無剣の守護戦姫   作:未蕾

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EP.4 姿無き殲滅者

ツバルside

 

 

「攻撃開始ー!」

 

 

ディアベルの掛け声によってボス攻略は幕を開いた

 

 

バカでかい明るい色で彩られた部屋の両隅から順々に灯が点っていき、奥で佇む塊を照らす

 

 

「ぐおおおおお!!」

 

 

右手にタルワール、左手に野太刀を手にし、空を仰ぎ咆哮を轟かせ、それが合図とばかりに俺達攻略組は陣形を整え、ボス戦は始まりを告げた

 

 

「取り巻きの数は三体!打ち合わせ通りに頼むぞ!」

 

 

俺達は人数の関係上取り巻きの相手をしているが戦況によってボスを叩く

 

 

「スイッチ!」

 

 

「はぁぁぁぁ!」

 

 

後ろで構えていたアスナとスイッチで後退し、ふと自分のパーティーメンバーを見渡してみる

 

 

ローブを被った女性プレーヤーであろうアウラとアスナ、二人は互いに細剣使い(フェンサー)だが、スピード重視のアスナに比べ一発を確実に急所に決める技術重視のアウラ、同じ細剣使い(フェンサー)といえど戦い方はまるで違うのだ

 

 

「てやあああっ!」

 

 

攻略会議で一悶着あったシズルも含めた四人が俺達のパーティー

 

 

「A隊は下がって回復を!B隊は交代して防御を頼む!」

 

 

ある程度取り巻きを殲滅した後、ふとボスと戦ってる本隊を削っているディアベルの方を向けばA隊と入れ替わりにタンク部隊であるB隊がボスを囲み、盾を構える

 

 

「順調そうだな。」

 

 

誰に問うでもなく一人呟く

 

 

「そうね、恐ろしい位に。」

 

 

後方で戦っていたアウラが自分の右となりに立ち、俺の独り言に返してくる

 

 

「何か恐ろしい事が起きそうな言い回しだな。」

 

 

「嫌な予感がするのよ、それにいくら情報があってもあくまであれはテスト時のもの、正規版に、変更点(イレギュラー)は常識でしてよ?」

 

 

「何が恐ろしい事が起こるとでも言うのか?」

 

 

「生憎内容までは分かりませんが、気を引き締めて行かないと、足元掬われますよ。」

 

 

「そうだな。」

 

 

「G隊はF隊と共に残りゲージを1本削ってくれ!」

 

 

「今気にしても仕方ないさ、今はとにかくあいつを倒すことに集中しよう!」

 

 

「ええそうね。」

 

 

キリトside

 

 

「キーリートー!ボス戦見学に行こうよ!」

 

 

今日の探索も終えて宿で疲れを取っていると突然ミィナが顔を出してきてこんなことを言い出してきた

 

 

「エットミィナサン、モウイチドオネガイシマス。」

 

 

「だーかーらー、()()()()()()()()()()()って言ったのだ!」

 

 

人の変化とは実に末恐ろしいものだと俺は思った、つい一ヶ月前などモンスターと顔を会わせることすら困難だった相棒がこんなことを言い出してきたことなど誰が予想していようか

 

 

「でもまたどういう風の吹き回しだよ。」

 

 

「嫌な予感がする、ただそれだけ。」

 

 

「仕方ないな。ただひとつ、眼鏡とフードを着ていけ、俺達の隠蔽スキルはおそらく一番だとは思うが万が一ということもある。それに余りお前の顔を知られたくないしな

 

 

自分で言って何だが、恥ずかしくなってしまい、尻窄みになってしまう

 

 

「本当に!?ありがとうキリト!」

 

 

「・・・ほっ」

 

 

最後の部分を聞かれなかった事の安堵と少しの不満が入り交じった溜め息を吐く

 

 

 

「(最後の言葉の意味、何だろう?)」

 

 

ツバルside

 

 

「気ぃ付けろ!ボスが武器を持ち換えてくるぞ!」

 

 

ボス戦も終盤に近づき、ゲージも残り1本に差し掛かる

 

 

βテストと同じなら、ここでタルワールと持ち換えるが・・・

 

 

「ここは俺が出る!」

 

 

突然ディアベルが飛び出し、ボスへと向かっていく

 

 

「(おいおい、何やってるんだあいつは!)」

 

 

ボスは武器を放り投げ、腰に据えてある野太刀を取り出した()()()()()

 

 

「やめなさいディアベル!ボスが持ってるのはタルワールじゃなくて野太刀よ!」

 

 

隣のアウラの怒号に気づかされ、ボスを見ればボスが持ってるのはタルワールじゃなくて野太刀

 

 

「戻れディアベル!全力で後ろに飛べええ!」

 

 

俺も遅れて叫ぶがもう遅い、ディアベルの剣は青い光を纏ってしまっていて、モーションに入ってしまった、全員が虚を突かれ間に合わない

 

 

ボスは待ってましたと言わんばかりにソードスキルを放つ体勢を取る

 

 

誰もがディアベルの死を覚悟したその刹那

 

 

「届けーー!!!」

 

 

突然後ろの入り口から叫び声が聞こえ、一筋の閃光が射し、()()()()()()()()()()()()()()

 

 

ソードスキルを強制キャンセルされたディアベルはディレイを喰らい、その場に立ち止まる

 

 

ボスによる“施車”による凶刃が彼に迫るが間一髪、ディアベルの眼前を掠めるだけだった

 

 

「何やってるの!早くディアベルさんを回収しなさい!」

 

 

俺達より少し後ろに居たアスナが怯んで立ち竦むレイドメンバーに呼び掛ける

 

 

ボスは既に次のモーションに移っている、1発目は不発に終わりこそしたもの、 “施車は”連係技、直ぐにでも二発目は放たれる

 

 

「はぁぁぁぁ!」

 

 

もう一度後方で声がしたと思えば、一人のローブを被ったプレーヤーがアスナに劣らぬ程の素早さでディアベルの下へ駆け寄り、ディレイで動けぬ彼をキバオウ達のいる方へ投げ飛ばす

 

 

「自分!ディアベルはんに何て事すんねん!」

 

 

「そいつが死ぬよりよっぽどマシでしょ、動けなかった引け腰共が!」

 

 

ディアベルは助かったが、ボスの攻撃は緩まない、次なる標的をフードのプレーヤーに変えてもう一度“施車”のモーションに入る

 

 

「武器もなしに単身乗り込むんじゃねえよ。」

 

 

横からの薙ぎ払いで迫ってくる凶刃を避けようともしないプレーヤー

 

 

そしてそいつに当たる寸前、三度声が聞こえ、2回目の閃光が迸る

 

 

ガキィィィィンッ

 

 

金属同士がぶつかり合う音がしたと思えば最初に飛び出したプレーヤーに向けられた凶刃を受け流すもう一人のプレーヤー

 

 

「そういえば最初に飛び出したプレーヤー、少し変じゃない?」

 

 

「ん?そう言われて見れば確かに・・・」

 

 

はっきりとはしないが確かに違和感が存在する

 

 

「あの子、武器を所持してないわね。」

 

 

「「あ!」」

 

 

よく見てみると両の手のどちらにも圏外に出る際必要不可欠な物、武器が存在しないのだ

 

 

「まさかあの子丸腰でディアベルを助けようと?」

 

 

「どんな鉄の心臓の持ち主だよ・・・」

 

 

武器無しということはここに向かうまでに折れてしまったのか

 

 

それでもボスに丸腰で挑む理由にはならんし、ストックくらい持ち合わせてるだろう

 

 

後考えうるのはディアベルを救ったあの閃光、恐らくあれはダガーによるものだろう

 

 

それをやったのが彼女だという説もあるが1つ目と同じ理由だし、そもそもダガーを主武器にする物好きなど聞いたことない

 

 

「ぐずぐずするな!戦いはまだ終わってねえぞ!各自回復に徹して準備が終わった奴は陣形を整えラストゲージを削りにかかれ!」

 

 

2回目に飛び出したプレーヤーが1回目のプレーヤーを抱え、入り口へと戻るついでに突然の事態で困惑し、陣形もくそもない他のプレーヤーに指示する

 

 

最初は皆固まっていたが、各々ポーションを取り出すなり陣形を整えるなりしていた

 

 

投げ飛ばされたディアベルは投げ飛ばされた衝撃と死に対する恐怖心により気絶していたが死んではいなかった

 

 

キリトside

 

 

「ここがボス部屋?」

 

 

渋々ミィナの要望を呑み、ボス戦見学の為に迷宮区を進み、30分弱掛けてようやくボス部屋前に辿り着いた

 

 

「おや、貴方達も来ていらしたのですね。」

 

 

「アリス・・・・」

 

 

金髪に碧眼、どこかのファンタジーの妖精にでもでてきそうな風貌であり、やけに畏まった言い回しであり、魔王でさえも対峙すれば怯ませそうな威圧感を持ちながらどこか母性を感じられる

 

 

それが彼女に対する俺の第一印象だった

 

 

「攻略会議以来ですね。」

 

 

「ああ、今回は隠蔽してないのな。」

 

 

「私だって好きで隠れていたわけではありません。彼らに見つかると後々面倒くさくなる、そう思っただけです。」

 

 

「まあいいさ、ところでおたくはどのようなご用件でこちらに?観光とか?」

 

 

「貴方はバカなのですか?こんな奥地まで観光する輩が何処にいると?」

 

 

「こことここに。」

 

 

アリスに聞かれ、俺とミィナの順に指をさす

 

 

「アルゴさんから聞いた時から薄々は思っていましたが、貴方達相当変わってますよ?」

 

 

「違うもん!キリト君はただのぼっちだもん!」

 

 

おい、それフォローになってない

 

 

「そうでしたか、それは失礼しました。」

 

 

あんたも乗っかるな!

 

 

「急に謝らないで!?逆に惨めになるから!」

 

 

「まあキリトがぼっちであろうとそんなことはどうでも良いのです。我々はボス戦を見に来たのですから。」

 

 

「なんだ、アリ姐も一緒かー。」

 

 

「あ、アリ姐?」

 

 

突然アリスの動きがフリーズした

 

 

「おーい。」

 

 

彼女の目の前で片腕をブンブン振ってみるも反応ナシ

 

 

「仕方ない、この剣で斜めから叩けば・・」

 

 

「殺す気ですか!?貴方今私を壊れたテレビと同等の扱いをしようとしましたよね!貴方には敬いの気持ちがないのですか!?」

 

 

「いや、すまん。あまりにも長くフリーズしてたもんでつい・・・」

 

 

「やはり貴方はバカな様です。しかし貴方のおかげで戻ってこれたのも事実。感謝します。」

 

 

「戻ってきた?どこから。」

 

 

「いえ、私には妹が二人居るのですが、昔生き別れてしまい、久しぶりに姉の様に呼ばれ、あまりの嬉しさに川が見えるという幻覚を見てしまい・・・」

 

 

「それアカンやつだから!?」

 

 

「ともかく無事で良かったよ、丁度ボス戦もクライマックスの様だし。」

 

 

すっかり忘れてたけど俺達はこれを見に来ていたのだ

 

 

「この調子なら問題無さそうだな。」

 

 

「だと良いんだけど・・・」

 

 

「ところでキリト。」

 

 

「どした?」

 

 

「確かボスはタルワールと武器を持ち換えるのですよね?」

 

 

「そうだけど、それがどうしたんだ?」

 

 

「私もβテスターでしたのだが、確かタルワールとは少し違う気がするのです。」

 

 

「なんだと!?」

 

 

ボスの腰に据えてある武器に目をやる

 

 

「あれは・・・・野太刀!?」

 

 

テストの時、5層辺りでモンスターが使っているのを見た覚えがある

 

 

「本当なのキリト?」

 

 

「ああ、テスト時代で飽きるほど見てきたからな。」

 

 

「問題は攻略組がきちんと対策できるか、ですね。」

 

 

「ツバルやディアベル達がいるから大丈夫だとは思うけど。」

 

 

「過信はいけませんよ、彼らとて人間。過ちを犯さないとは言い切れませんから。」

 

 

「後は俺に任せろ!」

 

 

「何をやってるんですか、ディアベルは!」

 

 

「キリト!ここって突っ込むところじゃないよね!」

 

 

「ああ、もしそうだとしても司令塔が突っ込むバカはあいつだけだと思ってたんだがな!」

 

 

「あの方は最善策として突っ込むのです、しかし彼のそれはただの無謀な自滅策です。」

 

 

「でも仮にもβテスターだし・・・」

 

 

「この前お前に教えたはすだぞ!デスゲームで一番の命取りは慢心だと!確かに彼は元βテスターだが、彼はあくまでテストと同じように動いてる、今まで通りなら簡単だろうが、ボスは前回とは違う。それがどんな結果を産み出すかは言わずもがな、わかるだろ。」

 

 

ミィナの顔がみるみるうちに青ざめていく

 

 

「助けなきゃ!」

 

 

勢いよく飛び出そうとする相棒の腕を掴む

 

 

「離して!彼を助けないと!」

 

 

「気持ちは分かる!けど丸腰のお前が行った所でミイラ取りがミイラになるだけ!お前を死なせるわけにはいかねーんだよ!」

 

 

「じゃあどうすればいいのよ!」

 

 

「1つだけ手がある、だが説明してる時間はない、とりあえずここからディアペルとの距離を教えてくれ。」

 

 

「距離一時の方向に80Y、10km/h。」

 

 

「了解!」

 

 

腰に付けてあるダガーを1本取り出し、一か八かディアベルの片手剣目掛けてダガーを投げる

 

 

「届けーー!!」

 

 

相棒の願いをのせてソードスキルの軌道に従い、青い光の残像は綺麗な直線を描きながらディアペルの片手剣に吸い込まれ直撃する

 

 

外部からの衝撃によりスキルが強制的にキャンセルされたディアベルはペナルティのディレイを喰らい停止する

 

 

基本的にまずダガーごときでスキルキャンセルはほぼ不可能だがレベル差による “STRの差”にものを言わせて何とか成功することが出来た

 

 

スキルのレンジの外に入る手前のディアベルに野太刀は当たらず、掠める

 

 

「これで誰かが彼を回収してくれれば!」

 

 

しかし数十秒経っても一向に誰も動く気配はない、全員腰が引け、動くに動けないのだ

 

 

「ちっ、あの腰抜けどもが!」

 

 

あ、ミィナさんお怒りモード入っちゃった

 

 

「てやあああっ!」

 

 

誰も動かないのとに痺れを切らし、極振りの“AGR”にものをいわせ、ディベルとの距離を一瞬で詰め、動けない彼を放り投げる

 

 

「キリト、今のは・・・」

 

 

「あいつ、人の死に人一倍敏感だから、 ああいうの見ると自分を押さえきれなくなるんだ。」

 

 

「貴方も苦労しているのですね。」

 

 

「まったく、何より自分が武器無しという事実を忘れてるから太刀悪いんだよなあ・・・」

 

 

自分の剣を構え、出撃の準備を整える

 

 

「そいつが死ぬよりよっぽどマシだろ!引け腰共が!」

 

 

「せめて言葉遣い悪くなければなぁ・・」

 

 

とか呟きながら相棒を今にも彼女を襲おうとする刃を止めるために突っ走る

 

 

ガキィィィィンッ

 

 

速攻で相棒と刃の間に割り込みバリィで弾く

 

 

「ったく、丸腰でボスに突っ込んでくんじゃねえよ。」

 

 

呆れ顔で相棒を見ると舌先を出してやっちったって顔をしている

 

 

正直に言って可愛い

 

 

って、そんなこと考えてる場合じゃない!

 

 

「ぐずぐずするな!戦いはまだ終わってねえぞ!各自回復に徹して準備が終わった奴は陣形を整えラストゲージを削りにかかれ!」

 

 

周りでおどおどしてるプレーヤーに活を入れ、もう一度陣形を建て直そうと試みさせる

 

 

「ごめんキリト、また勝手なことしちゃって。」

 

 

「構わねえよ、お前のおかげで死者は確実に減ってんだぜ。それに言っただろ、俺はお前を絶対守るって。」

 

 

「ふふ、そうだったね。」

 

 

「っ!?」

 

 

彼女の笑顔が一瞬元相棒のそれと繋がり、嗚咽を漏らしてしまう

 

 

「後は大丈夫だ、攻略組に任せよう、手負いの敵を倒せないほどやわじゃ無いだろうしな。」

 

 

「うん。」

 

 

「ぐぅおおおお!!!」

 

 

「ボスの足元に何か浮かび上がったぞ!」

 

 

今までで一番どでかい咆哮か部屋を轟かした後、誰かの声に驚き振り返ると

 

 

ボスの足元に魔方陣が敷かれていた

 

 

次第にそれは緑のエフェクトを纏い始め、ボスを包み込む

 

 

「まさか、あれは!」

 

 

RPGで緑のエフェクトといえばあれしかない

 

 

回復能力(ヒーリングスキル)だと!?」

 

 

レッドゾーンに突入していた筈の敵のHPはみるみるうちに回復していき、遂に完全に回復してしまう

 

 

「ふりだし、かよ・・・」




遂にキリトくんのヒロイン出揃いました!
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