばらく家で飼うから。よろしくー」
「はぁ?! よろしくじゃねぇよ!」
あーあ。また怒か? シワが増えるぞ?
帰ってきた俺は一旦氷川に外で待ってもらい家の許可を取るために交渉している途中だ。
ばあちゃんはキチンと世話をするなら置いといていいと、許可をくれた。
問題は堅物妹。正直ばあちゃんは許してくれると思ってたけど、コイツは絶対にすぐ了承はしないだろうと思ってたよ。
「なぁ~良いだろ? 世話は俺がするからさー」
「そういう問題じゃねぇ!」
「いやいや。そういう問題だろ」
なかなかお許しをもらえないな。
こうなったら………。
「わかった。今度駅の近くのスイーツ店で開かれる期間限定和風スイーツバイキングに連れてってやるから。全額俺負担で」
「なっ?! ・・・・私の部屋には絶対に入れない。それが条件」
「おけ~」
ははは。脆いな妹よ。そんなことではすぐに脆弱性を突かれてパソコンにマルウェアが仕込まれるのが落ちだ。
なに言ってるの? と思った人はスルーしてくれ。
有咲から了承を得た俺は、階段を降りて玄関を出た。
「許可もらったぞー」
「大丈夫だったんですか?」
「まぁな。とりあえずケージないから、物置で探してくる」
「私も手伝います」
ほほう。家の物置を見ても同じことが言えるのか? それを試すか。
氷川を連れて物置に向かった。
そこで気付いた不便さ。さっきからずっと氷川が子犬を抱えてる状態なのだ。
リードが必要か………。
歩いてそうかからない家の物置に到着。
「1つ言っておくけど、しばらく開けてないからすげぇ汚いし、ホコリだらけだからな?」
「…覚悟は出来てます」
「そうか。ならこれを」
家を出る前に取ってきたマスクを氷川に渡した。
片手で受けとるのを確認して、自分のマスクを付けていざ出陣。
この物置を開けるのは半年振りか………。
そんな酷い状況ではないと思うけど。
物置のドアを勢いよく開けると同時にホコリが宙を舞う。
手で払いながら入り口付近を探すと、目当ての物がすぐに見つかった。
「あったあった。氷川ー、これ」
と言いながらペットショップで売っている赤いリードを渡した。
「リードも有るんですね」
「前に里親探してことがあってさ。そん時にいろいろ揃えたからあるんだよ」
「じゃあ他にもあるんですか?」
「まぁな」
ゲージもどっかにあったと思うんだよな~。
片付けて物置にしまったのは覚えてるけど、こんな荷物あったっけ?
「ちっ………あの野郎また要らん物買いやがったな」
1人ボソッと呟いた。
「どうかしました?」
「いや」
こんなことでイラついてても仕方ない。先に進まなければ。
物置を捜すこと5分。
「だぁー! 物が有りすぎる!」
全然進んで居なかった。
「本当にあるんですか?」
氷川も疑う始末だよ。
「ワン! ワン!」
お前もか犬。
リードで繋がれた子犬の鳴き声が外から聞こえてきた。
柱にくくりつけているので逃げられる心配はないぞ。
今度柵作ってリード無しで駆け回れるようにしてやるからな。
「もういっそのこと買うか」
「物置にあるって確証があるのに買うのはどうかと思います」
「………そこまで言うなら捜すよ」
あるって確証はあるけど、見つかるという保証は正直ない。
物置の中には重い物も結構ある。つまり荷物を外に出すとなるとかなり大変な作業になるということだ。
氷川と持てばそうでもないか?
「・・・もしかしてあれですか?」
氷川が指す先には犬用ケージと書かれたダンボールが、彼女より少し高いくらいの位置に置いてあった。
「あれだな。つうかなんであんなところにあるんだよ………」
「私が取ります」
「いいっていいって。俺がやるから」
「いえ。このくらい手伝わないと」
「………わかった」
かなり危険だが本人のやる気を削ぐわけにもいけないか。
体制を崩した時に備えて俺は氷川の後ろで見守るように立った。
ゴソゴソ動くこと数分。
「もう少し…」
ダンボール箱を引っ張り出した瞬間──思った以上に重かったのか氷川がよろけた。
「危なっ──!」
ダンボール箱は俺達の横に落下。
俺は氷川を受け止める形で尻もちをついた。衝撃がもろに尻に伝わり痛みが走る。
問題はその後。仰向けの状態の俺の上に氷川が居る。
黄緑色の瞳が目の前まで迫っている訳だ。
かなり危険な状態にも関わらず、氷川に見とれてしまった。彼女も見られてることに気付いたのか俺のことをじっと見つめていた。
「氷…川…?」
「市ヶ谷くん…」
何を言っていいのか全くわからないうえに、いつもの軽口すら出てこない。
「あ、あのー。イチャイチャしてる所悪いんですけど。2人とも大丈夫ですか?」
後ろから聞こえてきた有咲の声。
なんとナイスなタイミングなんでしょう。今回は感謝してもしきれない。
「ご、ごめんなさい。すぐにどきますから」
「お、おう」
しばらくまともに会話出来なかったうえに、有咲からの痛い視線があったのは言うまでもない。
ハプニング………果たしてラッキーなのかアンラッキーなのか。
次回で解決するかしないかはまだわかりません。
それではまた次回!