BanG Dream!~1人ぼっちな2人~完結 作:レイハントン
予告詐欺をしてしまいました。水族館のお話は次回ということで、今回はRoselia結成編の序章です。
それではどうぞ!
ぐっ……お、重い……。
まるで何かに踏みつけられてるような重さ。
微かに聞こえてくるワンワンという鳴き声…。いったいなんだ?
うちは犬なんて飼って──
目を開けると重さと鳴き声の正体がすぐにわかった。
なにも悪びれる様子もなく昨日から家で飼い始めた柴犬──ハヤテがハァハァとベロを出して俺を見ていた。
「どいてくんない?」
「ワン!」
「いやワンじゃなくてさ…」
「ワン!」
言葉通じねぇのな~。当たり前だけどさー、少しはどいてくれても良いんじゃないのかねハヤテ君や。
そんなことを思っても通じるわけもなく俺の上で飛び跳ねるハヤテ。
足がまだちっさいから痛い。面積小さいと痛いんだよ………。
つうか起きるの早すぎだ。
「まだ5時………勘弁してくれよ~」
必死に邪魔をするハヤテをよそに俺は再び目を閉じた。
眠気には勝てんのよ。
「あなた起きて。あなた」
今度は体を揺すられている…。
なんでみんな俺の睡眠を阻害するんだ?
こっちは夜遅くまでハヤテの犬小屋の設計図書いてたんだぞ? 夜中の1時たぞ? 次の日眠いに決まってるだろ。
「今日は休みだからほっといてくれ………」
「今日はデートの約束した日よ?」
「デート?」
なんだなんだ。………デ、デート? 俺はそんな約束を氷川としたっけ?
ん? 氷川?
目を開けると水色の長い髪をポニーテールにしたエプロン姿の氷川の姿があった。
「ひ、氷川?!」
「なんで高校生の頃の呼び方してるの?」
「いやなんでって………」
なんだこれは。いよいよ幻覚を見るようになったのか? それとも夢か? いずれにしても現実ではないはず。
だからってなんでもして良いってわけじゃ・・・・ものは試しか。
「そ、そうだったな。寝ぼけてたみたいでさ~」
「き、昨日の夜なんてあんな激しかったくせに…忘れちゃったの?」
顔を赤らめながらそう言ってくる氷川が、妙に可愛く見えた。
いつまでも黙っているわけにもいかないため、とりあえず返事を返す。
「んー? あー! お、覚えてるとも!」
覚えてるわけねぇだろ。だってそんな記憶ないもの。
ねぇ夢なんだよね? 夢なら早く覚めてくれー!
「じゃあ…朝ご飯にする? それとも…わ、私?」
恥ずかしがりながらも言う氷川にもう自分が止められそうにない。
そんな言い方されたら誰だってお前を選ぶだろこんちきしょー。
「もちろんひ…紗夜に決まってるだろ」
「優しく…ね?」
なんだこの氷川はー?! 可愛いけど怖すぎるー!! こんな照れくさく笑ってるのなんて見たことねぇぞ?!
「あー! なんじゃこりゃー!」
勢いよく飛び起きると、驚いた声が聞こえてきた。
自分の部屋を見渡すと私服でポニーテール姿の氷川がなぜか部屋を片付けていた。
「ど、どうしたの?」
「その言葉そっくりそのまま返してやるよ。なんで俺の部屋に居るんだ?」
「ハヤテの散歩をする約束したでしょ。忘れてたの?」
「・・・・そうだった~」
何はともあれ、あれは夢だったわけだ。
良かったのか良くなかったのかで言うと良かった。氷川のあんな姿一生見れないかもしれない。
けど、なんか見ちゃいけないような………なんだこの気持ち。
「遅くまで起きてたの?」
「まぁな。ハヤテの犬小屋作ってやんねぇとさ」
「あんまり無理しないように」
「へいへい」
ボサボサの頭を掻きながら答えると、なぜか氷川はじーっと俺のことを見てくる。
「な、なんだよ」
「いつもの姿からは想像がつかないって…思っただけよ」
「そうか? いつもこんなんだぞ?」
ここから10分かけていつもの姿に戻していくわけだ。
戻すって言ってもシャワー浴びるだけだけど。寝癖直しと眠気覚ましに。
今日は・・・必要ないか。もう眠くないし。
「とりあえずハヤテの散歩頼むわ」
「ええ。行ってきます」
「行ってら~」
ハヤテを抱えて部屋を出て行く氷川を見送り、朝ご飯を食べるために1階へと降りる。
ドアを開けてリビングに入った………がしかし。
「あっ! こないだの先輩!」
「・・・・夢?」
朝から変な夢は見るわ、なぜか後輩が居るわで家はいったいどうなってるんだ?
花学率高すぎね?
「先輩って有咲のお兄さんだったんですね」
「あーまぁな。可愛げないけど」
そう言った瞬間ケツに痛みが走った。けっして痔などではない。
「悪かったですね。可愛げなくて」
「朝から蹴るからだろ?」
「邪魔だから」
あー最悪だ。朝から蹴られるし、変な夢は見るし。眠いし。後輩来てるし。寝癖直してないし。
とりあえずリビングをあとにした俺はバスタオルを1枚持って風呂場に向かった。
シャワーをかけて寝癖を直し、頭を拭きながらリビングに戻る。
「あれ? あいつらもう行ったのか」
いつの間にか有咲と後輩の姿は見あたらなかった。あとで名前聞かないとな。
玄関の前で立っていると、ばあちゃんの声が聞こえてきた。
「有咲もようやく友達が出来たのね」
「友達…と呼べるかはわからないけど、高校生になって少しは変わったのかも」
「そうだね」
用意された朝ご飯を食べるためにいつもの場所に座って手を合わせた。
「いただきます」
今日の朝ご飯は、ご飯にみそ汁。玉子焼、焼き魚といったごく普通の朝ご飯。
時計を見るといつもより余裕がある。
ハヤテに起こされたのもあるけど、こんな早く朝飯食べたのはいつぶりだろう。
………玉子焼ウマ。
毎日こんな美味い飯食えるなんて最高だ~。
テレビの電源を点けるとちょうど天気予報がやっていた。
「今日は所々でにわか雨があるかもしれないので、折りたたみ傘があると安心です」
マジか。俺の住んでる地域は降水率40………。一応折りたたみ傘持っていくかね。
天気予報も確認し終わり、しばらく朝ご飯を食べていると外からワン! と鳴き声が聞こえてきた。
どうやら帰ってきたみたいだな。
少しすると玄関の扉が開く音が聞こえてきた。
「氷川ー散歩サンキューなー」
お礼を言うと大きな足音を立ててハヤテがリビングに入ってきた。
「うわっ?! 朝から元気過ぎだろ………」
「元気があって良いと思うけど」
「ないよりはな。とりあえずハヤテを外に繋いできてくれ」
「わかったわ」
氷川を見送り残りのご飯を急いでかきこんだ。
「ごちそうさふぁ~」
よい子は食べながら話しちゃいけないよ?
まぁ完全に俺が悪い人になってしまったところで2階に上がった。
今日はいつもと違う順番で用意してるからなんか新鮮だ。
氷川が朝から居るのが一番の原因なような・・・・それにしても氷川のポニーテールは良かったな。
一生かかっても氷川にポニーテールで居てくれなんて言えない。
付き合ってるわけでもないのにおかしいだろ?
「市ヶ谷くん聞いてるの?」
考えながら制服に着替えていると、部屋の外から氷川の声が聞こえてきた。
「悪い悪い。着替えてて聞こえなかった」
ズボン穿いてる時だから声が聞こえないなんてありえないんだけどな。
ここは怒られないために嘘を………。
「ハヤテにご飯とお水あげといたから」
「サンキュー。すぐに着替えて行くから外で待っててくれー」
「わかったわ」
部屋から足音が聞こえなくなるのを待ち、急いでYシャツを着てネクタイ、鞄を持って部屋をあとにした。
ドタドタ階段を降り、玄関で靴を履いていると、リビングからばあちゃんが出てきた。
「いってらっしゃい」
「行ってきまーす」
「良い彼女が出来たのね~」
「違う違う。友達だよ」
クスクス微笑むばあちゃんに見送られて俺は玄関を出た。
全く……困ったもんだ。氷川とはそういう関係ではないのに。
外に出ると氷川の姿を探すとハヤテを撫でていた。
「氷川、行くぞ」
「今行くわ」
2人並んで石畳の上を歩いて敷地内を出る。
いつもは左に曲がる所を、今日は右に曲がった。
「こっちじゃ……?」
「あーそっちだと遠回りだからこっちだこっち」
「いつも遠回りを?」
「まぁな。5分くらいしか変わらないけど」
少し怪訝な顔をされたが、俺が歩き始めるとなにも言わずに歩き始めた。
「……どうして犬小屋を買わずに作ろうとしてるの?」
「ん~金が無いのと、安上がりだから。あとは作ってみたいっていう好奇心かな」
「好奇心で犬小屋を作ろうなんて思わないわよ」
「そうか? ここに思ってる奴が居るんだが」
そう言うと呆れたようなため息が氷川から聞こえてきた。
まぁ普通に買ったやつよりは愛着沸くから俺は良いと思ってるぞ。
氷川には伝わっていないみたいだけど。
「ってことで明日暇か?」
「明日は…用事があるのよ。それと今日の放課後は急いで帰らないといけないから先に帰っても大丈夫?」
「用事なら仕方ない」
一瞬言葉に詰まったのが気になったが、ここはスルーした。
俺に言えないような事1つや2つあるだろう。こっちだって、氷川に言えないようなこと思ってるしおあいこだ。
今日の帰りは暇だし久しぶりにネトゲでもやろうかな。
こうして俺の1日は過ぎてゆく──明日俺と氷川の運命が大きく変わることはまだ誰も知らない。
紗夜さんのポニーテールはヤバい。破壊力有りすぎじゃね?
ということで、ポニテの紗夜さんのお話を書きたかったので書きました~。
次回はいよいよRoseliaのメンバーが着々と出てくるかも! そしてポピパのあの子も………