無剣の守護戦姫   作:未蕾

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EP.10手がかり

ツバル side

 

 

ピロリン

 

 

小さな着信音が俺たちにメッセージの受信を知らせた

 

 

『今からいつもの場所で』

 

 

差出人はアルゴからだった、彼女らしい余計な言葉は付け足さない用件だけを簡潔に載っけた文、それでもそこには重大な()()が込められているような気がした

 

 

「なぁ、お前ら・・・いや、聞くまでもねぇな。」

 

 

パーティーメンバーの二人にも伝えようと振り向いたが、彼女らの何かを伝えようとしている様子から悟ることができた

 

 

「ということはツバル君も?」

 

 

「あぁ、アルゴからな、お前らこの後何もないよな?」

 

 

「「えぇ。」」

 

 

「そんじゃ行くか。」

 

 

俺達は三日前に足を運んだばっかりのレストランへと歩いていった

 

 

・・・

 

 

「よ!ツバルじゃんか!久し振り!」

 

 

「は、初めまして!」

 

 

「ニャハハハハ!」

 

 

「・・・・」

 

 

今俺は盛大に顔をひきつらせながら目の前の状況を見ていることだろう

俺達はアルゴの指定した店に入った瞬間、固まることとなった

 

 

「どうしてキリトがここに?そしてその子は誰だ?ついにお前にも彼女か!?」

 

 

「か、かかか、彼女!?わ、私にとって

キリトさんは命の恩人というか何というか、そういう関係じゃないというか・・・えっと・・・そのー・・・」

 

 

俺がキリトとの関係をからかってやると彼女は突然顔を赤らめ始め、急に内股で手と足を擦り始め、モジモジし始める

声はだんだん尻窄みになり、誰が見ても彼女は彼に恋をしているのは一目瞭然である

 

 

「なわけねぇだろ。」

 

 

「いてっ!」

 

 

「はぁ・・・・」

 

 

尚、肝心の朴念仁には一ミリたりとも伝わってなさそうだが・・・

そもそもキリトにはあいつがいるから無理ないと言えばそこまでか・・

 

 

「おっト、紹介が遅れたナ。彼女は現在キリトとパーティーを組んでるルリダ。」

 

 

「名前は問題じゃない、肝心なのは何故こいつらがここにいるかだよ。」

 

 

「そリャ勿論彼らがツー坊達に頼んだ調査の依頼人(クライアント)だからサ。」

 

 

「ルリさんね、私はアスナ。よろしくね。」

 

 

「・・よろしく。」

 

 

アスナは彼女に手を差しのべ、挨拶をする

しかし、それは逆効果になり彼女はキリトの背後に隠れてしまう

 

 

「ははっ、怖がられてますよアスナさん。」

 

 

「う、うるさいっ!」

 

 

「うぉっと、あぶねえな!だから初対面の相手にさえ怖がられるんだよ!」

 

 

恥ずかしさのあまり高速で突き出される細剣を顔だけで余裕綽々で躱すキリト

あいつの反射神経は下を巻く、CBTの時のボス戦では必要不可欠なものだった

 

 

「悪いガアーちゃんは外してくれるカ?彼女がこの状態だと進まないからナ。」

 

 

「仕方ないわね・・・」

 

 

渋々といった感じでアスナはお店を後にした

 

 

「悪いナ、どうもアーちゃんはキー坊達と相性が悪いらしイ。」

 

 

「いつも彼女、彼の愚痴を溢してましてよ。」

 

 

「・・・マジ?」

 

 

「キリトさんは悪い人じゃないです!失礼です、アスナって人!」

 

 

「大丈夫、アスナはそういうことで怒ってるわけじゃないから。」

 

 

キリトを罵られ少々ご立腹のご様子のルリを頭を撫でながら慰める様子はまさにカップルそのものである

 

 

「にしても彼女、どこかで見たような・・・」

 

 

「あれでしてよ、ほら三日前の。」

 

 

 日本人らしい黒髪を肩下までスッと伸ばした髪、キリトよりも少し低めの身長に幼い外見と裏腹に大人びた表情

 三日前にプレイヤー鍛治師から飛び出した少女そのものだったのだ

 

 

「あぁっ!」

 

 

「そうサ、彼女は今回の被害者であリ、また謎を解く手がかりを握る人物でもあるんダ。」

 

 

「とりあえずお前らには事の顛末を話そうと思う。」

 

 

 

 キリトによれば4日前、森の秘薬クエストで苦戦していたパーティーを助けたついでとしてアニールブレードの強化に付き合うことになり、鍛冶師の所で強化を行った所、強化失敗により、彼女の剣は紛失かに思えたが、キリトのおかげで取り戻したという

 

 

「それがどうしたんだ?」

 

 

「なぁお前ら、レジェンドブレイブスってパーティー知ってるか?」

 

 

 

「知ってるもなにも、つい昨日共闘してきたばかりよ。」

 

 

「そうか・・・・」

 

 

 キリトが少し渋そうな顔になる

 

 

「彼らがどうかしたのか?」

 

 

「ンー・・・ちょいと困ったことになってるかもナ。」

 

 

「あぁ、もしやとは思ってたがここまでとは・・・」

 

 

 二人して頭を掻き悩み始める

 

 

「ちょっと待って、最初から詳しく説明してくれ、全く話が読めないんだが。」

 

 

「最近増え続けるプレーヤー鍛冶師における強化失敗の武器破損の事故、それを俺らは事件、つまり鍛冶師の故意的破壊と俺達は見てるんだ。」

 

 

「なにぃ!?」

 

 

「なんですって!?」

 

 

 キリトから発せられた言葉に驚き二人して叫んでしまう

 

 

「根拠は?」

 

 

「俺はルリの剣を取り戻した後、俺は鍛冶師の後を着けたんだ。彼はパーティーと合流し、とある宿屋に入っていった。その後、アルゴに頼みそのパーティーについて調べて貰ったんだ。」

 

 

「あいつらは最近頭角を現し始めてナ、

いつかはギルドまでつくるらしいんダ。その名が“レジェンドブレイブス”だそうダ。」

 

 

「なるほどな、レベルと装備が合ってなかったのは詐欺して騙し取った剣を売ったから・・・」

 

 

「事情はどうであれ、彼らがやってるのは犯罪混じりの詐欺行為と相違ない、そんなことを平気でやってるやつらが力を付けてみろ、俺達に未来はない。」

 

 

「お前らはしないのか?」

 

 

「顔バレしてる俺達よりは適任だろ。

とにかくお前らにはこの事件の裏を取って欲しい。確信が持てたら俺達に教えてくれ、彼には用がある。」

 

 

「勿論おいら達もアシストはするヨ。」

 

 

「了解。」

 

 

・・・

 

 

「それデ?ツー坊はおれっちに何の用ダ?」

 

 

 あの後、会合は解散となり、アルゴと俺以外全員この場を去っていった

 

 

「わざわざアスナを外させた理由と、キリトの元相棒についてだ。」

 

 

「バレてたカ・・・」

 

 

「お前らしく無かったからな。」

 

 

「ツー坊には知っておいて欲しいんダ、キー坊が何故頑なに攻略組参加を拒んでいるのかヲ。」

 

 

「いいのか?そんなん話して。」

 

 

 あのアルゴにいくら積んでも話す気は無いとまで言わしめた情報、それをあっさりとアルゴの口から飛び出るのは思ってもみなかったが、嬉しい誤算なのかもしれない

 

 

「キー坊には堅く口止めされてるからナ、ツー坊だけに言うヨ。聞くカ?」

 

 

「そりゃあ、気になるし・・」

 

 

「だけど条件があル、それを呑まないなラ、ツー坊が聞きたがってるもうひとつの情報も話さないヨ。」

 

 

「・・・」

 

 

 俺は黙って首肯した、何故か声を出してはいけない感じがしたのだ

 

 

「1つ他言一切無用、2つ必要最低限の時以外キー坊に関わらないでやってくれ。もし一度たりと破ったら・・・私は情報屋を辞める。」

 

 

 普段のアルゴの表情から一変して急に真剣な顔つきに変わり、口調も素になっていく

 あのアルゴが自分の職を賭けてまで俺に伝える秘密の情報、一体どんな情報だというのか

 

 

「分かった、約束しよう。」

 

 

「全てが始まったあの日、私は一人の女性プレーヤーと出会ったの。」

 

 

 アルゴは淡々と回想を語り始める

 

 

「彼女は全てが始まる前、あの茅場に出会ったそうなの。」

 

 

「あの茅場が!?またどうして・・・」

 

 

「彼は彼女にはた迷惑な贈り物を残していった。」

 

 

「と、言いますと?」

 

 

「スキルよ、それもゲームバランス崩壊も良いとこのチートスキル。」

 

 

「か、獲得条件は?」

 

 

「多分存在しないわ、彼女曰くバグの産物らしいの。」

 

 

「そうか・・・チートスキル持ちなら攻略組に一人くらい欲しいと思ったんだがな。」

 

 

「残念だけどもしこれが普通にクエストによる獲得スキルだとしても誰も取らないわよ。むしろ攻略組なんて入らないわ。」

 

 

「へ?」

 

 

「確かにこのスキルはチートスキル。だけどね、致命的なデメリットが存在するの。」

 

 

「・・・それは?」

 

 

「武器が持てないのよ、しかも戦闘系スキルの獲得も不可能、だから戦闘は出来ないの。」

 

 

「おいおい・・致命的どころの騒ぎじゃねぇぞ、今までどうやって生きてきたんだ?まさか死んでしまったとか言わないよな?」

 

 

「生きてるわ、“あの人”のおかげでね。話を戻すけど、茅場によるデスゲーム宣言をした後、私は彼女を連れて“彼”がいるであろう道を進んでいったの。」

 

 

「まさかその彼って・・・」

 

 

「そうよ、キー坊の事。彼の人一倍お人好しなのは知ってたからね。」

 

 

「キリトだけなのか?パーティーとか他に手段があっただろ?」

 

 

「そうね・・・ツー坊は無垢だから仕方ないわ。確かにパーティーの方が効率や生存確率は高まるかも知れない、けどダメなのよ。」

 

 

「・・・」

 

 

 彼女の真剣な眼差しに“何が?”と聞くことはならなかった

 

 

「コンビを組ませたのは彼女のスキルにも大いに関係があるの、そのスキルはコンビ時に最大の効力が発揮されるのよ。」

 

 

「まさかキリトが攻略組に入らない理由って・・・」

 

 

「そう、キー坊は戦闘も出来ない荷物同然の彼女を連れて生きていく事を決めたの。彼は悩んだと思う、スキルの加護があるとはいえ一人を守りながらモンスターと対峙しなきゃいけないからね。」

 

 

「ちょ、ちょ待てよ。まさか一緒にフィールドに出てるのか!?」

 

 

「ええ、最初はキー坊も彼女にそれを提案したわ、けど彼女がそれを拒否した。そしてそれを彼も受け入れた。だから今に至るの。」

 

 

「・・・」

 

 

 俺は声もでなかった、一人のプレーヤーに押し付けられた重荷、そして彼女の命を背負うことを決めた一人の剣士

 自分の想像していたことの遥か上をいく真相に何も言うことは出来なかった

 

 

「さて・・・二つ目の質問、キー坊の元相棒についてよね。」

 

 

「ああ。キリトとの関係とか知っている限りで教えてくれると助かる。」

 

 

 本音を言えば、あまり人のリアルを詮索することは気が引ける

 けど聞かない限りは俺の心のモヤモヤが消えないのだ

 

 

「・・私も彼らの全ては知らない。確かにキー坊にはリアルでも知り合い。けど、それも最近だから彼らの出会いとかは全く分からない。それでもいい?」

 

 

「ああ。」

 

 

「彼らは小学生からの知り合いらしいの、けど何かの拍子で彼らは仲良くなり、ゲームという共通趣味をもって彼らは私と知り合った。それぐらいかな。」

 

 

「・・・そっか、サンキュ。」

 

 

「悪いナ、あまり力になれなくテ。」

 

 

「いいよ、それだけ知れただけでも収穫さ。」

 

 

 あの二人の仲の良さはゲーム内だけの上部だけの関係じゃない、仮想空間とはまた別のもっと広い世界、現実世界からの知り合いとでもいわんばかりの絆があった

 目がもう1つあるかと言わんばかりのずば抜けた空間把握能力と、未来を見てるのかレベルの判断力、常に最善の手を見いだす頭脳、そして極めつけが素の戦闘能力までトッププレーヤー、絵に描いたようなゲーマーだった

 

 

「・・・・やはり知り合いだったのか。」

 

 

 頭の中の霧が少しだけ晴れた気がした、けどそれでも何か肝心な所は思いだせなかった

 

 

・・・

 

 

NO side

 

 

 例え己が全てを失ってでも君を救えるのなら、我が魂をも君に捧げん

 

 

「・・・」

 

 

 35層、未踏の地である森林のフィールドの湖の畔に一人の女性は現れる

 彼女は他のプレーヤーとは異なり、背中には天使とは違う言うなれば竜の翼と言うべきの二枚の翼を付けていた

 その後、彼女の隣に一人の白衣の男性も現れる

 

 

「私にチャンスをくださり、大変感謝いたします。」

 

 

「本当にいいのかね?確かにここに居れば彼に出会えるかもしれない。だが、君は死ぬかも知れないんだぞ?」

 

 

「百も承知です、彼の力になれるのならこの命、投げ出す覚悟です。」

 

 

「そうか、君の健闘を祈っているよ。」

 

 

 そして、彼はすぅっと消えていった

 

 

「・・・頑張ってここまでたどり着いてね、___。」

 

 

 後に彼女はプレーヤーに影響を与えるのだが、それはまた後の話


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