ミィナside
1回目の攻略会議も終了した日の夜、私達は昼頃の会議のメンバーが宴をしているらしい《ホルンカ》の街を隠蔽スキルで身を隠しながらブラブラ歩いていた
「キリト、ちょっと待ってて!」
「あんま遠く行くなよ、探すの大変だから。」
「大丈夫、すぐそこだから!」
キリトから離れて路地を右に曲がれば奥には黒パンを黙々とがぶりつくフードを被ったプレーヤー、その人を私は知っている
「アースーナっ!」
彼女に近づいていき正面から声をかけた ―隠蔽スキルを解除してないことを忘れ―
「ふぇ?・・・・きゃあああ!!??」
「え?ああ!!ごめん!私!アスナ!ミィナだよ!」
腑抜けた声を出した直後の悲鳴により自分がスキルを解除してないことに気付き慌てて解除した後、フードを脱ぎ、細剣を突きつける彼女に弁明する
「まったく、暗闇の中から突然声かけないでよ!びっくりするじゃない!」
「ごめんごめん、あまりにもさっきまでのアスナが面白くってさー。」
さっきまでのアスナとは勿論黒パンにがぶりつく彼女のこと
「仕方ないでしょ、あのパン味はしないし、かといってお腹は減るし・・」
「ハハ、確かに。けどさ、料理なんて一手間加えれば上手さは跳ね上がる物、この世界だって 同じ。これ使ってみて。」
彼女の隣に腰掛け、彼女に1つの小瓶を渡す
彼女はそれを受け取り、さっきまで食べてた黒パンに使い、一口付ける
「美味しい・・・」
よっぽどお気に召したのか、手中にあった黒パンはものの数秒で焼失する
「御馳走様。クリーム、美味しかったわ。」
「お粗末様です。」
「このクリーム何処で手に要れたの?」
「1つ前の村で受けられる《逆襲の雌牛》っていうクエストの報酬だよ。受けてみる?生憎共闘は無理だけどコツ位なら教えられるし。それが嫌なら幾つかおすそ分けするよ?」
「いい、私は美味しいものを食べるためにこの街まで来た訳じゃないから。」
「・・・・」
返す言葉も無かった
「私は、私でいるために戦い続けてきた。そんな私を変えたのはあのキリトってプレーヤーと貴方だったわ。」
彼女と私たちの出会いはアルゴからの依頼で噂のクエストを受ける途中、オーバーキルを繰り返す彼女を助けたことから始まった
最初こそ注意喚起で済ませたものの、その後彼女が疲労で倒れ、放っとく訳にもいかず、彼女が起きるのを待ち、最終的に私は仲良くなり、キリトとはまあまあな関係を持っていた
「あの時、貴方達に会ってなかったらあのままのたれ死ぬ所だったわ・・・」
「それは言えてる。」
「ただ、これだけ聞かせて。」
彼女の顔が突然真剣な顔つきになる
「貴方達はいったい何がしたいの!?人に会議に出ることを薦めておいて自分達は出ないし!聞けば貴方の相方はテスターの中でもトップクラスらしいじゃない!」
「私達は貴方に選択肢を与えただけ、貴方に敷かれたレールの上を走って欲しくないだけ、彼みたいな分岐点の無い一本道にしないため。攻略会議に参加しなかったのも彼の道にそれがなかっただけ。」
「どういうことよ!今彼に攻略会議以上に意味のあることなの!?」
「彼が目指すべき終着点に意味があるのかは誰も知らないよ。けど彼は常に誰かのためだけに動いてる。」
「けど、それに貴方が従う義理は!」
「あるよ!十分すぎるくらいあるよ。私は彼に助けられている。彼がいなかったら私は
「強いのね。」
「ううん、私は弱いよ。けど彼が側にいてくれるから私はこの世界で生きていける。彼を守れるなら私は身代わりにでも何でもなってやる。」
「ふふ、面白いこと言うのね。分かったわ、貴方の思う通りに生きなさい、もし帰れることができたならご飯てわもおごるわ。」
「それは嬉しいです!それじゃあ御武運を祈ってます!」
彼女に背を向けながらフードを被り、隠蔽スキルを再び発動し路地裏から抜け出した
アスナside
「敷かれたレールの上・・・ね。」
高校受験は通過点、良い大学に入って一流企業に入社するのが当たり前だと母親に言いつけられ育った私にミィナの言葉は新鮮だった
「どうした?そんな所で。」
余韻に浸っていると頭上から声がしたので顔を上げるとそこにはツバル君の姿が
「ううん、何でもない。行きましょ、教えてくださるのよね?」
「このままだと危険だからな」
RPGの専門用語について聞くのは建前、本音はツバル君の部屋にあるお風呂なんだけどね
キリトside
「何だよアルゴ、こんな時間に呼び出して。」
攻略組の宴も終わりを告げ、各々が帰路に着き、俺たちも帰路に着こうとした時、アルゴから召集のメッセージが届く
「仕方ないだロ、ツー坊がキー坊を呼んだんだかラ。」
「おい、ツバルには俺に関する情報を渡すなって多額の口止め料と共に言ったよなぁ!?」
俺達がやろうとしていることに関して誰からも詮索されたくないし、邪魔もされたくないためアルゴには所持金の殆どを口止め料として払った筈なのだが
「いやァ、そのォ、何と言えば良いカ・・」
「口止め料5万コル、しっかり耳を揃えて払って貰うぜ。」
アルゴの額に冷や汗が流れる
「すみませんでしタァァァァ!」
・・・・
「・・・ったく余計なことしやがって。」
「売っちまったものハ仕方ないサ、きっぱり忘れてツー坊に会おうヨ!」
「お前が言うな!」
ハラスメントコードが発生しないレベルのギリギリの力でアルゴをどつく
「お前がツバルと何を約束したかは知らないけど、俺達は必要最低限会わねえよ、言ったよな俺達の行動を邪魔されたくないって。」
「そいつは無理だナ、もう話は着いてしまっタ。」
「・・・二層の“トレンブル・ショートケーキ”2つで手を打ってやる。」
5万コルを釈迦にされたんだ、これくらいは安いもの
「ぐぬヌ、背に腹は変えられないからナ。」
「忘れるなよ、約束。それとミィナ、隠蔽スキル発動しとけよ。」
ツバルside
「ふわああああ。」
アスナを自分が泊まっている宿に呼び、目的を果たした後、アスナが風呂に入りたいと頼まれ、彼女に風呂を貸した後、何か聞いちゃいけない声を耳にした
「確かある程度の音は防いだはずだよな?」
まあ声が出てしまうのは分からんでもないけどな、俺もその1人だし・・・
不規則なノック音が聞こえる、こんなノックをするのはあいつしかいない
「開いてるぞ。」
「失礼するヨ。」
予想通り、扉の前にはアルゴとキリトが立っていた
「お前に話すことは何もない、要点だけ答えて俺は帰るからな。」
「答えてくれるならそれでいいさ。」
「で、何の用だよ。」
「まあなんだ、とりあえず座れよ。」
部屋に備え付けられた椅子に二人を座らせる
「出来れば簡潔にまとめてほしい。こちとて長話に付き合えるほど暇じゃないんでな。」
「キリトに聞きたいことは2つあるんだが、まずお前は何がしたいんだ?トップを張る実力と経験を持ち合わせておいて何故攻略会議に来ない。」
「先手を打ちたかっただけさ。」
「どういうことよ!」
「ニャハハ、それがわからないんじゃまだまだ半人前だナ。」
キリトに曖昧な答えを返され、更にはアルゴには笑われ、ムカッとする
「お前は
「未来?そりゃ犠牲者を出しながらも順調に進んでくんじゃねえのか?」
「流石にまだ理解するのには早すぎたナ。」
「で?二つ目は何だよ。」
「アウラって女性プレーヤー知ってるか?」
「俺っちは知ってるゾ、何しろ1ヶ月間全プレーヤーの中で一番彼女と会ったからナ。」
「さあな、俺は知らないな。」
「その彼女がお前に会いたがってたんだ、空いた時間にでもアルゴを通して会ってみてくれないかな?」
「別に断る理由もないし良いかな。頼めるか、アルゴ?」
「お姉ーサンに任せなさイ!」
「聞きたいことはそれだけ、それじゃ互いに生きてたらまた会おうや。」
「ああ、誰も死なずにボスが倒されるのを祈っといてやるよ、またな。」
キリトは席を立ち、俺に背を向けて部屋から出ていった
「あれ、アルゴは帰らないの?」
「ツー坊、キー坊の事よろしく頼むね、 あいつ本当に無理するから、1人で突っ走って誰にも頼らずに勝手に抱え込んで自爆する人、馬鹿でコミュ障だけど、どうしようもないお人好しなあいつだからあいつの周りに人は絶えないの、そんな彼でもいいからしっかり向き合ってあげてね。」
突然口調が変わったアルゴに驚きを隠せない
「アルゴ、お前まさか・・・・」
「湿気た話は終わりだヨ!そうだ、ツー坊、お風呂貸してくれヨ。」
「ああ構わねえさ。そこの奥の扉だよ。」
アルゴが風呂場に向かっていく
「(あれ?何か忘れてるような・・・)」
「キャアアアア!!」
「(あ、アスナの事完全に忘れてた)」
キリトside
「お疲れさま、キリト。」
「悪いな、こんな寒い中待たせちまって。」
ツバルとの会談も終わり、扉を開けるとそこには相棒がいる
「全然、キリトから貰ったコートがあるし!」
今はまだ秋といえど時刻は12時を回っている、いくら冬じゃないとはいえ暖房も何も無い所で立ってたら寒いに決まってる
「(嘘つけ、手震えてんじゃねえか)」
仕方なく無言で相棒の右手を掴み自分の左手と絡み合わせる
いつだったか友達に教わった効率の良い相手の温め方だけど・・・
初挑戦だから効き目があるかわからん
これ手しか温まらねえよな?大丈夫だよな?温まってるよな?流石に自分のせいで相棒に風邪をひかれても後味悪いしな、ゲームの中だけど・・・
「ちょちょちょ!な、何するんですか!?」
「え、あっごめん!寒そうだったから・・嫌だった?」
「べ、別に嫌とかそういう訳じゃ・・・無い・・・けど・・・ありがと」
顔を真っ赤にして俯く彼女
俯いた理由は分からないけど、嫌そうじゃなくて良かった
「ほら、さっさと帰って寝るぞ!」
「あ、ちょっと待ってよ!」
彼女の手を握ったまま俺達は宿に向けて走り出した
ツバルside
端から見てもとてつもない威圧感を放つ鉄の巨大な塊の前に俺達プレーヤーは集まっている
「皆、今日は集まってくれてありがとう!1人も抜けずに参加してくれたことは」
そんな集団の先頭にいる青髪の青年ディアベルが言い放つ
「俺から言うことは1つ!勝とうぜ!」
「うおおおぉぉ!!」
各々の武器を振り上げ、開け放たれし地獄の門へと走り出すプレーヤー
その先に待つのは
さあ踏み出そう、例えどんな小さな一歩でも、いつか意味のある大きな一歩に繋がると信じ
「お前ら!死んでくれるなよ!」
「「そっちこそ!」」