暗殺教室 28+1   作:水野治

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ようやと鷹岡まできました。原作をジャンプ本誌で読んだときは大きな転換点だなと思いました。



7月
第18話 才能の時間


 ~烏間視点~

 

‐暗殺訓練の中間報告‐

 四ヶ月目に入るにあたり…「可能性」がありそうな生徒が増えてきた。

 磯貝悠馬と前原陽斗。運動神経が良く仲も良い2人のコンビネーション。2人がかりならナイフを当てられるケースが増えてきた。

 赤羽業。一見のらりくらりとしているが…その目には強い悪戯心が宿っている。どこかで俺に決定的な一撃を加え赤っ恥をかかそうなどと考えているがこちらも警戒しているので一撃を与えるには至っていない。

 南雲純一。ナイフ術以外にも俺から直接防御術を学んでいるので近接では頭一つ二つ飛び抜けている。一撃が鋭くクリーンヒットを唯一受けた生徒でもある。

 女子は、体操部出身で意表を突いた動きが出来る岡野ひなたと男子並みのリーチと運動量を持つ片岡メグ。このあたりがアタッカーとして非常に優秀だ。

 …しかし、俺が今まで感じたことのない気配を時折覗かせるものがいる。潮田渚、小柄ゆえに多少はすばしこいがそれ以外に特筆するべき身体能力は無い温和な生徒だ。彼の気配は俺の勘違いだろうか?

 全体を見れば生徒達の暗殺能力は格段に向上している。奴を殺す可能性が4月と比べて大きく上がっていることが感じられる。

 

「それまで!今日の体育は終了!」

 

「せんせー!放課後街で皆でお茶してこーよ!」

 

「…ああ、誘いは嬉しいがこの後は防衛省からの連絡待ちでな」

 

 プロとして一線を引いて接するというのが俺のやり方だ。今教えているのは中学生だが仕事として暗殺を依頼した以上はプロ同士だ、馴れ合いはしない。

 ――それに俺の任務の成果を上の連中は快く思っていない。暗殺の糸口をつかめていない今の状況を打破するために人員を増やすとのことだが…。

 頭に思考が渦巻いていると校舎の戸が勢い良く開かれる。

 

「よ、烏間!」

 

 ……鷹岡!

 俺が荷物を持って生徒達の方へと歩いていく鷹岡を呆然と見ていると園川が遠慮しがちに上からの通達を報告する。

 

「…烏間さん、本部長から通達です。あなたには外部からの暗殺者の手引きに専念してほしいと。生徒の訓練は…今後全て鷹岡さんが行うそうです。同じ防衛省の者としては生徒達が心配です。あの人は極めて危険な異常者ですから」

 

 

 

 

 ~南雲視点~

 

 

「誰だあの人?」

 

「体でけぇ~」

 

「やっ!俺の名前は鷹岡明!今日から烏間を補佐してここで働く!よろしくなE組の皆!…ま、なんだ。ケーキとか飲みもんだ。皆で遠慮なく食ってくれ!」

 

 烏間先生の補佐ってことは防衛省の人か。E組の面々は運ばれてきたお菓子をキラキラした目で確認している。ていうかいいのか?こんなに大量のデザートを食べちゃって。有名ブランドばかりだから高いだろうに。

 

「おっとモノで釣ってるなんて思わないでくれよ、お前等と早く仲良くなりたいんだ。それには…皆で囲んで飯食うのが一番だろ!」

 

 そう言って鷹岡さんはエクレアを口にする。一人が口にしたことによってE組の皆は一斉に食べ始める、俺もとりあえずプリンから食べる。

 

「でも…えーと鷹岡先生。よくこんな甘い物ブランド知ってますね」

 

「ま、ぶっちゃけラブなんだ。砂糖がよ」

 

「でかい図体してかわいいな」

 

 甘い物に惹かれたのか殺せんせーがヨダレを垂らしながらケーキを見ている。それを見た鷹岡先生が殺せんせーにケーキを差し出す。

 

「殺せんせーも食え食え!まぁいずれ殺すけどな!はっはっは」

 

「同僚なのに烏間先生とずいぶん違うすね。なんか近所の父ちゃんみたいですよ」

 

「ははは、いいじゃねーか父ちゃんで!同じ教室にいるからには俺達家族みたいなもんだろ?よしここらで俺がなんで来たのか説明するぞ!皆はそのまま食べながら聞いてくれ」

 

 ――要約すると、烏間先生の負担を減らすために来たらしい。

 

「つまり明日から体育の授業は鷹岡先生が?」

 

「ああ!あいつには事務作業に専念してもらう。だが大丈夫!さっきも言ったが俺達は家族だ!父親の俺を全部信じて任せてくれ!」

 

 自己紹介も終わり鷹岡先生は戻っていく。

 俺たちも次の授業があるため校舎への戻る。その道で誰かが呟く。

 

「鷹岡先生どう思う?」

 

「えー私は烏間先生の方がいいなー」

 

 真っ先に反対意見を出したのは倉橋だ。確かに倉橋は烏間先生のことカッコいいとかよしよししてほしいとか言ってたからな。俺も普段お世話になっているということもあり烏間先生のほうがいいなと思っている。

 

「でもよ、実際のとこ烏間先生何考えてるかわかんないとこあるよな。いつも厳しい顔してるし、飯とか軽い遊びも誘えばたまに付き合ってくれる程度で。その点あの鷹岡先生って根っからフレンドリーじゃん。案外ずっと楽しい訓練かもよ」

 

 言いたいことはわかる。でも訓練に楽しさは必要か?そりゃ楽しいに越したことはないけどそれは違う気がする。出来ることが増えて楽しいとか真新しい楽しさとかだったらわかるんだけど。

 ともあれ明日からの体育の授業は鷹岡先生なのでそこでも俺は出来る限りをやるだけだ。

 

 

――

 

 

「…よーしみんな集まったな!では今日から新しい体育を始めよう!」

 

 翌日の体育の授業は昨日の説明通り鷹岡先生となっていた。

 

「ちょっと厳しくなると思うが…終わったらまたウマイもん食わしてやるからな!」

 

「そんなこと言って自分が食いたいだけじゃないの?」

 

「まーな、おかげ様でこの横幅だ」

 

 鷹岡先生のジョークにクスクスと笑いがこぼれる。烏間先生のときにはなかった雰囲気だ。

 

「あと気合入れのかけ声も決めようぜ!俺が"1,2,3"と言ったらおまえら皆でピース作って"ビクトリー!"だ」

 

「うわ、パクリだし古いぞそれ」

 

「やかましい!パクリじゃなくてオマージュだ!…さて!訓練内容の一新に伴ってE組の時間割も変更になった。これを皆に回してくれ」

 

 そう言って新時間割のプリントが渡されたが俺達はそれを見て驚愕した。

 

「うそ…でしょ?」

 

「10時間目…」

 

「夜9時まで…訓練…?」

 

「ああ!このぐらいは当然さ、理事長にも話して承諾してもらった。"地球の危機ならしょうがない"と言ってたぜ。このカリキュラムについてこれればおまえらの能力は飛躍的に上がる。では早速…」

 

「ちょっ、待ってくれよ!無理だぜこんなの!」

 

 前原が時間割に異議を申し立てる。E組全員が同じ気持ちだ。

 

「勉強の時間これだけじゃ成績落ちるよ!理事長もわかってて承諾したんだ!遊ぶ時間もねーし…出来るわけねーよこんなの!」

 

 ズンと鈍い音が響いた。鷹岡先生、いや鷹岡が前原に膝蹴りをしたのだ。

 

「『できない』じゃない。『やる』んだよ。言ったろ?俺達は"家族"で俺は"父親"だ。世の中に父親の命令を聞かない家族がどこにいる?」

 

 鷹岡が豹変した。いや本性を見せたといった方が正しいかもしれない。こいつは鋳型にいれたような人間だ、心の箍が外れてるんだ。そんな鷹岡を見て俺達は何も言えなかった。すると支配欲に満ちた顔から人好きがする笑顔に変わり鷹岡は言う。

 

「さあ!まずはスクワット100回×3セットだ。…抜けたいやつは抜けてもいいぞ。その時は俺の権限で新しい生徒を補充する。1人や2人入れ替わってもあのタコは逃げ出すまい。――けどな。俺はそういう事したくないんだ、おまえら大事な家族なんだから。父親として一人でも欠けてほしくない!」

 

 気の弱い生徒は鷹岡の一挙一動にビクッと体を震わしている。気が強いと思っていた凛香でさえも体を震わしていたのでやはり女子なんだなとこの場には相応しくないことを思った。鷹岡は演説をするが如く歩いて俺の隣にいる三村と神崎の肩を組んで言葉を続ける。

 

「家族みんなで地球の危機を救おうぜ!な?お前は父ちゃんについてきてくれるよな?」

 

「…は、はい、あの…私……――私は嫌です。烏間先生の授業を希望します」

 

 俯いた顔をあげ強がった笑顔で神崎は言った。――まずい、前原と同じように暴力が飛んでくる。鷹岡が舌舐めずりをしたあと手を振りかぶり神崎の頬を目掛けて平手打ちを仕掛けたので俺は横からその腕を止める。

 

「…なんだ?お前は?」

 

「おい、女子に手上げようとするなよ」

 

「誰かを守るなんて父ちゃんは嬉しいぞ、だがわかっていないようだな、『はい』以外はないんだよ。文句や反抗があるなら拳と拳で語り合おうか?そっちの方が父ちゃんは得意だぞ!」

 

「やめろ鷹岡!前原君平気か!?」

 

「へ、へーきっす」

 

「ちゃんと手加減してるさ烏間。大事な俺の家族だ、当然だろ」

 

「いいやあなたの家族じゃない、私の生徒です」

 

「「殺せんせー!」」

 

 この騒ぎに烏間先生と殺せんせーが校舎から駆けつけた。だが解決するとは思えなかった、鷹岡が余裕のある笑みを浮かべていたからだ

 

「フン、文句があるのかモンスター?体育は教科担任の俺に一任されてるはずだ。そして!今の罰も立派に教育の範囲内だ。短時間でお前を殺す暗殺者を育てるんだぜ?厳しくなるのは常識だろう。それとも何か?多少教育論が違うだけで…お前に危害も加えてない男を攻撃するのか?」

 

 その言葉で殺せんせーと烏間先生は下がってしまった。確かに間違っていると思うが鷹岡なりの教育論がありそれを頭ごなしに否定するのは筋が通らない。だから俺は考える。まずは鷹岡の授業を実践し終わったあとに『あんたの教育だと技術が身に付かない』と反論しようと。

 

 

――

 

 

「1!2!3!4!――」

 

 俺達は結局鷹岡の言う通りスクワットを行っている。体力に余裕のある運動系の者は根を上げていないがそれ以外はキツそうにしている。

 

「じょっ冗談じゃねえ…」

 

「初回からスクワット300回とか…死んじまうよ…」

 

「烏間先生~…」

 

「おい。烏間は俺達家族の一員じゃないぞ」

 

 烏間先生の名前を出した倉橋に鷹岡が詰め寄る。そして指をポキポキと鳴らし威圧したあと拳を固めた。

 

「おしおきだなぁ…父ちゃんだけを頼ろうとしない子は!」

 

 バキッという音が響く。

 

「純君…」

 

「南雲!」

 

 俺は倉橋に手をあげようとした鷹岡の腕を止めると同時に思いきり殴ったのだ。

 

「…またお前か。それに父親に暴力を振るうなんてな…」

 

「反抗期なもんで」

 

 強がりを口にしたが内心はまじかよと困惑していた。しこたま力いれて殴ったのに鷹岡は全然効いてなさそうだからだ。

 

「ひとり欠けることになるなあ…悲しいなあ!」

 

 そう言って鷹岡は俺へと襲いかかってくる。俺は烏間先生との訓練を思い出す余裕もなく攻撃を凌ぐ。俺が鷹岡の拳を何発か防ぐと鷹岡は気味の悪い笑みで口を開く。

 

「へぇ~…ある程度の戦闘の心得があるようだな。でもまだまだ中学生のガキだ、力もねえし――実践も知らねえ」

 

 鷹岡は一歩引いたかと思うと届きもしない距離で脚を蹴りあげる。――この蹴りは俺を仕留めるためのものじゃなかった、仕留めるための下準備だ。蹴られた校庭の砂が舞って俺の目に入り視界が奪われる。

 

「じゃあな」

 

 鷹岡の声がやけにハッキリと聞こえた。やられると思った。…だが鷹岡に一撃を入れることができなかったらしい。

 

「それ以上…生徒達に手荒くするな。暴れたいなら俺が相手を務めてやる」

 

 砂を払い目を開けると烏間先生が鷹岡の拳を止めていたのだ。

 

「言ったろ烏間?これは暴力じゃない、教育なんだ。暴力でお前とやり合う気はない。やるならあくまで教師としてだ」

 

 鷹岡は一度俺を睨んだあと胸元から対先生用ナイフを取り出し言葉を続ける。

 

「おまえらもまだ俺を認めてないだろう、父ちゃんもこのままじゃ不本意だ。そこでこうしよう!こいつで決めるんだ!」

 

 鷹岡はそう言うと手に持ったナイフを指し示す。

 

「烏間。お前が育てたこいつらの中でイチオシの生徒を一人選べ。そいつが俺と戦い一度でもナイフを当てられたら…お前の教育が俺より優れていたと認め俺はここを出てってやる。男に二言はない。――ただしもちろん。俺が勝てばその後一切口出しはさせない。そして、使うナイフはこれじゃない」

 

(((ほ、本物!?)))

 

「殺す相手が俺なんだ。使う刃物も本物じゃなくちゃなぁ」

 

「よせ!彼等は人間を殺す訓練も用意もしていない!本物を持っても体がすくんで刺せやしないぞ!」

 

「安心しな、寸止めでも当たったことにしてやるよ。俺は素手だしこれ以上無いハンデだろ?さぁ烏間!ひとり選べよ!嫌なら無条件で俺に服従だ!生徒を見捨てるか生け贄として差し出すか、どっちみち酷い教師だなお前は!」

 

 

 

 

 ~烏間視点~

 

 ――俺はまだ迷っている。地球を救う暗殺者を育てるには鷹岡のような容赦のない教育こそ必要ではないのか?……この職業についてから迷いだらけだ。仮にも鷹岡は精鋭部隊に属した男。このクラスで一番戦闘能力が高い南雲君でさえ不意打ち以外手が出なかった。

 しかし、その中でひとりだけわずかに"可能性"がある生徒を危険にさらしていいものかも迷っている。

 

「…渚君、やる気はあるか?」

 

「!?」

 

 言われた本人は周りの生徒よりも驚いた顔をしている。

 

「選ばなくてはならないならおそらく君だが返事の前に俺の考え方を聞いてほしい」

 

 話をする前に俺は渚君だけでなく生徒全員の顔が見えるように向きを直す。

 

「地球を救う暗殺任務を依頼した側として俺は君達とはプロ同士だと思っている。プロとして君達に払うべき最低限の報酬は当たり前の中学生活を保証する事だと思っている。――だから渚君、このナイフを無理に受け取る必要はない。その時は俺が鷹岡に頼んで…"報酬"を維持してもらうよう努力する」

 

「…やります」

 

 そう言うと渚君は俺の手からナイフを受け取る。いつもの彼とは違う目だった。周りとの親和を一番に考え思いやりを持った目ではなく、覚悟を決めた、俺が舞台にいるときによく見た死地に赴く兵士の目だった。

 

「お前の目も曇ったなぁ烏間。よりよってそんなチビを選ぶとは。まださっきの南雲だかのほうが可能性はあったぞ?」

 

「…渚君、鷹岡は素手対ナイフの闘い方も熟知している。全力で振らないとかすりもしないぞ」

 

「…はい」

 

「…いいか?ナイフを当てるか寸止めすれば君の勝ち、君を素手で制圧すれば鷹岡の勝ち。それが奴の決めたルールだ。だがこの勝負の君と奴の最大の違いはナイフの有無じゃない。わかるか?」

 

「…?」

 

「いいか、鷹岡にとってこの勝負は"戦闘"だ。目的が見せしめだからだ。二度と皆を逆らえなくする為には攻防ともに自分の強さを見せつける必要がある。対して君は"暗殺"だ。強さを示す必要もなくただ一回当てればいい。そこに君の勝機がある。戦闘技術を誇示するためにしばらくは反撃が来ない、つまり最初の数撃が最大のチャンス。君ならそこを突けると思う」

 

「…わかりました」

 

「作戦会議は終わったか?もっともそれは意味がないだろうがな」

 

 鷹岡が上着を脱ぐ。その顔からは誰の目からも油断が窺える。

 

「さぁ来い!」

 

 鷹岡が戦闘態勢に入る。しばらくシンとした空気が流れる。

 渚君はナイフを何秒か見てから突然柔らかい笑みを浮かべた。そして構えもせずに普通に歩いて近付いた。レッドカーペットを歩くセレブのような派手さもなく、通学路を歩く中学生のように普通に。体が密着する距離まで近付いた。

 そのまま数秒が経過し突然ナイフを振る。鷹岡はここで気付いたようだ。自分が殺されかけていることに。

 自分の死を告げるナイフに鷹岡はギョッとして体勢を崩す。彼は鷹岡の重心が後ろに偏っているのも見逃さなかった。服の裾を引っ張って転ばせたのだ。

 そして仕留めに行く。正面からではなく、背後に回って確実に。流れるような一連動作は気付けば鷹岡の首もとにナイフを突きつけていた。

 

「捕まえた」

 

 ――なんて事だ。予想を遥かに上回った!普通の学校生活では絶対に発掘されることのない才能。戦闘の才能でも暴力の才能でもない。暗殺の才能!俺が訓練で感じた寒気は、あれが訓練ではなく本物の暗殺だったとしたら殺されていたからだ。これは咲かせてもいい才能なのか?

 普段の彼はとても強くは見えない。だが暗殺者にとっては弱そうなことはむしろ立派な才能だ。体運びのセンス、思い切りの良さ、殺気を隠す能力、これらは暗殺でしか使えないものだ。だが喜ぶべきことか?E組ではともかく彼の将来にプラスになるのか?

 

 

 

 

 ~南雲視点~

 

 

「このガキ…父親も同然の俺に歯向かってまぐれの勝ちがそんなに嬉しいか、もう一回だ!今度は絶対油断しねぇ!心も体が全部残らずへし折ってやる!」

 

「…確かに次やったら絶対に僕が負けます。…でもハッキリしたのは鷹岡先生、僕らの「担任」は殺せんせーで僕らの「教官」は烏間先生です。これは絶対に譲れません。父親を押し付ける鷹岡先生よりプロに徹する烏間先生の方が僕はあったかく感じます。本気で僕らを強くしようとしてくれたのは感謝してます、でもごめんなさい。出て行ってください」

 

 渚の言葉に鷹岡は俺が今まで見たことがないくらいの顔になった。憎悪とか人間の黒い部分が極限まで表れてるかのような顔だった。

 

「黙っ…て聞いてりゃ、ガキの分際で…大人になんて口を…!」

 

 鷹岡が渚に襲いかかるが烏間先生がそれを一撃で制し言葉を続ける。

 

「俺の身内が迷惑かけてすまなかった。後の事は心配するな、俺一人で君達の教官を務められるよう上と交渉する。いざとなれば銃で脅してでも許可をもらうさ」

 

「交渉の必要はありません。――経営者として様子を見に来てみました。新任の先生の手腕に興味があったのでね。確かに鷹岡先生の言う通り教育に恐怖は必要です、だが暴力による恐怖は負けた時点で説得力を完全に失う」

 

 突如現れた理事長はA4用紙に手早く何かを書くとそれを倒れている鷹岡の口へと突っ込む。まさか今の一連の出来事を全て見ていたんだろうか?

 

「解雇通知です。任命権は防衛省にはない、全て私の支配下だということをお忘れなく」

 

 そう言って理事長は去っていった。

 

「「「よっしゃあ!」」」

 

 E組全員が喜ぶ。だが俺の胸中には複雑な思いがあった。

 俺の心に渦巻いたのは熱狂、そして強烈な嫉妬だった。渚が鷹岡に対して行った暗殺。それは見るものをある種魅了するものだった。人は自分にないものを羨む。俺の場合は――渚の持つ暗殺の才能。

 まるで結果がわかりきってるような暗殺を見せつけられ俺は胸の内に尊敬にも似た畏怖の念すら抱いていることに気づく。そして激しい嫉妬の裏側に確かな信頼を抱いていることも。

 

「純君行こ!烏間先生が甘い物奢ってくれるって!」

 

「あ、ああ。そうだな」

 

「それと…助けてくれてありがと!カッコよかったよ!」

 

「気にすんな。……倉橋、ありがとう。なんか吹っ切れたよ」

 

「えへへ、じゃあ行こっか!」

 

 倉橋の笑っている顔を見ていると渚に嫉妬している自分が馬鹿らしく思えてきた。俺が動いた結果で倉橋が助かって渚の活躍でE組が鷹岡の支配から逃れられた、それでいいじゃないか。比べる必要なんてない、才能があろうがなかろうが俺に出来ることをやるだけだ。配られたカードで勝負するしかない、それがどういう意味であろうと。




小ネタというか作者が仕込んだことですが南雲君が修学旅行で予知夢を見ていることがセリフから判明します。
こういう小ネタを漫画などで見つけるのが大好きなので書いてく中で自然な流れで仕込んでいけたらいいなと考えています。

ヒロイン未定とタグに書いていましたが候補を3人に絞りましたのでタグを変更します。3人目は倉橋です。この話の南雲君の行動がキッカケで惹かれるようになったと考えています。候補が3人になったからと言ってその他の生徒との絡みがなくなるわけではないのでご安心を。
前の後書きで触れましたが作者の技量不足などの理由によりハーレムにはしません。恋愛関係についてはハーレム設定が好きな人でも楽しめるようなもの、読者が読んでいて納得できるような流れで書いていくつもりです。
一例をあげると作者は物語シリーズを原作で読むくらい好きですが、なんで阿良々木君は羽川さんを選ばなかったんだろうって思っています。恋愛は何が起こるかわからないと言われたらそれまでですけど。でもガハラさんのほうが可愛いからしょうがないですね。
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