砲流改虎は仮面ライダーである   作:シュワルツシルト半径

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槍太、実は天才物理学者どころか物理学者ではない疑惑が浮上したので初投稿じゃないです。

今回もギャグ回です。本当です。


第八話「ハザードはすぐそこに」

 

深夜の研究所。

槍太は一人パソコンを操作していた。

何故彼がここに居るのか。答えは簡単。ハッキングしたのだ。

槍太にとって、大赦のセキュリティなどそう問題ではなかった。

 

遠足も間近に迫っているが、その顔に喜びはなかった。

むしろ、険しい表情をしている。

 

「……ようやく出来た」

 

データが入力され、様々な装飾が施された銃身の様なガジェット。

ハザードバレル。

それがガジェットの名前だった。

 

『ほう、強化アイテムか。面白いな』

 

「………アンタレス、何の用だ」

 

槍太の身体から、何かがうごめいて出てくる。

液状の、アメーバの様な姿から、槍太の姿となるアンタレス。

 

「だが……無駄だ。どれだけ強くなろうと、俺達には絶対勝てない」

 

「…そうだな」

 

「なら何故抗おうとする?」

 

「諦めが悪いんだよ、人間ってのは。……お前らには、分かんないだろうけど」

 

「やはり人間の思考は理解できん。ああ、それと一応伝えておく………もうすぐ、侵攻が始まる。……気を付けろよ

 

「あ?」

 

アメーバ状へ戻り、槍太の身体へと入っていく。

槍太はハザードバレルを手に持ち、研究所を去ろうとするが――――

 

「やっぱり居た」

 

ドアの前に安芸が立っていた。

驚いた表情をした後、頭を下げる槍太。

 

「うわー、ついに見っかった!ごめん安芸!どうか許し―――」

 

「その手に持ってるモノを渡して」

 

「え?これを?………何だよ、羨ましいのか?」

 

「いいからっ!……早く渡して」

 

語勢を強める安芸。

 

「生憎、コイツは俺の強化アイテムだ。折角創ったってのに、渡せるわけねぇだろ」

 

「……以前貴方の身体を検査した時、身体に『穢れ』が溜まっていたの」

 

「な、なんだよいきなり。……んなモン、ボトル使ってたら溜まるに決まってんだろ。大丈夫、ちゃんと身体は浄めてるからさ」

 

「問題はそこじゃない。その数値が異常だったのよ。それも、命の危険があるレベルで。そして、そのアイテムは――――――――」

 

「貴方の、その中に居る存在を、活性化させる。穢れの異常数値も、その存在の影響よね?」

 

もう誤魔化せないな、と思い、諦めの表情を浮かべる槍太。

 

「………………はぁ、もうそこまで調べてたとはな。正直、驚いたよ。確かに、お前の言う通りだ。この『ハザードバレル』は、俺の中に居る存在__『アンタレス』って言うんだけどな。ソイツを活性化させる。………けど、それがどうした?アイツらはまだ年端もいかねぇってのに、戦ってるんだぞ?アイツらが少しでも楽になるなら、俺が犠牲になろうと―――――」

 

「バカ言わないでよッ!」

 

安芸が叫ぶ。

 

「あ?」

 

「そう簡単に自分を犠牲にしないでよ!貴方の代わりはどこにもいないの。貴方が消えたら、どれだけの人が悲しむと思ってるの!?」

 

「っ……」

 

「……確かに、私だって鷲尾さん達を戦わせるのには抵抗があるわ。何で私達大人じゃなくて、あの娘達なんだろう、って。でも、――――――」

 

「貴方達が力を合わせれば、どんな困難にも打ち克つ事が出来るって、1+1+1+1を4じゃなくて10にも、100にも出来るって、私は信じてるから」

 

「……………」

 

「……持って行きなさい、ソレ」

 

「え?」

 

「それを回収するのは諦めたわ。…………貴方の覚悟を無駄にする事なんて、出来ないから」

 

「ホントに、いいのかよ…?」

 

「ええ、今回は目を瞑ってあげる。でも、絶対無理はしないで。……自意識過剰な正義のヒーロー気取りの自称天才物理学者さん」

 

「安芸……へっ、最高だ!」

 

顔をくしゃっとさせながら、研究所を走り去る槍太。

 

「私も、甘くなっちゃったなぁ……」

 

 

遠足当日。

バスの中で、槍太は音楽を聴きながら外の景色を眺めている。

目的地へ到着し、生徒が降りていく。

 

「皆ー、他の人に迷惑掛けないようにねー」

 

生徒に声を掛け、見守る槍太。

笑顔が満ち溢れている光景に、自然と槍太も笑顔になる。

 

「ラブ&ピース……か」

 

「園田先生!先生もやってみませんか?」

 

「お?お誘いか?よーし、先生本気出すからね!」

 

その後、「え、何。最近のアスレってこんな難し―――――」

という声が聞こえ、衝撃音が響いたのはいい思い出。

 

 

「…………あ、上手く出来てるね。はは……」

 

昼になり、生徒全員で焼きそばを作っている。

………のだが、空腹のあまり槍太は力尽きている。

歩くのがやっとという程だ。

 

「え、安芸先生、園田先生大丈夫なんですか?」

 

「……いつもの事です」

 

「うぅ~………」

 

ついに昼食が完成し、槍太も物凄い勢いで完食する。

その間、槍太の周りの生徒はドン引きしていた。

 

「ふう、少し食べ過ぎたかなー?……で」

 

槍太の口許がニヤリ、とする。

 

「「安芸先生、ピーマン残してない?」」

 

声が重なる銀と槍太。

考えている事は同じらしい。

顔を合わせ、思わず微笑む。

 

「苦手ならあーんしてや―――痛っ!?ちょっ悪かった、悪かったから放しイデデデデデデ!?」

 

間接技を無表情で決める安芸と、悶絶する槍太。

その二人を見て、園子が一言。

 

「安芸先生と園田先生ってカップルみたいですね~」

 

「ねぇ安芸聞いた?カップルみたイデデデデデデ!?」

 

 

夕方になり、オレンジの陽が射す。

帰りのバスの中で、槍太は今までの事を振り返っていた。

 

「トランスチームシステムを完成させたら大赦から教師になれって命令が来て、それで鷲尾さん達に出会い、三人は勇者として、俺はヴェノムリークとしてバーテックスと戦って……思えば色んな事があった。これ、小説書けそうだな」

 

バスを降り、神樹館へ安芸と向かう。

 

「あー!この後仕事あんのか!最悪だ……」

 

「前まで仕事したいしたいって言ってたのは何処の誰かしらね?」

 

「いや、それは実験しないと死ぬってだけで―――――」

 

瞬間、異変に気付く。

風のさざめきも、空飛ぶ三羽のカラスも、安芸も止まっている。

 

「………最っ悪だ。仕事もイヤだけどバーテックスはもっとイヤだっての!」

 

『SCORPION!』

 

「―――変身っ!」

 

『SCOR!SCOR!SCORPION!Fire!』

 

 

マシンビルダーに跨がり、須美達の下へ向かう。

 

「今回は二体か」

 

ハザードレベルによって上昇した視力を駆使し、侵攻してきたバーテックスを発見する。

三人も発見した様だ。

 

(まだアンタレスの言った通り、だな)

 

 

遠足の前日、自宅で寛ぐ槍太の中からアンタレスが出てくる。

それも慣れたモノで、今は驚く事もない。

 

「ん、おう。冷蔵庫ん中にコーラあるから、それ飲んでろ」

 

「お前に伝えておく事がある……明日、我々による侵攻がある」

 

「…それで?」

 

「その侵攻で…勇者の中の誰かが死ぬ、いや全滅するかもしれん」

 

「んだと!?」

 

驚愕と怒りのあまり、アンタレスの胸ぐらを掴む。

 

「おい、どういう事だよそれ!」

 

「落ち着け……飽くまで可能性の話だ。実は次侵攻してくるのは中々の手慣れでな。俺とアルタルフ―――――まあ戦闘能力をコピーしたただの人形だけどな、ソイツらが攻めてくる」

 

「……何でそんな事を俺に?」

 

「勘違いするな。俺は、人間がドコまで足掻けるか……それを知りたいだけだ」

 

それだけ言い残すと、アンタレスはアメーバ状となり、槍太の中へ入る。

槍太の頭は、意外にも冷静だった。

 

「なら俺が足掻いて……守ってみせるよ。皆を、世界を。愛と平和の為に!」

 




嘘はついてないです。
CMの後、槍太が超パワーアップ!

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