少しずつでも書いていきます。
「私は・・・」
アルミンの顔を何とか見ながら私は言葉を発しようとした。
でも、何を言ったらいいかわからない。
私はいったいどうしたいのだろうか。必死になって考えをまとめる。
・・・もう二度とあんなこと、あんな思いをしたくはない。
私のことを大切に想い優しく接してくれた仲間を、大切な”アルミン”を・・・
仲間に嘘をつくこと、裏切ることの苦しさ。
人の命を奪ったときの悲しみと罪悪感。
そして、仲間や大切な人“アルミン”を失ったときの絶望感。
もう、私は嫌だ。
あんな思いをするのは。
私の言葉を、静かに、強い光を宿しているけど暖かい目で見つめながら待っているアルミンに視線を向けた。
私は自分の思いをはっきりと言葉にする。
「私はもう間違いを繰り返さない。」
アルミンが息を呑むのがわかった。
私はアルミンの瞳を見つめながら言葉を続けようとする。
色々な感情が溢れ出して、涙も溢れ出してしまう。
アルミンはそんな私をじっと暖かい目で見てくれている。
だめだ、ちゃんと言葉にしないと。
「私は、もう”使命”に縛られない。」
「私は、私は・・・、」
なんとか言葉を続けたけれど、嗚咽が止まらない。
言葉を紡ぐたびに、私の頭の中に“昔”の出来事が走馬灯のように駆け巡る。
「私は・・・、もうみんなを裏切らない。」
サシャの食べ物を目の前にしたときの笑顔。
「私は・・・、みんなを守りたい。」
ミーナの心配そうに私を見つめる顔、楽しそうな笑顔。
「私はもう仲間が、みんなが死ぬのを見たくない。」
クリスタの寂しそうな笑顔、恐怖にゆがんだ顔。
“仲間”たちの顔が次々と浮かび、苦しさと罪悪感で心が潰れそうになりながらも必死に言葉を続ける。
”使命”を達成した後、ずっと胸に秘めていた想い。
あの、”最後”の、自分でうなじを切ったときに願ったこと・・・。
それを言葉にするんだ、アルミンに伝えるんだ。
赦してもらないかもしれない。
でも、私はアルミンに伝えたい、伝えないといけないんだ。
止まらない涙を無視して私は言葉を絞り出す。
「私は・・・、私はみんなに謝りたい・・・。」
そして、私は意を決して最後の想いを言葉にしてアルミンに伝える。
「私はアルミンと一緒に生きていきたい・・・。」
その言葉を口にした瞬間、私はその場に膝をついて、声をあげて泣いた。
「アニ・・・。」
ずっと、しずかに私の言葉を聞いていたアルミンが、ゆっくり私に近づいてきた。
アルミンの声を聞いて、私はぎこちなく顔を上げて、恐々とアルミンの顔を見つめる。
そこには私がよく知っている、やさしいアルミンの微笑みがあった。