その表情と声色で、私は悟った。
アルミンは思い出したのだと。
そう、”以前”のことを。
「ア、アルミン・・・」
私は何とか目の前にいるアルミンに向けて言葉を捻りだすようにその名を呼んだ。
「・・・・・・」
アルミンは何も言葉を発せずに私を見つめている。
「アニ、大丈夫か?」
「アルミン、どうかした?」
膝をついたまま止まっている私と、黙ってしまったアルミンを心配してエレンとミカサが駆け寄ってきた。
「わ、私はだい、」
「・・・アニが怪我してしまったみたいだから、一度アニの家に戻って手当てしてくるよ。だからエレンとミカサは先に行っておいて。」
私は大丈夫、と言いかけた私の言葉を遮るようにアルミンがエレンとミカサに答える。
やっぱりアルミンは思い出したんだ・・・。
私たちの過去を。
「本当かよ、大丈夫なのか?」
「なら、私たちも一緒に戻ろう。」
アルミンの口から出た怪我という言葉を聞いて、エレンとミカサも心配そうな表情を浮かべてくれる。
「いや、僕一人で大丈夫だよ。二人は先に行ってお昼ごはんのいいお店でも見つけておいてよ。」
アルミンは優しくも、どこか有無を言わさない口調で二人の申し出を断る。
「・・・」
私は色々なことが頭の中を駆け巡っていたが、アルミンの言葉に同調するように静かに頷いてみせた。
「アルミンがいうなら・・・。」
「わかった。」
エレンとミカサの二人もアルミンのいうことなら、という感じで同意した。
「じゃあ、よろしくね。後で追いかけていくから。」
そのアルミンの言葉にエレンとミカサが頷いて、私たちから離れていく。
私はただ黙って二人の後ろ姿を見送った。
私はゆっくりと、そして唇が乾くのを感じながらアルミンの方に向き直る。
「アニ・・・」
アルミンもゆっくりと私の方に、なんとも言えない悲しみの色を浮かべた顔を向けて私の名前を呼んだ。
「アルミン・・・」
私はアルミンの名前を呼んだ。
罪悪感とある種の恐怖感に苛まれながら。
「アニ・・・」
アルミンはもう一度私の名前を呼んだ。
「わ、私、」
「アニの家の裏で少しゆっくり話そうか・・・」
私は必死で言葉を発しようとしたが、アルミンがそれを遮り、ゆっくりと歩き出した。
「・・・・・・」
私はアルミンの後ろを静かについて歩く。
アルミンも黙ったままだ。
会いたかったアルミン・・・。
謝りたかったアルミン・・・。
そのアルミンが目の前にいるのに。
私は恐怖と焦りで何も言葉にすることができず、ただアルミンの後をついていくことしかできない。
沈黙の時間が無限に続くかと思われたけれど、私とアルミンは私の家裏の木陰についた。