宿毛泊地提督の航海日誌 -memories alive-   作:謎のks

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 願いはここに受理された…。










 代償は…──














10.再会、再別

 ──私のお父さんは、研究者でした。

 

 何の研究かとか、どこでお仕事しているとか、それは教えて貰えなかったけど…でも「とても誇れる仕事だよ」と言った時の彼の顔は、とても輝いていました。

 

 …でも、少し寂しい。

 

 お母さんは、私が生まれた時には居なくなっていて、顔も知りません…兄弟もいません。

 

 一人ぼっち…おばあちゃんはいたけど、何処かぎこちなくて。

 

 近くの浜辺で、一人海を眺めるのが私の日課。

 

 …広い海を見ていると、嫌なことや、辛いときも「頑張ろう」って思えたから…。

 

 …私には、友達はいません。

 

 楽しそうに話している皆、笑っている皆…それだけなのに、時々怖く感じて…。

 

 だから、私のことは「浜辺で海を眺めてる変な子」と思われている…実際にそう聞いたこと、あるし…。

 

 …そんな時、いつものように海を眺めていた、ある日……──

 

 

 

「なぁにしゆうが?」

 

 

 

 地元の男の子が、話しかけて来た…最初は少し怖く感じて、俯いて、まともに返事出来なかった。

 

 それでも、その男の子は話を止めなかった。

 

「何で一人でおるが? 何で海を見ゆうが? 海を眺めてそんな楽しいん??」

 

 …矢継ぎ早に質問をする、話の「間」がない彼の姿勢は、正直…鬱陶しかった。

 

「……………」

 

 ふと、隣を見ていると彼は海を見ていた…私の隣で。

 

「…綺麗やにゃぁ」

 

 呟いたその一言、その純粋に景色を楽しむその顔が…意外だったので。

 

「…っぷ! あはははは!」

「えぇ…? 何でそこで笑うん?」

「だ、だってぇ…あ、あははは!」

「なんながよ…ふ、ふふ…にゃははは!!」

 

 …これが、私たちの出逢い。

 

 彼…お兄ちゃんは、私の寂しさを埋めてくれた。

 

「オレもな? 親父たちが遠くにおるがよ?」

「えっ? そうなの?」

「うん、仕事の都合でな? 時々帰ってくるんやけど」

「…お兄ちゃんのお父さんって、どういう人?」

「どういう? うーん…とりあえずすぐ怒るにゃ」

「そうなんだ? 怖い人なの?」

「いやぁ、オレがアホばぁ言いよるき、すぐどつくがよ。厳しいけんど、優しい時は優しいよぉ?」

「…そっか。いいお父さんだね?」

「そうかにゃぁ?」

「そうだよ。ふふ…♪」

 

 隣に座る彼との何気ない会話が、私の幸せになっていった…

 

「~~~♪」

「…! おお…」

「…? どうしたの?」

「…いや、綺麗やにゃぁ…って?」

「えっ? 海の事?」

「いやいや…もうえいわ」

「? どうして怒ってるの? ねぇどうして顔が赤いの??」

「し、知らん! しわいぞ! ///」

「むぅ、お兄ちゃんに言われたくない!」

「うっせ! ……っふ、ふふふ」

「あはははは!」

 

 …私に足りないものを彼が、彼に足りないものを私が。

 

 こういうのを「運命の出会い」っていうのかな? って思ったり……そう、本当に嬉しかった。

 

 

 

 …だから、あの言葉は本当に嫌だった。

 

 

 

「…っえ!? 帰るって!!?」

「うん、少しだけ東京の親父たちの所に行かんと」

「ど、どうして…?」

「いや、よく分からんけど必要なことやって言うき…」

「そ、そんなぁ…」

「そんな顔しなや! お土産たんまり持って帰ってくるき!」

「……ッ、いや!」

 

 ひと時も離れたくない…この楽しい時間を奪われていくような気がして。

 

 彼の腕を掴んで、離さない…我が侭だって分かってるけど、それが私の本心だった。

 

「わがまま言いなや、オレもう帰らんと…」

「やーだぁーー!!」

「う~ん………よし! まだ日もあるし、明日またここに来て、遊ぼ! 約束!」

「っ! …うん、約束だよ!」

 

 その言葉を信じ、私は彼の背中を見送った……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──…それから、「数か月」。

 

 彼は一向に現れなかった…それでも「少し早く向こうに行っちゃっただけなんだ」と自分を納得させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

──……更に数か月、もう一年が経とうとしていた。

 

待てども待てども、彼はその笑顔を見せてくれなかった…

 

 

 

──私は。

 

 

 

「…行こう」

 

 

 

 何処に居るのか、知らない。

 

 何であの浜辺に現れたのか、知らない。

 

 一緒にいるのが、当たり前になり過ぎていて…彼の何も「知らなかった」。

 

 

 

「……」

 

 

 

 分かっている。

 

 

 

 もう、会えないんだって。

 

 

 

 私の事、忘れちゃったんだって……!

 

 

 

 

 

「……お兄ちゃん」

 

 

 

 

 

 絶望、裏切りの感触、心にぽっかり穴が開けられる。

 

 それでも…信じたい、あの笑顔を、あの優しい……。

 

 

 

 

 

「…何処? お兄ちゃん……」

 

 

 

 

 

──瞬間。

 

 

 

 私の身体は宙を舞っていた…鮮やかな赤色の水飛沫と一緒に…。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 …そっか、でも…これで会いに行ける。

 

 誰にも愛されず、そういうものが分からなかった私が…唯一感じられた一瞬を与えてくれた人。

 

 彼の元へ、一目だけでもいい…会いに行きたい。

 

 …そう思っていた私の前に映し出されたのは…。

 

 

 

「大丈夫だ…お父さんがお前を見捨てるものか」

 

 

 

 …あれ?

 

 

 

「さあ、私と共に、奴らに復讐を…!」

 

 

 

 何処で…間違えちゃったんだろう…?

 

 

 

『貴方ノ力ガ必要ヨ…!』

 

 

 

 ………まあ、いいや。

 

 

 

 もう、眠い……何もかも、どうでも良い…。

 

 

 

 一生会えないんだ……私は……わ………た……は…──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──美海!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…!』

 

 

 

 

・・・・・

 

 海の上、海面から上半身を浮かべ「二人」は見つめあっていた。

 

 目を覚ました少女…美海は、自身を抱きかかえる男の顔を見やる。

 

『…オ兄チャン?』

「ああ、遅くなってごめん! …迎えに来たよ、美海」

 

 …その言葉を聞いて、少女は視線を逸らし、俯きながら呟いた。

 

『…遅イヨ、本当ニ』

「…ごめん」

『ズット待ッテタ……本当ニ…ズット……!』

「本当にごめん、オレ…」

『…フフッ、モウイイヨ? チャント来テクレタシ』

 

 朗らかに笑う少女は、生前と変わりなく可愛らしく、それでいて美しかった。

 

「美海…」

『…アリガトウ、オ兄チャン…私……私ッ!』

 

 その顔はみるみる涙に濡れていく…悲しみや、喜び。様々な感情が入り混じり、溢れ出る。

 

『……ッ、ッウ…ヒゥ……ウゥ…!』

「…ずっと寂しい思いさせて、ごめんな? …これからは、ずっと一緒だ」

『……ゥン…!』

 

 彼女を抱き締める…優しく、思いを込めて…。

 

 長い、ながい…本当に長い時を経て、やっと二人は一緒になれた。

 

 

 

『…Vv……vwoo………』

 

 

 

 両腕を支えにして、海面に屈す怪物は、力なく呻きながら黒い靄を放出していた…力の核たる「深姫」が離れた為か、まるで力が散り散りに霧散していくように見えた。

 

「やったの?!」

「いや照月、油断はするな? …警戒しながら、急いで二人の元に行こう」

「………」

 

 駆逐艦3隻は、警戒しながら提督たちの救出を試みる。

 

 長門も同様に、腕を組みつつ辺りを見回していた。

 

『……………………G…』

 

 ──キラッ

 

「…!」

 

 頭上の怪物から、何かの気配を感じ取る…!

 

「っ! しまった、不味い!」

「て、提督ーぅ!!」

「司令官、逃げてぇ!!!」

 

 三人は叫びながら駆け出す…しかし、間に合わないのは分かりきっていた。

 

 長門は驚きながら、吹雪たちの後に続こうとしていた。

 

『Guuu………gyavwooooooooooo!!!』

 

 怪物から最後の悪あがきと、一筋の閃光が放たれる。

 

「…っ!」

 

 提督はそれに気づくや、腕の中の彼女を抱き締めた。

 

『オ兄チャン!?』

 

 一瞬の出来事…瞬きをするたび、距離はどんどん近づく…正に風前の灯火。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『提督!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 海中から白い影が、勢いよく二人を突き飛ばした。

 

「…!」

 

 

 

 

 頭上より降り走る閃光。

 

 その光は…一直線に白姫の身体を貫き、そのイノチを奪った…。

 

 

 

 

 

「はっちゃああああああん!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 …あーあ、やっちまったなぁ?

 

 あれ程言っておいたのに、オ レ(ちから)を使い過ぎちまったなぁ…?

 

 オレは…使えば使うほど人が不幸になる。間違っちゃいないが、詳しく言うと言い方は変わる。

 

 運命を無理やり変えるにゃ、魂に刻まれた「生の運命」を奪わねえといけねえ…生きとし生けるもの全てには、それだけで膨大なエネルギーがあるっつーわけよ?

 

 つまり、だ…オマエが幸せを掴めばそれほど、その度に一存在が「死に至る」…遅かれ早かれな?

 

 …あ? 艦娘? それこそ与り知らねえな? ま、ヤツラの戦いはオレでもどーにもならん。

 

 だが…魂がある限りは、ヤツラも人間と大差ねえっつうことかな? キキキ!

 

 ……………ッチ、なんかスッキリしねえなぁ。

 

 …まぁ、少しの間は時間位作ってやるよ。その間に…せいぜい別れを惜しむんだな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・

 

「はっちゃん!」

 

 提督は海面を力無く漂うはっちゃんの元へ泳ぐ。

 

『……テー…ト…ク……?』

 

 はっちゃんに近づく、そのまま抱き寄せる。

 

「…ッ!」

『…良カッタ、提督、無事デジタ』

 

 安堵の表情で提督を微笑みながら見つめるはっちゃん。

 

「…ごめんッ、オレ…オマエを…不幸に……!」

 

 提督は内なる自分に言われたことを思い出し、後悔の念を吐露する。

 

「オレが…こんな無茶しなければ……ッ、オマエも…死ななくて…よかった…のに…ッ」

『…ウフフ』

「…? はっちゃん…?」

 

 提督が戸惑うと、そのイノチが尽きようとしているはっちゃんは、それでも朗らかに笑う。

 

『提督…? ドウシテ、私タチハ沈ムノガ怖イノデショウネ?』

「え…?」

『私タチハ…兵器。ソレデモ、名前ヲモライ、人ト変ワリナク扱ワレ、ソシテ、沈ム。ソレ自体ハ、受ケ入レラレルノデス』

「………」

『デモ、私タチハ…心ヲ貰ッタ、貴方タチニ…冷タイ海ニイルトネ? ソンナ心ヲ忘レテシマイソウデ…貴方タチヲ認識出来ナイ、元ノ機械ニ戻ッテシマイソウデ…怖イノ』

「っ! はっちゃん…」

『ダカラネ…ドンナ形デモ、モウ一度貴方タチト一緒ニナレル。今度ハ…貴方タチト同ジ「形」デ……ソレガ、ドンナニ嬉シカッタカ』

「…うん」

『私タチハ……忘レラレタクナイノ、貴方タチニ……ダカラ、コレハ「オ別レ」ジャナイノ……笑ッテ見送ッテクレルト、嬉シイ…ナ……?』

 

 …静かに語られたはっちゃんの思いは、全ての艦娘に通じるものがあるかも知れない。

 それを聞いて、提督はゆっくりと口の端を上げる…目に涙を浮かべながら。

 

「…あぁ、分かったよ。はっちゃん…」

『…アリガトウ』

 

 

 

 

 ──私を、忘れないで、ね……?

 

 

 

 

 …微笑みながら、彼女のイノチはその身体から抜け落ちた…最後まで、提督を案じながら。

 

「……ッ! はっちゃん………はっ…ちゃん…ッ!」

 

 彼女を抱き寄せ、強く抱き締める。

 

 彼女の勇姿は、70年前の活躍も含めて、この場にいるモノの心に刻まれたことだろう。

 

「…ありがとう、はっちゃん……!」

 

 万感の想いを込めて、提督は彼女にお礼を告げた。

 

「司令官!」

 

 吹雪たちが駆けつける。

 

「…吹雪」

「っ! …そんな、はっちゃんが」

「吹雪、そんな顔するな」

 

 提督はまだ涙に濡れる目を引き締め、吹雪を元気付けた。

 

「はっちゃんがこうなったのはオマエの責任じゃない。オレが…オレがまたはっちゃんを沈めてしまった…」

「司令官…」

「でも…オレたちがいつまでもこんなだと、アイツが困っちまうから、さ? オマエは気にする必要はないよ?」

「……っ、はい」

 

 吹雪も笑って、それに答えた。

 

 …その直ぐ後、美海も近づいて来た。

 

『…オ兄チャン、大丈夫?』

「美海…」

『ゴメンナサイ…私ノセイデ…』

「美海」

 

 提督は美海に向け、どこかぎこちない笑顔を作る。

 

『…アハ』

 

 美海も、悲しみを抑え、笑う…それがはっちゃんの、何よりの願いだと彼女も分かっていた。

 

「…よし、別れは済ませたな? 淡々として済まないが、上のヤツがまた襲ってくるとも分からん。早くこの場を離脱しよう」

 

 磯風の提案に、全員が頷く。

 

 提督ははっちゃんの遺体を、海に還そうとした……その時。

 

 

 

 

 『──h、フフフ………グハハハハ!』

 

 

 

 

 辺りに低く悍ましい声が木霊した。

 

 それは、頭上から聞こえて来た…つまり

 

『オロカモノドモガ……キサマラヲコノママカエストオモッタカ!?』

 

 鈍重に鳴り響く、身体の奥から感じる畏怖、その重音は確かに「言葉」を発していた…!

 

「っ!? 嘘!!?」

「あのバケモンが喋ったがか!?」

 

 提督の言葉に騒然となる一同。

 

『ワレハ「憎悪」。ソノケッショウコソ「ワレ」ヨ…ワレハオロカシイジンルイニシンパンヲクダスモノ!』

「人類に審判…? ふざけんな! 誰も人を裁いていい訳ないだろう!」

『ショウシ! ナレバ…ワレハソノ「人」カラウマレタ…トイッタラ?』

「…おっとぉ」

 

 ノリちゃんがしてやられたように言葉を漏らした。

 

『シカリ…ヒトヲサバクハ「ヒト」。ワレハソノヒトノヨクボウヨリウマレシモノ…デアレバ、サバクベキハワレニコソアラレバ!』

「世界を滅ぼすというのか? 総督が生み出したお前が!」

『ニンゲンノ「ゴウ」ガウミダシタノダ、マサニ「ジゴウジトク」。コノセカイヲホロボサントシテイルノハ…ホカデモナイ、オマエタチダ!』

 

 謂れのない難癖とはこの事。だが…怪物の言うことに一理ある、と誰もが感じていた。

 世界を滅ぼす「トリガー」を引くのは、いつだって人の欲望、傲慢さ。

 

 

 

 だが…同時に世界を変える、救うのは

 

 

 

「…そんなこと、絶対にさせません!」

「そ、そうだよ! 私たちも世界を守るんだから!」

「うむ、例え神だろうと、この世界をやらせはせん!」

「…フッ! まぁ俺もぉ同じ気持ちだぜぃ?」

 

『…オ兄チャン』

「おう…オマエの好きにはさせん。それがオレたちの答えだ」

 

 …彼らのような、真っ直ぐに世界と向き合うモノたち…なのかもしれない。

 

『ジツニオロカダ。ダガ…ワレノノコサレタチカラモスクナイノモジジツ。デアレバ…』

 

 怪物はこの期に及んで何事かを企てるように言い含めた。

 

『ワレノ「ソンザイイギ」、タトエセカイハホロボセナクトモ…オマエタチノ「クニ」テイドナラ…イマデモジュウブン、ゾウサモナイコトヨ?』

「っ! まさか…」

『イマヨリ「ジバク」ヲカンコウスル…オマエタチモロトモ、コノウミヲフキトバシテクレル!!』

 

 怪物の周りに、霧散した筈の黒い靄が集まり始めた…。

 

 それは、怪物が自身の本懐を遂げることを意味した。

 

「!? 貴様!」

『フハハハハ! ニゲオオセルカ? シカシテキサマラニハトウニニゲバナドナカロウナァ? フハ、フハハハハ!!!』

 

 吹雪たちは砲を構えるも、絶対的な力に、なす術なくその主砲を下ろした…。

 

『ホロビサルガイイ! オロカシイニンゲンドモヨ!』

 

 

 

 

 

 ──サセナイ!

 

 

 

 

 

『ヌゥ!?』

「美海?」

『私ノ歌デ…貴方ノ憎シミヲ払ッテミセル!』

 

 力強く言葉を放つ美海。しかし怪物は尚も不敵。

 

『…フッ! ヤッテミセルガイイ! キサマヒトリデ、ゼンセカイノニクシミヲハラエルノナラナァ?』

『…ッ!』

 

 空を睨む美海に、そっと優しく手が触れる。

 

「…美海、オレも一緒や。だからやってみぃや?」

『オ兄チャン…!』

「吹雪」

 

 不意に吹雪に声を掛ける提督。

 

「っは、はい! 司令官?」

「…撤退や」

「は、はい……はいぃ!?」

「全艦、撤退命令。オレは…後から行く」

 

 吹雪は分かっていた。彼が後からいけるはずがないことを…。

 

「司令官、それは…!」

「大丈夫や。オレは死なん…さっきも見たやろ? オレが側に居ったら、美海も助かるはずや」

「だからって!」

「…ごめん、吹雪。でも…オマエらまで沈めてしまったら、オレは…死んでも死にきれん」

「…司令官」

「吹雪」

 

 ポンッ、と吹雪の背中を叩く磯風。

 

「司令は命を懸けて、今守るべきものを守ろうとしている…彼女と、我々もな?」

「磯風ちゃん…」

「その彼の心意気、我々も理解出来る筈だ。…そうだろ?」

「………うん」

 

 吹雪は渋々、その命令を受け入れた。

 

「司令官…どうかご無事で! 必ず…必ず救援に向かいます!」

「…おう。ありがとうな、吹雪? …オマエが秘書艦で、良かった」

「私も、同じ気持ちです! だから…そんなこと言わないで、最後まで諦めないでください!」

「…ああ」

 

 優しく微笑む。いつものように…

 

 吹雪は、それが最後の別れにならないよう、強く天に願うのだった…。

 

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