もしも楽の兄貴がニセコイ生活を送っていたならば 作:孤独なバカ
「……疲れた。」
「あんた大丈夫なの?朝からずっとその調子だけど」
「おう。大丈夫、大丈夫。」
「全然そうとは見えないんだけど…」
というのも昨日は日直の後バイトでトラブルがあり、対応に取られているとまた他の仕事を押し付けられるという最悪の出来事にあったのだ。
「体だけは丈夫だから。」
「……へばっているようにしか見えないんだけど。」
「……正直眠いんだよ。昨日ほぼ放課後からずっとバイトだったから。」
「そういえばあんた昨日どこにいたのよ。クロードが見失ったって言ってたわよ。」
「まぁ、バイトだよ。ちょっと久しぶりに依頼が入ったからな。」
昨日久しぶりに依頼が入ったのだ。
「依頼?」
「まぁ、注文みたいなもんだよ。」
「……危ないことじゃないんでしょうね。」
「家の抗争とかじゃないから大丈夫だ。」
「そう。ならいいんだけど…危険なことはやめてよね。」
「……お前どうした?」
あの蔵に隠された時から桐崎の態度がおかしい。
なんかしおらしくなったというか、遠慮しがちというか
なんか急に女の子らしくなった
だからと言って明るい性格なのは変わってない
他の人には明るく元気な性格の桐崎だ
でも何でか昨日今日とかなり距離を感じる。
「……別になんにも。」
「……」
聞かない方がいいってことか
「はぁ。まぁいいけど。」
「桐崎さん。ちょっといいかしら?」
すると宮本がここに来る
「あれ?宮本さんどうしたの?」
「実は今週末、他校の女子水泳部と練習試合するんだけど……うちの水泳部弱小でね人数が少し足りないの。だから桐崎さん運動得意だから代わりに出て欲しいの。」
「……えっ?」
「あ〜。こっちではよくあるんだよ。特にうちみたいに実績のない学校ではな。俺もよく陸上部と男子水泳部から練習試合出てくれって頼まれる。」
正規の部員ではないが俺はこういった運動部に誘われることが多々ある。まぁ、実際のところ桐崎とデートに行かない週末はバイトか運動部の練習試合に呼ばれ参加していることが多い。
「そういや、あなたも一条くんとは違って運動神経もよかったわね。」
「まぁ、そうだけど……なんか褒められる気がしねぇ。」
俺はため息をつく
「そんでどうするんだ?やるのか?」
「えっ?でも今週末ってデートが……」
「別に他の日にずらしてもいいだろ。今週は昨日働いたおかげで休みだから。」
「……そういえば、あなたバイトしてるってなんのバイトしてるの?中学校の時も三年からよくバイトしてるって言ってたけど。」
あぁ、そういえば内緒にしてたんだったか
「父さんの知り合いに俺とタメの女子がいるんだよ。そいつがちょっと頭が悪すぎて家庭教師を少しばかり……」
「…そういえば、あなた学年主席だったわね。……それで時給いくらなの?」
「……1万3千円」
「「えっ?」」
二人は驚くが
「……九州新幹線で福岡まで行かないといけないんだよ。しかも俺がいなかったら家庭科以外何もできないし、……ちょっと真面目に将来が心配になるくらいマズイ。」
「もしかして昨日って。」
「教えに言ってたんだよ。なんか土日が両方用事があるって言ってたから、勉強を教えに行って、なんやかんやいろいろあって帰る頃にはもう10時回ってたから自家用ジェットに乗せられて東京まで。」
「もういいわ。聞いてる私がおかしくなりそうだから。」
「そうしてくれるとありがたい。」
本当なんであんな真似したのか分からないがその後はパトカーに乗って家まで返されたんだよな。
「だから行ってこい。どうせデートなんていつでもできるだろ。それに運動好きって言ってただろ。好きなことならやってこい。」
「……そうね。じゃあやろうかな?」
「夕貴くんも一応大会には来てくれると嬉しいんだけど。本当は今聞こうと思ったのだけども…」
「……悪い。眠い。」
「えぇ。だから大会の時聞くわ。」
「……ごめん。今日はもう帰って寝る。大会っていつ?」
「明日よ。多分一条くんも来ることになるから。」
なんで楽がと聞きたくなったが眠気がすごいので今日はやめとこう
「……分かった。じゃあな。二人とも。」
「うん。また明日。」
「えぇ。」
と二人と別れる。とりあえず帰って寝るか。
「…本当最低ね。あのもやし。」
楽が水着に着替えてるのを待っていると桐崎が俺の方を見て言う。
「……第一声がそれって昨日何があったんだよ。」
昨日俺が晩飯を食うために起きたら疲れてぐったりしていた。
どうやら桐崎と宮本に殴られたらしいが理由を頑に話そうとはしなかった。
「てか、楽は小野寺に水泳を教えてたのになんで殴られる羽目になったんだよ。」
「……覗きよ。もやしが言うには女子更衣室の鍵をどうやらペンダントが開くか確かめようとしたんだって。」
「……ペンダント?」
確か10年前の約束のペンダントだよな。なんでそんなもんが
「ねぇ。あのペンダント何なの?あのもやしはかなり大切にしてるみたいだけど。」
「10年前に旅行に行ったんだよ。その時にあった女の子と再開のためにらしいが詳しくは知らない。」
「……そう。あんたにもやしが隠し事するなんて珍しいわね。」
「そんだけ、その約束が大事なんだろ。……それに俺にとってはあまり思い出したい思い出じゃねーからな。気を使ってくれてるんだろ。」
「……そういえば、あんたの初恋ってその時だったわね。」
「ってこと。でもあいつはあのペンダントのことになると見境無くなるんだよ。とてもいい思い出なんだろ。」
生憎俺にとっては嫌な思い出だけども
「だから、女子更衣室の件については俺からも謝る。ただ許してやってくれ……。それに」
「それに?」
「あのヘタレがなんかするはずがない。」
そんな行動力があるならば小野寺とくっついているはずだしな、
「なんか、それを言われると確かにそう言う気がするわね。」
すると宮本が更衣室から出て来る
「おっ!宮本おはよう。」
「宮本さんおはよ〜。」
「おはよう。夕貴くんと桐崎さん。……確かに一条くんにそんな行動力あるはずないわ。」
「だろ。」
宮本も同感らしく笑う。
「桐崎さんもうそろそろ始まるから。」
「うん分かった。」
「って準備運動だけはやっておけよ。お前全力出したらトップも狙えるし、それに足つって溺れたらシャレになんねえから。」
「分かった。」
「頑張れよ。」
「うん。」
と言って去っていく桐崎。あいつ本当に怖いくらいに素直だな
「そういや、俺に話あるんだろ?」
「えぇ。あなた春のこと知ってるかしら?」
「…確か小野寺の妹だったよな?去年のうちの文化祭で迷子になってた。」
「えぇ。……去年のお礼がしたいって言ってたんだけど……」
「……」
俺は少しため息をつく。
「……悪い。やっぱり無理そう。最近ちょっと桐崎関係でメガネが動き始めたらしい。」
「……それって。」
「ヒットマンがアメリカで一人消息が消えたらしい。俺のバイト先の親父に協力を頼んで世界中のヒットマンから守って貰ってるんだけど、最重視されていたヒットマンの一人がどうやら日本に渡ってきたと連絡があった。」
「……そう。あなたも大変ね。」
「まぁな。てか、ようヤクザの息子って聞いてもあの家庭は驚かないよな。小野寺とはいい、小野寺の妹とはいい。宮本でさえ最初は警戒心出してたのに。」
それが普通なのにあの二人はなんか妙に調子が狂うっていうか
「……まぁ。でも考えておくよ。それか帰省してから小野寺に連絡先渡して貰えって伝えておけ。さすがにあいつの妹だし悪さはしないだろうしな。」
「わかったわ。」
「そういや、桐崎には伝えるなよ。ヒットマンの件。あいつかなり演技下手だから家で不審な動きされると対処が面倒臭いことになるから。」
「でも、これって私に話してもよかったの?」
「……あのメンバーの中でお前以外に話して大丈夫なやついると思うか?」
「いないわね。」
「そう言うわけ。」
するとバーンと開始の合図の音が聞こえる
桐崎はかなり早めのスピードで泳ぐ。
「……桐崎相変わらず早いな。」
「おう。楽。まぁ、結構冗談で言ったんだけど…本当に一位取れると思うな。あのベースのまま持てば。」
「えぇ。そうね。相変わらず早いわ。」
金髪でかなり早いのでかなり目立っているな。あいつ。でも
「……早い桐崎も目立つけど……ビート板の小野寺もすごく目立つな。」
「えぇ、本当に。」
なぜかビート板で参加している小野寺もかなり目立っていた。
「わりー宮本。小野寺一日で泳げるようにならなかった。」
「……アホ。楽一日程度で泳げるようになるようになるようになる訳ないだろ。宮本がいった泳げるようになるっていうのは試合に出れるようになるくらいってわけだろ?てかカナヅチなのかあいつ。」
「兄貴も知らなかったのか?」
「知るかよ。体育は男女別で別れてたし。」
中学校からずっと同じクラスだった小野寺と宮本は楽より付き合いが長い
「でも、あいつ死ぬほど不器用だから溺れる可能性はまだないとは言い切れないけど…」
「そうね。」
「えっ?」
「てか桐崎もう一着確定だな。結局ペースダウンしなかったし俺と宮本以外あいつに勝てないんじゃねーか?」
タイムも水泳部員とあまり変わらないし、俺と宮本のタイムより10秒も変わらない。俺と宮本は同じくらいのタイムなので結果的に化物並みのタイムだ。
「あなたも十分化物よ。」
「心読むなよ。」
苦笑してしまう。そして見守る。
そして誰も怪我なく水泳部の練習試合は終わった。