暗殺教室 28+1   作:水野治

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E組の女の子みんな可愛く書きたいですね。




第0.6話 ボーリングの時間

 今日はついに2年生最終日である。俺たちは終業式があるため早めに登校して今は本校舎へと向かっている。竹林がふぅと溜息をついたので俺は声をかける。

 

「竹林疲れたのか?体力もないほうだし俺がおぶってやろうか?」

 

「ありがとう、南雲君。でも心配には及ばないよ。ただ集会の事を考えたら気乗りしないだけさ」

 

 俺は確かになと苦笑いする。集会などの全校行事の際には他の生徒から嫌味を言われたり差別待遇を受ける。E組になって今日が初めての全校生徒が集まる行事ということで竹林は気落ちしているということだ。まあ差別待遇なんて慣れるもんでもないしな。俺は竹林の肩を軽く叩き気にせず行こーやと言う。

 

「純一おぶってくれるの?」

 

「莉桜、俺がおぶる提案をしたのは竹林だ」

 

「えーケチくさい!おぶってくれてもいいじゃん!」

 

「何でやらなくてもいいことをやらないだけでケチ扱いされないといかんのだ。…よし、俺にジャンケンで勝ったら本校舎の校門前までおぶってやろう」

 

「えっいいの?さっすがー!」

 

 まあ、竹林より軽いだろうしなと俺は付け加える。いざジャンケンというときに莉桜はよくある心理戦を仕掛けてきた。

 

「純一ってジャンケンのときに毎回パーから出すよね?」

 

「莉桜、その手には乗らないぞ。最初はグーから始めるかジャンケンぽんだけでやるか、かけ声だけ決めよう」

 

 莉桜はちぇっとこぼしながらジャンケンぽんだけでと言った。俺はフッと笑いをこぼす。なぜなら心理戦を仕掛けてきたのもそうだが莉桜が勘違いをしていて、俺がジャンケンのときに初手でよく出すのはグーだからだ。つまりパーを出すと思っている莉桜はチョキを出してくるわけで俺はいつも通りグーを出せばそれだけで勝てる。俺はイージーだなと思い勝負に臨む。

 しかしここで俺は気づく。パーから出すよねって莉桜は言ってきたが、果たしてさっきの考えの通りに相手が素直にチョキを出してくるか?答えは否。仕掛けてきたのだからそのままチョキなはずない。だとすると…パーだ!パーが正解だ!俺はにやけそうになる顔を我慢して莉桜と向き合う。対する莉桜は笑っている。いざ、開戦。

 

「「ジャン!」」

 

「「ケン!」」

 

「「ぽん!」」

 

 勝負は一瞬だった。俺がパーで莉桜がチョキ。

 負けてしまったと自分の出したパーを見つめていると、莉桜がイエーイと言いながら俺の背中に飛び乗ってきて言った。

 

「純一は深く考えすぎなのよ」

 

「ひょっとして俺がよく出す手知ってた?」

 

「そんなの知ってるわけないじゃない」

 

 莉桜は俺の背中でそう言ってカラカラと笑っている。俺は本当に深く考えすぎていたんだなと感じたので、これ以降ジャンケンは何も考えずやろうと思った。

 

「中村さんいいな、おんぶしてもらって」

 

「神崎ちゃんも純一に頼んでみたら?今日は私だけど他の日だったらいいよ」

 

「勝手に言うな。江戸時代の駕籠かきじゃないんだから人を進んで運ぼうとは思わん」

 

「えー?そう?純一って結構押しに弱い気がするけど」

 

 莉桜がそう言うと会話が聞こえていたのか近くにいた凛香が確かにと言っている。…マズイ、このままじゃ本校舎に行く度に俺は人を運ばなければならなくなる。流れを変えるために俺はそうだ!と話を切り出す。

 

「今日は午前中に終わるし午後にみんなでどこか遊ばないか?」

 

「純一から言い出すとは珍しい。でもいいじゃん!」

 

 莉桜がそう言うと周りも同調する。どこに行こうかと話し合って最終的にボウリングに決定し、磯貝と片岡が場所などを細かく決めている。委員長の2人はもうすっかり役職が板についてきている。

 莉桜が俺の背中で早く着かないのか~とジタバタしているので自分で歩いたほうが速いんじゃないか?と言って降ろそうとしたら、絶対に降りませーんと舌を出しながら笑顔で拒否してきた。不覚にも可愛いと思ったが悔しいので絶対に言ってやるもんか。

 

 

 

 

 終業式も無事に終わりE組は早く旧校舎に戻るように促された。無事にと言っていいのかはわからないが、校長先生の話のときや司会進行の教頭先生がいちいちE組いじりをしてくるのが鬱陶しかったらしい。なぜらしいという言い方なのかというと、俺は立ちながらボートを漕いでいたので知らないからだ。

 ともあれこれで旧校舎に戻って雪村先生の話を聞いて帰るだけだなと体育館を出ようとしたときに俺は本校舎の女子の集団に南雲君!と呼び止められた。

 

「どうした、何か用か?」

 

「こ、これを渡したくて!」

 

 集団の1人が意を決したかのように手紙を渡してきた。おそらくラブレターだろう。 受け取らない理由もないのでありがとうと返すと、女子の集団は足早に離れていった。受け取った俺もすぐにみんなの輪に戻る。前原にさすがだなと言われた。

 本校舎にも一応E組用の靴箱がある。そこで集会のときなどに靴を履き替える。なぜ突然こんな話をするかというと俺の靴箱には本校舎に来たときにはなかったものがあったからだ、ラブレターだ。それを発見した岡島が靴箱にラブレターって都市伝説じゃなかったんだなーと言って手に取ったので俺は岡島の手から素早く手紙を取り返す。

 

「こういうのは他の人に見られたら嫌だと思うから」

 

「ご、ごめん。そうだよな」

 

 俺と岡島のやり取りを見たE組のみんなはイケメンだ!と口を揃えて言った。いやいや普通に考えて自分の書いた手紙を出した相手以外が読むのは嫌でしょ。

 男子勢によっ色男などとからかわれながら裏山を登り始める。すると倉橋が純君~と言って俺の隣に来た。

 

「俺の事そんな呼び方してたっけ?」

 

「莉桜ちゃんと凛香ちゃんが下の名前で呼んでたから~。私なりの呼び方だよ~嫌だった?」

 

「いや、別に嫌じゃないよ。それでどうした?」

 

「ずっと立ってて疲れちゃったからおぶってほしいな~って!」

 

 俺は察した。莉桜が言っていた押しに弱いということを聞いていたなと。

 

「俺は午後のボウリングに備えて体力を温存しなきゃならないんだ、すまんな」

 

「え~、ダメなの~?」

 

 ぐっ上目遣いとは、さてはおねだり上手だな。これで手を打とうじゃないかと俺は上着のポケットから桃味の飴を渡す。

 

「いいの?やった~♪」

 

 倉橋はそう言ってジャンプしながら喜びを表現している。その反応可愛いな、てか疲れてたのはやっぱり嘘かよ。上機嫌な倉橋を見ていると凛香が話しかけてきた。

 

「純一、私も飴が欲しいんだけど」

 

「んっ…ほい」

 

「ありがとう。ていうかラブレターもらってるところ久しぶりに見たよ」

 

「あーかもなー。なに?嫉妬してくれてるの?」

 

「バ、バカじゃないの。別に嫉妬なんかしてないんだから、カン違いしないでよね」

 

 冗談だから怒らないでくれと凛香に謝る。すると矢田も話に参加してきた。

 

「私は誰かがラブレターを渡すところなんて初めて見たよ」

 

「矢田は誰かに書いたこととかないのか?」

 

「んー…あっ!書いたことあるよ!小さいときにパパに結婚してくださいって紙に書いて渡したよ!」

 

 …矢田の父さんを見たことはないが、デレデレで受けとる姿が容易に想像できる。

 

「そうなのか、矢田の父さん喜んでたろ」

 

「うん!桃花は絶対に嫁に出さんって雛人形を片付けるのがすごく遅くなったよ」

 

「…なかなか愉快なパパさんで」

 

 私のところもそういえば片付けてないと凛香が小さく言った。まあ確かにこんなに可愛い娘がいたら嫁には出したくなくなるだろうな。生憎我が家は男だけなのでその感覚はわからないが。凛香と矢田が家での娘に対してのお父さんあるあるを話してるのに相づちを打ちながら山を登っていると旧校舎が見えてきた。

 エネルギッシュに溢れた雪村先生が一番乗り~♪と教室に入っていった。やっぱり先生最近機嫌がいいな。

 

 

――

 

 

 学校が終わるとすぐに家に帰って遊ぶ準備をする。13時半に椚ヶ丘駅に集合とのことなので時間に遅れないようにする。俺たちはまだ中学生で外食にお金をかけられないので昼食は各自家で取って来るようにと磯貝から指示があった。俺は適当にカップ麺を作って食べ身支度を整えて家を出る。少しのんびりしすぎたため時間ギリギリになりそうだ。俺の格好は白を基調としたシャツに軽くカーディガンを羽織り、下はデニムのジョガーパンツとラフなスタイルだ。

 腕時計を何度もチラ見しながらいつもより気持ち速めに歩いていると椚ヶ丘駅が見えてきた。時刻は13時25分で俺以外全員到着してるっぽい。

 

「ごめーん、待ったー?」

 

「大丈夫、今来たとこだよ」

 

「ふっ最高の答えだ。…1000点やろう」

 

「あんたたちバカなの?」

 

 俺と前原のやり取りを見て凛香がそう言う。不破がいないから漫画ネタが通じるやつがいないのが悲しい。磯貝がこれで全員揃ったなと言った。俺は誰が来るのか把握していないのでここでメンバーを見る。

 男子は磯貝、渚、友人、千葉、俺、前原

 女子は岡野、片岡、神崎、倉橋、莉桜、凛香と綺麗に男女6人ずつの計12人のメンバーだ。矢田がいないのは珍しいなと片岡に聞くと病弱な弟さんの看病だとか。なんて良くできた娘なんだ、矢田の父さんが嫁に出さんと言っている気持ちがよくわかった。

 

 それじゃあボウリング場に向かおうと磯貝が先導する。みんなはそれに付いて行く形で歩き始める。俺は財布は忘れてないよなとクラッチバッグの中身を確認していると凛香が話しかけてきた。

 

「さっきの1000点やろうってなに?何かのネタ?」

 

「あーあれはバガボンドって漫画に出てくる伊藤一刀斎ってキャラのセリフ」

 

「ふうん。純一って割と何でも詳しいよね、漫画とか映画とか」

 

「家で時間さえあれば見てるからなー。話変わるけど凛香そのハット似合ってるな、服装もオシャレだし」

 

「あ、ありがとう…。純一も似合ってるよ」

 

「お、おう。素直に褒められるとは思わんかったからビックリしたわ」

 

 凛香がどういう意味?とジト目で見てきたのでそのまんまの意味だよと返す。莉桜がヒューと言いながら会話に入ってくる。

 

「お熱いねー二人ともー。ちなみに私はどう?純一」

 

 そう言って莉桜はその場で器用に1回転する。シャツにジーパンというシンプルな服装だが女子の中では身長の高いほうである莉桜にピッタリな服装だと思う。

 

「あー世界一可愛いよー」

 

「うわー…適当ー」

 

「まあ、似合ってるぞ」

 

「そう?どうもどうも」

 

 そう言って莉桜はニシシと笑う。莉桜は女子一人一人を指差してファッションの評価を促してきた。

 

「ひなたは?」

 

「一番動きやすそう、似合ってる」

 

「メグは?」

 

「なんかカッコいい、似合ってる」

 

「神崎ちゃんは?」

 

「一番清楚な感じ、似合ってる」

 

「陽菜乃は?」

 

「なんかふわふわしてる、似合ってる」

 

「…最後似合ってるしか言ってないけど適当じゃない?」

 

「いやちゃんと見た感想を言ってるけど…」

 

 俺の評価間違ってないよな?と男子陣に同意を促すとみんなはうんと答えた。ほらね、間違ってない。前原は岡野にお前も女らしい格好似合うのなと言って脛を思い切り蹴られてた。なぜそこでお前はデリカシーがなくなる?

 

 そうこうしていると駅から一番近いボウリング場に到着した。ボウリング場というよりゲーセンとか色々な遊戯施設がある場所だ。要するにラウンドワンみたいなところと言えばイメージしやすいだろう。

 磯貝と片岡が受付をしている。何ゲームやるかわからないのでとりあえず投げ放題にしたらしい。2ゲームやれば元が取れるらしく最低2ゲームやるぞと磯貝は意気込んでいる。

 

 磯貝が盛り上げるために罰ゲームを用意したと説明を始めた。

 3人1チームの計4チームに分かれ、最初の2ゲームでの合計点数が最下位のチームが1位のチームに飲み物を買うという罰ゲームを行うらしい。そのため出来るだけ力が平均的になるように上手いと思う人は自己申告で名乗り出てそれを均等に分けていくとのこと。

 上手いと自己申告したのは磯貝、千葉、前原、片岡のちょうど4人で、後は俺を除いて経験者。みんなにやったことないっていうのが意外と言われたが中学生でボーリングをやったことないなんてザラにいるらしく特にそれ以上何も言われなかった。ちなみになぜ俺が今までボーリングをやっていないかというと腕や指を痛めたくなかったからだ。

 

 チーム分けの結果は、

 A:磯貝、友人、神崎

 B:千葉、倉橋、凛香

 C:俺、前原、岡野

 D:渚、莉桜、片岡

 となった。Dチームはパッと見女子しかいないように見える。どうやら莉桜も同じ事を考えたようで女子3人組~と言って肩を組んでる。何度も言うようだが渚は男だからな。

 

 始める前に俺は前原からレクチャーを受ける。ボールの持ち方から最低限怪我をしないようにやらない方がいいことなどを教わる。点数の計算法を聞こうとしたらモニターに合計点数が表示されるから別に覚えなくてもいいぞと言われた。最初に試投が出来るから俺の投げ方を真似れば大丈夫だからと笑う前原は自信満々だ。

 そして前原が投げる。おーテレビとかでよく見る投げ方や。…ストライクやんけ。すると岡野と前原はイエーイとハイタッチをしてそのまま俺にもハイタッチを求めてくる。イエーイ。…どうやらボーリングはストライク、スペアを取るとこうやってハイタッチをするのが習わしなんだとか。それを聞いたときにふと友人に目をやると神崎とハイタッチをしたらしく顔が緩んでいた。幸せそうで何よりです。

 岡野に南雲君の番だよと言われたので先程の前原の投げ方を真似て投げてみる。…むっ、前原みたいに曲がらないな。てか端の3ピンしか倒れてねえ。

 俺がピンのボールの行く末を見守ってから後ろを振り替えるとみんなは無言で俺らの卓のモニターを見ている。

 

「…あのーコメントがないと寂しいんですけどー」

 

「…いや40キロ越えてるの初めて見たから言葉が出ない」

 

「1ピンだけしか倒れないコースなのにピンの跳ね方がすごくて巻き添えで倒してる…」

 

「…ピンが可哀想」

 

 みんな思い思いの感想を口にする。ていうかピンが可哀想ってなんだよ、ガーターとかでピンが倒れないほうが可哀想だろ。

 

「それよりもだ。純一はちょっと力強く投げすぎだ、もっと力を抜いてコントロール重視でも大丈夫だ」

 

「ほーん、そんなものなのか。なんかコツとかある?」

 

「レーンの手前に黒の三角形があるだろ?エイムスパットって言うんだけどあれを目印に投げると安定するぞ」

 

「おー全然気づかなかった。ちなみにカーブってどうやって投げてんの?」

 

「俺は2本指で持って投げてる、まあ本当は3本指で投げなきゃダメなんだけど俺たちはプロじゃないからな」

 

「なるほどなーでも今日は初めてだしストレートだけでいくよ」

 

 前原もそれがいいと言う。

 さて2投目だ。前原に言われたことを守りつつ三角形をよく見て投げる。綺麗に真ん中にいったが1ピンだけ残ってしまった。

 

「おー2回目にしてこれなら1番をとれるぞ!」

 

「南雲君も出来そうだし充分狙えるよ!」

 

 そう2人は盛り上がっている。俺も負けじと最下位だけは避けるぞ!というと2人にそりゃそうだと返される。お前らなんか息合ってるな。

 他のチームも試投が終わり、いよいよゲームが始まる。第一投の前原がストライクを取り良いスタートを切った。

 

 

――

 

 

 1ゲーム目終了時点での各チームの点数は

 A:スコア334:磯貝 140、 杉野 102、 神崎 86

 B:スコア346:千葉 161、 倉橋 72、 凛香 113

 C:スコア388:前原 174、 俺 103、 岡野 111

 D:スコア384:渚 108、 片岡 134、 莉桜 142

 となっていた。

 

 俺たちCチームは前原が上手いのはもちろんだが俺がビキナーズラックかはわからないがそこそこ点数を取って現在一位である。しかしスコアを見て少々おかしい部分があるので本人に直接聞いてみる。

 

「なあ莉桜、お前上手くないか?」

 

「そう?たまたまでしょ、たまたま」

 

 そう言った莉桜は悪戯な笑みを浮かべている。俺はそれを見て確信する。こいつ自己申告のときに隠しやがったなと。それでも磯貝は説明のときに上手いと思う人は自己申告で名乗り出てほしいと説明したので何もルールに引っ掛からない。

 

「さすが莉桜、小賢しいな」

 

「賢しいと言いなさい、賢しいと」

 

 清々しいまでに堂々としているので思わず笑ってしまう。前原と岡野は俄然やる気が出たらしく燃えている。第2ゲームが始まろうとしたそのとき事件が起きた。

 

 

――

 

 

「あれー?前原君?」

 

 女子の声がした方向を見るとそこそこ可愛い感じのセミロングの女子がいた。名前を呼ばれた前原はというとおっ久しぶりーと言いながらその子との会話を始めた。

 みんなはやれやれこの男はという感じだったが岡野だけは違う反応を示していて、段々と不機嫌になっていくのが目に見えてわかった。さすがにこの雰囲気でボウリングをしたくなかったので俺は岡野に話しかける。

 

「岡野?喉乾いてないか?何か買ってくるか?」

 

「大丈夫、乾いていない」

 

 一蹴された。みんなから同情の視線を受ける。岡野がなぜ不機嫌になったかはなんとなく察したが状況を打破しないことには何も始まらない。くそー岡野がダメなら前原をどうにかするしかない。

 

「おーい前原、話に花を咲かせてるところ申し訳ないんだがそろそろ2ゲーム目を始めたいんだが」

 

「ああ悪い悪い」

 

「ごめんね前原君、私もグループのところに戻らなきゃ!今度また遊ぼうねー!」

 

「遊べるとき連絡くれよなー」

 

 ふう、どうやら引き戻すことに成功したようだ。前原とCチームの卓に戻るとさっきより更に不機嫌になった岡野がいた。片岡はご機嫌取りに失敗したのかこちらに両手を合わせて頭を下げている。

 

「あれ?岡野?なに怒ってんだよー、ほら始めるぞ」

 

「…うん」

 

 いやお前が原因だよと心の中でみんなツッコんだに違いない。岡野の今の返事の怒気を聞いて普通にボーリングが出来るお前のメンタルを見習いたいよ。

 …と思ってたが顔には出てないだけで前原のスコアがた落ちやんけ。1ゲーム目の点数はどこへやら。俺たちCチームは全員がスコアを大きく落とした。

 

 

 

 

 結果、1位は片岡率いるDチームとなった。最下位はもちろん俺たちCチーム。

 飲み物を自販機で奢るときに莉桜のやつは一番高いレッドブルにしやがった。今夜寝られなくて明日学校に寝坊すればいいのにとか考えたが、明日から春休みなので何も影響がなかった。ジーザス。

 ボーリングが終了し、みんなはゲームセンターでUFOキャッチャーなどをやっている。俺が後ろから見ていると前原がこそっと話しかけてきた。

 

「おい純一、頼みがある」

 

「…用件を聞こうか」

 

「岡野機嫌悪かったじゃん?たぶん俺のせいだと思うんだけど俺から謝っても聞いてもらえなさそうだからこれを渡して間接的に謝ってくれないか?」

 

「まあ別に構わんが。許してもらえなくても俺のせいにするなよ?」

 

「OKOK、じゃあ頼んだ!」

 

 そう言うと前原は離れていった。岡野はどこだと探すとみんなとは別のUFOキャッチャーの前に立っていた。俺はなぜ前原がこれを渡してほしいと言ったのかがわかり、そのまま岡野に話しかける。

 

「よっ岡野、元気か?」

 

「元気ではないけど落ち着いた。…さっきは当たってごめんね」

 

「いいよいいよ、その代わり俺が怒って八つ当たりしたときは多目に見てくれよ?」

 

「ふふっなにそれ…あれ?その手に持ってるのって」

 

「ああ、これは前原がお前に渡してくれって、あとごめんって伝えてほしいって」

 

「…全くあの男は直接謝りにこいってのに」

 

「岡野、前原を許してやってくれよ。あいつチャラチャラしてるけどいいやつだぜ?見てたからわかると思うけど今日初めてボーリングする俺にも丁寧に説明してくれたしさ」

 

「それはわかってるけどさ…」

 

「それに今渡したぬいぐるみもさ、たぶん前原が岡野が欲しがってるってわかったから急いで取って謝る準備したと思うんだ。早く岡野と仲直りしたくてさ」

 

「ふふっ」

 

「おっ笑った」

 

「だって南雲君は全然悪くないのに前原のために必死に弁明してるんだもん、それが面白くて。…前原にありがとうって伝えてもらっていい?」

 

「おう、お安いご用だ」

 

「…本当はさ、他の女の子と仲良くしてようが私は彼女でもないし前原が怒られる謂れはないと思うんだ。でも仲良くしてるのを見たら不機嫌になっちゃう自分が女の子と仲良くしてる前原以上に嫌」

 

「…答えたくなかったら無視してもいいけど、前原の事好きなんだろ?」

 

「…うん。好きかはわからないけど確実に気になってはいる」

 

「そっか、まあ俺からは頑張れよとしか言えないな」

 

「…南雲君は好きな人いないの?ラブレターもらったりモテるでしょ」

 

 岡野の質問に俺は考えてから答える。

 

「好きな人はいないな。たぶん今の身の回りの関係が心地よくて、それが壊れるのが嫌なんだと思う。ラブレターをもらうのは一言二言しか話したことがない人からがほとんどだから告白してきた相手に付き合うことはできないってすぐに返事ができるのかな?…でも親しい人から告白されたことはまだないし付き合うとかって本格的に考えたことないからそういうのはわからないんだ――」

 

 俺は親しいと思う人を思い浮かべてから言葉を繋ぐ。

 

「でももし、親しい人から想いを伝えられたらちゃんと答えを見つけないとダメだよな。仲の良い友達の関係を続けたいとかも俺のエゴだと思うし…、ごめん上手くまとまらないや」

 

 俺は長く話続けてしまったかなと思ってたら岡野はずっと真剣な顔をして話を聞いてくれていた。

 

「ううん、そんなことないよ。きっと南雲君に想われてる人は幸せだと思うな、相思相愛かは別として」

 

「最後の一言がなかったらもっと嬉しかったんだがな」

 

「私、嘘つけないから」

 

「それは今日知ったよ。お互いとりあえず頑張ろうぜ」

 

「うん!南雲君に好きな人ができたら教えてね!」

 

「それはケースバイケースだな」

 

 なにそれーと岡野は笑う。岡野と話してる中で、恋愛について考えたが言葉にしようにも上手くまとまらなかった。よく話に聞くが恋愛に正解はないというのはこういうところからきてるのかなと思った。理屈ではない、人と人が関わることによって生じる化学反応。中学生の俺たちではまだわからない、大人になってからわかる日が来るのだろうか。

 ボーリングを始めてやって良い経験になったのもそうだが、普段意識しないことについて考える良いきっかけとなった日だと思った。

 

 

 

 

 ~その日の夜、個人LINE~

 

 

 純一:おーいまだ起きてるかー

 

 凛香:起きてる

 

 凛香:どうしたの?

 

 純一:いやなんとなく寝れなくて

 

 純一:話し相手が欲しかった

 

 凛香:寝るも何もまだ10時だけど

 

 純一:なんとなく疲れて寝る準備したけど

 

 純一:目が冴えちゃってな

 

 凛香:わかる

 

 凛香:疲れて逆に眠れない感覚

 

 純一:そうそう、まさに今その感覚

 

 凛香:別に春休みだから寝なくてもいいんじゃない?

 

 純一:いや明日予定あるから寝たい

 

 凛香:どこか行くの?

 

 純一:凛香と隣町のワンにゃんショーに行く

 

 凛香:は?私知らないんだけど

 

 純一:これから誘うつもり

 

 純一:明日予定空いてる?

 

 凛香:空いてるからいいけど…

 

 凛香:なんで私?

 

 純一:一度前原とペットショップ行ったけど

 

 純一:女の人から声かけられるの多かったから

 

 純一:女子連れてれば大丈夫かなって

 

 純一:あと凛香といると色々と楽

 

 凛香:ふーん、楽ってどういうこと?

 

 純一:他の人と違って気使わなくていいし

 

 純一:俺の事わかってる感じするから

 

 凛香:まあ2年間一緒にいればね

 

 凛香:それで何時から?

 

 純一:開園は10時で閉園が18時だから

 

 純一:凛香の都合の良い時間でいいよ

 

 凛香:じゃあ12時半に駅に集合で

 

 純一:おーけー、楽しみにしてる

 

 凛香:私も

 

 凛香:そういえばボーリングやったことなかったって

 

 純一:おーなかったよー

 

 凛香:球速くてビックリした

 

 純一:そんなに速かったのか?

 

 純一:いまいちピンとこない

 

 凛香:私筋力ないからちょっと憧れる

 

 純一:凛香細いからな

 

 純一:UFOキャッチャーはなんか取ったのか?

 

 凛香:ちょっと欲しいのはあったけど

 

 凛香:小遣いも限られてるし我慢した

 

 純一:偉いな

 

 純一:ちなみに何欲しかったの?

 

 凛香:猫のぬいぐるみ

 

 純一:そんなのあったのか、気づかなかった

 

 凛香:岡野と話してたもんね

 

 純一:ああなんか八つ当たりしてごめんって

 

 凛香:素直だけど直情型っぽいよね

 

 純一:あんまり話したことないのか?

 

 凛香:うん、クラスも別だったし

 

 純一:俺もクラスで話したことないやつ結構いるし

 

 純一:そんなもんか

 

 凛香:キッカケあったら今度話してみる

 

 凛香:そういえば純一から借りた小説有希子がおもしろいって

 

 純一:おーそれはよかった

 

 凛香:私にも今度なにか貸して

 

 純一:OK、明日何か持って行くよ

 

 純一:ちなみにジャンルは?

 

 凛香:ミステリーがいいかな

 

 純一:儚い羊たちの祝宴って読んだことある?

 

 凛香:ない、面白いの?

 

 純一:短編が続くから読みやすいのと、その短編ごとに緩い繋がりがあるからそれに気づいたらより楽しめる感じかな

 

 凛香:面白そう、楽しみにしてる

 

 純一:忘れずに持って行くよ

 

 純一:眠くなってきたから名残惜しいけど寝るかな

 

 凛香:おやすみ、私も話せて楽しかった

 

 純一:おやすみ、明日楽しみにしてるよ




中村がやっていましたが学生のときにジャンケンのときに心理戦を仕掛けてくるやつ絶対いましたね。
そういうくだらないことにも遊び心と言いますか、アホなことをやっていたのが懐かしいです。

矢田パパの雛人形を片付けるのが遅くなった件ですが、これは作者の父親ですね。作者妹が幼いときに矢田さんと全く同じ事を言ったらしく本当に雛人形を片付けるのが遅くなったらしいです。このネタは家族が集まったときに絶対話に出てきて父親をいじっています。
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