☆8評価をしてくださった心戯さん、
ありがとうございます!
本日、ピサロ視点です。
「ピサロさん、本当に行くんですね?」
「ああ。昨日のでいかに自分が鈍っているかを痛感させられたからな」
「当ては、あるんですか?」
「もちろんだ。少しばかり剣の心得がある知人がいるのでな、そいつに本気の出し方を思い出させてもらう」
これは半分本当で、半分嘘だ。
先日ハドラーが襲来した際、自身の腕が落ちていること以上に、自分がどれだけ驕っていたかをも実感した。鈍った体が、自分は魔界でも指折りの剣士であるという驕りに追いつけなかった。その結果が先日の失態というわけだ。
「そういうお前も、旅支度を進めていたようだが…どこへ行く気だ?」
「いろいろ考えたんですけど、オーザムに行こうかと」
「…ずいぶん思い切ったな。何故だ?」
「何故も何も、
世のためとは、リディアらしくもない。
「意外だな、お前にそんな意思があったとは」
「あの、それどういう意味です?」
「そのままの意味だが。お前は世界というより、自分や自分に近い誰かのために動くタイプだと思っていたのだが」
「あながち間違いでもないですけどね、世界のためっていうのは建前ですし」
「ほう。なら本音は何のためだ?」
「この島の皆さんと
リディアはそう言って、けらけらと楽しげに笑う。
「ところで、ピサロさん。もうじきダイが出発するところでしょうし、見送りに行きません?それくらいの時間はあるでしょう」
「…そうだな」
××××
ダイはちょうど舟を出そうとしていたところのようで、見送りのために集まったモンスターたちに向かって手を振っていた。
「あ…リディア姉ちゃん、それにピサロさんも」
「見送りに来た。行き先はロモスか?」
「うん。パプニカの場所はわからないけど、ロモスの王様なら知ってると思うんだ」
「そうか。…気をつけていけよ」
私が話し終えると、次はリディアが進み出た。
「
そう言いつつリディアが取り出したのは、紫色の液体が入った小瓶と、手のひらに乗る程度の大きさの布の包み。
「これ、何?」
「瓶の方は、
「えっ!?で、でも俺、魔法は…」
「上手くなる日が来るかもしれないでしょ?開けなきゃそこそこ持つから、心配しないでよ」
「包みの方は?」
「…まあ、なんていうか、シャナクの効果がある使い捨ての道具みたいなもの。うっかり呪いがかかったもの装備しちゃったときとか、その包み開いて中身を素手で触ってみて。まず間違いなく解けるはずだから」
…待て、その道具というのはまさか。
そう言いかかった瞬間、リディアがこちらを向いて口に人差し指を当てた。話すな、ということらしい。
「姉ちゃん、ありがとう」
「どういたしまして。それじゃ、
「え?」
ダイが疑問を口にするのとほぼ同時に、リディアは飛んで北へ…オーザムへ向かった。
「…トベルーラか。いつの間に使えるようになったんだ」
「ピサロさんも、どっか行くの?」
「ん、ああ…知人のところへな。向こうからしたら迷惑だろうが、少し鍛え直してもらってくる」
偏屈が服を着て歩いているような男だが、自分の打った剣の持ち主がここまで鈍っているとなれば、進んで協力してくる…と言うより、多少無理にでも叩き直そうとしてくるだろう。
「では、行ってくる。達者でな」
それだけ言い、私は、私が知っている中では最強格の男の現在の住処を思い浮かべ、ルーラを使った。