暗殺教室 28+1   作:水野治

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オリジナル回です。


第7話 準備の時間

 眠い目を擦りながらリビングに行くと父さんが朝食を作っていた。

 

「おはよーっす」

 

「おう、ちゃんと起きれたみたいだな」

 

「どんなに夜更かししても休日早く起きないと損した気分になるから」

 

「まったく誰に似たんだか」

 

 たぶん父さんだと思うがあえて返答しない。

 

「今日朝飯なに?」

 

「ふっ見て驚け、ラピュタパンだ」

 

「驚くもなにも思い切り昨日の金曜ロードショーに影響されてるよね」

 

「映画では目玉焼きだけだがこれにはベーコンもついてるぞ」

 

「マヨネーズは?」

 

「お好みで」

 

「了解」

 

 台所を覗くと昨日の夜のスープも暖めていたので洋食チックな朝食だ。朝はご飯派だが特別なこだわりもないため今日みたいにパンの日もある。それが南雲家の食卓もとい朝食事情。

 

「飯食って9時過ぎに家出るか」

 

「オッケー」

 

「おやつは何円までだ?」

 

「今時そんなの守る方が少ないよ」

 

「バナナはおやつに含まれるのか?」

 

「ボケが微妙に古いよ」

 

 父さんの小ボケに対してツッコミを入れつつ食事を進める。バナナはおやつに入りますかという様式美とも言える質問に代わるお題はないのだろうか。ゼリーだとバナナほどのインパクトはないしグレーゾーンでもない。なんだろう、ハニトーとかカステラ辺りだろうか。

 

 朝御飯も食べ終わり身支度をする、これから行くのは大型ショッピングモールなので誰かに会うかもしれないのでちゃんとした服装に着替える。

 修学旅行ということで今日は父さんと旅行の際に必要なものを買いに行くというわけだ。細々したものが多くなる予定なので車で向かう。

 

「オッケー準備できた」

 

「車でかけるCDが決まんないから待ってくれー」

 

「ピロウズの気分だからピロウズで」

 

「父さんは林檎がいいな」

 

「じゃあ行きがピロウズで帰りに林檎で。ていうか聴きたいアーティスト決まってるじゃん」

 

 今決まったんだよと父さんは笑いながら返す、ちなみに林檎とは椎名林檎のことだ。

 財布、携帯と最低限の物を持って車に乗り込む。到着まで約20分、前回父さんと外出したのはいつだったかなと記憶を遡る。

 

 

――

 

 

「ピロウズってやっぱり男女の曲っていうか恋愛の曲多いよな」

 

「まあ他のアーティストと違ってバリエーション豊かだし上手くいきましたーってのは少ないけどね」

 

「恋愛といえばお前好きな子いないのか」

 

「恐ろしく雑な話題転換だな」

 

「思春期真っ只中に聞くのもなんだけど実際どうなんだ」

 

「いや可愛いと思うことはあっても好きとはならんな」

 

「莉桜ちゃんはどうなんだ?」

 

「たぶん父さんが今の莉桜見たら別人だと感じると思う」

 

「へー今どんな感じなの?」

 

「金髪ですごい騒がしい」

 

「へー久しぶりに会ってみたいな。今度家に連れて来てよ」

 

「後半だけ聞くとセクハラ親父だな」

 

「そんな気持ちは微塵もないからな、俺は母さん一筋だから」

 

「その言葉何回も聞いたよ、てか髪の色に関して何も気にしないんだ」

 

「別に髪型や髪色で人間性が問われるわけではないと俺は思ってるからな。世間一般で見たら俺みたいのは少数派だけど」

 

「そんなもんかねえ」

 

「そんなもんだよ、これから俺も渋さを表すかのように髪が少しずつ銀色になっていくから見とけよ」

 

「それはただの白髪だ」

 

 30代だしまだそんな心配いらないだろうに。白髪のメカニズムはわからないがなんとなくストレスで増えるイメージがある、そう考えたら父さんより烏間先生のほうがヤバイんじゃないだろうか。ここにはいない人の心配をしていると目的地が見えてきた。

 

 

 

 

「じゃあ俺は先に食材買ってから後で合流するから先に必要な物を見ててくれ」

 

「オッケー、荷物持ちはしなくていい?」

 

「ふっまだまだ現役だ、なんか飲み物買っとくけど何がいい?」

 

「車の中で飲む用に500mlのミルクティー、家用にコーラ」

 

「了解」

 

 そう言って二手に別れる。あっ旅行分の飲み物頼むの忘れてた、まあ当日に自販機で買えばいいか。

 とりあえず歯ブラシ辺りのエチケット辺りから見る。父さん曰く家用とは別に用意しておいた方がなにかと楽らしいので使い捨てではなくちゃんとしたものを選ぶ。先人の知恵というか三十数年生きてるだけあって様々なことに詳しいなと思いながら商品を見ていく。

 

 

――

 

 

「あー!南雲君だ」

 

 クラスで聞き覚えのある声がしたので声のした方向を向くと女子三人組がいた。

 

「茅野か、同じ班の三人と一緒ってことは買い出しだな」

 

「おーさすが!学年4位は察しがいい!」

 

「いやE組ならたぶん誰でもわかると思うぞ」

 

「そうかなー?ところで芳香剤の匂い嗅ぎながら話すのやめない?」

 

「…いや嗅いでる最中に話しかけてくるから」

 

 茅野に指摘された通り俺は芳香剤売り場にいた。流れで商品を見てたら芳香剤にたどり着きテスターを開けては嗅ぐを繰り返していた。

 

「ひょっとして…匂いフェチ?」

 

「断じて違う」

 

 匂いフェチのレッテルを貼られては例え事実無根であってもカルマと莉桜にからかわれまくる、それだけは阻止したい。

 

「あーでも嗅いだことのない匂いの商品を見ると手を伸ばしてしまうな。てことで奥田、今度色々と調合して作ってみて」

 

「えっ私ですか!?」

 

「うん、化学得意だし好きじゃん。殺せんせー用の毒も作ってたし。ついでついで」

 

「えーと、じゃあ今度試してみますね」

 

「おう、調合したら是非呼んでくれ」

 

「あっ私も!」

 

「私もいいかな?」

 

 俺の提案に思いの外女子たちが乗ってきた。イメージで語るのは好きくないがこういうフレグランス的なのはやっぱり男子より女子だなと思った。

 

「話戻すけど修学旅行の買い出しで何か入用な物って特別ないよな?」

 

「うーん…特にないんじゃない?女子的には化粧水とかハンドクリーム忘れたらショックだけど」

 

「茅野さん大丈夫だよ、忘れたら私の貸すから」

 

「か、神崎さん…!」

 

「神崎だったらそういうところしっかりしてそうだし大丈夫そうだよな、茅野と違って」

 

「むー、南雲君って私の扱い雑じゃない?」

 

「そんなことないそんなことない。なあ、奥田?」

 

「えっ…うーん…同じ言葉を二回繰り返すときってどうでもいいことって聞いたことあります…」

 

 あっ爆弾投下しやがった。

 

「えー!私のことどうでもいい存在だと思ってるの!?」

 

「なんだその反応、ヒステリックな彼女か。違うよ、何となく男子と同じ感じの返しになるだけだよ」

 

「全然フォローになってないよ!」

 

「あーあれだ、そう、妹的な!」

 

「なるほどー、南雲君って妹いるの?」

 

「いや、一人っ子だよ」

 

「やっぱり適当に返事してるでしょ!」

 

「いやいや、本当に適当には返事してないよ」

 

「本当~?嘘じゃない~?」

 

「本当だよ。ジュンイチ、ウソツカナイ」

 

 俺と茅野のやり取りを見て奥田はあたふたした感じ、神崎は上品に笑っている。大人しい二人でもこうも反応に違いがあるんだな。

 

「ところで南雲君は一人で来たの?」

 

「いや、父さんと来たよ。何一つ旅行の準備してないから車のほうが楽だと思って」

 

「そうなんだ、それでお父さんは?」

 

「先に食材とか買ってるからもうそろ終わってこっち来ると思うけど」

 

「嫌じゃなかったら見てみたいんだけどいい?」

 

「全然いいよ、父さんもその辺は気にしないと思うし」

 

「二人もいいかな?」

 

 茅野の提案に二人は控えめに了承していた。

 

「でも珍しいね、大抵の人は親と会わせたくないって人多いのに」

 

「変な人だったら俺も会わせたくないけど変な人じゃないからな」

 

「へぇ~、どんな感じの人なの?」

 

「芸能人で言えば竹野内豊みたいな感じかな」

 

 俺が喋り終わるのと同時くらいに肩をとんとんとされたので後ろを振り返る。頬に人差し指が刺さった。

 

「うわー親にやられてもときめかねー」

 

「じゃあ三人の内の誰かにやられたらときめくのか?」

 

「やられてないからわからん」

 

「そうか、三人ともこんにちは。純一の父の竹野内豊です」

 

「いや、違うだろ。南雲家の人間だろ」

 

 父さんの言葉に三人は挨拶を返す。

 

「すごい、一発で親子ってわかる」

 

「いやどこが」

 

「見た目似てるしイケメン親子だ」

 

「だってさ、父さん。よかったな」

 

「最近言われないから嬉しいねー、三人も可愛いよ」

 

「後半だけ抜き出したらやべえやつだな」

 

「抜き出すな、流れを見ろ」

 

「抜き出してないから安心してくれ」

 

「なんかすごい仲良いね」

 

 茅野の言葉に奥田と神崎は同調するように頷いていた。

 

「純一、女の子と話してばかりいないで目当てのピッケルは見つけたのか」

 

「なんでピッケルだよ、雪山には行かないよ」

 

「虫アミも忘れたらダメだぞ」

 

「あっモンハンのほうか。どっちにしろ旅行には絶対に必要ないよ」

 

 俺と父さんのやり取りを見て神崎だけ笑っていた。どうやらモンハンネタが通じたらしい。

 

「ごめん、三人とも。やっぱり変な人だった」

 

「ううん、そんなことないよ。お父さんと仲が良くて羨ましいな」

 

「そう?引いてない?大丈夫?」

 

「どんだけ心配なんだ。ところで三人の名前はなんて言うんだ」

 

「髪をサイドにまとめてるのが茅野、眼鏡をかけているのが奥田、ロングでおしとやかなのが神崎」

 

「茅野さんに奥田さんに神崎さんね、よし覚えた。三人ともうちの純一と仲良くしてやってね」

 

「いえいえ、こちらこそ」

 

「なんで急に真面目になってんだ」

 

「父親らしいこともしておこうかなと」

 

 いつもちゃんと父親してもらってるよと思ったが恥ずかしいので口には出さない。

 

「そろそろ買い物に戻るかな」

 

「せっかく会えたのにもういいのか?」

 

「互いに買い物あるし、なあ?」

 

「そうだね、名残惜しいけどまた学校で」

 

「三人ともいつでも家に遊びに来ていいからな」

 

「息子の意志も聞かずに誘うな」

 

「南雲君は嫌なの?」

 

 首をかしげながら聞いてくるんじゃない、神崎。それやられたら嫌でも嫌って言えないでしょ。

 

「嫌じゃないから別に構わんけど」

 

「本当?じゃあ今度行ってもいいかな?」

 

「都合のいい日があったら」

 

「ふふ、楽しみにしてるね」

 

「じゃあ俺達は行くよ、三人ともまた学校で」

 

「うん、またね南雲君」

 

「バイバーイ」

 

「父さんじゃなくて俺に言ったんだよ」

 

 三人に別れを告げ買い物へと戻る。ちゃんとした服装で来て正解だったなと思う。それにしてもこの父親は友達の前でもいつも通りすぎるな。

 

 

 

 

 買い物も無事に終わり、今は帰りの車に乗っている。

 

「みんないい子そうだったな」

 

「実際いいやつだよ、まだ1ヶ月ちょっとしか一緒に過ごしてないけどなんとなくわかる」

 

「お前も楽しそうだったしよかったよ」

 

「そうかい」

 

 俺の返事を皮切りに車内にはしんとした空気が流れ、椎名林檎の曲だけが響く。少し間が空いたあと父さんが口を開く。

 

「まあ父親としたら不安なんだよ、本人がどんなに学校が楽しいって言ってても直接見てる訳じゃないし。そういった意味でもクラスメートと仲良くしてるのを見れたし本当によかったよ」

 

「そうかい」

 

「うん、そうだ」

 

 またも車内は静まり返る。

 

「父さんは…」

 

「ん?」

 

「たまには父親らしいこともしておくって言ってたけどいつもしてもらってるよ」

 

「本当か?それならよかったよ」

 

「ん」

 

「なに外を見てんだよ~、照れてんの?」

 

「うるせー、ちょっと恥ずかしいんだよ」

 

「可愛いとこあんじゃーん」

 

「思春期真っ只中の中学生をからかうなよ、昔は父さんもからかわれたくなかったろ?」

 

「そりゃ父さんも中学生のときはそう思ってたよ。でもな、純一。この年になって中学生の息子を持つとからかいたくなるんだよ」

 

「なんだよそれ」

 

「父親になって子供ができたらきっと、いや絶対にわかるよ」

 

「そうかい」

 

 結婚…か、全然想像もできないな。そもそも付き合った経験もなにもないし。いつか結婚するのだろうか、そんな遠い未来を想像している俺を乗せた車は家へと走る。

 

 

 

 

 ~個人トーク~

 

 

 神崎:旅行楽しみだね

 

 南雲:そうだな、今日会えてびっくりしたよ

 

 神崎:私も。お父さんとすごい仲がよかったね

 

 南雲:あそこまで仲良いのは俺の家くらいじゃないか

 

 神崎:そうなのかな?ちょっと羨ましいな

 

 南雲:神崎のとこは仲が悪いのか?

 

 神崎:うん…父親が厳しくてね

 

 南雲:そうなのか、ごめんな嫌なこと聞いて

 

 神崎:ううん、気にしないで

 

 南雲:時間が解決してくれるんじゃないか

 

 南雲:反抗期とか色々あるしその内普通に話せるようになると思う

 

 神崎:ありがとう

 

 南雲:いえいえ、班違うけど旅行でもよろしく

 

 神崎:こちらこそお願いします




寝る前に木曜日のフルットを読んだらいい感じに眠気が襲ってくるという発見をしました。
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