「アニ・・・」
はっきりと私の呼ぶ声が聞こえる・・・。
「・・・アニ、起きなさい!!」
今度は身体を揺らしながら、その”聞き覚え”がある懐かしい声が再び聞こえる。
「えっ」
私は飛び起きた。
「もう、本当にアニは朝が苦手だな。早く起きなさい」
目の前にいたのは・・・
「・・・お父さんっ」
会いたかった、”父さん”だった。
訳がわからずしばし呆然とする。
「お父さんっ・・・、会いたかった・・・」
私の瞳から自然に涙が溢れ出す。
「アニっ、どうしたんだい?」
父さんは驚きながらも、優しく私の頭をなでてくれる。
「・・・。お父さん、お父さん・・・」
何が起こったのか、これは”夢”なのか、”死後の世界”なのか・・・。
私の頭は全く動いてくれないけど、とにかく目の前に父さんがいる・・・。
そのことがただただ嬉しくて涙を流し続ける。
「本当に今日はどうしたんだい、アニ・・・」
「・・・、お父さんっ・・・」
「怖い夢でも見たのか?でも大丈夫だよ、父さんがいる・・・」
そう言って、また私の頭を撫でてくれる・・・。
これは本当に”幻”ではないのか、私は”死んだ”はずなのに・・・。
私は自分の身体を触ってみる。
確かにここに存在している、少なくても感触がある。
私は”生きている”のか?ここは?
どういこうことなんだろう・・・。
・・・そのいえば”あの時”なにか声のようなものが聞こえた気がする。
私は父さんの温もりを感じながら、ひたすら考えていると、
「落ち着いたか?」
父さんが優しく声をかけてくれる。
私はなんとか涙を止まったのを感じて、その言葉に頷く。
「よかった・・・。そしたら起きて朝ごはんを食べよう。もうできているよ。」
とにかく起きよう、それから色々考えよう、今は”幻”でも父さんがいることを喜ぼう、と思って寝ていたベッドから立ち上がろうとした時、
「早くしないと”アルミン君”たちが迎えにくるぞ。」
父さんの口から信じられない言葉が私に掛けられた。
「お父さんっ!、今なんて・・・!」
私は思わず声を荒げて父さんに聞き返す。
「うん?、今日は”アルミン君”たちと出かけるって言っていたじゃないか。」
私は絶句した。
父さんの言っていることが理解できない・・・。
なぜ、父さんの口から”アルミン”という名前が当然のように出てくるのか?
いや、それ以前に私はなぜ生きているのか、なぜ父さんが目の前にいるのか?
ここはどこなのか?
頭の中に疑問ばかり浮かんでくる・・・。
「どうしんだい、アニ。具合でも悪いのかい?」
父さんが心底不思議そうに私の顔を見つめながら問いかけてくる。
私は考えを全く整理できず、言葉を発することもできず黙り込んでしまう。
「・・・本当に具合が悪いなら寝ていなさい。アルミン君たちには父さんが謝っておくから。」
父さんが私の様子を見て心配そうに話しかけてくれた。
「ううん、大丈夫・・・。」
私はなんとか首を横にふりながら、父の心配をとにかく否定した。
「・・・そうか。ならよかった。でも無理はしたらだめだぞ。」
「うん・・・。」
まだ私は混乱していたが、父の言葉に今度は頷いた。
「まぁ、今日のこと楽しみにしていたんだから楽しんできなさい。」
父さんは少し安心したように、微笑みながら言った。
「さぁ、ご飯を食べて準備しなさい。」
そういって部屋から父さんが出て行く。
私は訳がわからないながらも、今度こそ立ち上がってその後ろをついて部屋から出た。
私は父の後をついて歩きながら必死になって状況を整理する。
・・・私は生きている。少なくても意識はある。
父さんがいる。一緒に住んでいるらしい。
ここは家?
でも私の”記憶”の中にはない家だ。・・・”懐かしい”感じがするのは不思議だけど。
一番の疑問は、父さんが”アルミン”を知っているということ。
色々な疑問に答えは出ないまま、父さんと食卓についた。
父さんが目でそこに座りなさいと合図を送る。
私は静かに頷いて、椅子に腰かける。
机の上にはパンとサラダがのった皿があり、父さんがスープをよそってくれる。
「ありがとう・・・。」
父さんが私の前にスープを置いてくれた。
私は父さんにお礼を言う。
混乱はしているけど、今この瞬間に父さんがいる、そのことは私の心を少し暖かくしてくれる。
「早く食べて、アルミン君たちと出かける準備をしないとな。」
父さんが私を心配して、優しく声をかけてくれる。
「うん・・・。」
「こんな狭い”壁の中”にいるんだ、仲間たちと遊ぶところも少ないけど楽しんでおいで。」
アニ「えっ・・・」
さっきから父さんの言葉には驚かされてばかりだ・・・。
ここは”壁の中”なんだ。
「本当に今日は様子が変だけど大丈夫かい、アニ?」
驚いて声を失くしている私を心配してくれる父さん。
「・・・ううん、大丈夫だよ。」
父さんにこれ以上心配かけないように、ぎこちない笑顔を作って言葉を返す。
「ならいいのだが・・・。とにかくご飯を食べて準備しないとな。」
「うん、いただきます。」
私は食事をしながら頭の中の整理を続ける。
・・・ここは”壁の中”らしい。
”今”はいったい”いつ”なんだろう・・・?
私は”あの時”、死んではいないみたい。
・・・私は”アルミン”とどんな関係なんだろう。
”戦士”としての”使命”は・・・。
・・・とにかく、情報が少ない。
なんとかして情報を集めないと。
「アニ?本当に大丈夫かい?」
父さんの呼びかけに意識を目の前に戻すと、父さんが不思議そうな顔をしている。
「もうスープは入っていないぞ。」
手元に視線を向けると空になったスープ皿を私は必死になってすくっていた。
「・・・ごめんなさい、大丈夫。ちょっと考えごとしていたから。」
私は慌てて父さんに釈明する。・・・ちょっと恥ずかしい。
「本当にアニはしっかりしてそうで、うっかりさんなんだな。」
父さんが笑う。
父さんの笑顔を見て、私も少し微笑んだ。
「さぁ、食事がすんだら準備を急ぎなさい。もう時間ないぞ。」
「うん・・・。ごちそうさま。」
父さんが私の前の食器も片付けて、洗いはじめようとする。
「私も手伝うよ。」
席を立って父さんに近づきながら言うと、
「いいよ、準備しなさい。もう”アルミン君たち”くる時間だぞ?」
「・・・うん。」
父さんはどこか嬉しそうにそう言って、私を制した。
私は父さんの言葉に従って、自分の部屋(らしい)に戻って着替えることにする。
今からアルミンと会う、らしい。
怖い・・・。
私は一体どんな顔をして会えばいいのだろうか。
アルミンとエレンたち”仲間”を死においやった”記憶”が蘇る。
アルミンは”覚えている”のだろうか・・・。
怖い。
・・・でも会いたい。
部屋に戻り、クローゼットの中の”見慣れない服”からちょっと小奇麗な服を選び袖を通していると、
「アニ!早くしなさい。”アルミン君”たちが迎えにきたよ!」
父さんの呼ぶ声が下から聞こえた。