多世界の物語 ~NARUTO~   作:瀧音

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※注意‼ 残酷描写が含まれています。ご了承ください。


憎悪の足と安らぎの手

 火影亭前の大通りは人であふれていた。これは、亡くなった知り合いの家を訪ねる者たちである。木ノ葉隠れの里はそれなりに大きいが、里人のほとんどと知り合いだという者もいるほど横のつながりが強かった。そのため、この日一日をかけて家を巡り、手を合わせるのである。

 

 そんな大通りから脇道にそれると、暗く人通りが少ない裏通りに出る。主に夜訪れる客が数人いるかどうかの店が二軒並んでいたが、今日に限ってはたとえ夜でも訪れる者はいないだろう。

 

 

 そこで今、異常な光景が広がっていた。

 

 

 少なくとも十人の大人が、男女関わらず中央に転がっているそれを蹴り、踏みつけ、唾を吐きかけていた。誰もがその顔に怒りを浮かべ、中には涙を流しながらそれを行っている者もいた。共通しているのは、誰の目にも理性という人間らしい光が宿っていないことだった。

 

 そこに別の団体がやってくる。普通ならその光景に恐怖し、すぐにやめるよういうはずだ。少なくとも、誰か止められる人を呼んで来ようと急いで大通りのほうへ戻るだろう。しかし、彼らはそれをしなかった。それどころか、彼らの目は、もともといた大人たちと同じ目をしていた。

 

 やってきた団体の人数だけ周りの大人が離れる。そして、その団体はやはりそれに加わり、何度も何度もそれを踏みつけていた。

 

 それのもともときれいだった金髪はもはや元の色がわからないほどくすみ汚れていた。服など着ておらず、肌に直接何人分もの足跡をつけられ、そうでない部分はないほどだった。その細い手足はとっくに折られ、砕かれ、もはやちぎれそうになっているのではないかというように見えた。その口からは何度も何度も血が吐き出され、大きな血だまりを作っていた。

 

 

 

 それは、うずまきナルトだった。

 

 

 

 これが始まり何時間がたっただろうか。最初は二人だったこれがどこから現れたのか四人、六人、十人と増え、その後は十人以上増えると輪の中に入れないため時間交代制になっていた。太陽はすでに山の向こうに消え、少しずつ闇が裏通りを支配し始めていた。

 

 (どうして…なんで…)

 

 ナルトは必死に意識を保ちながら考えていた。なぜ優しい笑顔を見せていた大人たちが自分を傷つけ始めたのか。なぜそんな怖い目で自分を見るのか。なぜ誰も止めてくれないのか。なぜ血だまりの中にさっきもらった飴玉が転がっているのか。

 

 

 なぜ、自分が「化け狐」と呼ばれるのか。

 

 

 大人たちは無言ではなく、叫びそうになる口を必死に抑えてぶつぶつとつぶやいていた。最初は「化け物」と言っていたのがいつの間にか「化け狐」に変わっていることにナルトは気づいていた。そしてその目に怒り、悲しみだけでなく、恐怖の感情が入っていることにも、ナルトは気づいていた。

 

 だから、最初は謝ろうとした。自分が悪いことをしたのかもしれない。悪いことをしたと思ったら謝れとクラマに教わっていたナルトは、その通りにした。クラマはナルトがちゃんと謝れば許してくれた。しかし、大人たちはむしろナルトが謝ろうとすると余計に足を振り下ろすのだ。最初よりずっと強い力で。

 

 涙を出そうとすれば蹴られた。痛みに叫ぼうとすれば蹴られた。逃げようとすれば蹴られた。許しを請えば蹴られた。何もしなくても蹴られた。

 

 とうとう裏通りは完全に闇に包まれた。大人たちの一人が何かぼそりと言うと、他の大人たちはナルトを蹴るのを止め、ゆっくりとその場を離れ始めた。真っ暗な中にナルトは一人取り残された。

 

 

 

 

 

 

 ナルトはもう疑問すら考えることができなくなっていた。だんだん冷たくなっていく自分の体とそれより冷たい地面だけが今のナルトに感じることができるものであった。視覚も聴覚も味覚も嗅覚もいかれてしまった。ナルトはただただ死の谷底へと突き落とされていった。

 

 その時、それ以外の感覚がナルトを襲う。ナルトのへそのあたりから湧き上がるように感じる痛み。まるで体の内から焼かれるかのような痛みだった。最初は小さかったそれが徐々に体全体に広がっていく。ナルトは声なき悲鳴を上げた。

 

 もう、何もなかった。ナルトはその意識をゆっくりと手放そうとしていた。

 

 

 

 

 

 だから、最初頭に感じるその感触がわからなかった。クラマの手とは違い毛に包まれていないそれは、人間の手のように感じた。それはナルトの頭を左右に揺らしていて、まるでナルトの頭を撫でているようだった。

 

 「」

 

 何か聞こえた、ような気がした。それは人間の声のような気がした。

 

 「」

 

 内容は何もわからなかったが、そこに含まれるものをナルトは感じていた。自分の体の冷たさでもなく、地面の冷たさでもない、全身を包み込むような冷たくも暖かい、それを。

 

 いつの間にかナルトの体からはあの燃えるような痛みが抜けていた。さらに頭を撫でられるたびに蹴られた痛みも感じなくなり、ナルトの心は安らいでいった。

 

 最後にナルトが意識を手放そうとしたとき、それは谷底に落ちるようではなく、いつものように布団で眠る時のようだった。

 

 

 

 

 「ゆっくり、おやすみ」

 

 その声だけ、聞こえた気がした。




実はここであることを度忘れしていたことに気づきました。
何かは次回のあとがきで。


あと、一話!…か、二話!
明るい話に移れますように…‼
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