ゼルダの外伝 バナナ・リパブリック   作:ほいれんで・くー

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第三十四話 哀しき熱帯

 哀しい。実に、このハイラルの天地は哀しみに満ち満ちている。あの山、この谷、かの川、すべてに涙と苦悩が染み込んでいる。

 

 空は晴れ、雲は流れ、日は高く輝くが、吹き抜ける風は蕭蕭(しょうしょう)としてうら寂しく、野を行く孤人に寒々と吹きつける。

 

 街道には朽ちた馬車がある。その車軸は折れていて、車輪は二度と回転しない。各地に村の跡地、町と砦の遺構が残されている。人の気は絶えていて、魔物と野獣がそこここに跋扈(ばっこ)している。かつての壮麗さを誇った建築物は今や(こけ)むした廃墟となっている。それらは雨に打たれて、次第に崩れていく。

 

 この哀しみは何処から来るのか? 我々が街道を旅し廃墟に露営し、朽ちた馬車を壊して薪を取る時に、ふと訪れるのだろうか? それとも、我々が粗末な寝床に身を横たえ、残り火に照らされた残骸を見て、かつて地上に(さん)としてまた(げん)として君臨したハイラル王国の残影をそこに見出す時に、ふと訪れるのだろうか?

 

 いや、哀しみとはそれほどまでに詩的なものではない。少なくとも、かつてのハイリア人にとってはそうではなかった。虚空に漂う幻影を言葉によって再構築し、韻律に乗せて口ずさむような、そういう風雅な哀しみは、この滅びの時代にあって新たに出現したものである。

 

 大厄災前の哀しみとはもっと具体的なもの、五感に迫るもの、目から涙を流させる力を持つものであった。

 

 作者不詳の有名な戯れ歌「哀しさ」は以下のように歌っている。

 

「哀しさは、日々のパンにも事欠いて、(みじ)めたらしくルピーを乞うこと。哀しさは、女房子どもが腹空かし、寒さに震えて身を寄せ合うこと。哀しさは、大風(おおかぜ)大水(おおみず)に押し流されて、故郷がまるごと消え去ること……なかでも一番哀しいことは、夫と息子が戦場(いくさば)で魔物の手にかかり、名誉の戦死を遂げること!」

 

 そう、ハイラルのいついかなる世代にも共通する哀しみとは、やはり戦争と闘争によるものだった。

 

 思えばこのハイラルの天地は開闢(かいびゃく)以来、正しき心を持つ者と、邪悪な野望を滾らせる者との、闘争と争覇(そうは)の連続によって歴史を紡いでいる。なんとなれば、ハイラル王国の歴史は、太古の昔から幾度もガノンという名の厄災に見舞われてきた歴史だからである。

 

 兵士たちは隊伍を固く組み、武器を高く掲げて、戦友と歩調を合わせて前進する。地の底から湧いて出た地を埋め尽くすほどの魔物の群れ、その大海のような大勢力に、兵士たちは(おく)さずに立ち向かう。選ばれし者と姫巫女が厄災を封じるその時まで、彼らはその身と命を以て、大津波の如き魔の勢力への防波堤たらんとして奮戦する。

 

 やがて、彼らは勝利する。大地は魔物の黒い血潮と兵士の赤い血潮を吸い込んでいる。折れた刀槍や破れた軍旗が、打ち(こぼ)たれた砦に散乱している。魔物たちと兵士たちの物言わぬ亡骸の数々が、折り重なっている。

 

 生き残った兵士たちは高らかに勝ち(どき)を上げる。その目尻には涙が浮かんでいる。彼らは勝利の喜びと生存の哀しみを、精一杯の声を張り上げて表現しようとする。

 

 ああ、遂に生き残ってしまった! 彼らはそう叫ぶ。

 

 兵士にとって勝利とは、光輝く黄金色に彩られた栄光でも、鈍く輝く銀色の勲章に(あらわ)された不朽の名誉でもない。兵士たちにとって勝利とは、ただ哀しみをほんの少しだけ忘れさせてくれる、いわば酒や歌のようなものでしかない。

 

 彼らの心中を満たすのは哀しみである。決して(おもて)に出すことのない、心の深奥にしまい込まれる冷え冷えとした哀しみである。親にも兄弟にも最愛の人にも知られることのない、孤独なる哀しみである。

 

 ハイラルのありとあらゆる場所で、闘争と戦争があった。そのたびに無数の命が失われ、無数の勝ち鬨が上げられた。無数の哀しみと無数の涙が、ありとあらゆる場所に染み込んだ。ハイラルの天地はどこまでも哀しい。それは、ハイリア人が勝利を重ねてきたがゆえである。

 

 では、ハイラルの全史を通じて、闘争と戦争には哀しみしかなかったのだろうか? 父母より語り継がれ、誇りとし、子らにまた語り継がれた勝利と誉れは、哀しみを覆い隠す仮面に過ぎなかったのだろうか?

 

 そうではない。闘争を楽しみ、勝利を歌い、哀しみを笑いの向こうへと追いやった、一つの奇妙な例が存在する。

 

 その歴史的事件は、「スペ=スマの大乱闘」と呼ばれている。ある時、様々な種族の戦士が「スペ=スマ」なる丘に集結し大乱闘を繰り広げたことがあった。

 

 大厄災前においては人口に膾炙し、文化の一つとして認識され、数々の芸術、創作、演劇等の題材とされたこの事件は、実は詳細が判明していない。

 

 話の概略は以下の通りである。

 

 遠い昔、まだハイリア人やシーカー族、ゾーラ族やゴロン族、リト族やゲルド族が、互いに互いのことをよく知らなかった時代のことである。あるところに「スペ=スマ」と呼ばれる丘陵地帯があった。丘と言われているが、実際のところそれは山ほどに高く、その壁面は垂直で、あたかも寸胴の鍋をひっくり返したような形をしていた。

 

 ここに、どういう経緯かは判然としないが、六つの種族の六人の戦士(ファイター)が集結した。すなわち、ハイラル王国軍の騎士、シーカー族の戦忍(いくさしのび)、リト族の弓使い、ゾーラ族の槍使い、ゴロン族の腕自慢、そしてゲルド族の剣術家の六人である。

 

 一説によると六人がこの丘に集まったのは、財宝を得るためであったという。「スペ=スマ」の丘の頂上には財宝が埋まっているという噂があり、各種族はそれを手に入れるために種族の中で最強の戦士を派遣したという。また他の説によると、そんな噂などは存在せず、六人はただ偶然そこに集まっただけであるともいう。また、ある神官の説によれば、ある時女神が「ハイラルの大地に棲まう諸種族の中で最強はどれか」と思い、この地に戦士(ファイター)を呼び集めたともいう。

 

 数々の異説の真偽はともかく、六人の戦士(ファイター)たちは「スペ=スマ」の丘に辿り着くと、一斉に登り始め、そしてほぼ同時に登頂した。そして、顔を合わせるや六人は即座に大乱闘を始めた。

 

 ハイラル王国の騎士は剣を持ってゲルド族の剣術家に挑みかかり、双方は白刃を振るって激闘を繰り広げた。リト族の戦士は空を自由に舞い、ゾーラ族の槍使いに矢を乱れ撃ちに浴びせかけた。シーカー族の戦忍(いくさしのび)はゴロン族の腕自慢が放つ一撃必倒の岩砕きの横薙ぎを避け、小刀と鉄糸を振るって反撃した。

 

 乱闘は三日続いたという。ちょうど円形のステージのように平たい丘の頂上から、ダメージが蓄積したファイターは次々にぶっ飛ばされて落ちていった。「スペ=スマの大乱闘」を描いた演劇では、ぶっ飛ばされるファイターに合わせてコーラス隊がそれぞれの部族をイメージした歌を歌ったという。

 

 戦いは終わった。戦士(ファイター)たちは序列をつけ、優勝者は勝利の舞いを披露した。彼らは頂上にあった財宝を分かち合い、互いの健闘を拍手で讃え、三日三晩の祝宴を張ったという。

 

 問題となるのは、結局この大乱闘で誰が勝利したのか、という点である。この「スペ=スマの大乱闘」は先述したように、確固たる史料や文献といった史的証拠があるわけではなく、各種族の口伝によって代々受け継がれてきた話であるため、誰が勝利者となったのかについてはそれぞれの種族で異なっている。

 

 例えばハイリア人は、当然のことながら、ハイラル王国の騎士が乱闘に勝利したと言った。すなわち、最初に彼はゲルド族の剣術家をぶっ飛ばし、次に返す刀でゾーラ族の槍使いを背後からぶっ飛ばし、次に空中のリト族の弓使いを撃ち落とした。ふらつきながらも華麗な空中跳躍で復帰してくるそのリトの戦士を再度ぶっ飛ばすと、騎士は、たまたま丘をよちよちと歩いていた爆弾(ボム)兵を投げつけてシーカー族の戦忍(いくさしのび)をぶっ飛ばした。そして騎士は最後に、ゴロン族の腕自慢を、これまた丘に偶然落ちていた「ホーラムン棍棒(バット)」を用いてぶっ飛ばした。このようにハイリア人は説く。

 

 同様に、シーカー族においてはシーカー族の戦忍が、リト族ではリト族の弓使いが、ゴロン族ではゴロン族の腕自慢が……というように、各種族はこの伝承にかこつけて、勝利の栄光に彩られたページを自らの歴史に追加した。

 

 この話の解釈は実に多様である。ある学者はこれを、「太古の昔に勃発した種族間戦争の寓意的表現である」と説く。別の学者によれば、「大乱闘という闘争形式は太古の人間にとって一種の宗教儀礼であり、それゆえ『スペ=スマの大乱闘』は各種族の合同祭儀が形を変えて伝承されたものであると見なすことができる」という。中には、「『スペ=スマの大乱闘』という事件は本当のところは実在せず、実際は古代シーカー族の戦士の鍛錬法たる『ブラ・スマの百人組み手』を下敷きにした作り話に過ぎない」という説を提唱する者もいる。

 

 丘の場所についても議論は尽きなかった。伝統的に「スペ=スマの丘」は「始まりの台地」に存在すると言われていたが、「始まりの台地」には伝承の内容に合致する丘はない。他の見解としては、「その名前はシーカー族に由来するものであるから、その場所はカカリコ村近く、例えばナリシャ高地やボヌール山地ではないか」というものもある。だがその説にしても考古学的な裏打ちはなされていない。

 

 解釈がどうであれ、「スペ=スマの大乱闘」は、話の内容自体は暴力と流血に満ちているにもかかわらず、民衆には「至極明るくて愉快な昔話」として受け取られていた。

 

 例えば、この事件をもとにしたいくつもの慣用句がある。「スペ=スマのように喧嘩をする」という言い回しは、「正々堂々正面から戦うこと」を意味する。「スペ=スマの勝利者」は「寛大で気前の良い人」を指し、「スマッシュ兄弟(ブラザーズ)」とは「喧嘩仲間」のことを意味する。「ホーラムン棍棒(バット)が折れた」は「頼みの綱が切れてしまった」ことを意味し、「歩いてくる爆弾(ボム)兵」は「降って湧いた幸運」を指す。これらの慣用句こそ、「スペ=スマの大乱闘」を民衆がどのように見ていたかを示す端的な証拠である。

 

 兵士たちの日記や回想録にも、この大乱闘はしばしば登場する。ある兵士は以下のように書き残している。

 

「戦争が『スペ=スマの大乱闘』のように楽しく、簡単で、分かりやすい形で行われれば、私達のような兵卒が泥水を啜ることもないのだが……実際には戦争など所詮はただの血みどろの殺し合いであって、とても『スペ=スマの大乱闘』のようにはいかない」

 

 それにしても、「スペ=スマの大乱闘」とはいったい何だったのだろうか。ある意味でそれは、人々の夢だったのだといえる。争いはいつか誰も傷つかない形で終結し、一人の優勝者のもとに秩序が敷かれる。各種族は互いを尊重し健闘を称え合い、財宝を均等に分け合う。誇りと希望を胸に抱いて、戦士(ファイター)たちは故郷へと去っていく……

 

 現実の戦場が醜く、過酷で、哀しみに満ちていることを痛いほどに知っているハイリア人であればこそ、この歴史的事件に特別の価値を見出したのではないか……そのように考えることができるだろう。

 

 残念ながら、もはや現今(げんこん)のハイラル世界において、愉快な大乱闘は発生し得ない。戦士(ファイター)としての矜持(プライド)を持たない魔物たちを相手にしての闘争は、いわば血で血を洗う生存競争であり、そこに楽しさや滑稽さは微塵もない。

 

 人々は、完全に滅ぼされるか、それとも完全に滅ぼすか、いずれかの時を迎えるまで戦いをやめないだろう。哀しみは引き続き大地に堆積するだろう。

 

 新たな「スペ=スマの大乱闘」が生まれるのは、当分先のことになるだろう。

 

 

☆☆☆

 

 

 後方からは追いすがるキースの大梯団(だいていだん)、前方からは無数の森オクタから放たれる弾幕、周囲には懸命になって走る数頭のヤギとシカ……バナーヌとテッポの状況は緊迫していた。馬を傷つけてはならず、しかし逃げ込む先のフィローネ樹海入り口に到達するには、少なくともあと三十分はかかる。

 

 危機的な状況にありながら、バナーヌとテッポの二人は冷静に打つべき手を考え続けていた。バナーヌの手綱を握る手はあくまでも柔らかかった。彼女の呼吸は平静で、その耳は後方より迫るキースの群れのざわめきを捉えていた。

 

 振り返りもせず、バナーヌは後ろに座るテッポへ尋ねた。

 

「キースとの距離は?」

 

 テッポが緊張感の滲んだ声で答えた。

 

「およそ二十五メートル!」

 

 空を飛ぶ生物の例に漏れず、キースは素早い。二十五メートルとは、少しでもバナーヌが速度を緩めれば追いつかれる距離であった。道が平坦で真っ直ぐな今のうちに、馬へ鞭を打って拍車を当て速度を稼ぐ必要がある。バナーヌはそう思った。だが、状況はそれを許さなかった。

 

 鈍い音を立てて、一発の森オクタの岩がバナーヌとテッポの頭上を飛び去っていった。二人は声を上げた。

 

「……むっ」

「危ないっ! ちょっと(かす)ったわ!」

 

 夜の闇の中を突進してくる岩塊は、実際には赤子の頭ほどの大きさでしかなかったが、光線の加減でそれ以上の見た目と迫力を持っていた。

 

 オクタという魔物は耐久力が低く、木の枝であろうが錆びた剣であろうが一撃を加えれば脆くも爆散する弱い魔物であるが、真に恐るべき能力を持っている。それは、隠蔽(カモフラ)能力と偏差射撃能力である。

 

 たとえ馬が全速力を出して突っ走ろうとも、オクタの射撃から逃れることはできない。魔物たちはその不気味に輝く黄色い両眼をもって正確に距離を測定し、吐き出す岩の速度を計算すると、対象の未来位置へ寸分違わずに射弾を送り込んでくる。ゆえに、少しでも真っ直ぐ走ろうものなら、たちまち被弾することになる。

 

 徒歩戦闘ならば、オクタはまったく大した敵ではない。盾や遮蔽物を用いて岩から身を守り、徐々に距離を詰めて、間合いに入ったならばおもむろに剣を抜いて一撃を加えれば良いだけの話である。イーガ団の基礎戦闘訓練でも、オクタは格好の教材とされていた。

 

 だが、走り続けなければならない馬上においては、その対処の難易度は跳ね上がる。

 

 バナーヌは心中苛立ちを覚えていた。雑魚敵も群れれば脅威となる。キースもオクタもそうだ。その上、倒すこともできずにただ回避に専念しなければならないのは、正直に言ってかなり神経を消耗する。

 

 とにかく動きをランダムにするしかない。直線的に動かず、ジグザグに走り、歩を早めかつ緩めて速度を常に変化させ、森オクタの狙いを狂わせる。このことによってのみ岩を避けることが可能である。

 

 そのことをよく理解しているバナーヌの手綱捌きは、端的に言って見事なものだった。むしろ、日常的に乗馬をしない人間としては神業(かみわざ)に近いものであるといえた。バナーヌは、危険を回避しようとする馬自体の本能的な動きをよく把握していた。かつ、彼女はそれに自分自身の意を加えていた。彼女はほとんど人馬一体の境地に到達していた。

 

 尋常の競馬や障害物競走ならばハイラル全土でも上位に食い込むであろう走りを、彼女はその時見せていた。だが当然、回避運動を織り交ぜている限りはキースの大梯団との距離は拡がっていかない。むしろ、徐々に徐々に両者の距離が縮まりつつあった。その証拠に、ざわざわというキースの鳴き声が大きくなってきていた。

 

 意を決したようにテッポが叫んだ。

 

「このままじゃ追いつかれるわ! ちょっと爆弾を使って追い払ってみる!」

 

 バナーヌは短く答えた。

 

「できるか?」

 

 テッポは頷いた。

 

「導火線の調定と投げるタイミングさえ合えば可能だと思う……バナーヌは走ることに集中して!」

 

 テッポは腰の爆弾袋を(さぐ)った。出発前、テッポは輸送馬車に積んであった予備から爆弾の補給をしておいた。そのため、袋の中身はたっぷりと詰まっていた。

 

 距離は、先ほどより少し詰まって二十メートルほどになっていた。テッポの膂力(りょりょく)でも十分に爆弾を到達させられる距離だった。彼女は慣れた手つきで素早く導火線を切った。岩が飛来してきたのを、彼女はすんでのところで避けた。彼女は点火すると、一発の爆弾を投擲した。

 

 だが、地上と馬上とでは勝手が大きく異なった。思わずテッポの口から声が漏れた。

 

「あっ!」

 

 鳶色の美しい目をテッポは大きく見開いていた。テッポの放った爆弾はキースの群れの手前で爆発した。そのため、一匹も仕留めることができなかった。キースの代わりに哀れなヤギが爆風に巻き込まれて転倒し、即座に別のキースの群れに襲われて、夜目に鮮やかな白骨を数秒後に晒した。テッポは声を上げた。

 

「ああ、ヤギが……! ごめんなさい、そんなつもりじゃなかったんだけど……まあいいわ、気を取り直してもう一発いくわよ!」

 

 続けてテッポは爆弾を投げた。一発は群れの頭上を通り越して爆発し、一発は飛んできた森オクタの岩を避けることに気が向いていたために狙いが右に逸れ、ようやく勘が掴めたと思って投げた一発は、投げる直前に唐突に行われた馬の回避運動によってあらぬ方向へと飛んでいった。

 

 空しく爆音が連続した。ままならぬ戦闘に、テッポが憤然として声を上げた。

 

「ああ、もう! 全然上手くいかないわ! もし任意のタイミングで起爆できる爆弾があれば、あんな連中イチコロなのに!」

 

 もちろん、そんな便利な爆弾などこの世に存在しない。そのことを爆弾の専門家であるテッポはよく知っていた。テッポはここで一度攻撃を中断した。このままではバクダンが何百発あったとしてもキースの群れは倒せない。彼女はそう思った。いやいや、さすがに何百発もあれば倒せる自信はある。だけど、そんなことを考えてもなんの意味もない……何か、戦術の転換が必要だ。

 

 しかし、馬上戦闘の経験もなければ訓練を受けたこともないテッポにとって、そのための知恵はどうしても浮かんでこなかった。彼女は声を漏らした。

 

「どうすれば……」

 

 彼女が迷っている間にも、キースたちは距離をじりじりと詰めていた。

 

 テッポは考え続けた。バナーヌから弓矢を借りる? でも、自分はまだ弓矢を上手く扱えない。じゃあ、交代して私が手綱を取って、バナーヌに追い払ってもらう? いやいや、そんなことは絶対にできない。自分が馬に乗ったのは今回が初めてだ。そんな自分が馬を乗りこなして、しかも森オクタの射撃を回避するなんて絶対に無理。じゃあ、足を止めて迎え撃つことにする? そんなことをすれば、たちまち馬に森オクタの岩が降り注ぐだろう……八方ふさがり、という言葉がテッポの脳裏をよぎった。そんな馬鹿な! テッポは頭を振った。なにか打開策があるはずよ……

 

 その時、黙って馬を走らせることに集中していたバナーヌが、静かに口を開いた。

 

「テッポ。走っている馬の上から、走っている目標に攻撃を当てるのは難しい」

 

 思考に吞み込まれていたテッポは、バナーヌの声にはっとした。

 

「えっ!?」

 

 バナーヌは続けて言った。

 

「走っている馬の上から、停止している目標に当てるのは比較的容易だ」

 

 テッポはなかなかバナーヌの言っていることが理解できなかった。彼女は言った。

 

「停止している目標って……どういうこと?」

 

 バナーヌは答えた。

 

「すまない、また忙しくなった」

 

 そう言ってからバナーヌはまた沈黙し、手綱捌きに集中し始めた。森オクタからの射撃が一段と激しさを増してきたからであった。

 

 テッポは体を(ひね)り、頭を屈めて岩を避けつつ、さきほどバナーヌが言ったことを改めて考えてみることにした。

 

 なるほど、これまでの爆弾の投擲で分かったが、揺れる馬上から空中を飛ぶのキースに爆弾をぶつけることは至難の業である。よしんば爆弾が群れのど真ん中に投げ込まれたとしても、導火線が適切に調定されていない限り、爆発のタイミングがずれて有効弾とはならない。ゆえにキースの群れに対して直接爆弾を投げる戦法は、まぐれ当たりの僥倖(ぎょうこう)を期待するのでもない限り、絶対に効果はない。

 

 テッポは考え続けた。バナーヌは「止まっている目標ならば当てるのは容易だ」と言った。つまり、キースの群れが停止していれば自分の腕前であっても爆弾を命中させられる可能性はあるということだ。でも、乱舞するキースの群れが突然止まるなんて、そんなことはあるのかしら……?

 

「あっ」

 

 テッポの脳裏に、ある光景が浮かび上がった。石で転ぶヤギ、爆風に転ぶヤギ、そこへ舞い降りるキースの群れ、成人男性の叫び声のような断末魔の悲鳴……それがヒントになりそうだった。

 

 彼女は周囲を見渡した。そこには、(あえ)ぎあえぎ必死になって脚を動かしているセグロヤギが三頭に、ヤマシカの(おす)(めす)が四頭、合計七頭の獣がいた。テッポは呟いた。

 

「……これしかないわ」

 

 父ハッパから受けた教育をテッポは思い起こした。

 

「イーガ団員たるもの、弓矢や刀槍(とうそう)だけに頼ってはならない。また、術や道具だけに頼ってはならない。地形地物を観察し、よく敵の動向を見極め、天より与えられた状況を最大限に利用して戦闘を遂行するべきだ。これと思いついて、なおかつ確信が持てたのならば、それがどんなに突飛な考えであったとしても、臆せず即座に実行に移すべきだ。要するに、冷静さと大胆さを兼ね備えてこその戦士(ファイター)だということだよ。分かったかい、テッポ……?」

 

 テッポは叫んだ。

 

「お父様、今こそテッポはお父様のお教えを実行します!」

 

 次の瞬間、テッポはバナーヌの腰のポーチに手を伸ばしていた。テッポはその中から黄金に輝くツルギバナナを一房取り出した。テッポはバナーヌに言った。

 

「良いことを思いついたの! バナーヌ、ちょっとバナナを貸して!」

 

 思いもよらぬ行動に、バナーヌは思わず抗議の声を上げた。

 

「テッポ、いったい何を」

 

 無断で他人のバナナを拝借するとは、イーガ団においては喧嘩の号砲と同義であった。それに、このような緊迫した状況でバナナを必要とする理由が分からない。バナーヌは戸惑って、さらにテッポに言った。

 

「ちょっとテッポ、ちょっと、やめて」

 

 テッポはその声に構わずに房から一本をもぎ取った。彼女は素早くバナナの皮を剥き、そしてその甘く柔らかい、栄養のある身を口に入れた。

 

 バナーヌはなおも抗議の声を上げた。

 

「テッポ! それ、私のバナナ!」

 

 食べながらテッポは答えた。

 

「もぐ……ごめんバナーヌ、今だけはちょっと黙ってて! もぐ……」

 

 テッポは大急ぎでバナナを食べた。だが、必要とするのはバナナのエネルギーではない。テッポは食べながら呟いた。

 

「もぐ……一頭につき三つってところかしら。だからあと二十本ほど……もぐ……」

 

 バナーヌはどこか絶望したような声を出した。

 

「そんなに食べるのか」

 

 テッポはひたすらバナナの皮を剥き、猛然と食べ続けた。その鬼気迫る食べっぷりは、前を向いて手綱を捌いているバナーヌにも伝わったようだった。何かは分からないながらも、どうやら策を思いついたようだ。そのように感じたバナーヌは、不承不承ながらもポーチの中身をテッポに明け渡した。

 

 しかし、テッポは未だに幼かった。いくらバナナを天使と(あが)め、バナナを命の源とするイーガ団員であっても、そう何本も連続して食べ続けることは物理的に可能なのだろうか? テッポは苦しくなった。彼女は苦しそうな声を上げた。

 

「もぐ……こ、これで……四本目……もぐ……」

 

 バナーヌが彼女を気遣って声をかけた。

 

「無理をするな」

 

 次々と押し込まれる大量の果肉のせいで、テッポの口の中から水分が失われていた。水筒は腰に下がっている。しかし、ここで水を飲んでバナナを胃へと流し込もうというのは、イーガ団ではない人間の発想である。それはイーガ団の教えに反する。テッポの頭の中で、教えの言葉が蘇った。「ツルギバナナを貪食(どんしょく)し、己の限界を超えて食べ続ける者は、必ずや災いがあるだろう」「水を飲んでバナナを胃の腑へと流し込むことをしてはならない。それは冒涜(ぼうとく)である』 こういう状況でも、教えは教えであるがゆえに守られねばならなかった。

 

 テッポは何とか四本目を食べ終えて、五本目に手をかけた。だが、ここでついに彼女の肉体が悲鳴を上げた。

 

「五本目……うぷっ……」

 

 その声の不吉な響きを聞いて、バナーヌは声を上げた。

 

「大丈夫?」

 

 テッポはじっと、手に持っている五本目のバナナを見つめた。食べないと。しかし、どうしても彼女の手は動かなかった。おまけに、彼女はなんだか吐き気まで催してきた。

 

 ここに来てテッポは、生まれて初めての乗り物酔いに陥っていた。テッポは沈黙した。

 

 黙ってしまったテッポに、バナーヌが声をかけた。

 

「テッポ」

 

 その声はいつものように澄んでいたが、どこか気遣わしげな感情が見え隠れしていた。テッポは何か答えようとした。だが、出てくるのはどこか危うい吐息だけだった。

 

「う、ぅぷ……」

 

 またバナーヌが声をかけた。

 

「大丈夫か?」

 

 テッポはこみ上げてくる不快感を強いて忘れようと努めた。その努力は功を奏した。テッポは少しだけ落ち着きを取り戻した。彼女はバナーヌの背中にぴったりと張り付いた。そして、彼女はバナナの皮を剥くと、バナーヌの背後からその口元に向けて果肉を差し出した。テッポは言った。

 

「……もう、無理……もう、これ以上は食べられないわ……バナーヌ、あとはあなたが食べて。私が代わりに皮を剥くから……」

 

 バナーヌは答えた。

 

「分かった」

 

 次の瞬間には、バナナはもう消えていた。テッポの手には黄色い皮だけが残っていた。それをテッポは自分のポーチへ戻した。皮はこれから必要だった。

 

 二人は岩を避けながら、ひたすらバナナを食べ続け、また食べさせ続けた。

 

「次」

「はい」

「次」

「ちょっと待って……ほら」

「次」

「ちょっと、まだ準備できてないわ! ほら……ていうかあなた、一体どんな体の構造しているのよ……?」

 

 驚異的な速度でバナナの皮が生産された。あっと言う間に、テッポが必要とする量ができあがってしまった。

 

 二人はフィローネ樹海入口に接近しつつあった。ここから先の道は、雨のせいで路面状況があまり良くない。策を実行するなら今しかない。テッポは決意した。幸い、ヤギもシカも未だ元気に走り続けている。彼女は強い意志のこもった口調で言った。

 

「いくわ……」

 

 テッポは爆弾を用意し、導火線を長めに設定した。そして、真っ直ぐこちらの後ろにつけて走っている一頭のヤギに狙いを定めると、彼女はポーチから三枚のバナナの皮を取り出し、ヤギの前方に落ちるように投げた。

 

 ヤギは悲鳴を上げた。

 

「べええっ!?」

 

 ヤギはバナナの皮を踏んで、滑って、勢い良く転倒した。

 

 そんなヤギを見たキースの群れが、ざわざわと音を立てて間をおかず舞い降りてきた。

 

 テッポは短く叫んだ。

 

「今よ!」

 

 テッポは、呆然として地面に膝をつきキースの餌食になるのを待っているそのヤギに向かって、爆弾を投擲した。今度は狙い違わなかった。爆弾は正確にヤギに到達した。

 

 停止している目標に対してならば当てやすい。なるほど、確かにそのとおりだわ。テッポはそう思った。

 

 半秒後、大爆発が起こった。爆音に続いて、無数のキースの悲鳴が聞こえてきた。結果やいかにと固唾を呑んで爆煙の向こうを見透かしていたテッポは、快哉の叫びを上げた。

 

「やった!」

 

 キースの群れはもはや存在していなかった。新鮮なケモノ肉の周囲には、翼や目玉など、バラバラになった黒い小型魔族の残骸が散乱していた。

 

 計略は見事に的中した。バナーヌが首尾を尋ねてきた。

 

「どう? 上手くいった?」

 

 テッポは得意げな顔をして答えた。

 

「ええ、もう心配はないわ。後は任せて」

 

 テッポは左手にバナナの皮を三枚持ち、右手に一発の爆弾を持った。今度の目標は、左後方を走る(めす)のヤマシカだった。テッポは精神を集中して狙いを定めた。ヤマシカは目前に迫る生命の危機に気付かず、ただ前を向いて無心に走り続けている。哀れな感情がテッポの胸に満ちた。彼女は言った。

 

「……ごめんね」

 

 いつの間にか、テッポの乗り物酔いは収まっていた。彼女はヤマシカへ向かって、バナナの皮を放り投げた。

 

 それからしばらくの間、街道で爆発音が連続した。

 

 

☆☆☆

 

 

 約半時間後に、バナーヌとテッポは無事にフィローネ樹海入口に辿り着いた。無理な走行を続けたために、馬は疲れ果てていた。二人は馬から下りた。

 

 テッポが優しく馬を撫でながら言った。

 

「『バナナ・ゴーゴー』もよく頑張ったわね。ありがとう。さすがは支部長の自慢の馬だわ」

 

 テッポがバナナを剥いて差し出すと、馬は満足げに鼻を鳴らしてそれを食べた。

 

 二人は警戒態勢を解かなかった。彼女たちは馬を連れて森の中を歩いた。森ではたまに頭上からチュチュが降ってくることがある。森のチュチュはどれも小振りで、冷静に対処すればまったく脅威にならない存在ではあるが、馬に万一のことがあってはならない。それに、さきほどまで見飽きるほどに見てきたキースも、森では大木のウロから出現することがある。ごくたまにだが、電気を纏ったエレキースがやってくることもある。決して油断はできなかった。

 

 懸念したとおり、森の中には敵がいた。二人は戦った。テッポが叫んだ。

 

「バナーヌ、そこに一匹いるわ!

 

 バナーヌが答えた。

 

「分かってる」

 

 二人は、音もなく老木の(こずえ)から落ちて体当たりを仕掛けてきたチュチュ三体を、首刈り刀で処理した。テッポが汗を拭いながら口を開いた。

 

「ふぅ……これで片付いたかな? ところで、さっきの戦闘なんだけど……」

 

 バナーヌは答えた。

 

「うん」

 

 テッポは話を続けた。

 

「ほら、あの『スペ=スマの大乱闘』っていう昔話があるじゃない? かつてイーガ団のご先祖様も参戦して、他の種族を圧倒したっていうあの戦いよ。あの時ご先祖様はバナナの皮を使って、自分よりも遥かに大きなゴロン族を転ばせたっていうわ。私、それを応用してみようと咄嗟に思いついたのよ」

 

 バナーヌは静かに言った。

 

「……そういえば、『マリ=カオートの戦い』でも似たようなことがあった」

 

 テッポが頷いた。

 

「ああ……侵攻してくるハイラル王国軍の騎馬隊を、大量のバナナの皮をばら撒いてやっつけたっていう話でしょ? 本当に、ご先祖様の知恵には感謝しかないわ」

 

 バナーヌも頷いた。

 

「確かにな」

 

 テッポは言った。

 

「わたしも弓矢が使えればバナナの皮なんて使わなくても良かったんだけどね。でも仮に弓矢が扱えたとしても、初めての馬上戦闘だと上手くいかなかったと思うわ」

 

 バナーヌはどこかそっけなく答えた。

 

「なるほど」

 

 テッポは大きな声で言った。

 

「だからね、あなたのバナナを使ったのは仕方のないことだったのよ。もう! いい加減その怖い目つきをやめてよ!」

 

 バナーヌは暗い目を伏せて、残念そうに呟いた。

 

「……バナナ」

 

 悪いことをしたな、とテッポは思った。テッポはつい直前までのことを思い出していた。

 

 最初のキースの群れを爆弾で撃破した後、テッポは同じことを繰り返して、ついには夜空を覆い尽くすほど大量にいたキースをすべてやっつけてしまった。哀れなヤギとシカは、すべてが(デコイ)として命を散らした。生きるためだもの、可哀想だったけど、仕方ないことよ……テッポはそう自分に言い聞かせた。

 

 最後に群れを爆破した時には、二人はもうフィローネ樹海入り口に差し掛かっていた。森オクタからの射撃は、結局一発も当たらなかった。幸運もあったが、ひとえにバナーヌの馬術が優れていたおかげだとテッポは思った。

 

 これなら、苦労してバナナの皮の計略など用いなくても良かったのでは? テッポはそう思ったが、それは結果論だと思い直した。貴重なバナナを大量に消費した手前もあり、彼女はバナーヌにその考えを打ち明けることはできなかった。

 

 樹海に入り、森オクタの姿も見えないことを確認すると、バナーヌは馬を降りて、すぐさまポーチの中身を確認した。そして、わずかに眉を曇らせると肩を落とし、トボトボと手綱を持って歩き始めた。バナーヌは明らかに、手持ちのバナナが減って落胆しているようだった。

 

 テッポは短い回想から意識を戻した。テッポは咳払いをしてから、気を取り直したように言った。

 

「……無事にここまで辿り着けて良かったわ。本当に、あなたの乗馬が上手だったおかげよ。お礼に私の大好物のマックスドリアンをあげても……」

 

 バナーヌがにべもなく答えた。

 

「いらん」

 

 テッポはめげずにまた言った。

 

「あ、ああ……そういえば、あなたはマックスドリアンが嫌いだったわね……じゃあ別のものをあげるわ。なにが欲しい?」

 

 バナーヌは即答した。

 

「最高級のバナナを買ってくれ」

 

 テッポは耳を疑った。

 

「えっ? か、買う? バナナを買うですって?」

 

 バナーヌは頷きつつまた言った。

 

「買ってくれ」

 

 そりゃ、そう言うなら買うけど……テッポは言葉に出さずに思った。バナナなんて、わざわざルピーを出して買うものだっけ? フィローネ支部の人間にとっては、バナナは確かに尊重すべきものであり、またご馳走ではある。だが、なにも金を出して買うまでもないという意識も同時にある。バナナなんて、そこらの樹海の奥に行って樹から(むし)り取ってくれば良いものじゃない。それを買うっていうのは……? カルチャーギャップという概念がこの世に存在することを、テッポは知らなかった。

 

 それでも、テッポはバナナを買うことにした。父はかつて彼女に言った。「贈り物には気持ちとお金の両方をかけないといけないよ、気持ちだけを込めるのは子ども同士に限った話だよ」 彼女はバナーヌに言った。

 

「……分かりました。この任務が終わったら初めてお給料が貰えることになってるから、それであなたにバナナを買ってお贈りします」

 

 ようやく、バナーヌの曇った顔が晴れた。彼女は言った。

 

「良し」

 

 本当はお父様に贈り物をしたかったんだけど……まあ、バナーヌ相手ならいいか。テッポはそう思った。

 

 二人はしばらく歩いた。やがて二人は、木立が途切れた所に出た。そこで道が二手(ふたて)に分かれていた。東に進めば樹海スグラント方面、南に進めばアラフラ平原である。アラフラ平原にモモンジとヒコロクがいるはずだった。

 

 テッポが辺りを見回してから言った。

 

「この場所、いつもだったらフィローネ支部の見張りが常駐してるんだけど……やっぱり誰もいないわね。今回の輸送作戦で人員が出払ってるから」

 

 バナーヌは答えた。

 

「そうか」

 

 バナーヌは夜空を見上げた。月はすでにかなりの行程を消化していた。

 

 二人がアラフラ平原に到着するのは、夜明けと同時になるものと予想された。




 スマスペでブレスオブザワイルドに興味を持った方々が、この年末にかけてブレスオブザワイルドにドハマリする事態にならないかなーと思ったりしています。
 それにしても前回の更新からかなり時間が経ってしまいました。続きを待っていてくださった皆様には大変申し訳ありません。

※加筆修正しました。(2023/05/10/水)

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