遅れてすいません。
◆
侵攻してきたバーテックスと向かい合う四人。
槍太がマスクの下でスコーピオンを睨み付けながら、いきなりこう言った。
「ねえ皆。あの尻尾がある方は俺に任せてもらえないかな?なーんかサソリっぽく見えてイヤなんだよね」
『……てめぇ嫌がらせか?おい、返事しろよ!おい!』
アンタレスの抗議を何処吹く風と聞き流す。
銀が心配そうに槍太に聴く。
「え、でも…一人で大丈夫なんですか?」
「うん、大丈夫。……だけど危なくなったら助け合いね」
顔の前で手を合わせ、頭を下げる。
スーツを着た大人が小学生に頭を下げている珍妙な光景が樹海にあった。
「あ、はい。じゃあ、気持ち悪い方は任せました!」
「どっちも気持ち悪いと思うんだ~。―――じゃあ、槍太先生は尻尾が生えてる方、私とミノさんはもう一体、わっしーは援護をお願い」
「「「了解!」」」
園子と銀はキャンサーへ、槍太はスコーピオンへと、得物を構え、それぞれの敵へと向かって行く。
援護を任せられた須美も、いつでも矢を放てる様に弓の弦を引き絞る。
「おい、あのサソリ野郎の能力教えろ」
『は?イヤに決まってんだろ。後サソリ野郎じゃなくてスコーピオンだ』
「今のでコーラ一年間禁止な」
『アイツは下のタンクに猛毒を蓄えている。それを尻尾の先にあるあのトゲに伝わらせる―――ま、あのトゲに当たったら一発アウトって事だな』
「よし、今日はコーラカブ飲みしていいぞ」
『わーい!槍太お兄さん大好きー!』
そんな漫才を繰り広げながらも、スコーピオンの攻撃を軽々と避ける槍太。
恐らく、尻尾のトゲを当てれば勝てると思っているのか、単純な攻撃しかしてこない。
超高性能センサーを備えているヴェノムリークの敵では無かった。
「これでも喰らえっ!」
トランスチームガンをライフルモードにし、スコーピオンへ数発撃ち込む。
それに加え、須美の放った矢が、スコーピオンの身体に命中する。
スコーピオンは吹っ飛び、土煙が立った。
『痛っ』
「え、ごめん」
『……いや、嘘だよ。てか余所見するな。アイツ起き上がるぞ』
「分かった。よし、鷲尾さんありがとう!」
園子と銀の方を見る。
パワー型の銀と、スピードに優れた園子。それぞれが役割を全うし、バーテックスはそれに翻弄されている。
この調子で行けば、犠牲は出さずにすむし、何よりアレを使わなくて済むかもしれない。
(ごめんな我が愛しい発明品…!お前の事は絶対忘れな________)
『!?おい槍太!ガードしろっ!』
そんな希望は、容易く打ち砕かれた。
◆
「なっ!?」
『SHIELD STEAM!』
上から豪雨の様に矢が降ってくる。
銀は斧で防御し、須美は園子の槍が変形した傘の下で待機している。
槍太はシールドスチームを発動し、矢を防ぐ。
『どうなってんだ!?こんなの聞いてねぇぞ!』
アンタレスは予測外の事態に焦っている。
何とか矢は凌げた。あの範囲と量でスコーピオンとキャンサーもダメージを受けていないとは限らない。
畳み掛けるなら今しかない!
「ぐぇっ!?」
そう考えた時には、既にスコーピオンの尾で吹き飛ばされていた。
その先は____
数瞬後、ドボンと音がする。
(みん……な)
««槍太»»は意識を手離した。
◇
「うぅ……」
倒れ伏している須美と園子。
今立っていられているのは、銀だけだ。
二人も立とうとするが、身体に激痛が走る。
そして三人の目に飛び込んできたのは_____
まるで弓の様な姿をした、三体目のバーテックス、サジタリウスだった。
「動けるのはアタシだけか………こりゃ、とるべき道は一つかな」
「ぎ、銀?何やっているの…?」
銀は二人の手を握り、抱き抱える。
そして_____
「またね」
そう言って銀は、須美と園子を、大橋の外へ放り投げた。
「ぎいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃん!!!!!」
須美の悲鳴が、樹海に木霊した。
◆
大橋の下。
変身を解除された槍太が目を覚ます。
「……ったく、あの野郎。俺に仕事丸投げしやがって……」
ぼやきながら大橋へ戻ろうとする槍太。
そこへ、須美と園子が落ちてくる。
「ア?…あぁ、えーっと、須美と園子、だっけか。おいしょ………おーい、起きろー」
陸に上げ、揺さぶってみるが、一向に起きる気配がない。
溜め息をつきながら、槍太は大橋へと歩を進める。
生徒を助けるためか、それとも―――――――
「同志とはいえ、久々に闘えるんだ。どうせ何度でも復活出来るし、潰しちまってもいいだろ?」
◇
大橋の上では、銀が二挺の斧を手に、三体のバーテックスと対峙していた。
高い防御力と攻撃力を生かし、ダメージを与えていく。
たが、相手は三体。
数では不利だ。
サジタリウスの放った矢が銀の肩を貫き、気絶しそうな激痛が身体を駆ける。
それでも倒れず、勇猛果敢に立ち向かって行く。
須美、園子、槍太、家族、友達。
銀は大切な物の為に戦っている。
それでも体力の限界というものがある。
一瞬の隙を突いてスコーピオンが尻尾の毒針を勢い良く突き刺そうとする。
(ッ!)
間一髪避けるが、続いてサジタリウスが矢を放つ。
ボロボロの斧で何とか防御するが、それをキャンサーが跳ね返す。
ついに銀を貫く――――――――
その時、紫の影が銀を守るように現れる。
『SHIELD STEAM!』
電子音声と共に半透明のバリアが張られる。
「よぉ、大丈夫か?」
「園田……先生…?」
その正体は槍太だった。
頭を撫でられる。
「てめぇ…ボロボロじゃねぇか。後は俺に任せろ」
そう言って右腕の『スコルピオスティンガー』を銀に刺し、睡眠毒を流し込む。
完全に眠ったことを確認すると、銀を安全な場所へ避難させ、バーテックスに向かい直す。
「さあ、久々に闘おうかァ!」
◆
バーテックスへと向かって行く槍太。
スコーピオンが尻尾で薙ぐが、まるで予知していたかの様に避ける。
その間にトランスチームガンをライフルモードに合体させ、尻尾の毒針を射ち、折る。
次にキャンサーの反射板を蹴り、サジタリウスにトランスチームガンを突き刺し、スコーピオンフルボトルを装填する。
『SCORPION!STEAM SHOT!SCORPION!』
必殺技を発動し、吹き飛ばす。
「どーした?もっと俺を楽しませろォ!――――グッ!?」
その時、槍太の身体に異常が生じる。
(クソッ、アイツの身体が追い付いてないのか!)
その隙を突かれ、サジタリウスの矢に晒され、ふっ飛ぶ。
勢い良く転がり、変身解除する槍太。
「はぁ~………まさか、コイツを使うことになるとはなァ……」
懐からハザードバレルを取り出し、上部のスイッチ・VLハザードスイッチを押す。
『HAZARD READY?』
トランスチームガンへ接続すると、まるで警告音のような待機音が鳴り響く。
銃口を上へ向け―――――
「変…身」
トリガーを引いた。
『SUPER MIST MATCH!』
『DANGEROUS VENOM BARREL!BLOOD HAZARD!DEMOLITION!』
「さあ、殲滅を始めようか」
ゲイツリバイブ単純に強いの好きです。