ダイの大冒険 ~白銀のダークエルフ~   作:菅野アスカ

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魔王襲来

「ふあ…」

 

あんな話を聞いてしまったせいか、昨晩はなかなか寝付けなかった。たぶん、眠れた時には、日付はとっくに変わっていただろう。

ふと窓の外を見ると、普段よりも明るい。いったいいつまで眠っていたのやら。

 

さて、今日は何をするんだっけ。今日は3日目だから…

 

「あっ!!」

 

そうだ、3日目…!どうして1番忘れちゃいけない日に限ってこういうポカをするんだ、小生(ボク)の馬鹿!!!

 

焦ってそばにあった布の服に着替え、妖精の剣をつかみ、家を飛び出した。それとほぼ同時に、地震が発生する。

 

お願いだ、間に合ってくれ…!!

 

さすがに3年もここで生活していると、原作の流れは覚えていても、絵は全く覚えていない。けれど、他の動物やモンスターたちに迷惑のかからないところにある洞窟は、そんなに多くないというのを、この3年で知った。

ならばそこを総当たりしていけば、いつかは彼らのいる洞窟に着くはず。デルムリン島はどこも似たような景色のところが多いから、ルーラで行くのは無理だ。でも、小生(ボク)の足なら間に合うはず。

 

しばらく走っていると、びりっという感覚。すさまじいエネルギーを持った存在を、最初の揺れよりも強く感じた。

そのおかげで、位置はある程度わかった。でも…

 

「どうしてよりによって、進行方向の正反対なんだ!!」

 

ピサロさんが気づかないとは思えない。きっとピサロさんも向かっているはず。どうか、小生(ボク)よりも早くついていてくれますように!!!

 

ここは「ダイの大冒険」本来の世界じゃない。だから、シナリオ通りに事が進むとは限らない。アバン先生が、ちゃんと生存するかもわからないのだ。

早く、早く…!!

 

走って走って、やっと着いた時には。

 

「あ、あ…」

 

アストロンをかけられたダイたち。

両の指をハドラーの頭に突き刺したアバン先生。

 

「ダメっ…!アバンさん、それは!!!」

「リディアさん…すみません、後は、頼みます」

 

ダメだ。いけない。

 

「メガンテ!!!」

 

爆発と、強烈な閃光。

光や砂ぼこりが止んだころには、地面には小さなクレーターができていて。

2人の姿は、なかった。

 

「先生…!」

「う、あ…」

「アバン、さん」

 

大丈夫。

原作通りなら、生きている。

…本当に?

原作の通りに進むなんて、言いきれないじゃないか。

 

「…リディア、逃げろ!」

「ピサロさん?」

 

ダイたちと一緒にアストロンをかけられていたピサロさんは、酷くボロボロで、ダイたちの弾避けになったのだと想像がついた。

 

「ハドラーは…あいつはまだ生きている!」

「「ええ!?」」

 

ダイとポップが同時に叫ぶ。

直後、地面が盛り上がり。

 

「かああああーっ!!!」

 

ハドラーが、現れた。

 

「く、くくっ…ハハハハハ!!!アバンめ、やはり衰えたわ!!!メガンテでさえ、俺にとどめを刺すには至らなかった…!」

「なんという…」

「ば、化け物っ…!」

 

…はは。強制負けイベの時のキャラクターって、こんな気持ちなのかな?

 

「それでも、相当なダメージは受けてしまったが。だが、帰還するその前に、貴様らをこの場で根絶やしにしなければな…!!」

「う…うわああああ!!!」

「ポップ、落ち着いて…君らにはアストロンが残ってる」

 

ああ、そうだ。

彼らに、手を出させてたまるものか。

 

「ハドラー。名前で察するに、元魔王のハドラーだな?」

「いかにも。そして今は大魔王バーン様に仕える、魔軍司令ハドラーだ」

 

…後半の成長したハドラーを知ってると、バーン様、って呼んでるのに違和感あるな。

ま、そんなの今はどうでもいいんだけど。

 

「彼らを殺したいというのなら」

 

妖精の剣を鞘から引き抜き、構える。

 

小生(ボク)の屍を越えていけ」

 

ぎろり、まっすぐに睨みつける。

 

「ほう?俺を前にして、ずいぶんと気丈なことだ。だが、それがいつまで持つか?」

 

ハドラーの右手の人差し指に、火炎が灯る。

 

「俺のメラは地獄の炎…相手を焼き尽くすまでは決して消えん。後ろのやつらごと焼き尽くしてくれるわ!!」

 

それはどうかな。

 

「メラゾーマ!!」

「残念…マヒャド!!!」

「何っ!?」

 

妖精の剣を杖代わりにして放たれたマヒャドは、メラゾーマを飲み込み、さらにハドラーへ。

 

「ぐっ…がああああ!!!」

「マ、マヒャドだって!?」

「ヒャド系呪文の最上位じゃ!リディアさんはあまり呪文を使わなかったが、これほどの呪文を習得していたとは…!」

 

ふらつきながらも立ち上がるハドラー。

 

「はあ、はあっ…。き、貴様っ!」

「言っただろ、小生(ボク)の屍を越えていけって」

「ならば、この拳でっ!」

 

放たれる拳をかわして、剣を振った。

 

「ぐうっ!?」

 

よし。足を狙うのは効果的みたいだ。

もう一歩踏み込んで、大上段から斬りつけようとした、その瞬間。

 

「が、あっ…!?」

 

腹に、鈍い衝撃が走った。

ゆっくりと視線を下げると、ハドラーの拳がめり込んでいた。

吹き飛ばされて、壁にたたきつけられる。

 

「リディア姉ちゃん!」

「まともに狙って当たらないのなら、攻撃してくる瞬間を狙うまでよ!手間をかけさせおって…!!」

 

まずい、立ち上がらないと。

体が言うことを聞かない。そりゃ、もろにみぞおちに入ってたしな。ついでに壁に頭打ち付けたせいか、視界もぼやけている。

足音が近づく。

 

「やめろおおおおおおおお!!!」

 

ダイの叫び声が、聞こえた。続いて、ドスッという重い音。

見ると、ダイのアストロンだけが解けていて、小生(ボク)とハドラーの間に、ダイが割り込んでいた。

 

「な…なんだ、この力はッ…!」

 

ダイに殴り飛ばされたらしいハドラーが立ち上がる。

 

「よくも…よくも、先生だけじゃなく、リディア姉ちゃんまで…!許さない!!!」

「図に乗るな、ガキっ!!!」

 

殴りかかるハドラーに、ナイフで応戦するダイ。

 

ああ、大丈夫、だ。

そう思った瞬間に、視界が暗転した。

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