暗殺教室 28+1   作:水野治

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暗殺旅行、4分の3。
あっさりと潜入が終わっていますが交渉期限は1時間以内なのでそんなに潜入に時間はかかっていないはずです。


第28話 リゾートの時間 その3

 ~渚視点~

 

「…寺坂君ありがとう。あの時声をかけてくれて、間違えるところだった」

 

「…ケ、テメーのために言ったんじゃねぇ。1人欠けたらタコ殺す難易度上がんだろーが。それに鷹岡の野郎にも腹が立ったからな」

 

「うん…ごめん」

 

 僕らはミッションを無事に終え現在はヘリコプターでみんなの待つホテルへと向かっている。今回の黒幕は鷹岡元先生だった。みんなが感染してるのは殺人ウィルスだと鷹岡元先生に言われ目の前で薬を爆破されたときは本当に殺しそうだった。だけど寺坂君の言葉で我に返ることができロヴロ先生から教えてもらった"猫だまし"で鷹岡元先生を倒すことができた。ちなみにクラスのみんなが感染してるウィルスは食中毒菌を改良したもので交渉用の物なので無毒になるらしい。

 他にも暗殺者はいたけどクラスの皆で力を合わせて退けることができ、今日の経験は殺せんせーの暗殺に必ず役立つということを実感できた。

 

「早くみんなに大丈夫だってこと伝えたいね」

 

「みんな大丈夫かな?盛られた毒が無毒になるとはいえあと3時間は猛威を振るうんだよね?」

 

「大丈夫だって渚君。寺坂見てみ?全然平気そうでしょ。あっでもみんな寺坂みたいにバカじゃないから心配だよね」

 

「おいカルマテメぇ。治ったら覚えとけよ」

 

「確かに寺坂君は体力があるから平気そうに見えるけど…」

 

「でも栄養剤もらったからな。みんなに飲ませて今日はもうゆっくり休もう」

 

 磯貝君の言葉にみんなは頷き無言になる。解決したと思ったらドッと疲れを感じてきた。それでも感染したみんなはまだ不安なはずなので無事を伝えるまでは休まないようにしようと思った。

 ヘリがホテルの近くのビーチへと降り立ち岡野さんなど脚が速いメンバーを先頭にみんなの下へと向かう。僕は少し出遅れてしまって一番後方になってしまった。ホテルに繋がる入り口の前に着くと先行したメンバーが立ち止まっていたので釣られて僕も止まる。一体どうしたんだろう?

 

「立ち止まってどうしたの?」

 

「歌が聴こえる」

 

「…ホントだ。すごいうまい」

 

「男の人の声だね。ビッチ先生が演奏してたみたいにホテル側の人が演奏しているのかな?」

 

「なんか聴き入っちゃうね」

 

 茅野がそういうとみんなはそのまま入り口の前で歌を聴き続ける。たしかにこの歌のうまさは自分の周りにはいないレベルのものだなと感じる。

 

「あれ?この歌…」

 

「矢田さん、この歌知ってるの?」

 

「うん。"Tiny Boat"って曲だよ。まさかとは思うけど…」

 

「どうしたの?」

 

「次に歌う曲で確証が持てるんだけど…この曲が終わるまで待ってちゃダメかな?」

 

「矢田っちがそう言うならもう少し待ってみようか」

 

「ありがとう、ひなたちゃん。でもみんなはいいの?」

 

「うん待ってみよう。むしろもう少し聴いていたい」

 

 磯貝君がそう言うとみんな頷き尚も聴き続ける。端から見たら大勢の中学生がホテルの入り口で立ち止まっているという不思議な光景なんじゃないかなって思う。曲が終わって別の曲が始まると矢田さんはやっぱりと言った。

 

「今聴こえてる曲"パトリシア"っていうんだけど、歌ってるのきっと、ううん絶対南雲君だと思う」

 

 えっ南雲君?みんなが僕と同じように驚いた表情になるが千葉君と速水さんの2人はさほど驚いた様子ではなかった。

 

「矢田っちどうして南雲君だと思うの?」

 

「前に一緒に音楽聴いたんだけどその時と全く同じ曲なんだ。だからなんとなくなんだけど…言うなればカンかな?」

 

「仮に歌ってるのが南雲だとしてもギターの音も聴こえてるぜ?」

 

「無事を伝えなきゃいけないしそろそろ入ろうみんな。そしたら演奏者もわかるし」

 

 片岡さんの言葉で入り口のドアを開ける。

 すると矢田さんが言っていた通り南雲君が感染してるクラスメートに向けてギターを演奏しながら歌っている光景が広がっていた。

 

「おっみんな帰ってきた。大丈夫だったか?」

 

「南雲一体どういうこと…いやまずはみんなに報告しないとな」

 

 さすが学級委員と言うべきか磯貝君は自分の好奇心よりもクラスを優先した。感染してるものは無毒になるということと無事に潜入をこなしてきたということを要所要所掻い摘んで説明をするとみんな安心しきった顔になった。

 

「南雲君大丈夫!?」

 

「ああ渚、うん大丈夫だ」

 

「南雲君そっちは茅野だよ、僕はこっち。全然大丈夫じゃなさそうだから早く休もう」

 

「すまん。正直しんどい」

 

「僕の肩使っていいから布団に入ろう。あっでもその前に栄養剤あるからそれを飲んでから休んだほうがいいかも」

 

「ありがとう渚」

 

「このタイミングで聞くのもなんだけど、さっき歌ってギター弾いてたのって南雲君だよね?」

 

「そうだよ。俺にできることっていったらこれくらいだったから」

 

「詳しいことは…一段落したら聞かせてくれるよね?」

 

「もちろんだ茅野。…俺は大丈夫だから神崎とか見てやってくれ、きっと辛いだろうから。渚だけ貸してくれ」

 

「わかった。南雲君もしっかりと休むんだよ!」

 

 そう言って去っていく茅野に南雲君はなんか頼もしく見えるって言って椅子に腰掛けた。その後栄養剤を飲ませて部屋へと運んだ。

 病人をみんな休ませてから潜入してきた人達も布団へと入り休むことになった。それぞれがそれぞれの疲れで泥のように眠った。

 

 

 

 

 ~南雲視点~

 

 目覚めたとき男子全員が大部屋で並んで寝ていた。

 時計に目をやると正午前。徐々に覚醒していく頭で昨日の記憶を思い出す。そうだ、ミッションは無事に終わったと磯貝が言っていた。俺は歌を歌い続けて戻ってきた渚の肩を借りて布団に入ったんだった。

 起きそうにもないクラスメート達に小さくお疲れ様とこぼし俺は服を着替えてから洗面所に向かい顔を洗い歯を磨く。

 なんとなく外の空気を吸いたくなったのでホテルから出るとビッチ先生がビーチ横でくつろいでるのが目に入ったのでそちらへ向かう。

 

「あら南雲起きたのね。みんなはまだ寝てるんでしょ?」

 

「ハイ。昨日はお疲れ様でした、そして…ありがとうございました」

 

「私はなにもしてないわよ。全部あんたたち生徒が頑張ったからこうしてゆっくりできてるのよ」

 

「はあ」

 

「それに私に潜入の内容を聞こうとしても意味ないわよ。私はみんながホテルに潜入するために序盤に離脱したから」

 

「そうなんですか」

 

「そうよ」

 

 ビッチ先生はそう言うと手元のトロピカルジュースを上品に飲む。

 

「ビッチ先生、聞いてほしいことがあります」

 

「…どうやらその顔は真面目な話みたいね。なに、言ってみなさい」

 

「…俺、昨日の暗殺で引き金を引けなかったんです。殺せんせーを殺さないほうが俺達E組は幸せなんじゃないかって考えちゃって」

 

「……」

 

「ビッチ先生は殺したくないのに殺したことってありますか?」

 

「…そうね、1度だけあるわ」

 

「聞いても大丈夫ですか?」

 

「ええ。あれはそうね…5年くらい前かしら、私はターゲットに恋をしてしまったの。色仕掛けで近づいて相手が色仕掛けをしなくても警戒しなくなった頃にその気持ちを自覚したわ。それからは殺す機会を何回も逃した。誰にもバレずに確実に殺せたとしても彼といたいと思うとその首もとにナイフを突きつけることができなかった。そして、遂に――タイムリミットを迎えたわ。つまり依頼主から予め言われていた暗殺期限を過ぎようとしていた。私は迷った、迷った結果…彼を殺したわ。私の気持ちを心の奥底にしまって眠っている彼を出来るだけ苦しまないように、一撃で」

 

「……」

 

「気分は最悪だったわ。依頼主からはよくやったと多額の報酬をもらったけど…何か大切なものを失った感覚と自分の中の何かが麻痺していくのを感じた」

 

「辛く…なかったですか?」

 

「結局その暗殺がきっかけで人を殺すことに何も感じなくなったわ。…いえ違う、自分の気持ちを殺すようになったのよ。南雲、あんたは今暗殺に対して疑問を持っているのよね?」

 

「そうです」

 

「私から言えることは…何もないわ。悩んで悩んであんた自身の答えを見つけなさい」

 

「わかりました」

 

「あんたの持ったその考えは間違っていないわ。だから引き金を引けなかったのは気にしなくていい、人間には人生を失敗する権利があるんだから。たった一回の暗殺の失敗を引きずる必要なんてないわ」

 

「…あれ?」

 

「どうしたの?なんか私おかしいこと言ったかしら?」

 

「律も人間には人生を失敗する権利があるって言ってたから」

 

「律が?…フッ、そういうことね」

 

「どういうことですか?」

 

「これはある映画のワンシーンの台詞なのよ。私はこの映画をとても気に入ってるから覚えてるけど…あのコもあんた達と一緒で色々と学んで成長してるんだなって思ったのよ」

 

「あーなるほど。でもいい台詞ですね、なんかこう胸にストンと落ちてくるというか」

 

「でしょ?だから好きなのよこの台詞が。…話を戻すけどあんたの暗殺に対する考えが決まったらよかったら教えなさいよ、先生としてもプロとしても気になるから」

 

「わかりました、ありがとうございます」

 

「既に昼だけどあんたももう少し休みなさい。たぶんみんな夕方くらいまで起きないでしょ」

 

「そうします」

 

 ビッチ先生に別れを告げ俺は部屋へと戻るとやっぱりみんなは眠ったままだった。俺は布団に入ると先程話した内容を頭で反芻しゆっくりと目をつぶった。

 

 

――

 

 

 夕方に目覚めると俺以外誰もいなかった。枕元にはみんなジャージで浜辺にいるというメモが残されていた。メモの右下の隅に小さく渚と自己主張をあまりしない感じで書かれていた。渚らしいなと小さく笑ってジャージに着替えみんなの下へと向かう。

 

「みんなおはよう」

 

「あっ南雲君。ジャージってことはメモ見たんだね」

 

「ああ、渚色々とありがとな。それであの浜辺に浮いている大きなコンクリート?の固まりはなに?」

 

「ダメ元だけど殺せんせーが元に戻ったとき殺せるようにガッチリ固めてるんだって。烏間先生が不眠不休で指揮とってるよ」

 

「…本当に同じ人間なのか不安になってくるな」

 

「あはは…」

 

 烏間先生達の作業を見てシンとした空気が流れている。

 すると磯貝が小さく言葉を溢し始める。

 

「烏間先生だけじゃなくてビッチ先生もすごい人だし、ホテルで会った殺し屋達もそうだった。仕事に対してしっかりとした考えを持っていたし。…と思えば鷹岡元先生みたいに"ああはなりたくないな"って人もいて。いいなと思った人は追いかけてダメだと思ったやつは追い越して…多分それの繰り返しなんだろうな、大人になってくって」

 

 磯貝の言葉にみんなは無言で頷く。すると聞いたことがないくらいの爆発音が響き体が思わず反応する。

 殺せんせーを固めていたコンクリートが爆発したのだ。でもきっと失敗しているはずだと思った。そう思ったのはどうやら俺だけじゃなかったらしくみんなは殺せんせーの姿を探すようにキョロキョロと周りを見ている。

 

「ヌルフフフ、先生のふがいなさから苦労させてしまいました。ですが皆さん本当によく頑張りました!」

 

 みんなの真後ろに殺せんせーは気付いたら立っていた。なんだか触手がある殺せんせーを久しぶりに見たような気分になった。

 

「では皆さん旅行の続きを楽しみましょう…と言いたいところですがその前にやることがあります」

 

「「「やること?」」」

 

「正確には聞くべきことですね。南雲君、わかってますね?」

 

「…はい」

 

 殺せんせーがそう言うと皆は口々にそういえばと言っている。

 

「正直昨日の南雲君を見た瞬間からどうしてかギターが弾けてあんなに歌がうまいか聞きたくて聞きたくて。ですが烏間先生に止められました」

 

 あとで烏間先生にお礼を言っておこう。

 

「そうだなあ…どこから話そうか…」

 

 俺が話の切り出しかたを考えているとみんなの視線が俺に集まっている。当然といえば当然だがなんだか恥ずかしくなってきた。

 

「みんなは…将来の夢はあるか?俺はある。自分の歌で食っていくことだ。もっと言えば今組んでいるバンドでメジャーデビューをして日本全国で知らない人がいないくらいになる」

 

 俺の言葉にみんなは物真似みたいな真剣な顔になる。やはり中学3年生という将来を見据えた時期だからだろうか。

 

「バンドで俺はボーカル、ギターの役割だ。だから歌も普通の人よりは上手いし当然ギターも弾ける。これで昨日なんで俺がああいうことができたっていう説明になると思うんだけど……みんなは笑わないのか?」

 

 俺の言葉にみんなは無言のまま顔を見合わせる。すると笑って言葉を続ける。

 

「ギター弾けるなんてそんなカッコいいこともっと早く言えよ!」

「人の夢なんだから笑うわけないだろ!」

「今度弾いてほしい曲あるからお願いしていいか?」

 

 男子達の声が大きすぎて女子も何か言ってるのだが俺の耳には届かなかった。でも批判的なことを言ってる人は誰もいなくて、油断すると涙が落ちそうだった。それくらい嬉しかった。

 

「だってさ歌手だぜ?現実を見ろとか思わないのか?」

 

「ヌルフフ、そんな冷たいことを言う人はこのクラスには一人もいませんよ?それよりも皆さん質問はないですか?」

 

「ハイ!ハイ!」

 

「では中村さんどうぞ」

 

 気付いたら俺への質問コーナーみたいになっている。

 

「私小学生のときに何回か純一の家言ってるけどギターとかなかったよね?いつからやってんの?」

 

「目指し始めたのは幼稚園のときだ。ギターは俺の部屋じゃなくて別の部屋に置いてたから気付かなかったんだろ。それと秘密にしてたのは…恥ずかしかったからだよ」

 

「いやー幼馴染の新たな1面が見られたね」

 

「じゃあ他に質問がある人はいませんか?」

 

「はい!」

 

「岡島君どうぞ」

 

「バンドは何人組なんだ?女の子はいるのか?」

 

「4人組で俺の他にベース、ドラム、キーボードがいてキーボードだけ女の人だよ。ちなみに俺以外は高校生」

 

「おー!その女性は可愛いのか?」

 

「まあそれなりに」

 

「今度ライブやるときチケット売ってくれ!」

 

「いいけど彼氏いるからな」

 

「可愛い人は見るだけで癒されるから十分だ!」

 

「そ、そうか。岡島がそれでいいなら」

 

「他に何か聞きたいことがある人はいますか?キリがないのでこの場では最後にしますか」

 

「はーい!」

 

「倉橋さんどうぞ」

 

「純君は自分で曲作ったりするの?」

 

「するよ。でも自分の中の経験だけじゃ足りないと思ってるから本を読んだり映画を観たりで補っている」

 

「今度聴かせてね!」

 

「いいよ。ライブやるときチケットあげるからその時にでも聴けるよ」

 

「俺もチケットほしい!」

「私も!」

「純一と俺親友だよな!?」

 

 みんながチケットを欲しがっているのでキャパとかの関係があるから順番になるからと説明する。ていうか前原の俺とお前は親友だよなって頼みかたは俺がまるで宝くじに当たったみたいだなと思った。

 俺はみんなが聞いている今だからこそ言うべきことがあると思ったのでさっきまでの笑顔とは全く別物の真剣な顔になって話を切り出す。

 

「俺、みんなに謝らなきゃいけないことがあるんだ」

 

 俺の真面目な空気を察したのかクラス全員が姿勢を正すかのように俺を見る。

 

「昨日の暗殺で俺…引き金を引くことができなかったんだ。せっかく信頼してくれて俺に止めを任せてくれたのに…みんなごめん!」

 

「…おい南雲、なんか勘違いしてねぇか?」

 

「寺坂…」

 

「お前一人の責任な訳ねえだろ。信頼してお前に止めを任せたけどなにも100%確実に成功するなんて誰一人思っちゃいねえ。それにお前が引き金を引こうと引くまいと昨日の暗殺はこのタコが防いで失敗に終わってたはずだ」

 

「でも…」

 

「それにお前は俺に言ったよな?出来事の責任をクラス全員で割れば27分の1だって。お前の失敗は俺達の失敗だ。お前が撃てなかったんだったら俺達が撃てるわけがねえ。なあみんなそうだろ?」

 

「…寺坂の言う通りだ」

「南雲君気にしなくていいんだよ」

「てか寺坂のくせに良いこと言い過ぎ」

 

「おいカルマ!聞こえてるからな!本当に許さねえからな!」

 

 寺坂がカルマのコメントに対して怒ったのを見てみんなは笑う。でも俺は――

 

「みんな…ごめん、本当に…ありがとう…」

 

「お、おいあの純一が…」

「な、泣いている…?」

「なんか泣いてる姿もイケメンなのがちょっと腹立つ」

 

「ヌルフフフ、仲間はいいものですねぇ。楽しいときは共に笑いあい、悲しいときはその分辛くなくなる。先生はこの旅行で君達の本当の繋がりというものを感じました。そうでしょう?南雲君?」

 

「…ハイ。本当に良い仲間を持ったと思います。…俺の自慢です」

 

 仲間の優しさに触れて俺は涙が止まらなかった。止めようと思っても止まらなかった。

 

「南雲君、これ」

 

「ありがと、神崎」

 

 ハンカチを受けとると俺は涙を拭く。

 

「そういえば前に話したこと叶ったね」

 

「?、前に?」

 

「うん。海行きたいねって話したでしょ?」

 

「そんなのよく覚えてたなぁ。言われて思い出したよ」

 

「…忘れないよ。南雲君と話したことだから」

 

「えっ?」

 

 神崎の言葉に驚いた俺は横にいる彼女を見る。その目は俺の方は向いていなくて、どこか遠くを見てるような、何か別の事を考えていてここにいるのに別の場所にいるかのような目だった。その横顔を見て俺は綺麗だなって思った、今まで見たどんな人よりも。

 

「今度一緒に出かけようよ」

 

「いいよ。みんなも一緒?」

 

「ううん、2人で。南雲くんの都合の良い日で大丈夫だから」

 

「了解。そのときになったら連絡するよ」

 

「約束だよ?」

 

 神崎が小指を差し出してきたので俺も小指を出して指切りをする。最後に指切りをしたのはいつだったろうか、記憶を辿っても思い出せない。

 

「それでは旅行の続きを楽しみますよ!」

 

 殺せんせーが仕切り直しと言った感じで全体に対して宣誓する。

 

「旅行の続きったってもう夜だよ?」

 

「うん、明日は帰るだけだし」

 

「1日損した気分だよね~」

 

「ヌルフフフ、夜だから良いんですよ。昨日の暗殺のお返しにちゃんとスペシャルなイベントを用意しています。真夏の夜にやる事はひとつ、肝試しです!」

 

殺せんせーの言葉にみんなはポカンとした顔になる。何もないと思った矢先また何か始まるみたいだ。




ビッチ先生がちゃんと先生をしています。
律とビッチ先生が言った『人間には人生を失敗する権利がある』というのは映画"アメリ"の台詞です。とてもいい映画なので興味を持った方は是非ご覧になってください。

矢田さんが真っ先に歌ってるのが南雲君だと気付いたり、寺坂君の励ましの言葉が南雲君から言われたことを引用していたり、今までのことが回収できている感じがして書いていて気持ちよかったです。
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