修学旅行の班については南雲君が2班に入り、元々原作で2班にいた三村君は3班に行ってもらいました。
今日は修学旅行当日。天気にも恵まれ集合場所である駅まで問題なく到着することができた。烏間先生がE組の人数確認などを行っているが殺せんせーがどうも見つからない。国家機密だから現地で合流するのだろうか。
ちなみに班編成は、
1班:磯貝、木村、前原、岡野、片岡、倉橋、矢田
2班:俺、岡島、菅谷、千葉、凛香、莉桜、不破
3班:竹林、寺坂、三村、村松、吉田、原、狭間
4班:カルマ、友人、渚、茅野、神崎、奥田
となっている。
そうこうしていると新幹線の発車時刻が近くなってきたため車内へと乗り込む。
「うわ…A組からD組まではグリーン車だぜ」
「うちらだけ普通車、いつもの感じね」
「まあまあ、みんなと一緒ならどこでも楽しいだろ」
「それはそうなんだけどー…」
俺が菅谷と莉桜を宥めていると後ろから「ごめん、あそばせ」と聞こえてきたので振り返る。
「ごきげんよう生徒達」
「ビッチ先生、何だよそのハリウッドセレブみたいなカッコはよ」
「フッフッフッ、女を駆使する暗殺者として当然の心得よ」
木村の質問にビッチ先生はさも当然のように説明を始める。
「狙っているターゲットにバカンスに誘われるって結構あるの。ダサいカッコで幻滅させたらせっかくのチャンスを逃しかねない。良い女は旅ファッションにこそ気を遣うのよ」
旅ファッションに気を遣うのもいいけど俺等にも気を遣ってほしい。あっ烏間先生が来た。
「目立ちすぎだ、着替えろ。どう見ても引率の先生のカッコじゃない」
「堅い事言ってんじゃないわよカラスマ!ガキ共に大人の旅を…」
「脱げ、着替えろ」
――
先程の元気なビッチ先生はどこへやら。寝巻きに着替えてしくしくと泣いている。
「誰が引率だかわかりゃしないな」
「金持ちばっか殺してきたから庶民感覚がズレてるんだろね」
「ところで殺せんせー見てない?」
「確かに新幹線が出発したのに見てないね」
渚と話していて車内を探すように見ていると渚がいきなり声をあげて驚いたのでそちらを見る。うわっこれはビビる、新幹線の窓に殺せんせーが張り付いている。普段あり得ないことを目にすると声が出てしまうな。渚はすかさず携帯を取り出し殺せんせーへと電話する。
「何で窓に張り付いてんだよ殺せんせー!」
「いやぁ…駅中スウィーツを買ってたら乗り遅れまして、次の駅までこの状態で一緒に行きます。なにご心配なく、保護色にしてますから服と荷物が張り付いてるように見えるだけです」
「それはそれで不自然だよ!」
――
「いやぁ疲れました、目立たないよう旅するのも大変ですねぇ」
「そんなクソでかい荷物持ってくんなよ、ただでさえ殺せんせー目立つのに」
「てか外で国家機密がこんなに目立っちゃヤバくない?」
「にゅやッ!?」
「その変装も近くで見ると人じゃないってバレバレだし」
各々殺せんせーへと意見する。変装は確かにまずいよなー、人じゃないってバレてないだけすごいと思う。
「殺せんせー、ほれ。まずそのすぐ落ちる付け鼻から変えようぜ」
「…おお!すごいフィット感!」
「顔の曲面と雰囲気に合うように削ったんだよ、俺そんなん作るの得意だし」
菅谷が先生へと新しい鼻を作ったがなかなかどうして、焼け石に水くらいには自然になった。旅行となると皆の意外な一面が見れるなと思いながら自分の座席へと戻る、すると不破が大富豪をしようと提案してきたので俺は快諾し大富豪を始めた。
――
一日目の日程をこなし、旅館にに到着する。旅館の名前は"さびれや旅館"だ、客商売をするにしてはありえないネーミングだなと思う。
殺せんせーは入口の近くにあるソファで顔を青白くし瀕死となっている。
「新幹線とバスで酔ってグロッキーとは…」
「大丈夫?寝室で休んだら?」
心配してるのは岡野だが言動とは裏腹にナイフで暗殺を試みてる。
「いえ、ご心配なく。先生これから1度東京に戻りますし、枕を忘れたので」
(((あんだけ荷物あって忘れ物かよ!)))
グロッキーな殺せんせーを置いて部屋に行こうかなと思ったら神崎が何かを探すように鞄の中身を確認している。俺は鞄の中が見えない位置から話しかけることにした。
「どったの神崎?忘れ物?」
「ううん、日程表が見つからなくて」
「朝はしっかりあったのにね」
落としたのかな?そう思っていると殺せんせーが話しかけてきた。
「神崎さんは真面目ですからねぇ、独自に日程をまとめてたとは感心です。でもご安心を、先生手作りのしおりを持てば全て安心」
「そんな分厚いのを持って歩きたくないからまとめてたんだと思うけど」
「確かにバッグに入れてたのに…、どこかで落としたのかなぁ」
なんとなく神崎が落ち込んでたので気休めだが俺は鞄から飴を出して渡す。
「ほれ、神崎。これでも食べて元気出せよ」
「ありがとう。南雲君って飴好きだよね」
「喉潤うし、何より美味しいからね。もし日程表が見つからなくても奥田と茅野がいるしきっと大丈夫だろ」
「うん、ありがとう。茅野さん、もし見つからなかったら見せてもらってもいいかな?」
「もちろん!」
旅行初日からアクシンデントとまではいかないがツイていないなと思った。ところで運が良い状態をツイてると言うが語源はなんなんだろうか。
*
修学旅行2日目。昨日は男子で枕投げをして全員雑魚寝で寝たせいかなんとなく疲れが残っている。
俺達E組の修学旅行は当然の事ながら暗殺もかねている。具体的には2日目と3日目が班別行動となっているがその際殺せんせーはそれぞれの班を順番に回って付き添う予定となっているのでプロのスナイパーが狙撃を行う手筈だ。各班はスナイパーの配置に最適なスポットへと誘い込むように烏間先生から言われている。
俺達2班は東映太秦映画村で暗殺を行う。男子が言わずもがな疲れているので女子が先導していく。
「ちょっと純一、そんなんで大丈夫なの?」
「まだ朝だから調子出ないんだよ。それにしても莉桜は元気だな、何か良いことでもあったのか?」
「なにバカなこと言ってんの、ていうか昨日夜何してたの?」
「枕投げ、敵側だった千葉が強いのなんの」
「それで結局どっちが勝ったの?」
「俺も千葉も疲れてそのまま寝た」
「ふーん、純一と引き分けなんて千葉君やるじゃん」
千葉のコントロールが良すぎて気を抜けなかったのが疲れた原因だなと分析。とりあえず飴でも舐めるかと思いバッグから取り出す。
「みんな飴食う?純露だけど」
「おっもらうわ」
「せんきゅー」
「…どうも」
「気が利くじゃん」
「…本当に飴好きだね」
「飴が好きな漫画キャラいたかな?」
各々一言ずつ言ってから持っていく。不破の一言に関して考えてみたが思い付かない。飴好きのキャラなんて誰かいたかな?
――
「おー無事に到着したな」
「純一ちょっとちょっと」
「ん?どうした?」
「女子三人の写真撮ってよ」
「了解、じゃあ男子の分も撮ってくれよ」
「オッケー、殺せんせー来たら全員でも撮ろうよ」
「そうだな、じゃあ撮るぞー。はいチーズ」
言葉と同時にカメラのシャッターを切る。そしてそのまま携帯のカメラも起動させそちらでも撮る。
「あとで送っとくよ、じゃあ次は男子だな」
「ほいほい、ちゃっちゃと並んで」
ぞろぞろと男子は並び始める、俺を始めとしてみんなまだ本調子じゃない感じだ。ちゃっちゃと動けないし、いつもより動きに無駄が多い。写真を撮ったあとに莉桜にいつまでもそんなんだったらケツを蹴飛ばすよと低めに脅されたので男子陣は空元気に振る舞う。
俺達が映画村で行う暗殺は映画村で殺陣が行われるのでそれに気が向いている隙に殺せんせーを狙撃してもらうというものだ。人が多いし、俳優達はいつもより派手に立ち回るらしいのでいつもとは違う暗殺になるはずだ。
時刻が11時にさしかかろうとしたときに殺せんせーが来た、つまり1班は暗殺に失敗したということだ。たしかトロッコ列車だったか。
「遅いよー殺せんせー、殺陣始まっちゃうでしょー」
「いやぁすみません、保津峡の絶景が素晴らしくて…」
「まあとりあえず写真撮ろうぜ」
近くを通りかかった人に写真を撮ってもらうように交渉すると快諾してもらえた。ただ殺せんせーを見たその人は首をかしげて珍しいものを見たような顔をしていた。まあそういう反応になるよね。
何はともあれ殺陣が始まる。なるほど、ドラマ仕立てでちゃんとストーリーがあるのか。
「間近だと刀の速度すげーな」
「速く魅せるよく練られた動きですねぇ、先生こういう殺陣大好きなんです」
「へぇ~」
「そんなこと言ってたらこっち来た!」
その場所に留まっているとぶつかってしまうので殺陣を見ながら移動する。本当にすごい迫力だな。ん?殺せんせーどこ行った?周りを見渡すと1対多だったのが2対多になっている。って何してんだ殺せんせー!
「いつの間に俳優に混じって殺陣やってんだ?」
「おまけに着替えまで済ませて…」
「助太刀いたす、悪党どもに咲く仇花は血桜のみぞ」
「「決め台詞も完璧だ!」」
こんなに動き回ってたら狙撃できないんじゃないか?ってくらいに動く動く。
こりゃ俺達の班も暗殺失敗だなと苦笑いしながらより迫力が増した殺陣を楽しむことにした。
――
「殺陣にも参加できたし先生大満足です!」
「あれだけ派手に動けばね」
「俳優の人は見せ場奪われて切ない顔してたよ…」
「にゅやッ!それでは先生次は清水寺に行かなければなりませんので!」
言うや否や先生は飛んでいった。俺達の中で一番旅行を楽しんでるの殺せんせーじゃないかな?そんな気がしてきた。
「とりあえず映画村見て回りますか」
「そうだね、お土産も見たいし」
「じゃあせっかくだしみんなで見て回るか」
「「賛成」」
てことで見て回る。俺達が先程の殺陣を見ていたのは江戸の町なので明治通りのほうへと行く。
「純一はお父さんになんか買っていくの?」
「生八つ橋頼まれてるからどっか適当な場所で買うよ、そういや莉桜に会いたがってたから今度遊びに来いよ」
「そうなの?じゃあ誰か誘っていくね」
「おっ俺も純一の父さんにしばらく会ってないな」
「岡島については何も触れてなかったから別にいいんじゃないか?」
「俺の扱い雑か!」
「三人って小学校から一緒なんだっけ?」
「そうだよ、なんやかんやずっと一緒だな」
「ふーん、そうなんだ」
「なにー?凛香、純一とずっと一緒なのが羨ましいの?」
「別にそんなんじゃないし」
「照れなくていいのに~、うりうり」
莉桜が肘で小突くのに合わせて不破も小突いている。不破って意外とノリがいいんだな。
「お土産と言えば俺の家も八つ橋を指定されたな」
「菅谷の家もそうなのか、ご家族八つ橋好きなんだ?」
「いや、あんたのセンスに任せたらキワモノになるのが目に見えるからって言われた」
「…菅谷のセンスはワンランク上な感じだからな」
確かに菅谷に適当にお菓子を買ってきてと頼んだらスタンダードな物は一切なしのラインナップになりそうだなと思う。お土産についてあれやこれやと話していたらお土産屋が見えてきたので中に入り各々見て回る。
ストラップ系を見ていると小さな急須のストラップが目に止まった。おーなんかわからんがいいな、これ。ただ生憎ストラップを付けるものを持ち合わせてないので買わないでおく。
そのまま流れで見ていると凛香が立ち止まっていたので話しかける。
「なんか欲しいものでもあったのか」
「ん、いや、別に」
「…あー絵葉書か。確か好きだよな、絵葉書」
「えっ」
「えっ?中2のとき言ってなかった?なんか大切にしてるとかなんとか」
「いや、そうだけど。覚えていると思ってなくて」
「俺もさっきまで忘れてたよ」
あれは中2のときだったか、国語の授業だかの話の流れで宝物の話になったときに俺が初めて買ってもらったアーティストのCDと答えると凛香は絵葉書と言っていたんだ。
「覚えていてくれて、ありがとう」
「いや、別になにもしとらんが」
「それでも」
「じゃあ…どういたしまして?」
何で疑問系なのと凛香は笑う。普段はクール顔だが笑うと幼く見えるなと思う。
そのまま二人で絵葉書を見ていると古臭い野球のグラウンドなどの絵葉書がいくつか出てきた、おそらく明治時代に日本で野球が広まったからだろう。
野球関連のネタだったのでそのことを友人にメッセージで送る。するとすぐに電話がかかってきたので出る。
「野球ネタだから感激したのか?」
「違う、そうじゃないんだ」
「どうした?」
「神崎さんたちが攫われたんだ」
「は?どういうことだ?」
「祇園で高校生達がなぜか俺達のこと狙ってたっぽくて、それで不意打ち食らって男子はみんなやられた。奥田さんは無事だったけど」
「それで烏間先生とかには連絡はしたのか?」
「ああ、それでしおりに"クラスメイトが拉致られた時"って対処法が載ってたからそれの通りに動くよ。あと拉致実行犯潜伏対策マップの祇園から一番近くに向かうつもり」
「わかった、俺もマップ見て各場所回るよ。そのほうが早く解決するだろ?」
「了解、それにしても何でそんなに落ち着いているんだ」
「さあ、わからん。でも取り乱してたら解決するものもしなくなるからな」
そう言って電話を切る。
「ねえ今の電話って…」
「4班がトラブったらしいから俺は行くよ。凛香はみんなに俺が烏間先生に呼ばれたとかなんとか言っておいて」
「私も行くよ」
「ダメだ、もしかしたら凛香まで危険な目に合うかもしれないしきっと殺せんせーがなんとかしてくれる」
「それだったら純一は行かなくても…」
「何か出来るのに何もしないのが俺は一番嫌なんだ、だから行ってくる」
時間が惜しいので走り出す。凛香が後ろから何か言っていたが押し問答になってしまうのでそのまま駆けた。
映画村を出ると同時に一番近くの拉致地点はどこかを確認する、走れば5分とかからない位置なので俺は1秒でも早く着けるように快足を飛ばした。どうか茅野と神崎の二人が無事でいてほしい、今はただそれだけしか考えられなかった。
*
~凛香視点~
「待って!」
私の言葉で制止せずに純一はそのまま行った。
トラブルの内容は聞いていないがあの様子を見るにおそらく大事なんだろうと思った。4班のみんなは心配だ、それでもどうして純一が行く必要があるんだろうという思いはなくならない。
純一の言っていたこともわかる、でも私達はまだ中学生だ。出来ることには限界もあるし解決できない問題も多くある。助けに行きたいけど力になれないかもしれない、4班のみんなは心配だけど純一に行ってほしくない、そんな矛盾が私の中で渦巻いている。
ただはっきりしていることがある。純一がいなくなってから胸の奥が締め付けられるように痛い。この痛みはなんなのだろう、今の私にはわからない。
そのあと純一に言われた通りに烏間先生に呼び出しを受けていなくなったことを伝えた。みんなが何か言っていたけど、言葉がぼんやりと遠くてよく頭に入ってこなかった。
それなのに胸の痛みだけがどうしても治まらない。
――どうしても、治まらない。
最後に恋愛要素をいれました。ちなみに速水がヒロインって決まったわけではないのでご安心を。
作者が修学旅行で一番印象に残っている思い出は空港での預け入れ荷物の検査です。検査のときにX線で鞄の中身をチェックしますが、その際に64とWiiを旅行バッグに入れて持ってきていたクラスメートがいまして空港の係員がチェックしている画面に本体とコントローラーのレントゲンがガッツリと映りました。横でそれとなく見ていた先生は見事な二度見をし、持ち込んでいるとわかっている自分を含めた他のクラスメートは大爆笑でした。他にも楽しい思い出はありますがこれが断トツですね。