BanG Dream!~1人ぼっちな2人~完結   作:レイハントン

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こんにちは~

捨て犬編ラストでございます。果たして子犬の運命は?!


4話 覚悟

「よし…これで終わりだな」

 

 氷川に作ってもらったポスター(カラーコピー)を学校の許可を得て、放課後の校内に貼り終わったところだ。

校内に張るのは結構大変なんだが、手伝ってくれるって人が現れてな。

 

「悪いな丸山。手伝ってもらっちゃって」

 

「ううん。市ヶ谷君の話聞いたら黙ってられないもん」

 

「そっか。他に頼むことがあるかもしれないから、その時はまた頼んでもいいか?」

 

「うん! 任せて」

 

 笑顔で答える丸山。するとすーっと俺の近寄ってきた。

 

 また例のあれか………。

 

「早速なんだけど…いいかな?」

 

「お前も頑張るな」

 

 丸山との出会いは高校1年生の5月頃だったっけな。

 

 

 

 

 

 高校1年生の5月。

桜の花びらが散り始めた頃。

この日は昼休みに氷川が委員会の仕事で居ないということで、校内を探索していた。

 

 入って1ヶ月経つけどまだ教室の位置がおぼけられん。

にしても中高一貫校ってだけあって広いな~。

広いのは良いけど人が減ってきてるんじゃ意味ないけど。

共学化したのに入った男子は数人。まぁ…当たり前か。

 

「あ~来年はもっと増えないかな~」

 

 口に出した所で状況は変わらない。

そこは来年の男子がここを受験しようと思ってくれるかだ。

何気に偏差値高かったりするんだよな~。中等部は受験しないと入れないし。

そこをトップで入るうちの妹はどうやってるんだ?

 

 そんなことを考えながら廊下を歩いていると、たどり着いたのは校舎の端辺り。

周りに人気はなく、無人なんじゃないかと錯覚する程。

 

「なにも使われてない教室ねー」

 

 どの教室の割り当てもない教室を一目覗いていこうと中を覗いた瞬間。

俺は見てはいけないものを見てしまった。

 

 シューズの色からして恐らく同年代。それに加えて同じクラスで喋ったことが全くない女の子。

 

 丸山さんが自撮りをしていた──

 

 俺の疑問はたくさんある。

なぜ自撮りしてる? なぜここで? しかもたくさん撮ってるやん………。

 

「俺はなにも見てない聞いてない」

 

 なにも見なかったことにして教室を立ち去ろうと動いた直後。

たまたま目が合ってしまった。

 

 丸山さんの顔がどんどんトマトのように真っ赤に染まっていく。

なにか言っているようだけど、教室の外からだとほとんど聞こえない。

それが普通わかるはずだが、見られたくないものを見られてテンパっているのだろう。

 

 後頭部をポリポリとかいて、教室のドアを開けた。

 

「落ち着けって。俺は見てない聞いてない」

 

「そ、そ、それ見た人のセリフですよね?!」

 

「はぁ…。とりあえず落ち着こうか」

 

 

 

 

 数分後。なんとか落ち着きを取り戻してもらい、俺は机の上に座り、その隣の席に丸山さんが座った。

 

「まぁ隠せないのはわかるからさ。で、なにしてたの?」

 

「えっと………その………」

 

「・・・え? もしかして言えないようなことしてたとか?!」

 

「ち、違います! そんなじゃないです………」

 

 そんなんじゃないならなんだ? どっからどう見ても自撮りにしか見えなかったんだけどな。

もしかしたら無人の教室の時計でも撮ってたってか? さすがにそれはないと思うけど。

 

「なんで自撮り?」

 

「やっぱり見てたんじゃないですか……私、アイドル目指してて…それで可愛く撮れる研究というか、なんというか………」

 

「ふーん」

 

 アイドル目指してて自撮りの研究か。なるほどなるほど。

アイドル目指すのも一苦労だな~。自撮りの研究までしないといけないとは。

事務所がキレイに撮ってくれる訳じゃないのか?

ん? 丸山さんは事務所に入ってるのか?

 

「丸山さんってどっかの事務所には?」

 

「まだ研究生なんです」

 

「へぇ~」

 

 他に聞くことがないな………この空気苦手なんだよ。

さて…適当に話降ってみようかな。

 

「丸山さんはどうしてアイドル目指してるんだ?」

 

「その…マーマレードって知ってる?」

 

「・・・・知ってるよ。あのオレンジ味のジャムだろ?」

 

「違います! アイドルグループの!」

 

「ですよね~」

 

 マーマレード。確かテレビとかでもよく見るアイドルグループだな。

昨日バラエティーに出ててたっけ。

 

「マーマレードのあゆみさんに自分に近い物を感じたんです。それで私もたくさんの人を笑顔にしたいなって…思ったんです」

 

 思った以上に深い理由。

たまに見るアイドル、女優の人が言ってる親とか友達が勝手にオーディションに応募して受かりましたみたいな話じゃなくて少しホッとした。

 

「なるほどなるほど。丸山さんなら出来ると思うけど」

 

「本当に?!」

 

「教室でも仲良い人多いし、ある意味みんなを笑顔に出来てる」

 

「それって………」

 

「おっちょこちょいだよな~」

 

 そう言った瞬間両手で顔を覆ってしまった。

そりゃそうなるだろう。

丸山さんは教室で誰が見てもわかるくらいにおっちょこちょいなのだから。

それが面白かったりする。

 

「まぁ…頑張れよ。応援してっからさ」

 

「ありがとう。………あの市ヶ谷くん」

 

「ん?」

 

「良かったら友達に…なってくれませんか?」

 

 なんだそんなことか。

そう心で思ってても、その言葉を聞くとあの時のことを思い出す。

俺も同じ様な顔してたのかな。

 

「俺で良ければ。それと敬語外してくれ。同じ学年なんだからさ」

 

「うん! よろしくね♪」

 

 こうして丸山彩と仲良くなった俺は、定期的にどの自撮りがいいか聞かれるのである。

そして氷川以外の友達1人目だったりする。

 

 

 

 

 

 

「今回は3枚目で良いんじゃないか? 盛り過ぎず、少ない過ぎずって感じで」

 

 渡されたスマホの画像フォルダーにあった3枚の写真を見比べながら答える。

 

「私は2枚目が良いと思ったけど、市ヶ谷君は3枚目か~」

 

「あくまで俺個人の意見だけど」

 

「それでもすごい参考になるよ!」

 

「なら良いけど」

 

 こういう関係になってもう1年。早いもんだな。

アイドル研究生としては全然変わらないって言ってたけど大丈夫か?

 

「それとね……私、デビューする事になったんだ♪」

 

「・・・高校生デビューか? やめとけってー。同じ中学の人から調子乗ってるとか思われるから」

 

「もー! 違うって!」

 

 ポカポカ肩を叩かれる中、へいへいと適当に返事を返した。

 

 とは言ったものの何のデビューだ?

自分で誤魔化しておいてなんだけど気になるわ。

 

「で、なんのデビューなんだ?」

 

「アイドルバンドなんだ♪」

 

「アイドル…バンド?」

 

 いまいちピンとこない。

一体なんだ? アイドルバンドとは。

アイドルなのかバンドなのかはっきりしてほしいものだ。ってのは冗談で、アイドルバンドなんて聞いたことないぞ。

 

「アイドルがバンドをするってコンセプトみたい。明日初めての打ち合わせなんだ~♪」

 

 嬉しそうに言う丸山を見ているとどうやら、本人の夢がもうすぐ叶いそうなのかもしれない。

 

「なるほどなるほど。良かったな。丸山の夢もうすぐ叶いそうじゃんか」

 

「うん♪ だから明日頑張らないと!」

 

 丸山の気合いは十分なようだ。

俺はそれが空回りしないか非常に心配だけど………。

まぁ笑いをとれて案外いいかも。

 

 あとで氷川と合流する事を思い出し、サンキューなー、と一言声をかけてからこの場をあとにした。

 

「市ヶ谷君も頑張ってね!」

 

「おうよ」

 

 こういう時手伝ってもらえる。やっぱり持つべき物は友だよな~。

 

 少し上機嫌で氷川との合流場所屋上へと走って向かった。

 

 

 

 

 

 里親探しから数日が経過した。

商店街や人が集まる場所でチラシを配ったりしたが、結果はダメ。

柴に会いに来てくれる人が居たものの、なぜか柴がめっちゃ警戒して人に寄っていかないのだ。

やっぱり小さいながらも捨てられという事をわかってんのかな………。

 

 無責任な人間…か。

このまま保健所に渡したら結局俺も同じ。探すと言った以上ちゃんと探さないと。

それでも──期限は決めないといけない。あんまり長く家に置いておくと家族の一員と認識しちゃうから引き渡しが出来なくなる。

見つからなかった時の対策はキチンとしてあるから大丈夫だと思う。

 

 決意を新たに階段を一気に駆け上がった。

 

 屋上に通じるドアを開くと、すでに氷川がいつもの場所で待っていた。

居た居たと呟きながら向かうと、氷川も気付いてくれたのか立ち上がって、俺の方に歩み寄ってくる。

声が聞こえる範囲まで近づき声をかけた。

 

「ずいぶん早かったな」

 

「ええ。白鷺さんと松原さんが手伝ってくれたので思ったよりは早く終わりました」

 

「あの2人か。あとでお礼言わないとな」

 

 白鷺千聖と松原花音は同じ学年の女の子で、去年知り合った。

2人の話もまたの機会に。

 

 それよりも話を進めないと。

 

「あの──」

 

「なぁ氷──」

 

「あっ…悪い。先聞くぞ?」

 

「え、ええ…」

 

「(やっぱり今のバンドのことを相談するのはやめておきましょう)」

 

 一瞬氷川が口ごもったのを見逃さなかったが、今はこっちの話を先にしたい。これから先のことだし。

 

「………期限を決めないか?」

 

「期限ですか?」

 

「ああ。このままだと柴が家の家族だと思うのも時間の問題だ。…だから一週間後に見つからなかった時は」

 

「………少し考えさせてください」

 

「わかった」

 

 そう言うと氷川は屋上を後にした。

1人残った俺はいつのも場所に腰を下ろして、空を見上げた。

 

 どこまでも広い青い空。触ればふわふわそうな白い雲。

今日は晴れ。雨が降る気配はない。

 

 心が今の空みたいにもやもやする………。

このまま見つからなかったら、保健所送りか犬をたくさん保護している人に預けるのでいいのだろうか。

去り際の氷川の表情は前に見た悩んでる時の表情だった。

まぁあんなこと言ったらそうなるよな。もう少し言葉を選ぶべきだったか。

 

「とりあえず帰るか」

 

 帰る途中に氷川が居たらちゃんと説明しよう。

 

 

 

 

 

 

 教室に戻ったが、氷川の姿どころか鞄すらなかった。

居たのは残って喋っている女の子が数人。

 

 1人で考えたいのは俺と一緒ってか?

 

 そんなことを思いつつも内心心配しているのはいつものことだ。

自分の鞄を持って教室を後にした。

 

 

 

 いつもと同じ帰り道なのにこの日は酷く長く感じた。

 

 話しながら帰るのがどれだけ短く感じるのか体感するなー…。

今は考えごとを邪魔されないならいいか。

 

 道端に転がる石を蹴りながら歩いていると、聞き慣れすぎた声が聞こえてきた。

 

「はぁー…散歩するって言った本人が帰ってこねーとか有り得ない」

 

「有咲だ…」

 

 少し先の曲がり角まで歩きそーっと覗いた。

そこには柴を散歩している有咲の姿が。文句を言いつつも表情はどこか楽しそうだ。

 

 犬とかが好きなのは意外だな。

いつも部屋でWi-Fi使ってネットサーフィンしてるのに。

それは俺も変わらないけどさー。

…にしても自分から進んでなのか、ばあちゃんに頼まれたか、はたまた氷川に頼まれたか………。

いずれにしても散歩してくれるのは柴にとっても俺にとってもありがたい。

 

 

 

 ──覚悟を決めるか。

 

 

 

 

 

 

 

 ポスターを貼った数日後。

放課後1人で校内に貼ったポスターを剥がしていた。

まだ半分も剥がしてないけど。

 

「几帳面だな………」

 

 しっかりとガビョウで止められているポスターを剥がしながら呟いた。

氷川らしいちゃ氷川らしい。

 

 この普通に見えてどこか手を抜いてる感があるのは白鷺のだろうな。容量よくこなす所があいつらしい。

こっちの微妙に曲がってるのは松原のだな。一生懸命さが伝わってくる。

 

「あら。もう剥がしちゃうのね」

 

「あっ?! …白鷺かーいきなり現れるなよ………」

 

 足音1つ立てないで俺の後ろに立つとは………。さては忍者の役でもやったのか?

 

「あなた集中してると周り見えなくなるタイプよね」

 

「そうか? 話は聞いてるけど」

 

「じゃあ私が‘好き’って言ったのは聞こえてたってこと?」

 

「・・・はぁ?! お、お、お前なに言って」

 

 すると白鷺は振り返ってしまう。

これはいよいよおかしな状況になってきたぞ?! 好きってあれだよな?! あれなんだよな?!

異性のことが好きってやつか?!

 

「ほ、本気か?」

 

「ええ」

 

 

 

「犬が」

 

 

 

 ふ…ふざけんなー!!

俺の純情な気持ちを返せー!!

 

「だ、だよな~」

 

 ここはあくまでも平然を装わないと。こいつのことだ。いつもみたいにからかってるだけなはず。

 

「あら。平然を装ってるのバレバレよ?」

 

「お前がややこしいことを言うからだろうが」

 

 若干怒り混じりに話すと、うしろですクスクス笑っているのが聞こえてきた。

 

 また騙されたよ。俺で遊んで楽しいか?

 

「あなたを取ったら氷川さんに怒られそうだからやめておくわ」

 

「氷川とはそんな関係じゃねぇよ。普通の友達だ」

 

「友達の割には氷川さんは敬語よね?」

 

「まぁな。氷川の標準語みたいだから気にしてないけど」

 

 確かに友達の割には敬語だな。

気にしてない…か。なんか気になってきたわ。

知り合ってから年ねん遠のいて行くような感覚はたまに感じるけどさ。

 

「そうだわ。からかったお詫びに私も手伝うわね」

 

「そりゃどーも」

 

 するとなぜか白鷺はどこかへ行ってしまった。

他の場所を回ってくれるのかは謎だけど、やると言った以上投げだすような人じゃないことはわかっている。

それとも1人考える時間をくれたのか? どっちにしてもよく人を見てるな。

 

 ふと左に視線を向けると、人が立っていた。何かを言いたげな表情を浮かべて。

 

 白鷺…お前はホントよく周りも見てるな。

 

「なぜポスターを剥がしてるんですか?」

 

「氷川……。必要なくなったから。ただそれだけだ」

 

「必要ない? どういうことですか?」

 

 氷川の表情が硬くなる。

それでも俺は止まることなく、決めたことを話した。

 

「家で飼うことにした」

 

「・・・飼う? 捨て犬をですか?」

 

「他に飼ってる犬は居ないからな。そこで俺は氷川に相談がある。俺はあの犬を飼いたい…氷川はどう思う?」

 

 人に相談しろって言っておいてほぼ1人で決めた俺が言うのもなんだけど、ちゃんとばあちゃんと有咲には相談して了承を得た。

あとは氷川だけだ。

 

「良いんですか? 拾ったのは私なのにあなたが飼うなんて」

 

「じゃあこのまま保健所とかで良いのか? 良いわけねぇだろ? 無責任な誰かが捨てた犬を拾ったのは‘俺達’だ。だから──その責任を果たす」

 

 真剣な表情で伝えると氷川はクスッと笑った。ここ最近氷川の笑った顔は見なかったから、少し安心だ。

 

「あなたって人は………本当にお人好しですね」

 

「そうか? それと俺が飼う条件なんだけど、氷川にもある」

 

「私にですか?」

 

「ああ。……そ、その敬語やめてくれないか?」

 

 言っちまったよ………。

 

「それだけで良いんですか?」

 

「あ、ああ。それだけ」

 

「わかりま……ええ。改めてよろしく」

 

「こちらこそ」

 

 少しだけ…ほんの少しだけ距離は縮まったかな?

これからはもう少し氷川のことを気にしてやらないと。

 

 

 

 

 こうして捨て犬の件は片が付いた。

名前は俺の命名でハヤテに決まりました! 某錬金術の漫画からとったのはここだけの話な。

 

 

 

 

 俺はまだ氷川のことを全て理解しきれていなかった──そのことに気付くのはもっと先のことだ。

 

 




彰兎の口癖。
同じ言葉を繰り返す。
例 わかったわかった
他にもあるので見つけてみてください!

いよいよRoselia結成回に入っていきます。同時にPoppin'partyの結成にも彰兎が関わってきますぞ!

次回は彰兎、水族館行くってよ

次回予告は予告なく変更されるので悪しからず。
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