ゼルダの外伝 バナナ・リパブリック   作:ほいれんで・くー

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第二十九話 狂気

 一人、山野を行く。太陽を背に受けて、細い木の枝を杖にして、とぼとぼと悲しげに、その旅人は孤独な旅路を黙々と行く。

 

 晴れ渡る曠野(こうや)にはヤギや野馬が悠然と闊歩し、小鳥が楽しげにさえずっている。しかし、そこにいる人間は、ただその旅人が一人だけである。

 

 黄金の三大神によって世界が生まれた直後の人間の姿とは、つまるところ、こういったものであったのかもしれない。仲間も友もおらず、仕えるべき主君も、己に(かしず)く下僕もいない。孤影は悄然とただ歩を進める。あてどもなく人は彷徨(ほうこう)し、いつしか力尽きて、ほろほろ滅びゆくその時まで歩き続ける。

 

 時たま、その人は他の人と出会うこともあっただろう。しかし、そんな時に発する言葉は二つしかなかった。「こんにちは」、そして「さようなら」 会釈し、手を振って、互いに背を向けて彼らはまた黙々と歩き始める。

 

 寂しいと思うだろうか? 孤独だと思うだろうか? 人に友はなく、連れもなく、美しい朝日を前にして誰かと共に(たん)じることもない。人は誰かと一つの果物を分け合うこともなく、寒さをしのぐ寝床で共に抱き合って温もりを交わすこともない。

 

 これを孤独といわずして何というのか?

 

 だが旅人たちは、同時に自由でもあった。なぜなら、彼らは彼らのために生きていたからである。彼らの足は彼らのための道を歩み、彼らの手は彼らのために水を(すく)い、彼らの心は彼らのことのみを考えていた。

 

 次第に世界は広がり、人はその数を増やした。地に満ちよ、地を覆えよ、人は地にて生き、地にて死ぬ者なり。神々は、そう言っているようだった。

 

 いつしか、人は群れるようになった。人は肩を寄せ合い、共に(すき)(くわ)を振るい、食べ物を分け合うようになった。人は同じ言葉を話し、同じものを見つめるようになった。

 

 いつしか、人は(あい)争うようになった。人は人と隊伍を組み、弓矢を射掛け、剣と槍で魔物を、時には人を切り刻むようになった。勝者は(ほしいまま)に敗者を陵辱した。敗者は奴隷となって命を繋ぐようになった。

 

 戦に勝ち、隷属を免れるために、人は優秀な指導者を求めるようになった。神々と心を通わせ、暦を作り、生贄を捧げ、法と律を定め、そして何より、敵を滅ぼし、勝利を得ることができるような存在、それを心の底から求めるようになった。

 

 人を統べること、人を支配すること、他人の自由を我が物とすること、これらはまさに、指導者の特技にして特徴であった。それはあたかもパン屋がパンを焼き、鍛冶屋が鋼を鍛えることと同様であった。

 

 その特技に操られて、人は、指導者のために自由を投げ出すようになった。その足は命ぜられるままに動くようになり、その手は自分が口をつけることは決して許されぬ盃を運ぶようになり、その心は指導者の言葉で満たされるようになった。

 

 彼らは嘆いただろうか? 自由を失って誰か他人の、なかんずく指導者のために生きなければならなくなったことを、彼らは「取り返しのつかないことになった」と言って、泣き叫んだだろうか?

 

 そうではなかった。人は、喜んで自分の自由を差し出したのに違いなかった。人が生まれながらにして持っている、決して侵されることのない、いかなる金銀財宝よりも貴い財産であるはずの自由を、人は指導者へ喜々として差し出したのだ。

 

 それは、ある種の狂気であったといって差し支えないだろう。

 

 命と同等に貴重なものを、晴れ晴れとした表情で他人に譲り渡す。それを狂気と呼ばずして何と呼ぶのか?

 

 そして、狂ったからこそ、人はこの地上に王国を作ることができたともいえる。自由を侵されまいとして指導者を求め、逆にその指導者へ自由を差し出し、あえて狂気に堕ちることによって、人は、独力では到底不可能な大事業をいくつも興した。ついに人は、魔の一族と厄災すら、永劫とも思える一万年の長きに渡って地の奥底へ封じ込めることができた。

 

 百年前、王国は滅び去った。狂気は去り、人は、正気に戻った。人はまた、自由を己のためだけに用いるようになった。人はもう誰かの定めた道を歩くことも、誰かの荷物を運ぶこともない。自由で、孤独で、ちょっと寂しい旅を人はする。時に厳しく時に優しい、野生の息吹に満ちた自由な旅に、人は身を投じる。

 

 たとえその旅の終着点が、姫巫女の力が尽き、大厄災が再復活することでもたらされる決定的な滅びであるとしても、人がその歩みを止めることは決してない。

 

 だが、いつの時代でも流行に遅れた「(ニブ)い」者たちがいるものである。自由な足取りで軽やかに弾みつつ進んでいく旅人たちを後目(しりめ)に、ひたいに汗を流して荷物を運び、上位者の罵声に耐え、生きることも死ぬことも自分では選ぶことすらできない、哀れにも狂気にとらわれた連中が、今、ハイリア湖畔で何かを密かに運ぼうとしている。

 

 彼らが己の自由と正気とを引き換えにして運ぶものは、黄金に輝く生命の果実である。それはすなわち、輸送馬車三台分のツルギバナナ、一万本のツルギバナナである。

 

 

☆☆☆

 

 

 オレンジ色と紫色の見事なグラデーションがほどこされた夕焼けの空のスクリーンは、主役の太陽が舞台を去ったことで、星々が(きら)めく夜空のスクリーンへといつの間にか交換されていた。

 

 肌寒い風が吹き抜ける薄暗い街道を、二つの影が音もなく走っていた。先頭をゆく大きな影はバナーヌであった。後方を走る小さな影はテッポであった。

 

 白銀リザルフォスたちとの戦いから半時間ほどが経っていた。黙々と、会話もなく、二人は脇目も振らずに走り続けた。

 

 だが、ここに来てバナーヌが急に立ち止まった。

 

「ふぎゅっ!?」

 

 ピッタリと後ろについて走っていたテッポはブレーキをかけるのが間に合わず、走っていた勢いそのままにバナーヌの背面へと追突した。バナーヌの臀部(でんぶ)にボヨンと弾き飛ばされて、テッポは情けない声を上げた。

 

 だがバナーヌはテッポがぶつかった衝撃に対して、微動だにしなかった。彼女はちらりと後ろを振り返ると、短く、あまり興味のなさそうな声で、テッポへ言った。

 

「大丈夫か」

 

 ぶつかって赤くなった鼻を抑えながら、薄く涙目になったテッポは抗議をした。

 

「いたた……もう、大丈夫じゃないわよ! 急に止まるなんて、もうちょっと後方への注意と気遣いをして欲しいわ! あいたたた……もう、このせいで鼻が低くなったらどうしてくれるのよ……」

 

 ぶつぶつとテッポは文句を言った。それを聞いているのかいないのか、バナーヌは前方へ指をさした。彼女は言った。

 

「あれを見ろ」

 

 鼻をさすりながらテッポが答えた。

 

「あれって何よ……あっ!」

 

 テッポが喜びの感情の混ざった声を上げた。

 

「あれはハイリア大橋の塔門! やった、ここまで来られたのね!」

 

 二人は共に視線をやや上にあげて、ハイリア大橋の入り口を成す、やや崩れかかった塔状の巨大な建造物を眺めた。テッポは溜息をついた。

 

「ふぅ……」

 

 テッポはバナーヌへ顔を向けた。その顔は、今までの疲労や不満もなんとやらというように、安堵の色をありありと浮かべていた。テッポは言った。

 

「ああ、長かった……やっとここまで辿り着いたわ。昨日の夜にシーカー族を追いかけた時は、暗かったし興奮していたしで周りの様子がよく分からなかったけど、こうして改めて見てみるとハイリア大橋ってその名前のとおり大きいのね」

 

 テッポはじっくりと橋を観察し始めた。一方、バナーヌはさして橋に興味を持っていなかった。その無表情とは裏腹に、彼女の心の中はある疑念が渦巻いていた。

 

 輸送馬車は、いったい何処(どこ)にいるんだ? 見たところ、この近くのどこにもいないが。

 

 朝、グンゼから聞いた情報では、輸送指揮官サンベは負傷した馬の替えの調達を部下に命じ、グンゼにはテッポの捜索と平原外れの馬宿への連絡を命じたという。代替の馬をどこから調達するのかは分からないが、それにはそれなりに時間がかかるはずだ。いずれにせよ輸送馬車は、今この時間になっても未だ万全の状態ではないだろう。それは彼女にも予想できた。

 

 だがそれでも、まったくその場から動けないということはないだろう。彼女はそう思った。十二頭の馬のうち、行動不能になったのは三頭とのことだ。動力の四分の一を失ったとはいえ、それでも四分の三は残っているのだから、まったく馬車が動かせないということはないはずだ。

 

 だから、バナーヌとしては、輸送馬車はとっくにハイリア大橋を渡ってこちら側に来ているだろうと思っていたのだった。そういう目算があればこそ、白銀リザルフォスたちにテッポと二人だけで攻撃をかけたわけだし、連続する戦闘でかなり疲労した体をおして暗い街道をひた走ってきたのである。

 

 それが、ここに来ても輸送馬車の車列はどこにも見えない。バナーヌの疑問は尽きなかった。いったい、サンベとかいう指揮官は何をしているのだろうか? まさか襲撃を受けた地点から一歩も動いていないのでは? いやいや、まさか……もしそうだとしたら、サンベはグンゼの話から想像できる以上の、とんでもない大馬鹿者なのではないか……?

 

 思わずバナーヌの口から、疑念が声となって漏れ出た。

 

「むぅ」

 

 それを聞いたテッポが、不思議そうな顔をしてバナーヌを見た。テッポは問いかけた。

 

「どうしたの? なにか気になることがあるの?」

 

 バナーヌは答えた。

 

「いや」

 

 バナーヌは、考えを打ち切った。まあ、とにかく、ハイリア大橋を渡れば良いだけの話だ。それに、サンベが優秀か、それとも優秀ではないかという問題など、直属の部下ではない自分がいくら考えたところで無意味である。

 

 彼女はテッポに向かって口を開いた。

 

「行こう」

 

 テッポは頷いた。

 

「ええ!」

 

 二人は、ハイリア大橋入口に通じるゆるやかな坂道を、駆け上がり始めた。

 

 

☆☆☆

 

 

 ハイリア湖。随一の面積と貯水量を誇り、「ハイラルの水瓶(みずがめ)」と呼ばれるこの大きな湖は、かつては王国一の水運と漁業の拠点であった。また、この湖は、古くから様々な伝説や言い伝えの舞台となってきた。

 

 例えば、ゾーラの姫君の物語がある。悪しき者によってゾーラの里を氷漬けにされた姫君は、故郷と民を救うために、自らの危険も顧みずに元凶の巣食う水の神殿へ乗り込み、勇者と力を合わせてそれを成敗したといわれている。その物語は、現在でもゾーラ族の間で連綿と語り継がれている。

 

 他には、巨大な光る虫の伝説がある。ゾーラの姫君の物語とは別の時代の、別の勇者が、呪いによって姿を狼に変えられつつも、湖上で襲いかかってくる巨大で醜悪な光る虫を打ち倒したと伝えられている。

 

 だが、この時代にあって、それらの話よりももっと頻繁に人々の話題に上がり、もっと広くひろまっている言い伝えがある。

 

 それは、龍の伝説である。

 

 言い伝えによれば、その龍は日が暮れてから湖に現れる。龍は、神々しく光る黄金の鱗に身を包んでおり、烈風と電光を纏っている。龍は、その力強く巨大な体を空中で優雅に踊らせて、フィローネの夜空を泳ぎ回る。その大きさは人間の三百倍はあり、山を七巻きするほどに長い。だが、それほどの大きさであるにもかかわらず、その龍を見ることができるのは、幼い者や心が澄んでいる者、もしくは勇者のように心が正しい者に限られる。そういう言い伝えだった。

 

 王国が健在だった頃、この龍の伝説はしばしば、ゴシップ記事を書く記者たちや一獲千金を狙う山師たちの、格好のネタとなった。

 

 ゴシップ記事の記者たちは話術巧みに地元の漁師を騙して誘導し、彼らが望んでいるとおりの証言を引き出した。あるいは彼らは、そもそも存在すらしていないゾーラ族の証言を捏造するなどした。そして、彼らはその証言をもとにして、盛んに三文記事を量産したのだった。

 

 記事の見出しは以下のようなものだった。

 

「ついに出た『ハイリア湖の龍』実在の決定的証拠! これがその(うろこ)だ!」

「漁師が証言! 『おらの舟百艘分はあっただ』、『戦列艦よりも大きい』 漁労長立ち会いのインタビュー!」

「ゾーラ族の神父、神に誓って証言! 『龍ハ、存在シマース。確カニ、私ハ、ソレヲ見タカラデース』」

 

 記事の内容は以下のようなものだった。

 

「昨今、王国を悩まし騒がしている一つの噂がある。それは、『ハイリア湖の大龍』の噂である。識者の間では、その龍は『フィローネ地方に古くから棲まう勇気の泉の使者』であり、また『雷の精霊』であるともいわれているが、今回の目撃者によるとその姿は巨大にして醜悪であり、とても精霊などと呼べるものではなかったという」

 

「……(中略)……地元漁師のクンチル氏(35歳独身)は語った。『おぞけをふるいましただ。その日は大漁だっただもんで、片付けが夜になっちまったんだけど、ふと強い風が吹いてきたんで、そっちへ目をやったら、そこには空飛ぶドでかいトカゲがいただ。おらもうびっくりしちまって、食われるんじゃないかと思うと、もうクルリンパッとブルブル体が震えて……』」

 

「……(中略)……読者諸君! もし(くだん)の龍が識者の先生方の仰るとおり、神聖なる勇気の泉の使者であるというのならば、なぜこの素朴にして善良なる漁師クンチル氏は(おびや)かされなければならなかったのだろうか? 人に危害を加えようとする存在は、決して神聖な存在とはいえないのではないか? この、邪悪であるとまでは言えないとしても、少なくとも有害ではあると言える存在に対して、政府と大臣が手をこまねいているのは明らかに職務怠慢である。それは、ひいては、王国と国王陛下に対する侮辱と言えないだろうか?……」

 

 三文記事は、どれも似たり寄ったりだった。

 

 一方で、山師たちは違うアプローチから龍の伝説を利用した。彼らは城下町の大道の脇に立って、「ハイリア湖を脅かす謎の大龍」を捕まえてみせると豪語し、人々からの募金を集めた。無論、その大半は捕獲キャンペーンの名を借りた一種の寸借(すんしゃく)詐欺だった。だが、中には本気の者も何人かいた。

 

 本気で龍を捕まえようとする山師は、募金によって用意することのできた自作の捕獲装置だの、特製の武器だのを、まずは華々しく城下町の住民に披露して、それから勇躍して南へと馬車の進路をとって、「ハイリア湖の世紀の大捕物(おおとりもの)」に臨んだものだった。彼らは言った。

 

「ご覧ください! これこそは新型の半自動式投網機械であります! ゴロン族の大砲の技術と、ゾーラ族の漁具製造技術とを、ハイリア人の知恵で融合させた、まさに最新鋭の秘密兵器であります! 砲弾として発射される網は空中で一瞬にして広がり、どんなに大きな獲物も決して逃すことはありません! 事前の実験では捕獲成功率九十四パーセントを達成しています! 次に皆様のお目にかけるのは、龍を湖底から追い出す新型の音響発生機材であります……」

 

 そのいずれもが失敗、ないしは山師の逃亡という結果に終わったのは言うまでもない。残されたのはガラクタの山だった。

 

 龍に興味を示したのは、なにもゴシップ記者や山師たちだけではなかった。歴代の王や貴族の中には、「純粋に学問的な興味として」、龍の実在を確認しようとする者たちもいた。

 

 ある時代、王立アカデミーは大規模なハイリア湖調査隊を編成した。王軍は調査隊に協力して、多数の舟艇をかき集めてハイリア湖へ送り込んだ。漁師と漁船までもが動員された。長い期間にわたって龍は探し求められた。

 

 一書によるとその有様は、以下のとおりであったという。

 

「……ハイリア湖のあらゆる水面を舟が覆い尽くした。ある舟は測量をし、ある舟は鉤爪の付いた長い棒で水中を掻き混ぜ、ある舟は水中バクダンを何個も投下して盛んに爆発を起こした」

 

「(……中略……)ハイリア湖の水運は完全に麻痺し、漁業も一時的に停止された。それによって生じた経済的な損失は計り知れないものがあったが、王国の科学水準向上のためという大義名分のもとに、壮大だが無益な調査は強行された」

 

 王国と王立アカデミーの暴挙を糾弾する意図から、上の記述にいくらか事実の誇張が含まれているのは確かだろう。だが、それにしても龍の伝説がここまで多くの人を狂わせたという事実は、他の伝説と比較してもひときわ異彩を放っているといえる。

 

 龍の伝説に関連するものとして、痛ましい事件が一つ記録されている。

 

 ある男がいた。男は山育ちで腕っぷしが強く、城下町に出てきてからは数々の武術大会で優勝した。その才能を見込まれて、彼は王軍に勧誘された。彼は王軍に加わった後、周囲の期待に応えるように実力を向上させ、ついに王国騎士にまでのぼりつめた。

 

 しかし、いつの世にもその実力に比して(ねた)みや(そね)みだけが強い人間はいるもので、そういう連中にとってこの男はまさに目の上のタンコブだった。練兵場で、王城の廊下で、あるいは舞踏会の控室で、男と、男を目の仇にする連中との(いさか)いは絶えなかった。

 

 ついにある日、男にとって決定的な事件が起こってしまった。その発端そのものはいつもどおりの口論だったのだが、その内容が問題だった。

 

 もともと、男は怪異や伝説の類を信じていなかった。そんな彼はその日、普段から彼を公然と侮辱してやまない騎士が、訓練場の休憩室で同輩相手に得意げに、以下のような話をしているのを聞いてしまった。

 

「僕が思うに、伝説や言い伝えというものは、集団幻覚か流行り病かで正常な判断力を失った庶民共が、ただ『確かに見た』と一途に思い込んで話を作り上げ、それに後から尾鰭(おひれ)がついて大仰(おおぎょう)になったものにすぎないと思うのだよ。いわば、物語化された狂気というやつだね。なに、僕は信心深いよ。女神様の起こした奇跡の数々も確かに信じている。でもね、湖の龍などという民間伝承を端から信じるほど、頭が単純にできているわけではないのさ……」

 

 男は、この騎士の何もかもが気に入らなかった。男は、彼の言うこと為すことのすべてを否定しないではいられなかった。

 

 思わず、男は騎士の前に飛び出した。男は騎士へ、こう叫んでいた。

 

「龍はいる! ハイリア湖の龍は確かに存在する! 信仰心が足りないから、貴公は龍の存在を否定するのだ! 俺がこれから湖に行って龍に矢を射かけ、その(うろこ)を一枚でも十枚でも剥いで御覧に入れる!」

 

 何を馬鹿なと最初は笑っていた騎士だったが、信仰心が薄いと言われては黙っていられなかった。「それならやってみろ」と騎士は言い、それだけではなく秘蔵の「王家の弓」を男に渡した。そして騎士は男に、「もし龍の鱗を持ってこれなかった場合は騎士の身分を捨てて山に帰ると誓え」と迫った。

 

 仲裁に入る者がいないでもなかったが、結局、男と騎士は互いに言葉を引っ込めることはなかった。その日のうちに、男は全速力で王城からハイリア湖へ向かった。雷雨の中、従者も連れず、男はたった一人で「龍退治」へ行ってしまったのだった。

 

 男が出発してから、三日経ち、五日経ち、一週間が経った。男は帰ってくるどころか、知らせのひとつすら寄越さなかった。(くだん)の騎士は、「どうせ龍が見つからなかったから逃げ出したのだろう」と嘲笑っていた。

 

 だが、十日目になって事態は意外な展開を見せた。男は死んでいた。男の死体が、漁師によって湖の水中から見つけ出されたのであった。

 

 投網に絡まって水上へと引き揚げられた男の死体は、不思議なことについ先ほど死んだかのように、綺麗なままだった。男は腰には短剣を下げていたが、矢筒の中は空だった。持っていたはずの王家の弓はどこにも見当たらなかった。

 

 さらに不可解だったのは、男の死因であった。医師が検死をしたところ、服の下の男の皮膚には全身焼け爛れたような傷が走っていた。それは電気の矢で射られた場合の傷と酷似していた。また、男の肺に水は入っていなかった。したがって、死因は溺死ではないと判定された。おそらく男は、強い電気の力を受けて心臓の活動が停止し、そのまま湖に落下したものと推定された。

 

 この不思議な死の噂は、瞬く間に城下町中に広まった。お定まりのパターンで、あることないことが付け加えられて話はどんどん膨らみ、しまいには「男は龍の祟りで死んだのだ」ということになってしまった。

 

 噂話は、時の国王の耳にも届いた。事情を調べさせた国王は、これ以上優秀な騎士が言い伝えの真偽の確認などというつまらぬことで事故死をすることを(がえ)んぜず、「ハイリア湖の大龍は精霊の一種であり、人が干渉することは許されない」という解釈を神官団から引き出して、この一件の始末をつけてしまった。

 

 以来、大厄災に至るまで、龍の噂を確かめようとする剛毅(ごうき)な者は一切いなくなったという。

 

 

☆☆☆

 

 

「……ナーヌ……」

 

 声がした。優しくて、懐かしい、小鈴を転がしたような可愛らしい声だった。

 

「……バナーヌ。ねぇ、バナーヌ」

 

 はっとして、バナーヌは目を見開いた。視界に飛び込んできたのは、抜けるような青さの大空と、瑞々しい緑の大樹だった。彼女は背中に湿った土の感触を覚えた。若草の青臭さが彼女の鼻をついた。どうやら、彼女は仰向けで横になっていたようだった。

 

 また声がした。

 

「バナーヌ! やっと起きてくれた」

 

 彼女は隣を見た。そこには、ノチがいた。ノチの可愛らしい顔は柔らかな日差しに照らされていて、薄暗い木陰の中でもはっきりと見ることができた。

 

 ノチは、背中を大樹の幹に預けていた。桜色のワンピースに、真っ白なエプロンをノチは身に着けていた。ノチは大きなバスケットを両腕で抱えていた。バスケットの中には、飲み物や食べ物の包みが入っていた。ノチの綺麗な短い黒髪には、いつ何処(どこ)で手に入れたのか、黄金のバナナの房があしらわれた(かんざし)が刺さっていた。

 

 どういう状況だ、これは? バナーヌはそう思ったが、とりあえず彼女はノチにいつもどおり挨拶をすることにした。

 

「おはよう、ノチ」

 

 しかし、声がおかしかった。いつもよりも少し高いようだった。まるで、何年か前の自分の声のような……? そういう違和感をバナーヌは覚えた。

 

 ノチがにっこりと笑って答えた。

 

「おはよう、バナーヌ」

 

 ノチは目線でもって、バナーヌにその体を確認するよう促してきた。彼女は自分の体を見た。すらりと細長かった手足は短くなっていて、肌は更に幼く白くなっていた。大きかったはずの胸はいくらか小さくなっていた。

 

 ああ、そうか。バナーヌは悟った。これは、夢だ。まだ幼かったいつかの日、休みのときに、ノチと一緒にピクニックへ行った時の記憶だ……

 

 いや、待て。バナーヌは考え直した。そんな日など、そんな記憶など、本当にあったっけ? 小さかった頃に、二人だけで遊びに出掛けたことなど本当にあったっけ? ピクニックに行く自由なんて幼い頃の自分たちにはなかったはずだし、今もない。今見ているのは、幻覚かなにかなのではないだろうか? バナーヌは疑問を抱いた。

 

 その時、バスケットを脇に置いたノチが、子猫のようにバナーヌに擦り寄ってきた。花の香りのように快い匂いが、バナーヌの鼻をくすぐった。

 

 ノチはすぐ隣に寝転ぶと、甘えるように頭をバナーヌの右腕に乗せた。ノチはその手をそっと、バナーヌの腹の上に乗せた。ノチは言った。

 

「ふふ。バナーヌったら、食いしん坊だね。あれだけの量をあっという間に食べちゃった。たから、眠くなっちゃったのかな? せっかく一緒に遊びにきたのに、私を残してひとりだけお昼寝なんてひどいよ」

 

 それはひどい話だ、とバナーヌは思った。バナーヌは謝った。

 

「ごめん」 

 

 ノチはバナーヌの腹を人差し指でちょんちょんとつついて言った。

 

「もう、本当にごめんって思ってないでしょ! 一人だけで寝ちゃうの、今回が初めてじゃないし……」

 

 やっぱりノチには勝てないな。バナーヌは、また謝ることにした。

 

「ごめん。今から一緒に遊ぼう」

 

 すると、ノチは手を上げて、空に浮かぶ雲へ指をさした。ノチは言った。

 

「じゃあ、連想ゲームをしましょ! 雲の形が何に見えるか、バナーヌが答えてね」

 

 バナーヌは頷いた。

 

「よし」

 

 記憶がなくとも良い。これが幻覚でもかまわない。こんな穏やかな時間を、親友と一緒に過ごせるのならば、幻覚にだって身を任せよう。バナーヌはそう思った。

 

 二人の少女は、睦まじく寄り添いながら、他愛もないゲームに興じ始めた。ノチが雲を(ゆび)さして、尋ねた。

 

「あれは?」

 

 バナーヌはすぐに答えた。

 

「ツルギバナナ」

 

 ノチは別の雲を()した。

 

「それじゃ、あれは?」

 

 バナーヌは数秒だけ考えてから答えた。

 

「粗悪品の焼きバナナ」

 

 ノチは感心したような声をあげた。

 

「ふーん、なるほどねぇ。じゃあ、あれは?」

 

 バナーヌは答えた。

 

「高級ツルギバナナ一房、五本」

 

 ノチはちょっとだけ首を(かし)げた。

 

「えー、そうかなー? うーん、じゃあ、あれは?」

 

 バナーヌはだんだんネタ切れになってきているのを感じていた。それでも彼女は答えた。

 

「バナナの果実煮込み」

 

 ノチは首を左右に振った。

 

「私にはあげバナナに見えるなー。それじゃあ、他には……あっ、あの細長いのはどう?」

 

 バナーヌは目を凝らした。その雲は細長かった。かと言って、特にひ弱な感じでもなかった。むしろその雲は生き物のように力強くて、おまけに頭からは長い角が伸びていた。胴体には腕と脚が生えているように見えた。

 

 少し考えたあと、バナーヌは言った。

 

「あれは……龍みたいなバナナかな」

 

 ノチは、ぷっと吹き出した。

 

「あっははは、バナーヌったらおかしいね! 龍みたいなバナナなんて! なんでもかんでもバナナに見えちゃうなんて、もしかしたらバナーヌは、バナナの神様に魅入られてるのかもね……」

 

 急に、ノチが半身を起こした。彼女は寝そべっているバナーヌの顔を覗き込んできた。

 

 優しく言い聞かせるような口調で、ノチは言った。

 

「……そろそろ起きて。テッポが呼んでるよ」

 

 バナーヌは、疑問に思った。なぜノチがテッポという名前を知っているんだ? だが、彼女は何も言えなかった。彼女の喉から声は出てこなかった。

 

 声ばかりではなかった。金縛りにあったように、彼女の全身はまったく動かなかった。頭も、わずかに左右に振ることすらできなかった。

 

 視界は、いつの間にか黒い闇に沈んでいた。青空も白い雲も、バスケットも緑の大樹も、もはや何も見えなかった。すぐそばに居てくれたはずのノチすら、もうどこにも見えなかった。

 

 突然、洞窟の中で反響しているような、何かの声が聞こえてきた。

 

「……ナーヌ……バナーヌ……バナーヌ……!」

 

 バナーヌは、体に衝撃を感じた。どうやら誰かがゆさゆさと、彼女の両肩を揺さぶっているようだった。また声が聞こえた。

 

「……バナーヌ! バナーヌ! 起きて! 起きなさい!」

 

 バナーヌは視線だけを動かして空を見上げた。暗黒の空には、紫色の雲が高速で渦を巻いていた。その周りに、無数の黄緑色の稲妻が走っていた。不思議なことに、風の音と雷鳴は聞こえなかった。

 

 その大嵐の中を、大きな大きな、見たこともないほどに長いバナナが、天高く昇っていった。バナーヌは気付いた。いや、あれはバナナではない。あれはバナナのような、大きな龍だ。あれだけ大きなバナナだったら、きっとものすごく食べ応えがあるだろうが……

 

 その瞬間、龍が頭を巡らせた。龍はバナーヌを睨んできた。剣のように鋭い眼光が、彼女の網膜を貫いた。

 

 またもや声が響いた。

 

「バナーヌ! 起きなさいったら!」

 

 バチッと静電気の爆ぜるような音を立てて、バナーヌの意識が覚醒した。

 

 彼女の目の前には、心配そうな顔をしたテッポがいた。

 

 

☆☆☆

 

 

「バナーヌ! バナーヌ! 起きて、起きなさい!」

 

 テッポは焦っていた。意識を失って倒れているバナーヌを抱きながら、テッポは必死になって呼びかけ続けた。テッポはバナーヌの肩を掴んでゆさゆさとゆさぶり、ペチペチと頬を叩いた。

 

 ひたいを流れる一筋の冷や汗を手の甲で拭くと、テッポは誰にともなくひとりごちた。

 

「ああ……どうして、なんでこんなことになったのかしら……」

 

 つい十分ほど前までは、順調そのものだったのだ。ここまでの道のりと同じく、バナーヌが先頭になりテッポがその後ろに付く形で、二人は一気にハイリア大橋を駆け抜けようとしていた。

 

 橋の上は逃げ場がない。それに加えて、今は夜だった。曇りがちだが、月は明るかった。可能性は低いが、もし魔物が潜んでいたり、シーカー族が待ち伏せなどをしていたら、二人とも手もなくやられてしまうだろう。

 

 だから橋の上は全速力で、何があっても立ち止まることなく走り抜けよう。そのように二人は取り決めたのだった。

 

 それなのにバナーヌは、途中で立ち止まってしまった。そこは橋の中ほど、噴水の遺構がある辺りだった。

 

「ふぎゅっ!?」

 

 ピッタリと後ろについて走っていたテッポはブレーキをかけるのが間に合わず、走っていた勢いそのままにバナーヌの背面へと追突し、臀部(でんぶ)にボヨンと弾き飛ばされて情けない声を上げた。

 

 思わず、テッポは抗議の声を発した。

 

「ちょっ、バナーヌ! あなた、なんで立ち止まってるのよ! ここは真っ直ぐ走り抜けるんでしょ?」

 

 だが、バナーヌはそれに答えなかった。それどころか、微動だにしなかった。バナーヌは視線を右手方向の湖面へと向けたままだった。彼女は、何かを食い入るように見つめていた。

 

 何かあるのかしら? テッポも同じ方向を見た。しかし、暗く闇に閉ざされた湖面には、何も見えなかった。テッポはバナーヌに尋ねた。

 

「どうしたのバナーヌ? 何かいるの?」

 

 この時、雲間から月が姿を見せて、バナーヌの顔を冷たく照らし出した。その表情は、まだ付き合い始めて三日にもならないテッポにすら判別できるほどの、異様なまでの緊張感を(みなぎ)らせていた。

 

 テッポは、ぶるりと身震いした。バナーヌがこれほどまでに緊張するとは、もしや、敵では? 少しばかり震えた声で、テッポは再度バナーヌに尋ねた。

 

「バナーヌ、そっちに敵がいるの?」

 

 だが、バナーヌの返事は、テッポの予想だにしないものだった。

 

「バナナだ。バナナが水から出てきて、空を泳いでいる」

 

 テッポはどこか間の抜けた声を上げた。

 

「えぇ?」

 

 テッポは初め、バナーヌが冗談を言っているのかと思った。彼女はバナーヌの顔をもう一度しっかりと見た。その真面目すぎる表情を見るとテッポは、バナーヌが冗談を言っているとはとても思えなかった。テッポは、強いて明るい声で言った。

 

「ああ、もう……おかしなことを言わないで。バナナなんてどこにもないじゃない。ねぇ、冗談はやめて、もういきましょう?」

 

 しかし、バナーヌはその場から凍りついたように動かなかった。その視線は、見えない何かを追いかけるように動いていた。バナーヌは、それを決して見逃すまいというような、ある種の殺気を放っていた。尋常な様子ではなかった。

 

 テッポは言った。

 

「ねえ、バナーヌ?」

 

 なにかに憑りつかれたような声をバナーヌは発した。

 

「バナナが、バナナが」

 

 その言葉を聞いて、テッポは(にわか)に恐怖した。バナーヌが発狂した! 彼女はそう思った。テッポは叫んだ。

 

「ねぇ、バナーヌしっかりして! 正気に戻って! ねぇ!」

 

 テッポの必死の呼びかけは、バナーヌに無視された。それどころかバナーヌは、まるで「発狂」という考えを裏付けるかのように、二連弓を構えると虚空へ向かって素早く矢を連射し始めた。

 

 異様な行動を目にして、テッポの恐怖は高まった。彼女はさらに叫んだ。

 

「何してるの!? そこには何もいないわ! ねぇ、やめて! やめてよ!」

 

 バナーヌの細い腰を掴んで、テッポは懸命に揺り動かした。しかし、全ては無駄だった。テッポはいまや、荒い呼吸をしていた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 弓のがビュンと鳴る音、放たれた二本の矢が空気を切り裂いて飛翔する音、テッポの荒い息遣い……それ以外は、何も聞こえなかった。

 

 バナーヌはなおも矢を撃ち続けていた。気が狂ってしまったように、壊れてしまったカラクリ細工のように、バナーヌは飽きもせず同じ動作を、何度も何度も繰り返していた。

 

 テッポの恐怖は、最高潮に達した。テッポは絶叫した。

 

「もうやめてぇええっ!!」

 

 恐怖に耐えかねたテッポは、朽ちた噴水の近くに落ちていた棒切れを手に取った。テッポは涙目だった。彼女は垂直に飛び上がると、バナーヌの脳天に向かって棒切れを力いっぱい振り下ろした。

 

「ぐふっ」

 

 バナーヌは、意外なほどにあっさりと意識を失った。

 

 それから十分間近くにわたって、テッポは気絶したバナーヌの意識を呼び戻すために、別の苦労をすることになった。

 

 

☆☆☆

 

 

 首を傾げながら、バナーヌが言った。

 

「頭が痛い」

 

 テッポがどこか憤然とした様子で答えた。

 

「ふん、当然よ。余計な心配をかけさせた罰だわ!……ねぇ、あなた。本当に何も覚えてないの?」

 

 テッポの問いかけに、バナーヌは短く答えた。

 

「何も」

 

 大きなたんこぶができた頭を軽く(さす)りながら、バナーヌはテッポと並んで歩いていった。彼女の頭頂部はヒリヒリと痛んだ。確か、ここはゲルドの戦士に殴られたところだったっけ? 何かの拍子で痛みが再発したのだろうか? バナーヌは(いぶか)しんだ。

 

 奇妙なのは、頭の痛みだけではなかった。バナーヌは、ハイリア大橋を走り始めてからつい数分前までの、その間の記憶が一切なかった。すっぽりと欠落していた。

 

 バナーヌはテッポにそのことを尋ねた。だがテッポは「不可抗力よ、不可抗力!」とか「バナナの食べ過ぎが原因よ!」とか、今ひとつ要領を得ない回答しか返さなかった。

 

 沈黙が、歩いていく二人を包んでいた。虫の声もカエルの声も、何も聞こえなかった。

 

 一旦、雲間に姿を隠していた月が、またそろそろと這い出てきた。月は淡い光線を下界へと振りまいた。

 

 バナーヌは、声を発した。

 

「……あれは」

 

 テッポが言った。

 

「どうしたの?」

 

 光を浴びてキラリと輝く何かを、バナーヌの視覚が捉えていた。歩を早めてバナーヌはそれに近づいた。テッポも、無言でバナーヌについてきた。

 

 かすかに輝くその何かは、橋の真ん中に落ちていた。その輝く何かはちょうど、手のひらをいっぱいに広げたような大きさだった。

 

 バナーヌはそれを拾い上げると、月光に透かすようにして眺めた。それはこの世のものと思えないほどに美しく、繊細なものだった。

 

 一緒になってそれを見ていたテッポが、口を開いた。

 

「なにかしら、これ。金属片みたいな、でも、なんというか、魚の(うろこ)みたいな……でも、こんなに大きな鱗を持つ魚なんているわけがないし……」

 

 バナーヌは、テッポにそれを手渡した。テッポは言った。

 

「軽いのにとっても硬いわね……それに、不思議な手触り……でも、透き通ってて、すごく綺麗ね」

 

 テッポは、壊れ物を扱うような手つきで、そっとバナーヌへそれを返した。テッポは言った。

 

「なんとなく、この(うろこ)はあなたが持っていたほうが良い気がするわ」

 

 バナーヌは答えた。

 

「そうか。そうしよう」

 

 バナーヌは忍びスーツを少しはだけさせて、(うろこ)を懐へ収めた。鱗は彼女の大きな胸にぴったりと張り付いた。ひんやりとしていて、それでいて熱を帯びているような、不思議な感触が素肌を通して感じられた。

 

 いつしか二人の前に、巨大な建築物が闇を纏って姿を現していた。その奥で、オレンジ色の焚き火が二つ三つ、仄かに光を放っているようだった。馬の嘶きが響いた。

 

 テッポが声をあげた。

 

「あっ! あれはサンベたちかしら?」

 

 ようやく、バナーヌとテッポは輸送馬車に辿り着いたようだった。




 狂気の沙汰もバナナ次第。
 ハイラルドラゴンズにはいつも苦戦します。大きすぎて遠近感が今ひとつ掴めないのが原因です。
 そして近づきすぎて電気ビリビリ。お約束です。
 
 先日、ありがたくも柴猫侍様より支援絵を3枚も頂きました。自分の作品に絵を描いて貰えるなんて人生で初めてでもう誇張抜きに狂喜したわけですが、それをいざここに表示するのに些か手間取っております。柴猫侍様から許可は頂いているのですが、画像アップの方法を完全に把握するのに睡眠不足の脳みそがあまり追いついていない状態です。休養をとってビールでも飲んでリラックスすれば大丈夫だと思うので、そうなったらこの後書きに絵を載せたいと思います。

※追記(2018/08/16/木、18:00)
 自分の作品に絵を描いて貰えるということが、これほどまでに嬉しくて、気力活力の源になるとはまったく想像だにしておりませんでした。新鮮な驚きと喜びを改めて噛み締めております。
 柴猫侍先生、本当にありがとうございました!

一枚目 このちょっと悪そうな感じ!


【挿絵表示】


二枚目 可愛いのう


【挿絵表示】


三枚目 腰付きがセクシー! 今度から腰回りの描写にも気を遣おうかしら。


【挿絵表示】


※加筆修正しました。(2023/05/09/火)
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