暗殺教室 28+1   作:水野治

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やっと原作1巻です。
おかげでタイトルを考えるのがすこぶる楽になります。


4月
第1話 暗殺の時間


 ~渚視点~

 

 春休みを終えて僕たちは3年生となった。始業のチャイムが鳴り担任の先生が入ってくる。

 

「HRを始めます。日直の人は号令を!」

 

「き、起立!!」

 

 日直は僕なので号令をかける。それと同時にクラスのみんなは立ち上がり銃を一斉に先生に構える。

 

「礼!!」

 

 打ち合わせ通りに僕の声と同時に一斉射撃が開始される。

 

「おはようございます、発砲したままで結構ですので出欠を取ります。銃声の中なので大きな声で。磯貝君」

 

「は、はい!」

 

「岡島君」

 

「はい!!」

 

…――

 

「吉田君」

 

「はい」

 

「遅刻なし…と。素晴らしい!先生とても嬉しいです」

 

 一斉射撃なんてなかったかのように平然としている先生を見て、クラスのみんなはやや俯き気味になっている。

 

「残念ですねぇ、今日も命中弾ゼロです。もっと工夫しましょう、でないと…最高時速マッハ20の先生は殺せませんよ!」

 

 出来ない生徒に勉強のアドバイスをするかのような軽やかな口調で先生は話をする。すると急に顔が縞々模様に変わった。

 

「先生を殺せるといいですねぇ、卒業までに」

 

 僕等は、殺し屋。標的は、先生。

 椚ヶ丘中学校3-Eは暗殺教室。始業のベルが今日も鳴る。

 

 

――

 

 

 何でこんな状況になったのか、3年生の初めに僕等は2つの事件に同時に遇った。

 1つは月が爆発、7割方蒸発してしまい三日月しか見れなくなってしまったこと。

 2つ目は始業式後のHRのとき…

 

「初めまして、私が月を爆発させた犯人です。来年には地球もやる予定です。君達の担任になったのでどうぞよろしく」

 

 このときクラス全員は5,6ヵ所ツッコませろ!と思った。そのとき担任の先生を名乗る者の横にいるスーツの人の一人が補足のような説明を始めた。

 

「防衛相の烏間という者だ。ここからの話は国家機密だと理解頂きたい」

 

 烏間さんの話を要約すると、

 ・担任と名乗る怪物を殺してほしい

 ・この生物は来年の3月に地球を破壊する

 ・なぜか3年E組の担任をやらせてほしいという提案をしてきた

 

 ということらしい。ちなみに政府が承諾した理由としては教師として教室に来るのなら監視ができるし、何よりも30人もの人間が至近距離で殺すチャンスを得るからと烏間さんは言っていた。

 

 何で怪物が担任に?どうして僕らが暗殺なんか?そんな皆の声は烏間さんの次の一言でかき消された。

 

「成功報酬は百億円。暗殺の成功は地球を救うことなのだから当然の額だ」

 

 そう言うと烏間さんは銃とナイフを生徒みんなに手渡した。僕は編入してきて隣の席となった茅野と顔を合わし、この異常事態は夢ではないということを確認した。

 

 

 

 

 ~南雲視点~

 

 

 変な状況になったなと思う。中学3年生になって特に変わることなく学校生活を送り普通に卒業できるはずだったのに。考えてみると月が爆発してから何もかもが変わってしまったのだろう、渚の髪型も変わったしな。

 その渚はというと寺坂たちと外に出ていった。あまり渚は寺坂たちと親交があったわけではないのでキナ臭いと感じるも、おそらく暗殺の計画でも進めてるんだろう。

 俺は神崎と凛香に昼飯を誘われたので友人に声をかけて4人で食べることとなった。

 

 

――

 

 

「お題にそって短歌を作ってみましょう、ラスト七文字を"触手なりけり"で締めてください。出来たものから今日は帰ってよし!」

 

 触手っていつの季語だよ。先生の見た目的にタコの触手だとして…October的な感じでいくと10月で秋か?それともマダコの旬は冬だから冬の季語か?そんなアホなことを考えていると茅野が手を挙げた。

 

「先生しつもーん」

 

「…?何ですか、茅野さん」

 

「今さらだけどさぁ先生の名前なんて言うの?他の先生と区別する時不便だよ」

 

「名前…ですか、名乗るような名前はありませんねぇ。なんなら皆さんでつけてください、でも今は課題に集中ですよ」

 

「はーい」

 

 そういえば名前は言ってなかったな、呼ぶときに先生という固有名詞でしか呼んでなかったけど会話の時とか不便だな。

 茅野の質問に答え終わったあと先生の顔がうすいピンク色に変わった。それと同時に渚が課題の紙を持って立ち上がった。

 

「お、もうできましたか。渚君」

 

 いや、違う。殺る気だ。課題の紙の裏に対先生用のナイフを忍ばせている。まさか寺坂たちと計画したのはこれか?でもこれだけのために計画なんて必要なのか?

 先生に課題の紙を手渡せる距離、つまりナイフが充分に当たる間合いに入ると同時に渚は動き出す。左の逆手でナイフを持つと先生の頭目掛けてナイフを突き刺す。しかし迫真の攻撃は空しく先生に止められていた。

 

「…言ったでしょう、もっと工夫を」

 

 渚はまるで決めていたかのように先生に前から抱きつく。なんだこの暗殺と無関係な行動は?疑問に思っていると突然先生と渚が大きな音をたてて爆発した。いや先生と渚が爆発したんじゃなくて何かが爆発したんだ。

 

「ッしゃあやったぜ!百億いただきィ!まさかこいつも自爆テロは予想してなかったろ!」

 

「おい寺坂!渚に何を持たせた!」

 

「あ?おもちゃの手榴弾だよ、ただし火薬を使って威力をあげてる。対先生弾がすげえ速さで飛び散るようにな」

 

「渚が死んでたらどうする気だ!」

 

「人間が死ぬ威力じゃねーよ、俺の百億で治療費ぐらい払ってやらァ」

 

 俺が渚に駆け寄って安否を確認すると…無傷だった。それどころか火傷のひとつも負っていない。もっとよく確認すると渚を何かの膜がおおっていてこの膜が渚を守ったらしい。

 

「実は先生、月に一度ほど脱皮をします。脱いだ皮を爆弾に被せて威力を殺しました、つまりは月イチで使える奥の手です。」

 

 声のする方を見ると先生は天井に張り付いていた、でもそんなことは問題じゃない。先生の顔色は、顔色を見るまでもなく真っ黒。ド怒りだ。

 

「寺坂、吉田、村松。首謀者は君らだな。」

 

「えっ、いっいや渚が勝手に!」

 

 そう言うと同時に先生は目の前から消えた。と思ってたら数秒でまた目の前にいた。手にたくさん持っているのはなんだ?…表札だ、それもクラス全員分はある感じだ。

 

「政府との契約ですから先生は決して君達に危害は加えないが…次また今の方法で暗殺に来たら君達以外に何をするかわかりませんよ。家族や友人…いや、君達以外を地球ごと消しますかねぇ」

 

 クラス全員悟った。"地球の裏でも逃げられない"と。どうしても逃げたければこの先生を殺すしかないと。みんなが黙っていると寺坂が震えながらも反論し始めた。

 

「何なんだよテメェ…迷惑なんだよ!いきなり来て地球爆破とか暗殺しろとか…迷惑なやつに迷惑な殺し方をして何が悪いんだよ!」

 

 寺坂の言い分もわかる、俺らが状況を飲み込めていないのは確かだ。すると先生の顔色が普段の黄色に変わり赤丸が浮かび上がる。

 

「迷惑?とんでもない、君達のアイディア自体はすごく良かった。特に渚君、君の肉迫までの自然な体運びは百点です。先生は見事に隙を突かれました。…ただし!寺坂君達は渚君を、渚君は自分を大切にしなかった。そんな生徒に暗殺する資格はありません!」

 

 今の言葉にクラスみんなはハッとする。先生の言わんとすることが先程の当事者のみならずクラス全体に言っているものだったから。

 

「人に笑顔で胸を張れる暗殺をしましょう。君達全員それができる力を秘めた有能な暗殺者だ。これがターゲットである先生からのアドバイスです」

 

 俺は異常な教育だと思った、でもなにか暖かさを感じる。きっとそれは俺たちをよく見た上でアドバイスをくれたからだろうか。

 

「さて問題です、渚君。先生は殺される気など微塵もない、皆さんと3月までエンジョイしてから地球を爆破です、それが嫌ならどうしますか?」

 

「その前に先生を殺します」

 

「ならば今殺ってみなさい、殺せた者から今日は帰ってよし!」

 

 いや、今殺すのは無理だろ。

 

「殺せない…先生…、あっ名前"殺せんせー"は?」

 

「おっいいですねぇ、先生気に入りました!これからは殺せんせーと呼んでください!」

 

 そう言うと殺せんせーは表札の手入れを始めた。俺は殺すのではなく課題の紙にペンを走らせて短歌を完成させて先生の下へと行く。

 

「おや、南雲君。暗殺ですか?」

 

「いいえ違います。短歌です、完成したので」

 

「おお!どれどれ… "雪の内 君と出会いて 芽吹く春 不易流行 触手なりけり" それっぽい感じで素晴らしいですね!」

 

「ありがとうございます」

 

 日本語が合っているかはわからないが殺せんせーの言った通りそれっぽく詠んでみた。ちなみに触手は冬の季語のつもりだ。すると茅野が質問してきた。

 

「南雲君、どういう意味なの?解説して」

 

 俺はとりあえず黒板に短歌を書く。俺が説明しようとしたら殺せんせーが解説し始めた。

 

「雪が降る季節にあなたと出会って私の中にも春が来ました、季節などの変化と共に進展する新しさは触手のようにうねり私の中に根付くでしょう。という意味です。おそらくここでのあなたとは異性のことでしょう。つまり恋をして変わっていく自分を詠んだ句ですね、でしょう?南雲君」

 

「そ、そうです」

 

 恋を詠んだ句だからか女子達がお~と言っている、正直めちゃくちゃ恥ずかしい。

 

「純君ロマンチスト~」

 

「倉橋、ちょっと黒歴史になりかけてるからやめて」

 

 殺せんせーはというと顔をピンク色にしながら俺の顔を覗いてくる。

 

「南雲君は恋多き男子生徒なんですか?要チェックですねぇ」

 

「恋多き男子生徒は前原です!あと殺せそうにないんで一句詠んだし帰ります!表札持って帰りますから!」

 

 俺は自分の家の手入れされた表札を持って、先生さようなら!と言いながら教室を出る。出ていくときに一番前の座席である木村と倉橋と磯貝がまた明日と言っていた。

 

 帰り道に俺は恥ずかしかったがクラスの雰囲気が柔らかくなったしよかったかなと思う。自爆テロのような暗殺のせいで怒られたことなどみんなはたぶんどうでもよくなっただろう。明日からどうやって胸を張れる暗殺をしようか、その事を考えながら俺は学校を後にする。

 

 

 

 

 ~個人トーク~

 

 神崎:南雲君が詠んだ短歌素敵だったよ

 

 南雲:数少ない黒歴史に入りかけてるんだが…

 

 神崎:そんなことないよ、いつも本とか読んでないとああいうのは思い付かないから胸を張っていいと思うな

 

 南雲:神崎がそういうなら黒歴史には入れないでおく

 

 神崎:ところであれは誰かのことを想って詠んだの?

 

 南雲:いや、あれは誰のことも考えてない

 

 南雲:こんな感じの恋がしたいなって思う感覚で詠んだ

 

 神崎:じゃあ南雲君の心は今は冬なのかな?

 

 南雲:そんなことないよ

 

 南雲:クラスのやつらはいいやつばかりだし充実してる

 

 神崎:そうなんだ!

 

 神崎:話は変わるけど明日私のお薦めの本を持っていこうと思ってるんだけどいいかな?

 

 南雲:おっまじか!全然オッケー!

 

 神崎:アルジャーノンに花束をって読んだことある?

 

 南雲:ない!タイトルはレンタル店かで目にした記憶あるけど

 

 神崎:小説を原作に映像化もしてるからレンタル店で見たことあるのかも

 

 神崎:序盤はストーリーの都合上文章が読みにくいんだけど引き込まれるし是非読んでほしいな

 

 南雲:楽しみにしてる!明日の朝簡単なあらすじとか教えて!

 

 神崎:うん!朝話すの楽しみにしてるね

 

 南雲:そんなこと言われたら照れるから!

 

 南雲:じゃあ今日はもう寝るかな、おやすみ

 

 神崎:おやすみなさい




短歌については辞書を引きながら5分くらいでそれっぽく仕上げました。コピペとかではないです。正真正銘作者が仕上げた一句です。当然おーいお茶の横にも書いていません。

本文内で出てくる本のタイトルなどは実際に現実世界にあるもので、作者はしっかりと読んだり見たりしているものしか出していないです。
アルジャーノンに花束をは本当に名作なので是非手に取ってもらいたいですね。
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