息抜きでの2作目です。
喫茶店ですが、料理シーンなどはほぼないのでご理解のほどを。
あと登場人物の口調とかも怪しいかもなので、アドバイスをいただけれると嬉しいです。
では、第1話をどうぞ。
これは、とある田舎の物語。
世界の危機だったりとか、不思議な力を宿したりとか、そんな大層な話などはなく。
ただごくごく平穏な、なんの変哲もない、のんびりとした日常があるだけ。
空と地面は遠くとも、人と人は近くに。
当たり前の日々こそ、何よりも美しく。
これは、そんな何気ない日々を描いた日常譚。
☆★☆★☆★☆
場所はとある田舎。一面田んぼや畑が広がる、控えめに言っても超がつくほどの田舎。
青々とした雑草に囲まれた道はたまにお年寄りがスクーターで走る程度。バスは2時間に一本で、時速50kmで走れば1時間後にはちょうど50kmの場所に着く。
まさに田舎の中の田舎。
そんな自然豊かな郷の砂利道には、横並びで歩く三つの影が。
「あー暇だなー。姉ちゃんなにか暇つぶせるものない?」
頭の後ろで腕を組みながら気だるそうに呟く赤髪の少女。名前は
「何かって言われても、何もないわよ」
夏海の問いにそう返すのは茶髪のロングヘアーの少女。名を越谷
そして最後の一人、銀色の長髪をツインテールにした少女。名前は
感情を一切悟らせないポーカーフェイスを浮かべたれんげは、突如ビシッと右手を上げ
「駄菓子屋! 駄菓子屋に行くのはどうでしょうか!」
「駄菓子屋かぁ……まーこのままぼぅっとしてるよりはマシかー」
「喉も渇いてきたし、ちょうどいいんじゃない?」
「ウチ、ラムネ飲みたいん!」
満場一致、三人はこの田舎唯一の駄菓子屋へと向けて足を進める。
駄弁りつつ歩みを進めるれんげ達だが、しばらく歩いたところでぴたりと、なぜか三人の足が止まった。
彼女達の視線の先、そこにはレンガ造りの小洒落た建物が。
「れんちょん、姉ちゃん。こんな建物あったっけ?」
「ウチの記憶にはございませんのん」
「見たことないけど……ここにあったのって確か……」
首をかしげる夏海とれんげとは異なり、なにかひっかかってるのか顎に手を当てて眉間にシワを寄せる小鞠。
しかしすぐに思い出したらしく、パンと手を叩き
「あー思い出した思い出した!」
「姉ちゃんなにか知ってんの?」
「夏海覚えてないの? ここにあった家、確か──」
説明を始めた小鞠の説明を遮るように、件の建物の扉が開き中から一人の男性が姿を現す。
年は20過ぎくらいだろうか。身長は170ちょっとで、肩下まである黒髪を後ろで一纏めにした、人当たりの良い笑顔を携えた男性だ。
扉を閉め、小鞠、夏海、れんげの順に視線を移した男性は、懐かしいものを見たような笑みを浮かべ静かに口を開く。
「いやぁ、久しぶりだね小鞠ちゃんに夏海ちゃん」
ひらひらと手を振りながられんげ達の元へと歩み寄る男性。そんな彼に夏海はポカーンとし、れんげはじっとその顔を見つめ、小鞠はやはりか、といった表情を浮かべる。
挨拶をしたのに返事が返ってこないことに首を傾げるも、ああ、と納得の表情を浮かべ再び口を開く。
「まぁわからないのも無理ないか。かれこれ6年ぶりだからねぇ」
「え? え? 姉ちゃん、知り合い?」
「あーさすがに夏海は覚えてないか。私もほとんどうろ覚えだったし」
未だ状況が理解できていない夏海に小鞠はうんうんと頷き、視線を男性へ移し
「この人は
「んん〜……ダメだ、まったく思い出せん」
「ははっ、まぁ仕方ないさ。あの頃は夏海ちゃんも幼かったからね」
どうやら何一つ覚えていないらしい。首をひねる夏海に、くつくつと笑いを零す公樹と呼ばれた男性。
そして視線をれんげへと移すと、膝を曲げ目線の高さを合わせる。
「君は初めましてだったよね。笹山 公樹です。よろしくね、れんげちゃん」
「初対面でウチの名前を当てるとは……まさかお兄さん、エスパーなのん?」
「残念だけどエスパーではないなぁ。ただ時折、君の話を友人から聞いていたからね」
立ち上がり、三人を見下ろす公樹。そんな彼へ今度は夏海が質問をする。
「それで笹山、さん? この家っていったいなんすか?」
「公樹でいいよ。えぇと、そうだねぇ……」
田舎では珍しい、というか見たことのないレンガ造りの家。それを指差しながら質問すると、公樹は家を一瞥。
そして笑みを深め、一言。
「喫茶店、かな?」
「「喫茶店⁉︎」
「きっさてんなのん?」
☆★☆★☆★☆
レンガ造りの喫茶店。公樹の話によると元の一軒家を改装、一階部分を喫茶店にしたらしい。
内装はカウンターに椅子が6席、そして木製の丸テーブルが3つと広くもなく狭くもないといった感じだ。
「へー、これが喫茶店かぁ」
「な、なんか緊張してきた……」
「すごいん! 家の中なのに家じゃないのん!」
三者三様、各々初めての喫茶店に反応を示す。するとカウンターの奥にある厨房、暖簾で遮られたそこから公樹が姿を現した。
その手には三つのグラスが乗せられたお盆があり、カウンター席に座る3人へそれらを差し出す。
目の前に置かれた黄色を帯びたグラス。水面には輪切りにしたレモンが浮かび、ストローの横にはミントが添えられている。
夏海たちはそれをじっと、まるで得体の知れない何かを見るような目で見つめる。
「ああ、それはレモネードだよ。ちょっとミントが多いかもしれないけど、味は保証するよ」
「これが、レモネード……」
「は、初めて飲むわ……」
初めて見るレモネードに目を丸くする夏海と小鞠。そんな二人を他所にれんげはグラスを手に取り、一気に半分ほど飲み干す。
そして静かにグラスを置き、
「酸っぱすぎず甘すぎない味、さらに後に残るミントのさっぱりとした爽やかさ。さらにはウチの喉をいじめる炭酸のシュワシュワ……完璧なのん」
「ちょ、れんちょん、どこで鍛えたのその食レポ」
「うわっ、ほんとだ美味しい!」
れんげの食レポ?にツッコミを入れる夏海。その隣ではレモネードを飲んだ小鞠が満面の笑みを浮かべていた。
出遅れて夏海もストローに口をつけ、一気に中身を吸い上げる。
「うぉ、美味っ! なんていうか、こう、すーっとする!」
「このところ暑くなってきただろう? さっぱりすっきりしたいと思ってね」
美味しそうにレモネードを飲む3人。公樹にとってその姿はとても微笑ましく、また嬉しくもあった。飲み物とはいえ、出したものが美味しいと言われるのは嬉しいのだ。
出したレモネードは1分と経たず飲み干され、れんげ達はほっと、満足げに息を吐く。
「美味しかったのん。もう一杯飲みたいん」
「だよねー。ウチ、あと3杯はいけるね」
「ちょっとさすがにそれは図々しいわよ。それに私たちお金あんまり持ってないんだから」
田舎暮らしの小鞠達にとって、駄菓子屋で買うお菓子すら貴重な買い物なのだ。それが喫茶店となればどれほど値段がかかるのか、小鞠は想像して顔を青ざめさせる。
「ああ、お代の方は払わなくて結構だよ」
その言葉に小鞠は「えっ?」と目を丸くさせる。
「実を言うとまだ開店はしていなくてね。店を開いてないのにお金なんて取れないだろう?」
「おぉ! お兄さん太っ腹!」
「お代の代わりと言っちゃなんだけど、お家の人とかに告知してくれるかい? さすがに僕一人でゼロからお客を集めるのは苦労するからね」
「よゆーよゆー! 母ちゃんあたり言えば一気に広まるって!」
「ウチも、ねえねえに言ってみるん」
満面の笑みを浮かべる夏海と、ストローで輪切りレモンを吸い上げるれんげ。
二人の返答に満足げに頷くと、それぞれのグラスを回収する。
☆★☆★☆★☆
「ごちになりました!」
「美味しかったです!」
「また来るのん!」
「お粗末様、またのご来店を」
手を振り公樹の元を去る3人。その姿が小さくなるまで見送ると、公樹は家へと視線を向ける。
田んぼに囲まれた田舎には少し不似合いなレンガ造りの喫茶店。しかし公樹の口元には依然として笑みが。
「……さて、これから頑張らなくちゃな」
地元だからこそわかるこの場所の田舎度合い。喫茶店を作ったところで客などそうそう来ないことも承知済みだ。それでも、笹山 公樹はこの地に喫茶店を作ることを選んだ。
それはこの場所が彼にとってとても大切な場所であり
──本当に、行くんだな
──大丈夫だよ、また戻ってくるから
遠い日、この地を離れる際に交わした、彼女との約束を果たすためでもあるからだ。
この日、とある田舎に小さな小さな喫茶店ができた。
流れゆく日常に加えられた新たなピースは、これからどんな物語を広げていくのか。
それはきっと、神様にしかわからないこと。
ただ一つ、わかることがあるとすれば
──それは儚くも尊く、優しい物語であるということだ。
いかがだったでしょうか?
原作よりも早めに始めてますので、蛍さんは出てきていません。
蛍さんファンの方々はしばらくお待ちください!
ではアドバイス等お待ちしております!