書きたいこと詰め込んだらいつもよりボリューミーになりました。
「えー起きちゃうよ?」
「大丈夫大丈夫、そんな柔な男じゃないから」
「鼻にワサビ入れていーかな?」
「カルマ君、それはダメだよ!」
「純君の寝顔可愛いね~」
カシャッ
「誰かマジック持ってない?」
「中村さん!風呂入ったあとっぽいからダメだよ!」
「さっきから渚が頑張ってるな」
…なんだ?なんか騒がしいな。
「おい、女子に手上げようとするなよ」
「純一?寝ぼけてるのか?」
「あ?あー?あっ前原か」
「なんださっきの寝言は」
「わからん、なんか夢見てた。夢の中で渚が近くにいたから渚を守る夢だったのかもしれん」
「南雲君!僕は男だよ!」
「そういえばそうだった。あーよく寝た。あっみんなおかえり」
「そして平常運転か」
「てかなんで全員集合してんの?」
「自由行動から4班が一番乗りで帰ってきたんだけど大部屋で寝てる人いたから女子にも集まってもらった」
「そういうことか、なんかイタズラしてない?大丈夫?特にカルマと莉桜」
「渚が頑張って止めてたから大丈夫だよ」
「ありがとう、渚。夢の中で守った甲斐があったよ」
「それ女子としてだよね!?」
渚のツッコミを聞くと安心するなあ。
寝てる俺の見学会も終わり磯貝と片岡が次の行動の指示を出す。部屋に荷物を置いて食事、その後は自由時間とのこと。夕食はなにかなーと思っていると岡島がやって来た。
「速水から聞いたけど烏間先生なんで純一のこと呼び出したんだ?」
「あーなんかビッチ先生が迷子になったとかで」
「へーそうなのか、なんか途中から速水もいなかったけど」
「さあ、そっちはわからんな。まあでも俺が旅館帰ってきたときにはいたからたぶん体調不良とかじゃないの?」
「あーなるほどな、とりあえず飯行こうぜ」
了解と腰を上げて移動する。そういえば旅行中にジャンクフードを口にしていないのでカップ麺やハンバーガーが恋しく感じる。
――
食事も終わり、各々風呂に入るなどして自由時間を過ごす。俺達は今館内ゲームコーナーにいて神崎のゲームプレイを見ている。ジャンルは弾幕ゲーだ。
「うおお、どーやって避けてんのかまるでわからん!」
「恥ずかしいな、なんだか」
「おしとやかに微笑みながら手つきはプロだ!」
さっきから友人やかましいな。でも実際すごいと思う、ゲームうますぎだろ。…あっだから俺と父さんのモンハンネタが通じたのか。
「すごい意外です、神崎さんがこんなにゲームが得意だなんて」
「…黙ってたの、遊びが出来ても進学校じゃ白い目で見られるだけだし。でも周りの目を気にしすぎてたのかも、服も趣味も肩書も逃げたり流されたりして身に付けてたから自信がなかった。殺せんせーに言われて気付いたの、大切なのは中身の自分が前を向いて頑張ることだって」
神崎の意外な一面が見られたなと思った。それに見た感じ茅野との空気が軽いので何か話したのかな?
画面には"Congratulations!"と表示されていたのでどうやらクリアしたらしい。ゲームが得意ということでもしやと思い俺は神崎に話しかける。
「神崎、ひょっとしてスト2やったことあるか?」
「うん、あるよ。一緒にやる?」
「そうこなくちゃ。じゃあ対戦するか」
スト2の筐体に移動し二人で椅子に座る。
「あー!」
友人は相変わらずやかましいな。
念のために友人が叫んだ理由の説明をいれるが最近の新しい格ゲーのアーケードの筐体は対面式がほとんど、というか対面式以外見たことがない。対面式は対戦相手の顔が見えないのが特徴。ゲームセンターで対戦終了後に席を立ちどんな相手だったのかなと顔を見に行くと怖い兄ちゃんだったというケースになるのが対面式だ。一方で昔の筐体には隣り合わせでやるものがある。1つの画面を共有しプレイするので文字通り席の位置が隣り合わせになる。これの最大の特徴は席の近さだ。さして大きくもない1つの画面を共有しプレイするために肩がピッタリとくっつくくらいに近くなる。
この旅館の筐体はもちろん隣り合わせ式だ。よって神崎と俺はくっついた状態になったので友人が叫んだのである。ちなみに俺は健全な中学生男子なので頭の中は
・肩がくっついているなあ
・いい匂いするなあ
と当然のことを考えている。正直対戦に集中できるか自信ない。が、こちらから申し込んだ以上負けるわけにはいかない。キャラクターセレクトで迷わず俺はガイルを選択。神崎も迷わずガイルを選択。…あっこれあかんやつや。
ラウンドワン、ファイッ!という掛け声と共に勝負がスタートする。両者互いに相手に向かっていくのではなく後ろに下がりしゃがんで溜めを行いソニックブームという飛び道具系の必殺技をひたすら繰り出す。この光景を見ている友人達は頭に?が浮かんでいるのかなにも言葉を発しない。
簡潔に説明するならば格ゲーには溜めキャラというカテゴリーがあり、俺と神崎が選択したガイルは溜めキャラに分類され更には"待ちガイル"と呼ばれる完成された戦闘スタイルがある。ガイルには"ソニックブーム"と"サマーソルトキック"という必殺技があり、その2つは方向キーを相手とは反対側に入力することで溜めて撃つことができる必殺技だ。
待ちガイルのやり方は以下の通り。
1.相手に対して後ろ斜め下にレバーを入れて待つ。(斜め下入力をすることによってSBとSKの両方の技が溜めれる)
→相手が正面から近づいてくる→ソニックブーム
→相手が飛んで近づいてくる→サマーソルトキック
これだけ。相手が何をやってこようと迎撃することができる。例外はあるけど。
話を戻すが俺も神崎も待ちガイルという戦闘スタイルのため、遠くで互いに必殺技を繰り出し続けるという恐ろしく地味な絵面だ。がしかし、必殺技をガードしたときの削りダメージですら致命傷となるため水面下ではかなりの読み合いが行われている。
残りカウント40を切ったところで神崎が仕掛けてきた。ジャンプなどで避けつつこちらに近づいてくる。恐らくしゃがみキックで直接ダメージを与えてくるつもりだろうが簡単にはそうさせない。ソニックブームを繰り出しつつこちらも同じくしゃがみキックで迎撃する。ここまで両者互いに無傷、どこかで動かなければドローとなってしまう。神崎側はかなり近づいてきているがまだ攻撃が届く範囲じゃない。尚もソニックブームを互いに撃ち合う。残りカウント15を切ったときに一瞬神崎が必殺技を繰り出すのが遅れたのでその瞬間を俺は逃さない。ソニックブームを撃ち、ジャンプで近付く。これで神崎の行動はガードで防ぐしかなくなった。つまり必殺技による削りダメージが発生するのでそのままタイムアップになればこちらの勝利。案の定神崎がガードしたので削りダメージが入りそのままタイムアップ。まず俺の1勝だ。
「南雲君すごい上手いね」
「父さんに仕込まれたからな。それに神崎だって上手いだろ」
「すげー!神崎さんに勝ったよ!」
「まだだ。2勝しないとダメなんだ」
「そうなのか?」
「「うん」」
俺と神崎がハモって返事をすると共にラウンドツー、ファイッ!と2戦目が始まる。1戦目同様互いに距離を取ってソニックブームの撃ち合い。
「なんかもう達人同士の戦闘だよね…」
「そうですね、あそこだけ別の空間みたいです…」
「南雲君と神崎さんが遠くに感じるよ…」
「そういえば純一、スマブラとかも強かったな…」
後ろのオーディエンスたちが何か言っているが会話の半分も頭に入ってこない。そのくらい神崎との戦闘に集中力を要している。先程は神崎から仕掛けてきたが次は俺から動く。一歩、また一歩と相手にだんだんと近付く。残りカウントは30、互いに無傷、一撃が致命傷となるこのスリルが堪らない。俺のほうが先に1勝しているため状況的には有利だが負ける可能性も十分にある。だから慎重にいくべきだがそれでは勝負がつかない、どこかで仕掛けなければ。
カウントに目をやったときに必殺技を繰り出すのが遅れてしまい、神崎のソニックブームをガード。削りダメージが入ってしまった。残りカウントは15。このままでは負けて五分五分の状況となってしまう。神崎もそれをわかっているため後ろに下がりつつ迎撃体制。ここで焦ってミスをしたほうの負けとなる。俺はフッと一息つき頭を落ち着かせる。しゃがみキックで削ってくることはあちらもわかっている。ならば…。
俺が近付くのに合わせて神崎がしゃがみキックを行う。しかしギリギリのところで届かない。攻撃判定が消えると同時に相手に近づき必殺技でもキックでもなく俺は投げ技を繰り出した。投げ技は見事に決まりそのままタイムタップ。俺が2勝を先取し勝利が確定した。
「う~悔しい、負けちゃった」
「これより前に神崎は弾幕ゲーやってたから疲れもあるしな。条件的に俺のほうが有利だったから」
「ふふっフォローしてくれてありがとう、南雲君。またやろうね」
画面ではガイルの「くにへ かえるんだな。 おまえにも かぞくが いるだろう…」という勝利コメントが表示されている。復讐のために家族を捨てたお前が言うなと表示される度に毎回思う。
「アーケードはスト2しかできないけど、家の据え置きのゲームは色々できるから一緒にやろうぜ」
「いいの?じゃあ今度家にお邪魔するね」
「おっ俺も!純一の家行くよ!」
「おう、みんな来いよ。大勢のほうが楽しいしな」
「お父さんにも会えるかな~?」
「なに茅野、父さんのこと気に入ったの?」
「だって南雲君とのやり取り面白かったし」
「あれが平常運転なんだけどなあ」
修学旅行で家にみんなが来るフラグを作ってしまったがまあいいだろう。見られて困るものも置いてないし。たぶん神崎達だけじゃなくて莉桜とかも来るだろうからお菓子とか買っておかないとなと考えながら館内ゲームコーナーを後にした。
*
ゲームを終えた俺達は部屋に戻ることにした。風呂に入っていたやつらも戻ってきて最終的に大部屋で男子全員がダベり始めたので俺とカルマは一緒に自販機に飲み物を買いに行く。
「南雲さーなんか俺達のために色々と動いてたらしいね」
「まあ結果は変わらんかったけどね」
「本当、真面目でいい子ちゃんだよねー」
「友達が困ってるんだから助けるのは当たり前だろ」
「んー理屈ではそうだけどさ。実際その通りに動ける人のほうが少数派でしょ」
「あー殺せんせーにも同じようなこと言われたわ」
「でしょ?今回のことなんて公にはなってないけど普通に全国ニュースになるレベルのトラブルじゃん?そんなのに頭突っ込もうとするなんてちょっと異常だよ」
「そんなレベルのことなのに警察に通報せずに直接処刑させてくれって言ってたやつがいたらしいぞ」
「へーそんなやついたんだー」
お前のことだよ、と心の中でツッコミを入れる。
「まあなんにせよ、誰も怪我なく帰ってこれてよかったよ」
「そうだねー、それで南雲は何買うの?」
「なんか微妙なラインナップだなー…、カルマと同じのでいいや」
そう言ってレモン煮オレのボタンを押す。ホテルや旅館の自販機特有の無難なラインナップはなんなんだろうか。あれか?色々な客層が来るから定番のもので固めてるのか?
「そういえば自販機のルーレットあるじゃん?あれの当たる確率知ってる?」
「え、なに。確率なんてあるの?」
「うん。当たる確率は1/50~1/990の範囲で自動販売機設置者によって決められてるらしいよー」
「へー。てことは当たる確率は最低0.1%で最大2%ってことか」
「細かく言うと景品表示法という法律で決まってて、自動販売機の場合は売上げの総額の2%が当たりにしていい上限になるんだってさ。つまり120円のジュースで100本の売上げがある場合、2本が当たりとして付けられるってこと」
「カルマってなんかそういう系詳しそうだよな」
「うーん、例えば?」
「UFOキャッチャーを取りにくく設定してるゲーセンとか」
「自分の行動範囲の店は把握してるよー」
まじに把握してんのかよ。すごいを通り越して怖いわ。
会話が弾んだので気がついたら部屋の前まで来ていたのでそのまま襖を開けて中に入る。
「お、面白そうなことしてんじゃん」
「んー?ああ。気になる女子ランキングか」
「カルマに南雲か。良いとこ来た」
ふーん。1位は神崎、2位は矢田、3位は倉橋か。まあ順当な順位だな。
「お前らクラスで気になる娘いる?」
「皆言ってんだ、逃げらんねーぞ」
「うーん…奥田さんかな」
奥田?意外だな。
「なんで?」
「だって彼女怪しげな薬とかクロロホルムとか作れそーだし俺のイタズラの幅が広がるじゃん」
「…絶対にくっつかせたくない2人だな」
「次に南雲は?」
「気になる娘かー…うーん……」
あかん。相対性理論の曲しか頭の中に出てこない。
「いやいねえわ」
「そんなことないだろ。速水とかと仲良いし」
「中村とも小学校から一緒だし」
「それに神崎さんとも仲が良い」
「どれが本命なんだよ?」
「なあ純一。ひょっとして今日お前と速水がいなかったのは2人きりで抜け出したからか?」
「「「まじで!?」」」
飯の前に誤魔化したのに岡島が爆弾投下しやがった。
「本当に2人抜け出したのか?」
「なになにどこ行ったの?」
「1年のときから仲良いから怪しいと思ったんだよー」
「ついに彼女持ちがE組から出たかー」
洪水のようにみんなが色々と言ってくる。だが俺が抜け出したのは誘拐の件があったからだし、凛香と抜け出した感じになったのは謝罪とかの件があったからだ。どっちにしろ本当のことを言うつもりはないので岡島のときと同様に誤魔化す。
「みんなとりあえず落ち着け。2人きりで抜け出したかどうか、これはNOだ。烏間先生から呼び出し食らったから俺は抜けて凛香はおそらく体調不良だ。あと俺と凛香が付き合っているかどうか。これも答えはNOだ。そもそも付き合うとか考えたことないしそんな雰囲気になったこともない」
俺が抜け出した本当の事情を言わない理由をカルマと渚と友人は察したのか突っ込んで来なかった。4班以外には高校生グループに絡まれたとだけ伝えられ誘拐されたなどの詳しいことは説明されていないのだ。なんか釈然としないけどと磯貝がまとめ始める。
「よし、これで気になる女子ランキングは終了だな」
「ちょっと待て純一。まだ言ってないだろ」
…バレたか。
「まあまあ前原。たぶん南雲は本当に気になる娘がいないんだろうから好きな女子のタイプとかにしようか」
「じゃあ純一、好きなタイプはずばり?」
「一緒にいて落ち着ける人だな。静かな人がいいとかってことじゃなくて騒がしい人でも構わない。一緒にいて自然体でいれる人がいい。あとお互いの趣味が合う合わないは気にしてない。合うのであれば一緒に楽しめばいいし、合わないのであれば色々聞いたりして逆にその趣味に目覚めるかもしれないからな」
「…気になる娘はいないのに好きなタイプはすげー饒舌になったな」
うるせー。聞かれたから答えただけじゃねーか。
「でも純一って自分からあまり女子に話しかけないよな。なんで?」
「俺は"コヨーテよりロードランナー派"なんだよ」
俺の言い回しにいまいちピンとこなかったのか全員が頭に?を浮かべている。するとカルマがあーなるほどねと俺の言葉の意味に気付いたようだ。
「カルマ、わかったんだったら言ってくれよ」
「つまり南雲は"追うより追われる方がいい"ってことでしょ?」
「そういうこと」
みんながあっワーナー・ブラザーズかと理解する。
「よし皆、この投票結果は男子の秘密な。知られたくないやつが大半だろーし、女子や先生に絶対に…」
磯貝が急に無言になったのでみんな磯貝の視線を追う。視線の先には殺せんせーが窓に張り付いていてメモを取っていた。
「メモって逃げやがった!殺せ!」
前原の言葉を皮切りに男子全員がナイフと銃を持って廊下に飛び出す。俺は女子の名前を言っていないしバレたところでダメージがないので追っていない。
「待てやこのタコ!」
「生徒のプライバシーを侵しやがって!」
「ヌルフフフ、先生の超スピードはこういう情報を知るためにあるんですよ」
*
~凛香視点 in 女子部屋~
「「ビッチ先生まだ
「経験豊富だからもっと上かと思ってた」
「ねー」
「毒蛾みたいなキャラのくせに」
「それはね濃い人生が作る色気が…誰だ今毒蛾つったの!」
ビッチ先生がツッコミを入れるのを見てE組にもかなり馴染んできたなと感じる。すると突然神妙な顔つきになってビッチ先生は言葉を続けた。
「女の賞味期限は短いの。あんた達は私と違って…危険とは縁遠い国に生まれたのよ。感謝して全力で女を磨きなさい」
ビッチ先生の言葉は胸にストンと落ちてきた。教室に来たばかりの時に発した殺すという言葉の重みと同じくらい今の言葉には重みがあった。みんなも同じく感じたのかシンとした空気が流れる。
「ビッチ先生がまともなこと言ってる」
「なんか生意気~」
「なめくさりおってガキ共!」
…そうでもなかったかな。激昂したビッチ先生を宥めるように矢田がじゃあさじゃあさと話をする。
「ビッチ先生がオトしてきた男の話聞かせてよ」
「あ、興味ある~」
「フフ、いいわよ。でもその前にあんたたち、修学旅行らしいこともしておきなさい」
みんな頭に?が浮かんだ顔になった。私もいまいちピンときてない。
「もう、正解を言わないとわからないの?あんたたちは好きなオトコの話もしないの?」
「あー確かにしてないね!」
「そうだね~しようよ!」
ビッチ先生を慕う矢田と倉橋が話に乗っかる。…確かに女子といえばやはり恋バナが鉄板だ。だけど私は…。
「…はぁ」
「どうしたの、凛香。タメ息なんてついちゃって」
「…別に。気乗りしないだけ」
「とか言って好きな人バレたくないだけじゃないの」
「莉桜って肘で小突くのが癖なの?」
映画村のとき同様肘で小突いてくる。今度は不破は一緒じゃないけど。そうしていると片岡が段取り良く説明し始める。
「じゃあ今からみんなにメモ帳の切れはし配るから男子の名前書いて四つ折りにしてビッチ先生の前のお菓子の箱に入れていってね。ビッチ先生は全員が入れるまで開いちゃダメだよ」
「私ぐらいになると筆跡や顔を見れば大体わかるわよ」
…本当かな。顔はともかく筆跡ではバレなさそうだけど。実践的な英語の授業だからテストとかやっているわけじゃないし。みんなの字を目にする機会は少ないはず。
配られた紙を見てみんなは笑顔のような真顔のような、なんとなく真剣な表情になった。やはり恋愛ガラミの話だからかな。私は少し真剣な表情になったみんなを見て純一から借りた小説に書いてあった、"人間は恋と革命のために生まれてきたのだ"という言葉を思い出した。
私は正直この話になったときから純一のことしか浮かばなかった。でもまだ好きかはわからない。だからきっと消去法の結果だ。前原の女たらしや岡島の変態みたいな男子がいるから純一が思い浮かんだのだと言い聞かす。
下の名前で書いたらそれこそバレると思ったのでしっかりと名字で書く。
「よし、全員分集まったわね」
ビッチ先生がそう言って集計を始める。四つ折りの紙を広げて名前を確認して得票数を書き込んでいく。あれ?烏間先生の名前だ。
「誰よ、カラスマの名前なんて書いたのは。妙に丸っぽくて女子らしい字だけど」
「あ~それ私~」
倉橋はエヘヘと笑っているが誰が書いたかわかっては意味ないのでは?と思った。
「ふーん、やっぱり人気ツートップは磯貝と南雲ね、わざわざ呼び方と違う名前で書いてるのもいたし。渚が2票っていうのが意外ね~」
嘘、本当にわかるの?自分のことかと思って一瞬体温が上がったような感覚に見舞われる。それにしても人気トップとはやっぱりなという印象だった。
「人気だからって訳じゃないけど南雲辺りは有望株よ。あいつは将来絶対大物になるからキープしとくのも手よ」
「ビッチ先生みたいにそんな簡単にキープとかできないって」
「だからこれから私がオトしてきた男の話をするのよ。子供にはシゲキが強いから覚悟なさい。例えばあれは17の時…」
女子全員がごくりと息を飲む。
「おいそこぉ!さりげなくまぎれこむな女の園に!」
「いいじゃないですか、私もその色恋の話聞きたいですよ」
ビッチ先生が指差した場所を見ると殺せんせーがいた。一体いつからいたんだろう。純一の名前を書いた紙見られてないよね?
「そーゆー殺せんせーはどーなのよ。自分のプライベートはちっとも見せないくせに」
「そーだよ、人のばっかずるい!」
「先生は恋バナとかないわけ?」
「そーよ!巨乳好きだし片想いぐらいぜったいあるでしょ」
「………………」
女子全員に指を指されて無言を貫いている殺せんせー。少し間が空いたあとにいつものスピードでいなくなった。
「逃げやがった!捕らえて吐かせて殺すのよ!」
ビッチ先生の言葉を引き金にみんなナイフと銃を持って殺せんせーを追う。なんだかんだで結局は暗殺になるんだなと思いながら私も銃を握った。
*
~南雲視点 深夜~
寝れねえ。みんなが寝静まっている部屋の中で俺は思う。どうやら夕方に寝たのがよくなかったらしい。疲れがあるから寝れるものだと思ってたが俺の脳は絶好調、冴えている状態だ。
さすがに布団で何もせず目を瞑っているのも退屈なので俺は財布と携帯を持って部屋を抜け出す。とりあえず自販機で飲み物でも買って廊下の途中にあるソファのとこでくつろごうと思った。旅館内は暗くなくちょうどいい明るさで保たれていた。見た目がボロいが風呂がきれいだったり明るさがお客側に配慮されているなどしているから店を畳むことなく営業できているのかなと感じた。
旅館の評価を改めていると自販機には先客がいたので声を掛ける。
「よっ、二人も寝れないのか?」
「あっ南雲君だ。違うよ、おしゃべりしてて飲み物が無くなったから買いに来たんだ」
「今の言い方だと南雲君は眠れないの?」
「うん、しかも俺以外寝ちゃってるから抜け出してきた」
自販機の前では茅野と神崎が飲み物を選んでいた。男子が全員息絶えているのに女子は起きてるってことか。肌に悪いだろうに。
「じゃあ俺は廊下のソファでのんびりしてるから。おやすみ」
「待って。それだったらちょっと私たちと話さない?」
「へっ」
「ダメ?」
「いや、俺は構わないけど…。まあ先生方に見つかっても理由説明すれば大丈夫か」
「ふっふっふ。その点に関しては大丈夫だよ」
廊下を歩きながら茅野がどや顔で説明をしてきた。なんでもビッチ先生が俺たちだったらばか騒ぎもせずに過ごすだろうから最終日前夜くらいは見回りはやめようと提案してくれたらしい。その話を聞いた殺せんせーと烏間先生は確かにと納得してくれたんだとか。ビッチ先生もちゃんと俺達のことを考えていてくれてるんだなと嬉しかった。
「ふぃー到着到着。そっちの二人掛けどうぞ使って」
「じゃあ失礼しまーす」
「ふふっ、なんだか偉い人みたい」
「それでなに話す?自販機の当たりの確率くらいしか今思い付かないんだけど」
なにそれと二人は笑う。すると一呼吸置いてから急に真面目な顔になって頭を下げられた。
「本当は明日言おうと思ってたんだけど、今日は私たちのために動いてくれてありがとう。」
「いやいや、頭あげてよ。困ってたら助けるのは当たり前だから気にしないで」
なんか前にも女子にいきなり頭を下げられたことがあったなと思い出す。
「それでも貴重な修学旅行の時間を潰しちゃったから…」
「いいんだって。旅にトラブルはつきものって言うだろ?それに女の子のために走るっていう貴重な体験させてもらったし」
「なにそれ、でも本当にありがとね」
「なにかお返ししたいけど何にもできないし…」
「そういうことも考えなくて大丈夫だって。…そうだな、何かしたいってんなら今度俺の家にみんなで遊びに来てよ。渚とか莉桜とかも呼んでさ。父さんと2人きりだから広い家を持て余してるんだ」
「南雲君がそれでいいんだったら…。いいよね?茅野さん?」
「うん。でもお父さんと2人って。聞きにくいんだけどお母さんはどうしたの?」
「母さんは俺を産んですぐに亡くなったんだ。だから俺と父さんの2人きり」
「そうだったんだ。ごめんね?聞きにくいこと聞いちゃって」
「気にすんな。気使われたほうが嫌だし気になるのもわかるから」
「ありがとう。お詫びっていう訳じゃないけど良いこと教えてあげる。南雲君はなんと女子が思うかっこいい男子ランキングで1位だったよ!」
「おーまじか。なんか照れるな。磯貝とかじゃないのか?」
「磯貝君は南雲君と同率1位だったよ!」
「へー。男子も似たようなことやったけど生憎これは内緒だからなー」
「ケチっ!教えてくれたっていいじゃん!」
「私もちょっと気になるな」
「すまんな、こういうときの男子同士の結束力は高いから言うことはできない」
「そっか、残念」
「話はすごい変わるけど2人は寝れないときってどうしてる?」
「私は色々と落ち着く姿勢を模索するかな。大抵は横を向いて脚の間に手を挟める形になるよ」
「私は読んだ本の内容を思い出したら自然と寝ちゃうかな」
「つまり横を向いて脚の間に手を挟めて読んだ本の内容を思い出してたら寝れるってことだな」
「ミックスすればいいってもんじゃないよ!」
「ふふっ、そうかもね」
「大分遅くなったし俺は部屋に戻るかな。とりあえず教えてもらったこと試してみるよ」
「わかったよー、おやすみー」
「おやすみ、南雲君」
「おやすみ。また明日な」
そう言って別れる。とりあえずさっきの寝方を実践してみるとして最近読んだ本はなんだったか、思い出すことから始めるかと部屋に戻った。
*
~神崎視点~
胸が温かいな、南雲君と別れたあとそう感じた。私たちは今日トラブルに巻き込まれたけど4班のみんなと殺せんせーが動いてくれたおかげで無事に帰ってこられた。トラブルが解決した後に南雲君が色々と動いてくれてたってことを杉野君が教えてくれた。
それを聞いたとき私はなんてカッコいい人なんだろうと思った。それと同時に映画"ダークナイトライジング"の、"ヒーローはどこにでもいる。それは上着を少年にかけ、世界の終わりではない。と励ますような男だ"という台詞を思い出した。私が父親との関係を話したときには時間が解決してくれると励ましてくれたし、そして今回は私たちのために走ってくれていた。まさしく彼は私のヒーローだ。
先程邂逅し話したことで疑問が確信に変わった。私は彼に惹かれている。その気持ちを私の胸の高鳴りが教えてくれた。明日は話せるかな?もし話せたらどんな話をしようかな?
今私は新しい遊びを知ったばかりの子供のように南雲君との関わりが楽しみになっている。
神崎さんは自分の気持ちが何なのかわかってて、速水さんはそうかもしれないけど認めてないって感じです。
胸が苦しい速水と胸が暖かい神崎で対比させてます。だからなんだって話ですが。
茅野がカッコいい男子ランキングと言っていますがその投票は行っていないです。気になる男子ランキングの結果をそのまま伝えるのは良くないと思った茅野の配慮によって呼称が変えられただけです。
冒頭で南雲君が寝ててイタズラをされてないか確認していますが写真を撮った誰かがグループトークの画像を変更しているっていう本編に書かなかった小ネタがあります。
待ちガイル VS 待ちガイルは文字で伝えきれなかったので動画を調べていただければあるので気になる方は観てみてください。