暗殺教室 28+1   作:水野治

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これにて暗殺旅行終了です。
これでGWは心置きなく遊べます。



第29話 リゾートの時間 その4

「「「肝試し?」」」

 

「先生がお化け役を務めます、久々にたっぷり分身して動きますよぉ。もちろん殺しにきても構いません。旅行の締めくくりにはピッタリでしょう」

 

「おもしろそー!」

「えーでも怖いの嫌だな~」

「へーきへーき!」

 

 はしゃぐ俺達を見てあったかーい目でこちらを見ている殺せんせー。

 

「場所はこの島の海底洞窟。300メートル先の出口まで男女ペアで抜けてください。男女ペアは…そうですねぇ、組みたい方と是非組んでください」

 

「渚!私と組まない?」

 

「茅野は僕でいいの?」

 

「おーい岡野組まねえ?」

 

「うん…いいよ」

 

 続々とペアか出来ていく、どうしたもんかな。

 

「あら純一、お困り?」

 

「莉桜のほうこそ困ってるんじゃ?」

 

「しょうがないから組む?」

 

「そうだな、よろしく」

 

 流れで莉桜と組むことになったが久しぶりにこういうのでペアになったなと感じた。小学生の頃は当たり前だったのに。

 

「南雲君どうしよう!前原から誘われちゃったよ」

 

「ああ、よかったな」

 

「岡野ちゃんおめ~」

 

「ありがとう…じゃなくて!どうすればいいかな?」

 

「別にいつも通りでいいんじゃないか?…訳もなく殴ったり蹴ったりしない限り嫌われはしないだろうし」

 

「それと心配してたアピールしたら?体調よくなってよかったーみたいな」

 

「…そうだね。うん、そうする。ありがと!」

 

 そう言って岡野は前原の下へと戻る。残された俺達は離れていく岡野を見送る。

 

「…やっぱりこういうので関係が進展したりとかするのかねぇ」

 

「なんだ莉桜らしくない。誘いたいやつでもいたのか?」

 

「ま、声かけるか迷ってたって感じね。それに純一も困ってる感じだったし」

 

「ふーん…俺達の番だな、行こうぜ」

 

「エスコートよろしく~」

 

 怖いの平気なはずだからエスコートもなにもないだろとは思ったが、岩場で歩きづらいはずなので段差くらいは教えてやろうかなと一歩先を歩いた。

 

 

 

 

 ~杉野視点~

 

「神崎さん、よかったら俺と組もう!」

 

 殺せんせーが組みたい人と組んでいいと言ったとき俺はすぐに彼女の下へと行き肝試しに誘った。勇気を出した甲斐あってか良い返事をもらうことができ、思わずガッツポーズをしてしまった。

 

「それでその時俺は言ったんだよ――」

 

 今は肝試しの順番待ちをして彼女と話している。神崎さんは俺の話の要所要所に相づちを打ってくれていたので俺も話しやすかったけど、あることに確信が持ててしまった。認めたくはないけど。

 俺と話しているけど、神崎さんの心はここにはなくてどこか別のところにあるって。他の誰が見てもわからないだろうけど、ずっと彼女の事を見てた俺だからわかる。

 教室とかで俺が神崎さんを目で追ってしまうように、彼女もまた目で追っていたんだ。それは俺の親友でその事に気付いたとき俺はどうすればいいんだろうって頭を悩ませた。だから今まで気付かない振りをしてたんだ。

 

 もちろん純一に対して手を引いてくれとかそういうのは一切言うつもりはなかった。神崎さんのことが好きだと言いつつ、彼女に対して起こせたアクションは何もない。強いて挙げれば修学旅行に誘ったくらい、ただそれだけだ。彼女の心が純一に靡くのも当然だった。同性の俺から見ても純一はカッコいいし、何より良いやつだから。

 俺のこの気持ちが届かないとわかっても、それでも俺は神崎さんを諦められなかった。追いかけても心の距離は縮まらないし、叶わない恋に飛び込んだ俺だけどこの気持ちは偽れなかった。

 俺は神崎さんのことが誰よりも好きだ。

 

 

 

 

 ~南雲視点~

 

「莉桜、そこ滑りやすいから」

 

「なに?私の話が面白くないって?」

 

「そのスベるじゃない」

 

「冗談、わかってるわよ。ありがと」

 

「それにしても…殺せんせーの考えがわかってきたんだけど…」

 

「これって明らかに私達をくっつけようとしてるよね」

 

 入り口で殺せんせーは気合いの入った語りをしていたので本格的なんだと思った矢先にカップルベンチに座れだのイチャイチャするカップルを見れば恨みが収まるだの明らかに目的が透けていた。極めつけはポッキーゲームをしろという指令、訳がわからないよ。

 

「でも殺せんせーってE組で一番怖がりだよな?その内ボロ出るんじゃねーの?」

 

「たしかに。狭間ちゃん辺り見たら驚きそうだよね」

 

『キャーッ!!化け物出たーッ!!』

 

「…殺せんせーだよね」

 

「…うん」

 

 そこからはひっきりなしに殺せんせーの悲鳴が聞こえ続けた。もはや肝試しのきの字もなかったので俺と莉桜の2人はそのまま出口へと向かった。

 

 

――

 

 

「要するに…怖がらせて吊り橋効果でカップル成立を狙ってたと」

 

「殺せんせーは結果を急ぎすぎなんだよ」

 

「怖がらせる前にくっつける方に入ってるから狙いがバレバレだし」

 

「だって見たかったんだもん!手ェ繋いで照れる2人とか見てニヤニヤしたいじゃないですか!」

 

「うわっ泣きギレだ」

 

 殺せんせーは大人のはずなのだが隠すことなく大泣きで駄々をこねる。ちょっと感情に正直すぎないかな。

 

「まあでも殺せんせー、そーいうのはそっとしときなよ。うちら位だと色恋沙汰とかつっつかれるの嫌がる子多いからさ」

 

 珍しく莉桜が宥めるほうに回る。

 

「うぅ…わかりました」

 

「何よ!結局誰もいないじゃない!怖がって歩いて損したわ!」

 

 俺達全員が声がした方向を向くとビッチ先生が一方的に腕を組んでいる状態で海底洞窟から烏間先生、ビッチ先生ペアが出てきた。

 

「だからくっつくだけ無駄だと言ったろ。徹夜明けにはいいお荷物だ」

 

「うるさいわね男でしょ!美女がいたら優しくエスコートしなさいよ!」

 

「ただの洞窟に何もあるわけないだろ」

 

「だからって…もう…」

 

 ギャアギャアと騒いでたのとは一転、俯き気味に寂しそうな表情になるビッチ先生。そんな様子を見て誰かが呟く。

 

「…なぁ、うすうす思ってたけどビッチ先生って…」

 

「…うん」

 

「…どうする?」

 

「明日の朝帰るまで時間はあるし…」

 

(((くっつけちゃいますか!?)))

 

 クラス全員が悪い表情になる。それと共に暗殺旅行最後の作戦が開始された。

 

 

 

 

「意外だよな~あんだけ男を自由自在に操れんのに」

 

「自分の恋愛にはてんで奥手なのね」

 

 ホテルのロビーにてビッチ先生を囲んで話をしている俺達。烏間先生は暗殺の報告とやらで部屋に籠っているので逆に都合がいい。

 

「仕方ないじゃないのよ!あいつは世界でも見ないくらいの堅物なのよ!そりゃ私にだってプライドがあるし男をオトす技術だって千を越えてるから色々試したわよ!ムキになって本気にさせようとしてる間に…その内こっちが…」

 

「…可愛いと思ってしまった」

 

「なんか屈辱」

 

「なんでよ!」

 

 ビッチ先生は意外と不器用だし、積み上げた経験が逆に邪魔で気持ちに素直になれないんだろうな。こういう恋の形もあるということを覚えておこう。するとE組きっての恋愛の達人こと前原が口を開く。

 

「俺等に任せろって!2人のためにセッティングしてやんぜ!作戦決行は夕食の時間だ!」

 

「いつもお世話になってるしね~」

「最高のディナーになるといいね!」

「烏間先生をビックリさせるか!」

 

「あ、あんた達…」

 

「ヌルフフフ、では恋愛コンサルタントE組の会議を始めますか」

 

「ノリノリね、タコ」

 

「同僚の恋を応援するのは当然です。女教師が男に溺れる愛欲の日々…甘酸っぱい純愛小説が描けそうです」

 

「殺せんせー、それ明らかに官能小説だよね?」

 

「まあまあ南雲君。今回の会議は君が重要ですよ、何て言ったって烏間先生の一番弟子ですから。色々と情報提供、提案をお願いします」

 

「うーん…まず服が悪いかな」

 

「たしかに。露出しときゃいーや的な」

 

「烏間先生みたいな日本人はそういうのは好みじゃないからもっと清楚な感じで攻めないと」

 

「む、むぅ…清楚か」

 

「清楚つったらやっぱり神崎ちゃんか。昨日着てた服乾いてたら貸してくんない?」

 

「あ、う、うん」

 

 そう言ってビッチ先生と神崎は部屋へと着替えに行った。数分後に戻ってきたので俺達は全員下を向いてせーので一斉に見る。

 

「ほら、服ひとつで清楚に…なってねーな」

 

(((なんか逆にエロい!)))

 

 女子でさえも赤面している。清楚系ガーリーなワンピースを着ていた神崎だが、ビッチ先生が着ると胸元が大きくはだけてしまい、それこそビッチみたいな感じになっていた。

 

「そもそも全てのサイズが合わないな」

 

「神崎さんがあんなエロい服を着てたと思うと…」

 

 岡島の言葉に赤面し顔を両手で覆う神崎。俺はなんとなく腹が立ったので無言で岡島のケツを蹴飛ばす。

 

「もうこの際エロいのは仕方ない!大切なのは胸よりも人間同士の相性よ!」

 

「そーだよ!岡野さんの言うとおり!」

 

 岡野と茅野の2人がなぜこんなに声をあげているかは全員がわかっているがあえて口には出さない。

 

「それでは南雲君、烏間先生の女性の好みは?」

 

「うーん…あー1度だけ女性をべた褒めしてたことあるけど…」

 

「えっなにB専?」

 

「いや、そうじゃなくて…褒めてたのって柔道女子の無差別級の人だから理想のタイプってよりは理想の戦力って感じかなって」

 

「「「たしかに」」」

 

「いや…強い女が好きって線もあり得るけど、なおさらビッチ先生の筋肉じゃ絶望的だね」

 

 竹林の一言にビッチ先生はぐぬぬと唸る。奥田がそんなビッチ先生を見てじゃ、じゃあと切り出す。

 

「手料理とかどうですか?ホテルのディナーも豪華だけどそこをあえて2人だけは烏間先生の好物で!」

 

「烏間先生、ハンバーガーかカップ麺しか食ってんの見たことないぞ」

 

「…なんかそれだと2人だけ不憫すぎるわ」

 

「純一なんか他にないか?」

 

「訓練後にサラダチキンとプロテインを2人で摂取したことあるよ」

 

「なお不憫だわ。てか摂取の時点で食事というより栄養そのものとしか見てないだろ」

 

 つけ入る隙が無さすぎる。さすが烏間先生。

 

「なんか烏間先生の方に原因あるように思えてきたぞ」

 

「でしょでしょ?」

 

「先生のおふざけも何度無情に流されたことか…」

 

 打つ手を無くして烏間先生がディスられ始めた。

 

「と、とにかく!ディナーまでに出来ることは整えましょう。女子は日本人が好むようなスタイリングの手伝いを、男子は2人の席をムードよくセッティングです」

 

「「「はーい!」」」

 

「そうだ純一!ディナーのときにギターでムードいい感じで演奏できないか?」

 

「やってもいいけど烏間先生怪しまないかそれ」

 

「た、たしかに」

 

「でも音楽でムードを作るのはいい案だな。ホテル側が演奏してれば自然だし頼んでみるか」

 

「席はどーするよ?俺達のガヤがあったらいいムードもなにもなくないか?」

 

「それだったら取って置きのいい場所があるよ~」

 

「いい場所ってどこだカルマ?」

 

「ほらあそこ」

 

 カルマはそう言って外を指差す。その席は俺達が夕食を食べる場所とは別に用意されているホテルの施設の一部であろう特別席だった。

 

「さすがカルマよく見つけたな」

 

「いやあそこで食べてる人だったらイタズラしやすいな~って思っただけだよ」

 

「…烏間先生とビッチ先生の邪魔はするなよ」

 

「とりあえずこれで大丈夫だな。後は女子のコーデ次第ってことで!」

 

 磯貝がまとめて男子による会議は終了、ホテル側に許可を取ったり夕食までに時間がないので迅速に行動した。

 

 

――

 

 

 21時ディナー開始。時間に正確な烏間先生はちょうどにホテルのレストランに来た。

 

「俺の席がないように見えるが…どこだ?」

 

「あっ烏間先生。いつも先生方にはお世話になっているのでホテル側にお願いして特別席を取ったんです。外に席を用意してるんでビッチ先生と楽しんでください」

 

「俺達国が迷惑をかけている立場なのにすまないな」

 

「いえいえ。そちらのドアから出られるので」

 

 烏間先生は俺の言葉に従って外に向かう。外へと繋がるドアが閉まると同時にクラス全員が特別席が見えるドアへと近づく。

 席には既にビッチ先生がいつもと違った大人しめのドレスのような服装でスタンバイしている。

 

「あのショールどうしたの?」

 

「売店で買ってミシン借りて…ネット見ながらブランドっぽくアレンジした」

 

「原さん家庭科強いもんなー」

 

「ていうか声が聞こえないね」

 

「てことはせっかく頼んだ音楽も2人に聴こえないんじゃない?」

 

「…まあ俺は良い音楽が聴けて嬉しいから」

 

「純君と同じで私も嬉しいよ~」

 

「ともあれフィールドは整った、いけビッチ先生!」

 

 前原の言葉にクラス全員が同調する。たしかにビッチ先生をからかって楽しんでいるが上手くいってほしいというのは全員同じ気持ちだった。

 

「なに話してるんだろうね」

 

「月がきれいですねとか?」

 

「それくらいじゃやっぱり烏間先生は気付かないよ」

 

「でも2人とも楽しそうだよね」

 

「先生3人いて1人はタコだから、人間同士仲良くなんのはトーゼンだろ」

 

「うぅ、寺坂君ひどい!」

 

「殺せんせー静かに。あっビッチ先生席立った」

 

 ビッチ先生は席を立つと烏間先生がの胸元のナプキンを直し口をつけると、ナプキンの同じ場所を烏間先生の口へとつけ何か言っていた。一体何を言ったんだろうか?ビッチ先生が中に入ってくるとクラス全員がブーイングを浴びせる。

 

「何よ今の中途半端なキスは!」

「いつもみたいに舌入れろ舌!」

「ビッチってのは名前だけか!」

 

「あーもーやかましいわガキ共!大人には大人の事情があんのよ!」

 

「いやいや、彼女はここから時間かけていやらしい展開にするんですよ、ね?」

 

「ね?じゃねーよエロダコ!」

 

 ビッチ先生とみんなが騒いでいるのは南の島も終わりかーとセンチメンタルな気持ちになった。だけど旅行が終わっても暗殺は続く。今回のような失敗を2度とするわけにはいかない、俺はひとつの決心をした。

 

 

 

 

 俺はみんなが寝静まった頃外のベンチでカルマを待っていた。今回の潜入について詳しく聞こうと思ったからだ。

 

「南雲ここにいたのか、ちょっと思ってたところと違ったよ」

 

「すまんな、カルマ」

 

「いいよ、それで潜入のことが聞きたいんだって?」

 

「ああ。カルマの主観でもいいからできるだけ詳しく頼む」

 

「了解、まず最初は――」

 

 そこからカルマは潜入の一連の流れを説明してくれた。

 

・ロビーを通るためにビッチ先生がピアノの演奏で警備の目を引き誰も気付かれることなく潜入でき、そしてそれを見た烏間先生が"優れた殺し屋ほど万に通じる"という印象的なことを言ってたこと。

・俺達にウィルスを持った人はホテルで最初サービスドリンクを配っていた人でその人の麻酔ガスで烏間先生が戦闘不能になったこと。

・素手が暗殺道具のプロとカルマが戦闘、毒使いのおっさんの未使用をくすねた麻酔ガスを使用し勝利を収めたこと。

・渚が女装したこと。

・3人目の暗殺者に対して千葉と速水が実弾で応戦しクラス全員で撹乱して相手を拘束したこと。

 

「それで鷹岡を渚君が猫だまし?で怯ませたあとにスタンガンを流して勝利って感じ」

 

「詳しくありがとな、カルマ」

 

「いつだったか南雲が『渚の暗殺は直接見なきゃどうしてもわからない』って言ってたけどその意味がわかったよ」

 

「と言うと?」

 

「怖くないのが怖いっていうのが俺の感想かな」

 

「怖くないのが怖い?」

 

「そ。渚君見て正直俺衝撃受けた。鷹岡を倒したことじゃなくて倒して帰ってきた後なんだけど…全っ然怖くないんだ。あんだけの強敵を仕留めた人間が。突然だけど俺がクラスで一番警戒してるの南雲なんだよね」

 

「成績とかそういうの?」

 

「それもあるけどそうじゃなくて…烏間先生に唯一クリーンヒット与えたの南雲だけでしょ?それで仮に戦闘になったとして俺の敵となるのは南雲くらいだからそういう意味で警戒してるんだ。それでそういう腕っぷしが強い所を見せた奴って普通ちょっとは俺だけじゃなくて誰もが多少は警戒するけど…渚君は何事もなく皆の中に戻ってった。目立つのが苦手だからちょっとだけ照れ臭そうに」

 

「その様子が容易に想像できるな」

 

「ケンカしたら俺が百パー勝てるけど殺し屋にとってそんな勝敗何の意味もない。警戒できない、怖くないって実は一番怖いんだなって初めて思った。…でも負けないけどね、先生の命をいただくのはこの俺だよ。E組で勝つのはアインシュタインじゃなくてダーウィンだ」

 

「強い者が生き残るんじゃなくて環境に適応した者が生き残るからな。…まあお互い頑張ろうぜ」

 

「そうだね~」

 

 俺の言葉にカルマは真面目な顔から一変し、いつもみたいなのらりくらりと人を小馬鹿にするような顔に戻る。

 

「アンタ人を呼んどいて場所を教えないってどういうことよ…って、赤羽も呼んだの?」

 

「なに南雲ビッチ先生呼び出し?烏間先生から略奪すんの?」

 

「ちげーよ、昼頃に話したことで答えが出たからビッチ先生に報告しようと思って。それにカルマがそれを聞くことでもし失敗したときに言い訳しないように逃げ道なくしておこうと思ったんだよ」

 

「アンタなりの答え出たんだ」

 

「ハイ。俺は…殺せんせーを殺します。信頼してくれている皆のためってのもあるけど…自分が、俺が納得するために暗殺を続けます」

 

「…そう。じゃあ頑張りなさい。あんたには良い仲間がいるんだから」

 

「はい」

 

「じゃあ私は部屋に戻るわ。夜更かしは女の敵だからね」

 

 そう言ってビッチ先生はホテルへと戻る。俺のただ一言を聞くためだけにわざわざ来てくれたことにビッチ先生も先生として成長してるんだなって思った。

 

「なに?どういうこと?」

 

「気にするなカルマ。殺せんせーを殺すっていう宣言をしたんだよ」

 

「まあよくわかんないけどたぶん引き金が引けなかった関連でビッチ先生に相談したってところでしょ?」

 

「…バッチりわかってんじゃねーか。…話は変わるけどさ日本に戻ったら俺の家に遊びに来いよ」

 

「南雲の家に?いいの?俺行ったら部屋物色しまくるよ?」

 

「いいよ。渚とか誘えるやつみんな誘ってさ」

 

「了解、楽しみにしてるよ」

 

「…カルマ、お前結構な量勉強してるだろ?」

 

「…なんのこと?」

 

「指、ペンダコできてるぞ」

 

 カルマの指を何気なく見た俺は1学期にはなかったペンダコを発見した。カルマもカルマで殺せんせーに言われた言葉を噛み締めて努力をしてるってことがなんだか嬉しかった。

 

「ちょっと南雲、なににやけてんの?」

 

「にやけてねーよ。ただ凛香とは別ベクトルのツンデレだなーって」

 

「そんなんじゃないから」

 

「そうかそうか」

 

「だからそのにやけやめてくんない?殴りそうなんだけど」

 

「カルマも努力してるってことが嬉しかったんだよ。…次のテストは頑張ろうぜ」

 

「…言われなくても頑張るよ」

 

 そう言って2人で部屋へと戻る。まずは帰りの船の中ででも家で遊ぶ旨声をかけるかと頭で考えなから歩く。

 ふと空を見上げると日本では見られない数の星々が俺達を照らすように輝いていた。まだまだ夏休みは続く、E組のみんなともっと色々なことがしたいなと空の星々を見て思いを馳せた。




今回初めて杉野君の気持ちを書きました。それと共に中村さんの中にある想いについてもそれとなく触れました。作者の中ではこのときこの生徒はこんなことを思ってるなとか考えながら書いているんですが、文才がないのと場面などの都合で書き切れていません。

冷静に考えて自分の好きな子が自分の親友を好きだったらどうするかなって思いますね。身を引くか、好きな子が自分に振り向いてもらえるように頑張るか、杉野君は恋は叶わないかもしれないけれど諦めない選択をしました。

今後の恋愛模様がどうなっていくか、楽しみに待っていただけたら幸いです。

次回は南雲君の家に行く話です。本編で早い段階でフラグをたてたのに回収が遅くなったのは家に行ったらギターがあるとかで暗殺旅行で南雲君の夢を初披露できないと考えた作者のエゴです。

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