暗殺教室 28+1   作:水野治

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10年以上ジャンプを毎週買い続けていますが、260円の内の200円分は鬼滅の刃のためだと思っています。
1話を見た瞬間電撃が走り、岩を切るシーンで再度体に電撃が走りました。何が言いたいのかというと今のジャンプでダントツに面白いです。


第6話 支配者とテストの時間

 ~理事長視点~

 

 今日は月に1度の全校集会だ。これは95%の生徒にとって自分達の優秀さを確認するイベントだ。

 私は今PCのモニターで集会の行われている体育館の様子を確認している。

 

「この手はいつも効果的ですね、理事長。これのおかげで3年E組以外の一流高校大学の進学率は非常に高い」

 

「いわばこれは大人の社会の予習です。落ちこぼれまいとする意識を今のうちから強く育てる。悲しいかな人間は…差別し軽蔑する対象があったほうが伸びるのです」

 

 私は常に合理で動く。学校経営も暗殺さえも理に適っていればそれでいい。

 

 …だが。今日のE組はどうだろうか。集会での様子や先程E組の生徒に絡みに行った学生が押し退けられていた。

 それは私の学校では合理的ではない。少し改善する必要がある、私にとっては暗殺よりも優先事項だ。

 

 

 

 

 ~渚視点~

 

 

「学校の中間テストが迫ってきました」

「そんなわけでこの時間は」

「高速強化テスト勉強を行います」

 

 クラス全員目が点になっている。なぜなら殺せんせーが数十人、おそらくクラス全員分の分身をしているからだ。ご丁寧に頭のはちまきにみんなの苦手科目が書かれている。

 

「先生の分身が1人ずつマンツーマンで」

「それぞれの苦手科目を徹底して復習します」

 

 …殺せんせーはどんどん速くなってると思う。国語6人、数学8人、社会4人、理科4人、英語4人、NARUTO1人

 クラス全員分の分身なんて。ちょっと前まで3人ぐらいが限界だったのに。ちなみにNARUTOは寺坂君だ、苦手科目が複数あるって殺せんせーが言っていた。

 

「うわっ!!」

 

 突然殺せんせーの顔が大きく歪んだ。

 

「急に暗殺しないでくださいカルマ君!それ避けると残像が全部乱れるんです!!」

 

 犯人はどうやらというか案の定カルマ君だった…、僕は当然のように感じた疑問を殺せんせーに聞いてみる。

 

「でも先生こんなに分身して体力もつの?」

 

「ご心配なく、1体外で休憩させていますから」

 

「それむしろ疲れない!?」

 

 外を見るとビーチやプールサイドにあるようなベンチに腰かけて飲み物を飲んでいる殺せんせーの分身がいた。

 

 …この加速度的なパワーアップは…1年後に地球を滅ぼす準備なのかな。なんにしても殺し屋には厄介なターゲットでテストを控えた生徒には心強い先生だ。

 

 

――

 

 

「さようなら殺せんせー!」

 

「ヌルフフフ明日は殺せるといいですねぇ」

 

 帰りの時間となったのでそう言って殺せんせーに挨拶をし靴箱に向かう、教員室の中が見える窓があるので中を覗きながら歩いていると理事長がいた。理事長がルービックキューブを急に分解したり殺せんせーが理事長と分かるやすごい速さで下手に出たのが気になったので聞き耳を立ててみることにした。

 

「――いずれご挨拶に行こうと思っていたのですが…、あなたの説明は防衛省や烏間さんから聞いていますよ。まぁ私には全て理解できる程の学は無いのですが…。なんとも悲しい御方ですね、世界を救う救世主となるつもりが世界を滅ぼす巨悪となり果ててしまうとは」

 

 救う…滅ばす?どういうことだろう?

 

「…いやここでそれをどうこう言う気はありません、私ごときがどうあがこうが地球の危機は救えませんし。よほどのことが無い限り私は暗殺にはノータッチです」

 

 理事長は殺せんせーだけでなく、教員室の中を歩き演説しているかのように烏間先生とイリーナ先生にも話している。なんだかわからないけどカリスマ性みたいな、人を惹き付けるものを感じる。

 

「しかしだ、この学園の長である私が考えなくてはならないのは…地球が来年以降も生き延びる場合、つまりあなたを殺せた場合の学園の未来です。率直に言えばE組はこのままでなくては困ります」

 

「このままと言いますと成績も待遇も最底辺という今の状態を?」

 

「働き蟻の法則を知っていますか?どんな集団でも20%は怠け、20%は働き、残りの60%は平均的になる法則。私が目指すのは5%の怠け者と95%の働き者がいる集団です。『E組のようにはなりたくない』、『E組にだけは行きたくない』、95%の生徒がそう強く思う事で…この理想的な比率は達成できる」

 

「…なるほど合理的です。それで5%のE組は弱く惨めでなくては困ると」

 

「今日D組の担任から苦情が来まして、『うちの生徒がE組の生徒からすごい目で睨まれた、殺すぞと脅された』という内容でした」

 

 僕のことじゃないか…。かなり脚色されてるけど根も葉もないことではないから反論もできない。

 

「暗殺をしてるのだからそんな目付きも身に付くでしょう、それはそれで結構。問題は成績底辺の生徒が一般生徒に逆らうこと、それは私の方針では許されない。以後厳しく慎むよう伝えてください。」

 

 そう言うと理事長は懐に手を入れて何かを殺せんせーに向かって投げ渡した。あれは…知恵の輪!?

 

「1秒以内に解いてくださいッ」

 

「え、いきなりッ…」

 

 瞬間殺せんせーが知恵の輪にテンパり絡まっていた。なんてザマだ。

 

「噂通りスピードはすごいですね、確かにこれならどんな暗殺だってかわせそうだ。…でもね殺せんせー、この世の中にはスピードで解決できない問題もあるんですよ。…では私はこの辺で」

 

 そう言って理事長は教員室を出ようとした。僕は聞き耳を立てていたことがばれたくなかったので素早く窓から離れ死角に隠れる。

 ちょうど隠れ終わるのと同時に理事長が出てきたので思わず目が合ってしまった。微妙な空気が流れる。

 

「やあ!中間テスト期待してるよ、頑張りなさい!」

 

 乾いた言葉と笑顔だった。そのとても乾いた"頑張りなさい"は一瞬で僕を暗殺者からエンドのE組へと引き戻した。

 

 

 

 

 ~南雲視点~

 

「「「さらに頑張って増えてみました、さぁ授業開始です」」」

 

 …増えすぎだろ!そう思わずにはいられない。残像もかなり雑になっているしドラえもんやミッキーが混ざっている。

 

「…どうしたの殺せんせー?なんか気合い入りすぎじゃない?」

 

「んん?そんなことないですよ?」

 

 茅野がみんなの気持ちを代弁するかのように質問してくれたが殺せんせーは何もなかったと言う。…昨日の今日でいきなり変わったら何かあるに決まってるはずだ。ある日突然今まで聴いていなかったアーティストを聴き始めたら恐らく好きな人が聴いているからとかそんなんだし、腕に突然包帯を巻きだしたらそれは中二病だ。

 つまり何でも行動には理由があるのだ。まあジョジョでは人を助けたときに"おれにもようわからん"とか"なにも死ぬこたあねー"とか言ってたから理由なき行動もあるんだろう。

 そんな無駄なことを考えていると授業の終了を告げるチャイムが鳴った。

 

 

――

 

 

 授業が終わり疲労困憊といった様子で教壇に肘を置いて複数の触手で団扇を扇ぐ殺せんせー、それを見た岡島と前原が声をかける。

 

「…さすがに相当疲れたみたいだな」

 

「なんでここまで一所懸命先生をすんのかね~」

 

「…ヌルフフフ、全ては君たちのテストの点を上げるためです。そうすれば君たちから尊敬の眼差しを一身に受けたり、先生の評判を聞いた近所の巨乳女子大生に勉強を教えられるかもしれない。まさに先生には良いことずくめ」

 

 まあ女子大生は置いといて俺たちが尊敬の眼差しを向けるっていうのはその通りだと思う。殺せんせーの話を聞いたクラスの大半は互いに顔を合わせ言葉が交わされない微妙な空気が流れる。無言を破ったのは三村だった。

 

「…いや勉強の方はそれなりでいいよな」

 

「…うん、なんたって暗殺すれば賞金百億だし」

 

「「「百億あれば成績悪くてもその後の人生バラ色だしさ」」」

 

「にゅやッ、そういう考えをしてきますか!」

 

「俺たちエンドのE組だぜ、殺せんせー」

 

「テストなんかより…暗殺の方がよほど身近なチャンスなんだよ」

 

 …上手く説明はできないがその考えは間違っていると思った。何もしない先から駄目だと決めつけてしまうのは怠惰だ、テストを欠席してE組に落ちた俺が偉そうに言えることではないが今のE組には怠惰の空気が流れている。

 

「なるほど、よくわかりました」

 

 顔の模様をバツ印に変えて殺せんせーは言う。

 

「今の君たちには…暗殺者の資格がありませんねぇ。全員校庭へ出なさい、烏間先生とイリーナ先生も呼んでください」

 

 殺せんせーが校庭へと向かったのでそれに続いて俺たちも校庭へ向かう。クラスの大半はなぜ殺せんせーが急に不機嫌になったか理解できてない様子だったが何人かはなんとなく何かを察してる様子の人もいる。おおよそ先ほど俺が考えていた内容で間違いないと思う。

 

 校庭に着くと殺せんせーがサッカーのゴールをどかしていた。そしてこちらを向くとビッチ先生を指差し尋ねる。

 

「イリーナ先生、プロの殺し屋として伺いますがあなたはいつも仕事をするとき用意するプランは1つですか?」

 

「…いいえ、本命のプランなんて思った通り行く事の方が少ないわ。不測の事態に備えて予備のプランを綿密に作っておくのが暗殺の基本よ」

 

「では次に烏間先生。ナイフ術を生徒に教えるとき重要なのは第一撃だけですか?」

 

「……第一撃はもちろん最重要だが次の動きも大切だ。強敵相手では第一撃は高確率でかわされる、その後の第二撃、第三撃をいかに高精度で繰り出すかが勝敗を分ける」

 

「先生方の仰るように自信を持てる次の手があるから自信に満ちた暗殺者になれる。対して君たちはどうでしょう?」

 

 殺せんせーの問いかけにみんなはハッとなり、バツの悪そうな顔になる。俺も心のどこかにそんな気持ちがあったかもしれないと今までの生活を省みる。

 

「"俺らには暗殺があるからそれでいいや"…と考えて勉強の目標を低くしている。それは劣等感の原因から目を背けているだけです。」

 

 話ながら殺せんせーは残像すらも見えない速さでその場で回転している。あまりの速さからか校庭に竜巻が起きるが尚も話を続ける。

 

「もし先生がこの教室から逃げ去ったら?もし他の殺し屋が先に先生を殺したら?暗殺という拠り所を失った君たちにはE組の劣等感しか残らない…、そんな危うい君たちに先生からのアドバイスです。」

 

 竜巻の大きさが最大となりそれと共に先生の話も山場を迎えたらしい。

 

「第二の刃を持たざる者は…暗殺者を名乗る資格なし!」

 

 竜巻が止むと同時に雑草や小石が校庭の端に滝のように音をたてて落ちまとめられる。整備のされていない校庭が甲子園の試合開始前のように綺麗になっていた。

 

「校庭に雑草や凸凹が多かったのでね、少し手入れしておきました。みなさんお忘れかもしれませんが先生は地球を消せる超生物、この一帯を平らにするなど容易いことです」

 

 烏間先生を含め全員が言葉を失っている。それもそのはず、一瞬でクラス全員分の表札を集めてくるより遥かに凄まじい超常現象を目の当たりにしたのだから。

 

「もしも君達が自信を持てる第二の刃を示せなければ、相手に値する暗殺者はこの教室にはいないと見なし校舎ごと平らにして先生は去ります」

 

「…その第二の刃はいつまでにですか?」

 

「決まっています、明日です。明日の中間テストクラス全員50位以内を取りなさい」

 

 俺の問いかけに間髪入れず答える殺せんせー。全員50位以内?そんなこと可能なのか?…いや可能かどうかじゃない、やるしかない。

 

「君たちの第二の刃は先生が既に育てています。本校舎の教師達に劣るほど先生はトロい教え方をしていません。自信を持ってその刃を振るって来なさい、ミッションを成功させ恥じる事なく笑顔で胸を張るのです。自分達が暗殺者であり…E組であることに!」

 

 最後はいつも通りの殺せんせーだった。俺たちを安心させる間の抜けた笑顔で教壇に立って授業をする、そんな感じで話をしてくれた。

 周りを見ると甘えた中途半端な空気は既に消え、そこには仕事人のような顔になっているみんながいた。

 

 

 

 

「…これは一体どういうことでしょうか、公正さを著しく欠くと感じましたが」

 

 テストが返却されクラスが沈んだ空気を漂わせている中、烏間先生が抗議の電話を本校舎にかけている。殺せんせーに第二の刃を示せと言われ俺達は忸怩(じくじ)たる思いを消すかのようにテストに望んだ、しかしクラスのほとんどはことごとく惨敗という結果になった。

 

「伝達ミスなど覚えはないしそもそもどう考えても普通じゃない。"テスト2日前に出題範囲を全教科で大幅に変える"なんて」

 

 そういうことだ、テストの序盤の問題は勉強した通りの内容が出たのだが後半の問題は俺達が聞いていた出題範囲とは大きく異なった問題が出されていた。それがこの結果だ。

 殺せんせーは教壇に立っているが俺達生徒の方ではなく黒板の方を見て背中を向けている形となっている。

 

「…先生の責任です、この学校の仕組みを甘く見すぎていたようです。…君達に顔向けできません」

 

 瞬間、対殺せんせーナイフがカルマから投げられる。後ろを向いていたのにも関わらず殺せんせーは避ける。

 

「いいの~?顔向けできなかったら俺が殺しに来んのも見えないよ?」

 

「カルマ君!先生は落ち込んで…!」

 

 カルマはテスト用紙を殺せんせーに手渡すとそのまま話を続ける。

 

「俺問題変わっても関係ないし、俺の成績に合わせてあんたが余計な範囲まで教えたからだよ」

 

 すげぇ、合計494点かよ。ん?494点?

 

「たぶん南雲も余計な範囲まで教えられてたから同じ感じじゃない?」

 

 カルマの言葉を聞いて殺せんせーが一瞬で俺の目の前に来てテスト用紙を確認する。各教科の点数は違えど合計点数が同じなのだ。

 

「だけど俺はE組を出る気ないよ、前のクラス戻るより暗殺の方が楽しいし。南雲もそうでしょ?」

 

「当たり前だ」

 

「…でどーすんのそっちは?全員50位に入んなかったって言い訳つけてここからシッポ巻いて逃げちゃうの?それって結局さぁ、殺されんのが怖いだけなんじゃないの?」

 

 うわー煽りよる、殺せんせーの顔どんどん赤くなってきてるし。カルマの意図をクラス全員理解したのか流れに乗って煽っていく。

 

「なーんだ殺せんせー怖かったのかぁ」

「それなら正直に言えばよかったのに」

「ねー?怖いから逃げたいって」

 

「にゅやーッ!逃げるわけありません!期末テストであいつらに倍返しでリベンジです!」

 

 怒った殺せんせーを見てクラス全員が笑顔になる。

 中間テストで俺達は壁にブチ当たった。E組を取り囲む作られた分厚い壁に。…それでも俺は心の中で胸を張った、自分がこのE組であることに。

 

 

 *

 

 

 ~放課後、帰り道~

 

 

「ねえ純一、なんであんな点数よかったの?」

 

「俺はやればできる子なんだよ」

 

 俺は莉桜と一緒に帰っているが話題はやはり今日のテストだ。

 

「いや今そういうのいいから」

 

「んー…1、2年のころの俺の成績知らん?」

 

「…関わりなかったし正直知らない」

 

「自慢みたくなるからあまり言いたくないが全部のテスト10番以内には入っていた」

 

「へぇ~意外ね」

 

「だからYDKなんだって」

 

 椚ヶ丘中学校に入学してきてる時点でみんなそれなりに、というか相当に頭が良いはずだからやればできるはずだ。それになんとなく苦手意識のある社会も好調だったのでカルマと同率4位を取ることができた。

 

「ところで純一は修学旅行の班どうするか決まった?」

 

「いや決まってないな」

 

「じゃあ私のとこ来ない?凛香とかいるよ」

 

「今のフレーズ氣志團みたいだったぞ。…ま、ありがたく入れさせていただきます」

 

「じゃあ男子は適当に誰か誘っといてね~」

 

「渚とか?」

 

「?なんでそこで渚?」

 

「いやなんとなく、まあ適当に声かけてみるよ」

 

「じゃあよろしく~」

 

 その後は他愛もない話をして帰った。

 テストの次は修学旅行か。中学3年に進級してからというものの、今までと比べて内容の濃い生活を送っている。

 暦はまだ5月。夏を感じさせる風も吹くが春のような目新しい空気も感じるこの時期が俺は好きだ。




会社の内示がそろそろ出るんでなんとなく落ち着かないです。
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