無剣の守護戦姫   作:未蕾

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EP.5 無力さ故のはがゆさ

ミィナside

 

 

「いいな!ここを動くなよ!」

 

 

「うん。」

 

 

キリトに抱えられながら入り口へと運び込まれ、そこで待つよう指示される。

 

 

「行きましょうキリト、彼らの壊滅は時間の問題です。」

 

 

「ああ、分かってる。ひとまずディアベルが起きるまでの時間稼ぎだ。」

 

 

キリトがアリ姐と共にボスへと駆けていく

 

 

「・・・・」

 

 

もう見慣れてしまった光景

 

 

迷宮区に潜り、常に隠蔽スキルとフードによって身を隠しながら、モンスターを倒しに向かう彼をただ見送るだけ

 

 

自分の無力さなどとうに理解している、

どんなに守りたくてもどんなに死なせたくなくても自分にはそのための力は存在しない

 

 

人の命に替わる命はあれど、誰かの身を守る為の力はない

 

 

その事実が虚しかったし苦しかった、どんなに死なせたくなくても自分ではどうにもできない無力さが憎くてたまらない

 

 

武器装備不可能というイレギュラーを自分の都合で引き起こされてたら、この世界がデスゲームじゃなきゃこんな思いなどしなくて済んだのかもしれない

 

 

それは誰も知らないし知る由もない

 

 

何より辛いのは、自分の身勝手でキリトを危険な目に遇わせてしまうこと、それが何よりも辛かった

 

 

見ず知らずの瀕死のプレーヤーを片っ端から単身乗り込んでいく私を口では文句言いつつもちゃんと全員守ってくれる

 

 

そんな彼に何も返してやれないのが歯がゆくて堪らなかった

 

 

取れるスキルは制限された上にスキルスロットは縮小され、レベル50の現在でさえスロットは4つしか存在していない

 

 

内1つは謎のスキルによって埋まっており、自分には必要不可欠な隠蔽と策敵で固定され、恩を返そうにも中々難しいのが今の現状だった

 

 

武器を持てない私は“STR”を完全に捨てて、“AGR”に極振りし、戦闘回避率を上げることに専念している

 

 

「惨めだな……」

 

 

私は独りそう呟いた

 

 

目の前で自らの命を擲ってまでゲームクリアまでの道のりを進もうとする勇者達

 

 

キリトにしてみれば皆が皆義務感からやってるとかそういうものじゃないって言うけど、結局一番死に近い場所で闘ってる彼らはいつも守られている私からしたら皆勇者だ

 

 

「アリ姐……」

 

 

昨日の夕方に開かれた攻略会議が終わった後、私達に声を掛けてきた人

 

 

何故アリスさんのことをアリ姐と呼ぶ理由は単純にお姉さんという感じが当てはまるからだけじゃない

 

 

雰囲気がどこかお姉ちゃんに似ているのだ

 

 

私の家はかなり裕福な家庭であり、父は有名企業の社長を勤めており、母もまた自営業を営んでいた

 

 

1つ上のお姉ちゃんは私が小2の頃、家を飛び出していった

 

 

厳格な父と窮屈すぎる毎日に嫌気が差したのだと今は思ってる、父も母もお姉ちゃんを探すことはせず、まるで最初から居なかったかの様に過ごして来た

 

 

『貴方のお姉ちゃんはね、もう死んじゃったの、だからもう帰ってこれないの。』

 

 

まだお姉ちゃんが家を出たという事実を知らなかった私に母がこう言ったのを今でも覚えてる

 

 

まだ無垢だった私はその言葉を信じ、過ごしていた

 

 

そんな私がお姉ちゃんと再会したのは小5の夏休み、学校のプールに友達と行こうとしていた時だった

 

記憶の片隅にあるお姉ちゃんの性格と大きくかけ離れていたものの、他は紛うことなきお姉ちゃんそのものだった

 

 

厳格な父の元で育てられてきた故に完璧主義者であり感情などまず外へ出すこともなかった彼女は完全に姿を消し、年相応の感情豊かな少女になっていた

 

 

その後も幾度か連絡を取り合いこそしたけど、直接会うことは少なかった

 

 

それでも声を聞き、生きてると分かっただけで十分だった

 

 

お姉ちゃんは中学に上がると東京から出てしまい、直接会えなくなってしまっても連絡を止めることはなかった

 

 

そしてソードアート・オンラインのCBTにお姉ちゃんとお姉ちゃんの彼氏さんが入選したことを知らせるメールが届いた

 

 

『CBTは無理だったけど正規版は三人一緒に遊ぼうね!』

 

CBTの期間も終わった後、3人でそう誓い合った

 

 

けどその約束が果たされることは来なかった

 

 

一ヶ月後、お姉ちゃんを匿ってくれていた親戚のおじさんからお姉ちゃんの訃報が届いた

 

 

あの日以来お姉ちゃんを毛嫌いしていた両親は葬式に出ることもお墓に行くことすらしなかった

 

 

そんなお姉ちゃんをアリ姐と重ねてしまう

 

 

『私には妹がいるのですが。』

 

 

と彼女は言っていた、そんな些細な合致までお姉ちゃんを連想させる要因となってしまう

 

 

「スイッチ!」

 

 

ふと彼らに目を向ける

 

 

端で各々陣形を建て直そうとしている攻略組の面々

 

 

部屋の中央で連携を取りながら見事な剣技でボスを翻弄し着実にダメージを重ねていくキリトとアリ姐

 

 

即席であるはずなのに長年連れたってきたパートナーのような見事な連携を私は今目の当たりにしている

 

 

「お姉ちゃん達もあんな感じだったのかな・・・」

 

 

聞くにお姉ちゃん達はどのゲームでも上位に位置していたらしい

 

 

「・・・・くっ」

 

 

キリト達を見ていたら視界がボヤけ始め、そこで自分が泣いていることに気付く

 

 

彼らをお姉ちゃん達と重ねたことに泣いたのか、それとも自分が彼らと共に戦えない無力さに泣いたのかは自分でも分からなかった

 

 

「・・・・ひっぐ」

 

 

ガンッガンッ

 

 

もどかしさと苛立ちと悲しさにより頭が一杯になってしまい、それでもそんな自分を嫌い、頭を何度も壁に打ち付けてしまう

 

 

ゲームだから痛みは感じないし破壊不能オブジェクトの壁が壊れることもない、ただただ衝撃による不快感だけが自分に襲いかかってきたけど、今の自分にはそれだけで十分だった

 

 

「自分の体は丁寧に扱うもんだぜ、ミィナ。」

 

 

この一ヶ月間、一番聞いてきた声、一番安心する声だけど今はあまり聞きたくなかった声

 

 

「キ、キリト~・・」

 

 

もう限界だった、どんなに固く決心しても彼の声を聞いた瞬間つい本音を漏らしてしまう

 

 

「うぐっ・・ひぐっ」

 

 

「ど、どうした急に。」

 

 

「女性を泣かすとは良い度胸をしてますね・・・」

 

 

「あ、あの~アリスサン?」

 

 

あ、嫌な予感がする

 

 

「覚悟なさい!」

 

 

「ひえええ!ごめんなさあい!」

 

 

こうしてキリトとアリ姐の鬼ごっこが始まった

 

 

キリトside

 

 

俺達はディアベルが復活し、陣形が元通りになるまでの時間稼ぎとディーラーとして二人だけでボスと戦っていた

 

 

聞けばアリスもレベルは40、二人だけとはいえものの10分程でゲージ二本を飛ばし、攻略組とバトンタッチして戻ってくると

 

 

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しかも止めたら抱きついてきました

 

 

泣き顔も可愛い・・・じゃなくて!早く何とかしないと色々と危ない、主に胸が・・じゃなくて!後ろからとんでもない殺気が飛んでるんです!

 

 

「女性を泣かすとは良い度胸をしてますね。」

 

 

これオワタパターンじゃないですか!

 

 

「あ、あのーアリスサン?」

 

 

「覚悟なさい!」

 

 

「ひえええ!ごめんなさあい!」

 

 

持ち前の反射神経でアリスの剣捌きをかわしていく

 

 

「ちょっ!アリスさんこれには訳が!」

 

 

「言い訳無用です!大人しく斬られなさい!」

 

 

結局ミィナが泣き止み、アリスを止めるまでこの鬼ごっこは続いた

 

 

「全く、それならそうと先に言ってくれれば私も斬りかかることはしませんでした。」

 

 

「とりつく島もなく斬りかかって来たのそっちだろ!」

 

 

「はて、何のことでしょう?」

 

 

あ、しらばっくれやがった

 

 

「お前なあ、大体俺が避けたから良かったものの、当たりでもしてレッドになったらどうするつもりだったんだよ。」

 

 

「女性を泣かず輩に成敗を下せるならレッドにでもなんでもなりますよ。」

 

 

いつかこいつ人を殺す気がする・・・

 

 

「はいはい、下らない茶番はここまで、で?アリ姐はこれからどうするの?」

 

 

「私ですか?私は一度町へ戻り、2層へ向かう準備を整えようと思っております。」

 

 

「だったら一緒に行こっ!良いよね、キリト!」

 

 

「別に俺は構わないけど。」

 

 

「その男と共に行くのはシャクですが、ここまで頼まれて断るのも忍びありません、分かりました。ご一緒しましょう。」

 

 

「やったー!」

 

 

「はぁ・・・」

 

 

「ほら、行くよキリト!」

 

 

ここから町に帰るまで憂鬱な気分で一杯になりそうだ・・・

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