ダイの大冒険 ~白銀のダークエルフ~   作:菅野アスカ

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☆2評価をしてくださったdopadopaさん、
ありがとうございます!

複数人が同時に話しているのは『』で表記します。


北の国での出会い

「ヒャダインっ!!」

『ギャアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

襲い掛かってきたフレイム4体を、まとめてヒャダインで倒す。

 

「ああっ!フレイムABCDー!!!」

「貴様、よくもっ…!!行くぞブリザードB!!」

「おうよ!!ルカナン!!」

 

ブリザードの片方がルカナンを放つ。でも、たいして気にしないで、もう一度妖精の剣を杖代わりにして、今度は別の呪文を唱える。

 

「マヌーサ!!」

「何っ!?」

「ふん、この程度ならザラキで…」

「先手必勝、ザラキ!!」

「なんだと!?」

 

かのサマルトリアの王子の必殺技、マヌーサザラキ。

マヌーサは視覚、ひいては神経系に影響を及ぼす呪文。「死の言葉」を投げかけるものであるこの世界のザラキとは相性がいいのではないかと思ったのだが、どうやら当たっていたようだ。

 

「テメエ、何者だ!!」

 

そう叫ぶのは、フレイザード。

 

「ただの通りすがりですよお」

「嘘つけ!!!そう簡単に賢者が通りすがってたまるかよ!!!」

 

まあ、そうだよね。

 

「き、君!危ないから、早くここから…」

「逃げろ、と?それはこちらのセリフです」

「しかし、私たちはこの国の騎士だ!!見ず知らずの女性に丸投げするわけには…」

「あなた方がいなくなったら、誰がこの国を復興させるんですか。いいからさっさと一般の方の避難と救助を。騎士団壊滅とよそ者の死、どちらが重いかくらいわかるでしょう」

 

そういうと、騎士だという2人ははっと思い出したように町へ向かう。

 

「さて、これ以上被害が出る前に終わらせてしまわなくては」

「調子乗ってんじゃねえぞ、このアマ!!」

 

フレイザードは叫んで、両腕を大きく広げる構えをとる。

 

「氷炎爆花散!!!」

「マジックバリア!!」

 

フレイザードの体の炎と氷が魔法的な熱量であれば、軽減できる可能性もあるが…果たして。

 

「っ、ぐ、あっ!!」

 

無理だったこれ絶対軽減なんかされてないやっぱりこれ特技扱いか。

 

「スカラ!!!」

 

さっきルカナン食らってるから、どこまで効くかはわからないけど…!

 

「そらそらそら!!さっきまでの威勢はどうした!!」

「うるさいなあ…ドルモーア!」

 

ヒャド系は、氷の体を強化してしまうから不可。禁呪法生命体のこいつに、ザラキが効くかどうかは微妙。なら、小生(ボク)が使うべきは、ドルマ系。

 

「ギャアッ!?」

 

即座に元に戻るフレイザード。

 

「やるじゃねえか…だったらこいつはどうだ!!」

 

そう言って、フレイザードはぎゅっと手を握りこむ。…来るか!

 

「ふ、フレイザード様!!ただいま、悪魔の目玉から伝令が…!」

「何!?」

「新たなる勇者の少年が誕生し、クロコダイン様を撃破したため、全軍団長は直ちに鬼眼城へ集結せよと…!!」

「チィッ…引き上げるぞ!!」

「は、はいっ!」

 

ここで討たれる可能性を考えたか、はたまた小生(ボク)よりもダイの対処のほうが先だと考えたか。

どちらにせよ、いいタイミングで来れたものだ。

 

 

××××

 

 

「あの、先ほどはありがとうございました…!」

「いえいえ、自分にできることをやったまでですから」

 

怪我人…と言うか生存者を集めて、自分も魔法力を回復しつつ回復し続けること数時間。どうにか全員を治療することができた。

なお、場所は他の建物より崩壊具合が比較的ましな王宮の武器庫である。

 

本当にナイスタイミングでやってこれたようで、王宮勤めの女官だという女性の活躍により、まだ幼い王子が生存。小生(ボク)がフレイザード率いる本隊を引き付けている間に近衛隊の皆様が粘ってくれたおかげで、自ら前線に出た国王は残念だったが、王妃と成人済みの王女が生き延びた。

 

「お父様のことは、本当に悔やんでも悔やみきれません。けれど、貴女様がいらっしゃらなかったら、きっと私たちは…。心から感謝申し上げます。もうなんとお礼を申していいやら…」

「え、あ、あの、王女殿下、どうか頭を上げてください!」

 

でも、彼女の言っていることは本当。あの時、フレイザードが「フレイムとブリザードによる数の暴力でも押し切れない、ここに全員残していったら氷炎魔団が壊滅する」と判断してくれなかったら…。考えるだけでもぞっとする。こう言うときばかりは、彼の冷静な判断力に感謝しよう。

 

ハドラーとの戦いから、今日で1週間と少し。

あの後、小生(ボク)が魚釣りとかに使ってるボートで海に漕ぎ出して、どうにか漂っていたアバン先生を回収。どうしてここにと驚かれたけれど、1人になりたかったんだとかいろいろ言ってごまかした。あの顔は絶対信じてもらえてなかったけど、笑顔の圧で押し切った。

 

ボートは、ルーラ使う魔法力の節約ということでアバン先生に渡して、家に帰って自分には何ができるのかを考えた。

たぶん、ブラスさんの護衛とかでデルムリン島に引きこもってても、あまりいいことはない。けれどダイたちに同行していたら、ダイたちの成長を阻害してしまうかもしれない。

だったらどうすれば…とほぼ一晩中考えて、たどり着いた答えは「原作で大きく描写されていなかったところで地道に貢献する」と言う物だった。

どうにか王族が生き延びていたり、そうでなくとも指導者ポジションの人物が生存している他国と違い、オーザムは皆殺しにされてしまっている。ならば、少しだけでも被害を減らして、復興できるようにと思ったわけだ。

…ただ、来るのに6日かかってしまったけど。途中で海に落ちるとかいうポカやらかさなかったら、もう少し早く来れたはずなのに。やっぱり馬鹿正直に北へ行かずに、南から向かうべきだったか…

 

「そういえば、あなたはどうしてここに…?」

「できることをしたかっただけですよ。お気になさらず」

 

騎士団の皆様の指示がよかったようで、多くの国民が生き残っている。これなら、復興も早そうだ。

それでも多くの人が犠牲になってしまったな、と少しばかり落ち込んでいると、不意に、武器庫の隅が騒がしくなった。

 

「放せ、放してくれ!!」

「ええいうるさい!!自殺志願者をそう簡単に開放できるか!!」

「親父もおふくろも兄さんも殺されたんだ!!!死なせてくれよ!!!」

「何の騒ぎです、これは」

「お、王女殿下…!すみません、我らの隊の者が!!」

 

あれは…近衛隊長さんじゃないな。じゃあ暴れてるのは別の隊の人か。

騒ぎをほっとく気にはなれないし、言ってる内容がないようだし、ちょっと話しに行くか。

 

「あの」

「なんだよ!?」

 

鮮やかなスミレ色の目が、小生(ボク)の目をとらえた。

 

「…すみません」

 

軽く頭を下げる。彼が驚いているすきに、小生(ボク)はぎゅっとこぶしを握って。

思いっきり、彼を殴り飛ばした。

 

どこぞのドラゴンでボールな漫画みたいに、えらい勢いで吹っ飛ぶ青年。

 

「いってえ!!何すんだ!!」

「死んじゃったら、痛いとも思えないんですよ」

 

驚いたように目を見張る彼に、続けて言う。

 

「死ぬのが親孝行ですか?」

「え…」

「生きたかった人がたくさん死んだのに、死にたいんですか?」

「それ、は」

「死んだ人の思いはその人だけのものだから、こんなこと言うのは憚れますけど。あなたが死んで、それでご両親は満足するんですか?」

「あ、アンタに何がわかるんだ!!」

「分かりません。でも、自殺を推奨はしません。死ぬしか逃げ道がないほど追い詰められているならまだしも、あなたはそうじゃない。生きていればいろんなことがある。死に急ぐ必要はないと思いますがね」

 

青年は黙り込み、うつむいてしまった。短く切った、赤みがかった金髪だけが見える。

 

「あなた、いくつですか」

「…19」

「なんだ、小生(ボク)と大して変わらないじゃないですか。だったら、まだまだ先がありますよ。…ウン十年を棒に振るより、他でもないあなた自身のために、生きた方がよほど有意義じゃないでしょうか」

「…なんで」

「?」

「なんで、兄さんと同じこと言うんだよ…!!!」

 

泣き出してしまった青年の背を、同じ隊らしき人がそっとさすった。

 

 

××××

 

 

 

「うちの隊の者がとんだご迷惑を…」

「大丈夫です、小生(ボク)の方から首突っ込んだだけなので」

「本当に申し訳のうございます。あれは町の警備に当たっていた者でして、住民の誘導を最優先に行っておりましたから…」

 

…ああ、そう言うこと。だいたい察した。誘導した中に、お兄さんかご両親がいたんだな…

 

「彼、町を警備していたんですか?あれだけ出来るなら門番でも十分やっていけそうに見えましたが…」

「わかりますか」

 

さっき殴り飛ばした時、しっかり受け身が取れていたし、治療した時に体を見たが(爆弾岩相手に距離を取り損ねたとかで大やけどを負っていた)、上半身…特に、利き腕らしい右腕と、背中側の筋肉がかなり鍛えられていた。おそらく、彼は弓が得意なんだろう。装備を外していたから、推測でしかないが。

 

「実力としては、王宮を警備させても差支えないほどなのですよ。ですが…その、若輩者ですからね。少々熱くなりすぎるところがありまして、落ち着くまではと」

「ああ…」

 

確かにさっきめちゃくちゃ熱くなってたな。

 

「いやしかし、あれほどまでに魔王軍が強力だとは思いませんでした。この厳しい環境で生活している分、他国に引けを取らない実力を持っていると自負しておったのですが…鍛え直す必要がありそうですわい」

 

苦笑して言う隊長さん。

でも確かに、ここの兵は強い。ただちょっと、今回は相手が悪かった。耐久力こそ低いが炎を吐きまくるフレイムに、ルカナンとザラキ、場合によってはスクルトを連発するブリザード。攻撃力がそこそこ高いしやっぱり炎を吐く溶岩魔人、耐久お化けでたまに甘い息吐いて眠らせてくる氷河魔人、自分の命なんぞ知らんと言わんばかりにメガンテしてくる爆弾岩。そして頭は、残忍だが冷静で、しかもメラゾーマ5連発とかいうチート使いのフレイザードだ。これに勝てという方が酷だろう。

 

「おーい!こっちへ来てくれ!!」

「む…どうした?」

 

別の隊らしき人が、走ってきた。

 

「今、リンガイアからの援軍が来て…」

「何と、今か!?」

「ああ。それで、支援物資も持ってきてくれたんだ。これで少しはこの状況もマシになるぞ!」

「おお、それはありがたい!皆の傷が癒えたとはいえ、物資はいくらあっても足りないほど不足しているからな…」

 

…援軍。リンガイアから?

あ、そうか。彼か。

 

隊長さんたちについていくと、そこにいたのは案の定。

 

「ああ、いらっしゃいました。ノヴァ殿、あちらの方ですよ!」

 

青っぽい銀髪、青と白を基調とした装備。

「北の勇者」、ノヴァだった。

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