宿毛泊地提督の航海日誌 -memories alive-   作:謎のks

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 過去は記憶である。

 如何なる事実があろうとも、人の「記憶」はそれを捻じ曲げ、いつしか記憶すら忘れてしまう…

 ──その先の真実に、望むものがあるとしても、だ…。

 だからこその、辛い「現在(いま)」に目を背けて…。





 決断せよ。

 夢想に生きるか、真実を手に取るか…

 ──それは正に「二つに一つ」だ…。


06.決意

 徳田たちが会議を繰り広げている頃、提督執務室では…

 

 

 

 

・・・・・

 

「ホント、懐かしいな?」

 

 提督が優しげな声で、扉一枚を隔てた人物とに向けて話しかけていた。

 

「オレ、はっちゃんにまた会えるって思ってなくてさ…」

『それは、おかしいですね? 此処には、私の代わりがいるとか?』

「…そんなこと、言うなよ?」

『うふ、ごめんなさい? これしか思い浮かばなくて』

「オレにとってはっちゃんはオマエだけだよ? 代わりなんて…」

『…提督こそ、そんな言い方』

「えっ? あぁ…いや、ごめん」

『良いですよ? でも、後で「2代目ちゃん」に優しくして下さいね? 例えば…シュトーレンとか!』

「だから、作り方知らないって…;」

『あら? 間宮さんがいるじゃない?』

「…オレのより間宮さんのがえいって?」

『違いますよぉ…味は間宮さんが一番かも』

「む…」

『でも…提督の料理は、温かくて、優しくて、はっちゃんは、大好きです♪』

 

 笑顔を作りながら、明るく言うはっちゃん…"潜水棲姫"。

 

「そっか…ありがとな? こんなオレを、好きでいてくれて」

『提督…』

「でもオレには…そんな資格は無いよ。好きかどうかじゃない、オレに「愛される」資格は無いんた…あの娘のことも、思い出せなかったんだから…」

『……うじうじしてる提督、はっちゃん、嫌いです』

「はっちゃん…」

 

 提督の弱音に、はっちゃんは自身の思いの丈をぶつける。

 

『私はね、そんなに強くないんだよ? ごーやちゃんは運が良いし、イムヤちゃんやイクちゃんみたいに強くないし…私には、そんなに特徴的なこと、ないし…』

「そんなことない! オマエは…オマエはオレたちの為に…ッ!」

『…ありがとう。そう、こんな私でも貴方たちを助けられる。だから、貴方に愛される資格が無いなんて、嘘。だって貴方は、今まで多くの事を成し遂げて来たじゃない?』

「でも……でもっ!」

『提督?』

 

 はっちゃんは尚も、その柔らかな声を崩さず、愛しい者に語りかける。

 

『貴方が今、守りたい人は誰? 貴方は、そんなところで蹲っていていいの?』

「…!」

『私たちは「兵器」。でも国のモノじゃない。ましてや軍のモノでもない。私たちは……「貴方のモノ」。貴方が命令してくれるなら、望んでくれるなら、私たちは何でも出来るよ? だから…』

 

 

 ──ガチャッ

 

 

『…!?』

 

 ドアが「開いた」。

 

 そこに隔たりは無く、ありのままの二人が映し出されている。

 

「…やっぱり、オマエだったんだな」

『……ウン』

 

 提督は涙を拭うと、彼女から目を逸らさずに言う。

 

「…ありがとう、はっちゃん。まだ分かんないことばっかりだけど、それでも……オレ、やってみるよ?」

『ウン……ウンッ!』

 

 提督の決意に、こみ上げる気持ちと一緒に頷く「はっちゃん」。

 

 

 

 

・・・・・

 

 おい? いるんだろ?

 

『…ア? ナンダヨ? ナキベソヤローガヨ』

 

 うっせ! …オマエ「力」あるんだろ? それ…オレに「貸してくれ」。

 

『………………プッッッッッ!?! く、きひゃひゃひゃひゃひゃ!!!?』

 

 …そんなに可笑しいか?

 

『アーアオカシイネ! オマエ「アレ」がモトかのカモワカンネーンダロ? ナンダッテ…』

 

 そんなの、近くで見たら分かるだろ?

 

『アー! オマエばかダナ?! ゼッテーソウダロ!!?』

 

 いいよ馬鹿で。…それより訂正すると、元カノじゃなくて「妹分」な?

 

『ドッチデモイーダロ!? ッタク…アア、ちからナラシュドーケンハオマエニアルカラキニシナクテイイゼ?』

 

 そうなのか? …いや、使い方がわからないんだが?

 

『ア? 「ヒツヨウネー」ンダヨ、ソンナノ』

 

 …え?

 

『オレカライワセレバ、オマエハタダ「イル」ダケデむてきダ。イマフーインガ「ハンブン」トケカカッテンダカラ、イマノオマエナラドンナバクダンガフリソソゴウガ「シナナイ」ネ?』

 

 …いや十分凄いんだがな?

 

『アン? すー○ーまんミテーニびーむウテルカ? ムリダロ??』

 

 あぁ、もういい! …自動で発動するのか?

 

『マ、ソーイウカイシャクデイイゼ? 「オレ」ハ…オレタチハむてきデアリ「さいじゃく」ッツーコトヨ?』

 

 うーん…? よく分かんないなぁ?

 

『………』

 

 誰か……使い方教えてくれないかなぁ〜? もっと詳しく教えてくれないかなああぁ〜〜?

 

『………………』

 

 …チラッ?

 

『ウッッッゼーーナオマエ!!? …アァイイヨ、ワカッタヨ! オシエリャイーンダロ!?』

 

 さっすが、心の友に感謝ってな?

 

『イッテロヤボケ!! …マアドーセテイコウデキネーシナ、ソレニオモシロソーダシナァ? きき! (…ま、大事な部分は省かせて貰うが)』

 

 …ん?

 

『ナンデモネーヨ! ソレヨカ、ナニカラオッパジメンダ? センソーカ?』

 

 ん、まぁ…そんなとこ。かな………?

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 提督が一念発起する中、会議室では引き続き「深姫」についての協議が行われていた。

 

『…んで、結論から言って、アレは「総督」の肝煎りで作られたモノだと思うんす』

 

 くうさんの言葉に、大方の予想通りといった面持ちになる一同。

 

「成る程…」

「総督って、夏イベで戦った人だよね? どのくらい前から計画されてたの?」

『…最初から』

「え!?」

『アイツが「総督」としてウチらの指揮に入ってから…あの姫の建造に入ったみたいっす』

「ってことは…一年以上前から!?」

「提督が聞いたら卒倒しそうだね?」

「アイツだったら「そんなに待ってられるかや! 高速建造材じゃあ!!」とか言いそう」

「ぷw 満潮ちゃん、ちょっと似てるw」

『真面目に聞けし!? あ、でも確かに似てたっすw』

 

 …話が纏まりそうにないので、徳田が進行役に割って入った。

 

「ゴホン! では…彼女は総督が造りだしたと?」

『ん〜よく分かんねーんすけど、誰かが土台作って自分はそれを改良しただけ。とか言ってたっす』

「…徳田先生?」

「間違いありませんね? 総督は彼女を連れ出し深海の姫に造り変えてしまった…ということでしょう」

「そうか…しかしやはり分からない」

「ああ、深姫は一体何を企んでいるんだ?」

『それなんすけど…アレ自体は「何も考えてない」んじゃないんすか?』

「…それはどういう意味、くうさん?」

『ほら、あったじゃないすか? 何だっけ? 霊子なんちゃら?』

「っ! 「霊子波動収束射出装置」!?」

「Soryu. それは…」

「うん、あの怪物だよね?」

『離島がくっちゃべってたんすけど? アレは深姫の試作型らしいんす』

「え!? マジで!!?」

 

 イヨの驚きにくうさんは平静に回答する。

 

『マジっす。何か霊子…っつか、憎しみみたいな? そういうニンゲンの「負の感情」を集めるモンらしいんすよ』

 

 突拍子も無いが、総督の実力を目の当たりにした一同の中に、反論するモノはいなかった。

 

「…くうさん? あの総督は何者なのですか?」

『知らねーっすよ? ウチが聞きたいぐらいっす。…それで、総督をぶっ飛ばしたワケっしょ? それが気に入らないのか、まだ建造途中のアイツを離島が無理やりして…』

「つまり、あの状態は「暴走している」…と?」

 

 涼月の回答に「それ!」と言いたげに指を指すくうさん。

 

『アイツの歌…? まぁ、聞いた瞬間にウチ以外のヤツらが急に血相変えて…離島は「このまま世界を滅ぼす」とか言い出すし?』

「それで逃げ出して来たって訳?」

『そっす。いやぁ、あん時は死ぬかと思って…皆ウチを裏切りモノーとか言うし、そこまでしてニンゲン滅ぼしたいかねぇ〜って?』

「キミは違うの? ニンゲンたちを滅ぼしたいって思わない?」

 

 ヴェルの問いに、悩ましげに顔をしかめるくうさん。

 

『なんかもう…訳分かんねーんす、自分でも。憎いというより…ウチは「反省しろやこのボケどもーーー!!」って感じなんす』

「そうか…ふふっ、君らしいね?」

『そ、そっすか? っていや、ぜってー馬鹿にしてるっしょ!?』

「何にしろ、彼女が歌で憎しみという感情を引き上げていることは、間違いないようですね?」

「そうですね…私も、彼女と対峙した時に、恐れの他に何か…怒りが込み上げたような?」

 

 神通は自身が深姫と面と向かった時のことを思い出す。

 

『…んで、こっからが重要なんすけど』

 

 くうさんが何か口にしようとした時、ドタドタと忙しない足音が。

 

「(ガチャ)司令官! 大変です!!」

「吹雪さん?」

 

 現れたのは、秘書艦の吹雪。それこそ血相を変えて一同を見回す。

 

「…あ、あれ? 司令官は…?」

「此方には居りませんが?」

「…何かあったのですか?」

 

 吹雪は、少し躊躇う様子だったが、少しして会議室のテレビリモコンを取ると

 

 

 

 ──ピッ

 

 

 

『──只今、衆議院前より中継です! 現在デモ隊による「深海棲艦撲滅運動」が叫ばれています! 凄い人数です! 人が路上を埋め尽くし、暴言が飛び交っています!!』

『殺せーー! 人類の敵を殺せえぇーーーッ!!!』

『政府は何チンタラやってんだー! さっさとやっちまえぇぇーーー!!!』

『深海は敵だあぁーー!! 悪魔どもを根絶やしにしろーーー!!!』

 

 

「…なっ!?」

 

 

 あまりの異常な光景に、目を丸くする一同。

 

 反深海派…引いては誹謗中傷は今に始まったことではないが、それでもここまで大規模なものは、今までにないものである。

 

 そしてその映像を見るに、それは抗議というより「罵詈雑言の嵐」であった。

 

「今現在、各地でこのようなデモが行われているようです!」

「ええー!?」

「…妙ですね?」

 

 徳田を含めた数人が、事態の異様さを感じていた…このタイミングで「これ」は()()()()

 

「緊急避難勧告は出していた筈ですが…?」

「ここの所攻められてばかりだったから、耐えられなくなっちゃったのかな?」

「だからってこの状況で普通やる? 逃げるとかならまだ分かるけど…」

 

 人々の合点のいかない行動に、くうさんが横から話を入れる。

 

『あちゃー、派手にやってるっすねぇ?』

「どういう意味ですか、くうさん?」

『…アレは「アイツ」の仕業なんすよ。一度でもアイツの歌が耳に入ったらヤバくなるっしょ? アイツが藪から棒に攻めて来たのは、ニンゲンたちの不安を煽るためなんす』

「ああ、そっか!」 

「それは何となく想像がつきます」

『ウチが言いたいのは「ここから」なんす。アイツ…深姫はこうやってニンゲンたちの憎しみを高めて…』

「…っ! そうか!」

 

 徳田は意味ありげに机を押し叩きながら立ち上がる。

 

「深姫は…高めた人間の感情をエネルギーに変換し、それを一気に放出するつもりなのか!?」

 

 徳田の言葉に、驚愕の表情で騒つく一同。

 

 …だが、くうさんは「少し違う」と訂正する。

 

『アイツは変換したエネルギーで「自爆」するつもりなんすよ』

「はあぁ!?」

『離島が言うには、限界まで高めれば「世界全体を」滅ぼせる爆弾になるって』

「つまり…「世界規模の核爆弾」というわけですか!?」

「そ、そんな…!」

 

 一同があまりのスケールに唖然としていると、吹雪の後ろから人影が

 

「…何してるん、オマエら?」

「へっ!? …あ! 司令官!!」

 

 提督と、はっちゃん。二人が一同の前に現れた。

 

「提督、お体の具合はいかがでしょうか?」

「おう神通。皆には迷惑かけたな? スマン」

「…? 司令官、感じが変わりました?」

「ん? そうか? よく分からんけどはっちゃんのおかげかもな?」

 

 そう言って提督は、隣の潜水棲姫を見つめる。

 

「え……!? え、は、はっちゃ!? う、ううえぇ!!?」

「あ、やっぱりそうだったんだ」

「良かった…提督が元気になられて」

『つか、吹雪驚き過ぎじゃね?』

「え"っ!? 皆知ってたの?! 何で言ってくれないの!!?」

「まぁ…薄々は」

「そっかーやっぱり貴女だったんだぁ! 古参の皆が聞いたら驚くよ?」

 

 ここに来ての、更なる驚きの事実に各々の反応をする艦娘たち。

 

 …すると、徐に提督が話を切り出す。

 

「…吹雪、事情は後ろで聞かせてもらったけど、これからどうするが?」

「え…?」

「オレはこれから皆に頼みたいことあるから、何かあるんだったら今の内に」

「待ちなさい!」

 

 提督の言葉を遮る徳田。

 

「ぉん?」

「貴方まさか…この状況で出撃する。とか言い出すつもりじゃ!?」

「お! よく分かったな? 流石先生だわ」

「貴方は……ッ、なりません! あの深姫の力は未知数です! まず然るべき対策を…」

「そんなことしよったら、アイツが寂しがって泣いてしまうて。オレはアイツを迎えに行きたいだけだからよ?」

「子供の送迎とは訳が違うのですよ!? 彼女が貴方にとってどのような存在か知りませんが、命を粗末にする行為を! 私は捨て置けません!!」

 

 徳田の言葉に、提督はにこやかに笑って

 

「…ありがとう、先生。でもオレはアイツを…命に代えても守りたいっていう思うから……今度こそ」

「っ! ………本気、なのですね?」

「ああ。…ってことでよ? オマエら、付き合えるヤツはオレに付き合ってくれん?」

 

 提督の顔を見る艦娘たちは、愚問という具合に笑うと

 

「貴方がそう仰ってくれるなら、私たちは貴方を全力でお守りするだけです」

 

 神通が紡ぐ。

 

「司令官、作戦命令を。私は…その信頼に応えてみせる」

 

 ヴェルが綴る。

 

「うふふ、そうこなくっちゃね♪ 勿論、私で良かったらね?」

 

 蒼龍が弁じる。

 

「今更ね? でも、司令官? アンタが命令してくれるなら…守ってやるわよ、この世界ってヤツをね?」

 

 満潮が言い表す。

 

「…そうか、ありがとな? 皆……」

『良カッタデスネ? 提督』

「ああ、はっちゃん……んじゃ吹雪、現在の状況を教えてくれ?」

「え? …っは、はい! もちろんです、司令官!」

 

 提督を基軸に、今、宿毛泊地が動こうとしていた。

 

「…ふぅ、やれやれ」

 

 危なっかしいが、同時に頼もしい彼らの背中を、罪人は見つめる……

 

 

 

 ──此処が己の贖罪の時と、感じながら…

 

 

 

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