無剣の守護戦姫   作:未蕾

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壱章 強化詐欺
EP.7 髭の理由


キリトside

 

 

「ここですね。」

 

 

俺達はアルゴを誘った“ホルンカ”に在るNPC経営のレストランに来ていた

 

 

「ここら辺で良いだろ。」

 

 

「けど良かったの?フード被ってこなくて。」

 

 

ほんの数時間前に2層への道が開かれたことと、お昼と言うには遅めの時間ということもあり、そこまで人はいなかった

 

 

「構わねえだろ、どうせ顔バレしてないんだから。」

 

 

「けど保証はなくてよ、声に出さなかっただけかもしれないし。」

 

 

「だとしてもコソコソする必要もないだろ、フードの方が余計怪しまれる。」

 

 

「それもそうね。」

 

 

「あのー、ご注文はお決まりでしょうか?」

 

 

店員であるNPCが注文を聞きにくる

 

 

「コーヒーでお願いします」

 

 

「同じく。」

 

 

「かしこまりました。」

 

 

ここに来たのは俺とアウラの二人だけ、残りの二人は訳あって先に宿屋に戻ってもらっている

 

 

「遅れて悪いナ、少し手間取っちゃっテ。」

 

 

「いいよ、俺たちも今来た所だったし。座りなよ。」

 

 

と言ってアルゴに向かいの席に座るように促す

 

 

「それデ?おれっちに言いたいこととハ?」

 

 

「どうせあんたの事だ、既に耳には入ってるだろうが改めて言う。ボスの変更点についてだ。」

 

 

ボス討伐から小一時間しか経ってないが、こいつの情報網は侮ることなかれ、どっから仕入れたんだと疑うレベルの情報さえ数十分で耳に入れてくる

 

 

「タルワールが野太刀に変えられた事カ?それならアーちゃん達から聞いてるゾ?」

 

 

「いや、まあそれもそうなんだけど。」

 

 

「他にあったのカ?」

 

 

明らかに武器変更以上に伝えるべき筈の情報をまさか耳に入れてないのか?武器変更だけなら慣れ云々でなんとかなるならともかく回復能力(ヒーリングスキル)は初見じゃ大変な所がある

 

 

発動条件は分からないが一層のボスから使ってきたんだ、これからのボス・・・

否、最悪フィールドのmobにさえ使われる可能性もある、早急に伝えるべきじゃないのか?事実、攻略組でさえあそこまでパニクったんだ、中層や低層プレーヤーが遭遇したらそれこそ危険だろう

 

 

「実はですね、ボスが自動回復を使ってきたのです。しかも全快の。」

 

 

「ナ、なんだっテ!?」

 

 

「本当に聞いてねえのか?」

 

 

「当たり前だロ、そんなとんでもない変更点、俺っちが伝えない訳ないだロ。」

 

 

「そうですね、それにしても何故攻略組はこれを隠したのでしょうか・・・」

 

 

「あまりにも未知数だからナ、ある程度様子見をしてるんじゃないカ?」

 

 

確かに余りにも未知数だ、発動条件の分からない変更点(イレギュラー)を広めて下手に集中力を欠かせるような事になれば自滅しかねない

 

 

だけどなぁ・・・

 

 

「流石にちょっと見損なったな。」

 

 

「同感ね。」

 

 

「ま、あいつらの考えを理解するだけ時間の無駄だな。アルゴ、この情報の公開の是非はお前に託す。いいか?」

 

 

「了解しタ。」

 

 

「じゃ、よろしくな。」

 

 

「おウ!」

 

 

カランとドアの開閉を告げる音がしてアルゴは店を発った

 

 

なんか忘れてるような気がするんだけど・・

 

 

「ところでキリト、アルゴに用があったのではないのか?」

 

 

「あ、髭の理由聞くの忘れてた!。ま、いっか、女性の身辺的特徴の理由を聞くのは野暮だしな!」

 

 

「・・・・」

 

 

あのー、そんなジト目で見るの止めてくれませんかねアウラさん

 

 

「あれ、アルゴ?」

 

 

彼女のジト目から避けるように窓に目線を移すと、アルゴが逃げている最中だった

 

 

「あいつのAGIに追い付く奴なんているのか?」

 

 

「貴方の所の相棒ちゃんがそうじゃなくて?」

 

 

いやまあ確かにアルゴどころかアインクラッド最速だろうけどさ・・

 

 

「あいつがアルゴを追いかけ回す理由無いだろ?あいつだな、追いかけ回してる犯人は。」

 

 

「趣味悪いわ・・・」

 

 

いかにも忍者が着てそうな袴装束を着た二人組がアルゴに詰めよっている

 

 

「あいつらどっかで見たことが・・・」

 

 

「そうなのよねー、私も見たような気がするのよねー。」

 

 

「なんて言ったっけな、フードじゃなくて・・フーガじゃなくて・・・」

 

 

「ま、どうでもいいですわ。今は彼女を助けませんと。」

 

 

「だな。」

 

 

この店は先払いなので金を置いていく必要もないだろ

 

 

駆け足で店を出て、アルゴと二人の間に割って入る

 

 

「お主達、何用だ?」

 

 

「そうでござる!拙者らの邪魔をしないで欲しいでござる!」

 

 

「あーもウ、だかラ!この情報は売らないって言ったロ!」

 

 

「では何故教えないでござるか!拙者らは情報料金を払う前提で交渉を持ち掛けているでござる!エキストラスキル“体術”の獲得方法を!!」

 

 

「何!?エキストラ・・スキル、“体術”だと!?」

 

 

「駄目ダ!これだけは教えたら恨まれること間違いなしなんダ!」

 

 

「持っていると言ったにも関わらず、何故交渉に応じてくれないでござるか!?これは明らかに情報料金を引き上げるのを狙っているのも同然でござるぞ!」

 

 

「俺たちとしてはお前らの悪行は見逃せないな。」

 

 

「「まさかお前ら伊賀者か!?」」

 

 

ん?()()()?伊賀者、イガモノ、忍者・・・

 

 

は!

 

 

「もしかしてあんたら風魔の・・」

 

 

「「ござる!」」

 

 

風魔の二人組はβテストにも居た、高めのAGIに物を言わせて美味しいとこだけ持っていくコンビ

 

 

「風魔だか風太だか知らないけどね・・」

 

 

風魔の二人の顔がみるみるうちに青ざめていくのが分かる

 

 

あ、これアウラさんお怒りだ・・・

 

 

「「ござるうううう!!」」

 

 

冷や汗垂らして全速力で彼らは逃げていった

 

 

「まったく、女の子を追いかけ回すなんて女の子の敵だわ!」

 

 

「相変わらず女の子を引っ提げてるんだナ、キー坊は。」

 

 

「人を腰巾着みたく言うのやめてくれません?物じゃないんですから。」

 

 

「二ャハハ、そいつは悪かったナ。まあ助かったヨ。」

 

 

「それで?何したんだよアルゴ、あの二人凄い剣幕だったんだが。」

 

 

「仕方ない、キー坊達だけ特別に教えてやるヨ。」

 

 

「ああ、それとエキストラスキルについてもな。これは助けた対価として、だ。いいか?」

 

 

「分かったヨ、元々教える約束だったしナ。」

 

 

「ん?髭の理由か?」

 

 

「受ければ全て解けるヨ、正し教えるには条件があル。」

 

 

「その心は?」

 

 

「絶対にオレっちを恨まないことダ!」

 

 

「何言ってんだ?エキストラスキル獲得方法を教えて貰って恨むっておかしいだろ。」

 

 

「違うんだ、キー坊。大体の恨みってのは一晩寝れば忘れるサ。けど、これは違う・・・間違えれば一生続くんダ!」

 

 

どういうことだ?益々意味がわからなくなってくる

 

 

「大丈夫です、私たちは貴方を恨むようなことはしません。」

 

 

「なラ交渉成立だナ、着いてこいヨ。」

 

 

「なあアウラ。」

 

 

「何でしょう?」

 

 

「お前このスキル、今取らなきゃ駄目か?」

 

 

「数日後にはまたツバルさん達と二層の攻略を始めるつもりですので早い方がよろしいですね。」

 

 

「ならアルゴ、俺はクエストが受けれる場所だけ聞いて終わるよ。アリスに怒られそうだし・・・」

 

 

そうなのだ、ミィナはともかくアリスに黙ってクエストをやると怒鳴られそうでたまらないのだ

 

 

「そういえばリーちゃん達がいなかったナ。喧嘩でもしたのカ?」

 

 

「んなわけないだろ、買い物だとさ。」

 

 

「おや?相棒さんは構わないのですか?」

 

 

「あ、あいつはまだ武器に慣れてないからな!もう少し後に取らせようとお、思ってるんだ。」

 

 

あいつの謎のスキルの全貌が分からない限り、広めるのは好ましくないと思う

 

 

「そうダ、始めに忠告するけド野宿は覚悟するんだナ。寝袋持ったカ?」

 

 

「どんなクエストだよ・・・」

 

 

・・・

 

 

「着いたゾ、ここがエキストラスキルを取れる場所ダ。」

 

 

「なーんもねえな。」

 

 

「そうね。」

 

 

俺たちがいるのは岩山、とくにこれといった目立つものは無く、ただ一人の爺さんが立っているだけ

 

 

「試練を受けに来た者達か?」

 

 

NPCである爺さんが話し掛けてくる

 

 

「はい。」

 

 

「修行は厳しいぞ?」

 

 

「覚悟はできております。」

 

 

「ならば修行の証を付けよう。」

 

 

すると爺さんはどこからか小さめのツボを取りだし、筆を中に入れ、取り出したと思えば、アウラの頬に何かを書いていく

 

 

「それでは我が弟子よ、それは修行が終わるまで取れんぞ。修行が終わるまでこの岩山から出ることは一切禁ずる。試練はこの大岩を割ることじゃ。健闘を祈る。」

 

 

「そうか、アルゴはこのクエストがクリア出来なかったからこの髭を付けてたのか・・・」

 

 

「流石はキー坊鋭いナ!その通りだヨ!」

 

 

「褒められてる気がしないんだが・・・」

 

 

「ということは私の顔にも付いてるのですか!?」

 

 

アウラがこちらに顔を向ける

 

 

そこには髭を書かれたアウラがいたのだが

正直に言ってこれは・・・

 

 

「「似合ってる。」」

 

 

アルゴとハモったのは不覚だが、アウラが似合ってるのは本当である

 

 

完全に猫そのものだ

 

 

「似合ってるヨ、猫みたいデ!」

 

 

「うん、すっごく似合ってる。」

 

 

「そ、そうですか?」

 

 

「これはリーちゃんとキー坊の出来が楽しみだナ!」

 

 

「お前には見せないぞ。」

 

 

「ケチ!」

 

 

「ケチで結構!お前に渡すとろくなことにならねえんだよ!」

 

 

「ブー。」

 

 

「そんじゃ俺は帰るから。アルゴ、ショートケーキ忘れんなよ!」

 

 

「分かってるヨ。」

 

 

後ろから冷たい視線が送られてきたが、俺は無視することにした

 

 

No side

 

 

「・・・本当にいいのかね?」

 

 

「構いません、それでアイツの仇を取れると言うのなら!」

 

 

研究室らしき部屋に三人の人間がおり、内一人は横になり機械に繋がれていた

 

 

「君がそれを望むなら私はこれ以上は追求しないさ、ただ、本当にいいのかね?最悪もう二度と会えなくなるかもしれないのだぞ?」

 

 

「それでも指を咥えて待つよりはマシです。」

 

 

「分かった、なら思う存分暴れるがいい。」

 

 

そう言うと女性は1つのナーヴギアを手渡す

 

 

「もう準備は整えてある、後は入るだけだ。」

 

 

「何から何まで、ありがとうございました。」

 

 

「私も彼女には興味があってな。こちらとしても願ったり叶ったりなんだよ。」

 

 

「そうですか。」

 

 

男は備え付けのベッドで横になり、ナーヴギアを被る

 

 

「リンクスタート!」

 

 

「君には感謝しているよ、出来ればで構わない、だが早めに連れ戻してくれよ・・」

 

 

眠ったように動かない彼らを見つめる女性の目尻に涙が浮かぶ

 

 

「私の娘・・・“アリス”を!」

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