ということで間が空きすぎたので実質初投稿です、よろしくお願いします。
「あ、あああああああああ!!!!!」
言葉にすれば、まさにそれは
その圧倒的な魔力は骨すらも残すまいという気迫を直感する。
それを、吹いたら折れてしまいそうな華奢な身を以てマシュは受け止めていた。
「ぐ、うぅぅ、…ダメ、このままじゃ……」
「マシュ……!!」
「逃げて…ください、先輩…。やはり私では…宝具が…」
それは宝具ではない、盾の防御力に任せた
このままではあと1分もしないうちに決壊し、マシュ共々比喩でもなく蒸発するだろう。
「何か…何かないのか?」
あのセイバーの宝具をどうにかする方法が。
マシュを、助ける方法が。
「藤丸!」
「所長…?」
「令呪を使いなさい!!」
令呪…?
「令呪はサーヴァントに対する三回の絶対命令権、マシュに宝具を使わせることができるかもしれないわ!」
令呪は、命令権…。
「く、先輩…早く、逃げて……」
令呪で命令して、マシュに宝具を使わせる。
そうすれば、確かに助かる可能性は、ある。
けれど、それは命令だから無理矢理そうさせているんじゃないのだろうか?
多分、令呪っていうのは色々な過程をすっとばして結果に繋げるんだと思う。
サーヴァント側の意思すらも曲げて、
「駄目だ…」
「はあ!?」
どうしてかは、俺も良くは解らない。
けど、それは駄目なんだと強く感じた。
「それじゃあ駄目なんです。それじゃあ、マシュのためにも、俺のためにもならない」
「ちょ、アンタ自分が何を言っているのかわかってるの!?」
「わかっています!!でも―――」
ふわっとして何となくとしかわからないけど、これは令呪を使って俺が命令することじゃない。
「―――マシュ自身がやらないといけないことなんです」
マシュがやらないといけないんだ。
「今しかないんです。今がチャンスなんです!」
「でもそれじゃあ!!」
「先…輩…」
黒い奔流を真っ直ぐ見つめる。
俺はマスターだ。俺の大事な
「大丈夫、マシュなら絶対できる」
気づけば、俺は盾を支えているマシュに近づいて、その細い手を握っていた。
「ダメ……そこに居ては、危険です……」
「構うもんか。どうせダメでも、特異点に来る前みたいにこうしてマシュの手を握っていたい」
「先輩……あっ!?」
その時、黒い奔流の勢いが増したような気がした。
本格的に時間が迫ってきているけれど、何故か俺の心は変に落ち着いていた。
「大丈夫だ。なんたって、マシュは俺のサーヴァントなんだから」
そんな、漠然とした確信は俺の中でしっかりと確立していく。
マシュとは、今日出会ったばかりでまだお互いのことも良く分かっていないけれど、それでも。
マシュはとても優しい女の子だっていうことは、わかっている。
ここへ来る前の、事故が起きた時。瓦礫にその小さな体が押しつぶされて苦しいはずなのに、マシュは一言も『助けて』とは言わなかった。
そればかりか、マシュは会ったばかりの俺を心配して、気に掛けてくれた。
その時にはもう、自分は死ぬんだと分かっていたはずなのに、それでも先に言葉になったのは、俺への心配だったんだ。
そんな他人を思いやれる優しい彼女が、今目の前であの黒い奔流を受け止めている。
それなのに、何もできない自分が情けない。
けど、それは仕方が無い事なんだってことは、わかる。
ただの一般人の俺が前に出て行っても、『痛い』とも思わずに蒸発するのがオチなんだってわかっているからだ。
なら、最後に残った、俺にできることは一体なんだろう。
魔術も、体力も、戦闘もできない俺ができること。
それは、マシュのことを信じること。
令呪を使えば、確かに確実にマシュの宝具は発動できるだろう。ほぼ100パーセント助かるだろう。
けれど、それじゃダメなんだ。
そうやって無理やり力を引き出すことは、今までの信頼を崩すことと何も変わらない。
だから、今だけは令呪を使うことなんて、俺にはできない。
だから――――――、
「信じてる」
「……はい」
「マシュならできるから」
「はい」
「怖くても、俺が一緒にいるから」
「はい!」
「だから・・・絶対に帰ろう!」
「っ! はい!!」
怖いだろう、不安だろう。
あんな暴力も生ぬるい死の奔流を前に、一人で耐え続けるのは、想像もつかないような胆力が要るんだろう。
実際にあれを受けていない俺が、理解することなんておこがましい。同情なんて、するべきじゃない。
だから俺に、あれをどうにかしろなんてことは口が裂けても言えることじゃない。
本当の恐怖を知らないのに、どの口がって言われればそれでおしまいだ。
けれど、守られる側として、俺は、俺が、守ってくれているマシュのことを信じることは、きっと間違っていない。
――――――だから、例えどうなとうと、俺は俺にできることを全うするんだ。
「私…は、絶対に…守ってみせる……。所長も、先輩も……だから――――――」
「―――見ていてください、
意思は決定した。
はじめは弱気で、確かに恐怖が心にあったのだろう。
けれど、今の言葉で、完全にそれは払拭していた。
「ああああああああああ!!!!!!」
吼える。
気高くも、静かに、雄たけびを上げて、後ろにいる俺達を守ろうと、必死に踏ん張ってみせる。
けれど、それに比例するかのように、黒い奔流は更に勢いも増す。
「ハァァァアアアアア!!!!」
「ああああああああああ!!!」
攻めと守り。両者はその鉄壁の意思を以って互角のせめぎ合いを演出している。
そこに誰かは必要とせず、それはクー・フーリンも、リムルでさえも手出しを許さない。
純粋な二人の戦いだった。
「ぐっ……」
けれど限界は着実に近づいていた。
先に膝を折ったのは、マシュの方だ。
「うぅぅ……!!!」
膝をついても、盾を離すことだけはしない。
その腕、体、足、全てを使ってその奔流を受け止め続ける。
「マシュ…」
絶対にここだけは通さないという意志だけで留めているような、ギリギリの状態だった。
けれど、それでも俺は。
「俺は、最後まで自分の
「――――――!」
今この瞬間、例え負けたとしても俺は誇りを持って『全力で向き合った』って、胸を張って言える。
「……たい…」
「マシュ?」
「ぜったい……死なせません。私は…あなたを……皆さんを――――――」
「――――――守り……ます!」
再びマシュは力を入れ直すように、ゆっくりと立ち上がる。
けれども、やはりそれは、気持ちだけではどうにもならない一つの現実に過ぎなかった。
セイバーの勢いは依然変わりない。
最早それは痛々しいまでに無力だった。
でもその高潔な決意は、信念は、本物だった。
――――――だからだろうか。
「......!!」
マシュの大盾が応えるように光った気がしたのは。
「は……あああああああああああああ!!!」
やがて光は大盾を補強するように広がって、幻想のような壁を出現させる。
それはセイバーの宝具を完璧に防いで見せた。
「これが……宝具……?」
「はあ……はあ……」
「面白い、よく防いだと褒めてやろう……だが――――――」
マシュの宝具でセイバーの宝具は防がれた。けれど当のマシュは肩で息をする程に消耗が激しい。
「クソッ、マズイ」
「大丈夫だよ、クー・フーリン。後は――――――リムルが」
慌てるクー・フーリンをなだめて、俺は笑みを浮かべた。
俺は、いや俺達はしっかりとリムルの期待に応えることが出来た。
だからこそ、俺の事を信じてくれたリムルという切り札を今ここで切る。
俺はリムルのマスターで、リムルは俺のサーヴァント。
マスターである俺は、サーヴァントであるリムルのサポートを最大限しなくちゃならない。
マシュへのサポートは、寄り添う事。
リムルへのサポートは――――――。
「切り札として、使いどころを見極めること」
それは決意とともにその証を示す。俺のマスターとしての決意が、戦う意思が、『令呪』という形を以て紅く輝いた。
誰に頼る訳でもなく、俺自身が仲間と共に前へ進むために。
「届け令呪よ!! リムルに勝利を!!!」
これは俺の、弱い自分との決別だから。
「よくやったマスター、後は任せとけ」
快活に笑うリムルに、令呪の膨大な魔力が流れ込むのを感じながら酷い脱力感に俺はその場でへたり込む。
本当なら、セイバーの宝具が放たれようとしているこの状況でこんなことをするのは自殺するのと同じなのかもしれない。
けれど俺は不思議と勝利を確信していた。
きっとこれが、サーヴァントとマスターの理想の関係なんだと。
「さて、悪いなお嬢さん。俺のマスターからの
リムルが言葉を紡いだ瞬間に、勝敗は決した。
「ば......かな......!?」
まさに、それは瞬き。ほんのわずかなコンマ数秒の合間に、セイバーの体は貫かれた。
「貴様......初め、から......加減して、いたのか......!?」
「そういう訳じゃないんだけどな、ただちょっと魔素――魔力が足らなかっただけさ」
そう言い終わると、リムルはいつの間にか手にしていた剣をセイバーから引き抜いた。
「いい勝負だったよ。またな、お嬢さん」
何が起こったか、それはリムル本人以外は誰も理解できなかった。
俺のすぐそばに立っていたリムルは、何の予備動作もなく、当たり前のように『決着』をセイバーに押し付けた。
「これ、ほど……とは。やはり貴様は……規格外、だ」
誰がどう見ても、圧倒的だった。
セイバーが『規格外』と評価するのも納得できるほどに、リムルはただ一人、この場に集まった誰よりも余裕を持っていた。
それは俺にマスターの何たるかを諭してくれたことからもわかることだ。
マシュとは、一緒に歩む
リムルとは、ここぞという時の
この短い戦いを通して、俺との関係を完全に確立できたのは他でもない、リムルのお陰。
例え今後どんなことが起きようとも、俺はこの瞬間のことを生涯忘れない。そんな漠然とした確信であったりとか、確証であったりする曖昧な、けれどとても大切な『自分』を、今日この日に初めて手にしたんだ。
「……聖杯を、守り通す気でいたが、貴様のような輩がいたとは……想定外だった」
空いた穴から血を流し、消滅寸前のセイバーは振り絞るように、最後にこちらを、今までにないほど優しい瞳で見つめて――――、
「
そして、消えていった。
「おいテメェ、そりゃどういう意味――――ウオォ!??」
それと同時、クー・フーリンの体も光に包まれ始める。
「クソッ、ここで退去かよ。……まあいい、おいボウズ。次に召喚する時は槍を持った俺を呼んでくれ。今回の戦いはリムルのやつにお株を奪われたが、槍を持った俺なら負けねぇからよ」
そういって朗らかに笑っていた。
「……うん、そうする」
だから、俺もクー・フーリンの心意気に応えるように、笑って見送ることにした。
勿論、急なことで吃驚はしたけど、どうせなら後悔をしないよう、きちんと納得する形で別れたかったから。
「じゃあ、頼んだぜボウズ」
クー・フーリンもセイバーと同様、光となって消えていく。
ここに、この特異点Fで行われた聖杯戦争は、最後まで生き残っていた
「いや、まさか君たちがここまでやるとはね。計画の想定外にして、私の寛容さの許容外だ」
そう、
「レフ……ああ、レフ、レフ、生きていたのね!」
でも俺たちの
色々となぁなぁにしてましたが、ようやく再開できました。
長らくお待たせしましたが、とりあえずネット上から完全消去しなければ細々と続けていくので、どうか今後も緩い期待をしながら次話を待って頂ければ幸いです。