ハリー・ポッターと慈愛のアイアン・メイデン   作:グラオザーム

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賢者の石編に入ります!




賢者の石編
お買い物


あの復讐の夜から数日が経ち、家が無いマーゴット達はその間“漏れ鍋”という魔法使いの宿に泊まっていた。その宿は非魔法使い(マグル)界と魔法界の出入り口になっているらしい。

 

修道会はローズベルト総長の死から今までの悪事が次々に露呈され、事実上の崩壊となった。二人は数日間、修道院崩壊に伴い修練女として働く“犯罪者の子”らの社会復帰に携わっていた。本来の計画では修道院はそのままで制度のみを変え、二人は総長として経営していくつもりだった。が、魔法の出現のせいで仕方なくその案は廃棄されてしまった━━魔法が無ければローズベルトを殺す事は困難を極めたので結果オーライなのだが━━

 

よって二人は為すべき事をやった後、ホグワーツ魔法魔術学校の入学に向けて今日から準備を進めていくのだ。

今日は朝から“ダイアゴン横丁”なる所で必需品リストを潰していく為買い物をするらしい。

二人では分からないという事なので、学校の方から一人教師を寄越す様だ。

二人は修道院に居た時と同じ様に修道服に身を包み、十字架の首飾りを掛けた。

 

準備が丁度整った時、二人が泊まっている部屋のドアが叩かれる。

老人が寄越した教師が来たのだろうと、ドアを開けた。

そこには、真っ黒な服に身を包んだ仏頂面の男が立っていた。男は、二人がまさか修道服を着ているとは思わなかったのか少し驚いた様に目を開いたが、直ぐに元の顔に戻った。

 

「我輩はホグワーツ魔法魔術学校のセブルス・スネイプだ。魔法薬学を教えている」

 

「あら、魔法使いの典型の様な殿方ですわね」

 

「修道院の書斎で読んだ“中世の魔法使い”のイメージにそっくりですわ」

 

スネイプは二人の失礼な態度に眉を寄せた。

機嫌を損ねたことを察したの二人は慌てて訂正する。

 

「ごめんなさい、馬鹿にした訳では無かったのです。私、魔法薬学にはとても興味がありますのよ。名はカーラ・クラウストルムです」

 

「私はマーゴット・クラウストルムですわ」

 

「……そうか、では出発する」

 

スネイプは淡々とした口調で続けると、二人に背を向け歩き出した。二人はその後に続く。

黒ずくめの男と二人の修道女の行列という、極めて奇妙な光景が繰り広げられたのだった。

 

 

 

 

 

 

ダイアゴン横丁へと足を踏み入れたマーゴット達は、沢山の人々と店に唖然とした。

スネイプは呆けている二人の足を軽く踏んで前を向かせると、話し出した。

 

「まずは銀行へ向かう。金が無いと何も出来んからな」

 

「あら?でも私達、お金など持っていませんわ」

 

「それは心配無い。お前達は今日から校長の金庫を使えと校長直々の仰せだ」

 

マーゴット達はお金を持っていなかった。それは修道女の教えである()()()()()()()()()()()()()()()()()()事に起因していた。それに加え二人は孤児の為身寄りも無く、家族の財産もあてにならなかった。

よって二人を保護した校長自ら、二人の金の面倒を見る事になったのだ。

 

「良かったですわね」

 

「ええ、校長には御礼を言いませんと。早くお会いしたいですわ」

 

それを聞いたスネイプは眉を更に寄せ、訝しげな視線を送る。

 

「校長に会っていないのか?お前達を保護したのは校長だと聞いたが」

 

「……何ですって?」

 

「では、あの老人が……校長ですか?」

 

「そうだ」

 

「何ということ……校長であるのにあんな早とちりで良いのかしら?」

 

「校長なのだったら少しは頭を働かせて行動して欲しいですわ」

 

「………」

 

あの計画を邪魔した老人━━最後は協力してくれたが━━が校長だという事に納得がいかない二人。スネイプは校長への文句を言いまくる彼女達を、どこか遠い目で眺めていたのだった。

 

 

 

 

 

 

銀行から必要な金を取り出した三人は、時間は有限という事で、別れて買い物をする事になった。スネイプは教科書などの授業に必要な物、マーゴット達は服と杖を買う事になった。

服屋の方が近かったので向かうと、“マダム・マルキンの洋装店”という看板が目に入った。ショーケースに服を着たマネキンがある事から服屋であるのが分かる。

二人がドアを開けて中に入ると、青白い肌の少年とボサボサ頭の少年が先に中に入っていた。

少年達は何か言い争いをしている様だったが、ドアの入り口付近に立っていた二人の修道服の少女が視界に入った様で、ぎょっとした表情をした青白い顔の少年が不快そうに顔を歪める。

 

「その奇妙な服装はマグルのものかい?……まさか、君達もホグワーツじゃ無いだろうね?」

 

「ええ、今年からホグワーツへ入学致します。マーゴット・クラウストルムですわ」

 

「カーラ・クラウストルムです。後これらは修道女の服ですわ、カトリック教徒ですの」

 

カーラは首に掛けてある十字架を掲げる。

ボサボサ髪の少年は感嘆した様に息を吐いたが、青白い顔の少年は更に不快そうに眉を潜めた。

 

「君達とは中世からの因縁がある様だね。魔女を忌み嫌う君達自身が魔女だった気持ちはどうだい?」

 

彼はマグル界では未だ魔女狩りが行われていると勘違いしているのか、吐き捨てる様に言う。

これ以上一緒に居たくないのか、名も名乗らずに二人を睨みつけながら早々に店を後にする。

当の二人は全く気にして居ない様子だったが、気を使ったのかボサボサ頭の少年が話しかけてきた。

 

「あ、あの人の言う事は気にしなくて良いと思うよ。僕も少ししか話して無いけど、かなり嫌味な奴だったから。僕はハリー・ポッター。知ってると思うけど……」

 

「すみません、存じ上げませんわ……何処かでお会いしましたか?」

 

カーラが申し訳なさそうに頭を下げる。

ハリーは何処か物悲しげだった表情をぱっと明るくさせ、頭を上げてくれと言った。

 

「それにしても、この歳で修道女だなんて凄いね!僕も家で居場所が無くなった時、教会に行ってシスターに話を聞いてもらっていたんだ」

 

「そうなのですか。私達も最近までは修練女だったのですが、数日前に正式な修道女になったのです」

 

他愛ない話を繰り広げた後彼女達に採寸の順番が回ったので、ハリーとホグワーツで会う事を約束し別れた。

 

採寸を終え新しい制服を受け取ると、入っていた紙袋から制服を取り出し見てみる。

 

「色合いは良いですね。装飾も無く質素で宜しいです」

 

「でもスカートが問題ですわね。少々短くありませんこと?」

 

「そうですね、これでは足が出てしまうわ」

 

修道院の教えに触れないか確認して、スカート以外は問題が見つからなかった。肌を出来るだけ出さないという決まりなので、短いスカートでは足が見えてしまうのだ。

タイツを履いて何とかしようという事で今回は収まったが、また教えを違反する危機は起きて来るだろう。それをどう回避するかがこれからの問題だ。宗教を理解しない魔法界において、私達の常識は通用しないかもしれない。

何とかしなければという危機感の元、店を後にする。

 

次は杖を買うため“オリバンダー杖店”のドアを開ける。カウンターには老人が座っていた。彼が店主のオリバンダーだろうか。

オリバンダーは現れた二人の修道女に暫く唖然としていたが、気を取り直すと人の良い笑みを浮かべて対応する。

 

「いらっしゃいませ。杖腕はどちらかな?」

 

「杖腕?」

 

「きっと利き腕のことでしょう。二人とも左です」

 

腕などの長さを測るのか宙を動く巻尺に巻き付かれる二人。

 

「それでは早速杖を選ぶとしましょう。では茶髪の君からにしましょうかね」

 

オリバンダーはカーラをカウンター前へ呼ぶと、奥からごそごそと杖を取り出し、手渡してくる。

 

「ブナノキに不死鳥の羽根、27センチ。柔らかい」

 

振ってみるとバチバチと火花が散り、手から杖が離れてしまった。

オリバンダーは素早くそれを取ると、次々に杖を出してくる。

 

「サクラに一角獣のたてがみ、34センチ。従順」

 

それも駄目な様で手が触れるか触れないかの時に素早く奪い取った。

何回かそれを続けていく内、オリバンダーは顎に手を当て、考える素振りを見せた。そして杖を選んでいるカーラの後ろで立っているマーゴットが視界に入った途端、オリバンダーは何かを思いついた様に顔を上げ大急ぎで杖を取りに行く。

 

「ああ、何故忘れていたのだろうか!見つけましたぞ、貴方がたの杖を!」

 

オリバンダーは二つの杖を出し、カーラの手にそのうちの一つを握らせる。

 

「イチョウにグリフィンの翼の羽根、33センチ。硬い、防御呪文に最適な杖です。」

 

振ってみると、柔らかい風がカーラを包み込みじんわりと馴染んだ。

オリバンダーは嬉しそうに拍手を送ると、後ろに立っていたマーゴットを呼び寄せ、残った杖を握らせる。

 

「ハンノキにグリフィンの翼の羽根、31センチ。よくまがり、攻撃呪文に最適な杖です。」

 

振った途端マーゴットの周りに赤い光が放たれプラチナブロンドの髪を赤く照らす。

見事杖に選ばれた様だ。

オリバンダーは一層強く拍手した。

 

「グリフィンの翼の羽は当店でもこの二つしかなく、互いに対となっておるのですぞ。君達のコンビネーションは最高のものとなり、歴史に名を刻むでしょうな。」

 

マーゴットとカーラは良い買い物が出来たと喜び、金を払い店を後にした。

店の前には既に買い物を終えたのであろうスネイプが立っていて、遅いと言いたげに眉を潜めていた。スネイプの手の中には魔法具が大量に揃っていたが、少々魔法薬学の道具が多いのは気のせいだろうか。

スネイプは持っていた荷物を二人に渡し、早足で歩き始める。

 

「沢山買いましたわね」

 

「ええ、でもこんなに物を得てしまうと、修道女の教えを反している様でいけませんわ」

 

そんな会話をしていると今まで黙っていたスネイプがため息をしながら話し出した。

 

「最低限の生活を務めるという教えか?それなら心配無い。お前達が買ったのは学校生活において“必需品”のみだ。余計な物は一切買っていない」

 

「あら、では安心ですわね」

 

「魔法界は沢山物が要るのね……」

 

一安心するも、魔法界の人々はとても贅沢な人種だと感じざる負えないのだった。

 

 





以上、黒い保護者とダイニャゴニョコ町でした!

主人公達の杖の芯からしてホグワーツの寮はなんとかドールに入りそうですね〜。ハハ。

あと主人公達の設定書いてなかったので混乱した方すみません!
二人は髪の毛の色が違います。カーラはダークブロンドで、マーゴットはプラチナブロンドです。どっちも顔が怖いです。美人ですけど。

あと十字架をいつも掛けてます。



誤字・脱字、ココ意味分かんない、等ありましたらお教え頂けると嬉しいです。
有難うございました。

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