「い、今のは…」
俺は戦慄していた。
今の一瞬だけでランサーを穴だらけにした攻撃のすごさを実感した。
あれがどういたったものかはわからないけれど、とても強力なものだということは分かった。
「うーん、もうちょっと手加減すればよかったかも」
などとリムルは言う。
その言葉の通り、今の攻撃でも十分に手を抜いていたということはさっきの態度で直感していた。
とすると俺は破格のサーヴァントを引き当てたんじゃないか?
最初はスライムが出てきて焦ったけどその実、リムルという名前があって、魔王で、あんな一瞬で敵を倒せるようなとんでもないヤツだった。
「そういえばリムルってクラスはなんなの?」
ふと気になってそう聞いてみた。
大事なクラスをまだ聞いていなかった。
これをまず知らなかったらマスターである俺の役目を発揮できない。
「あぁ、一応キャスターらしいよ」
キャスター。
それは聖杯戦争で最弱と評されることが多いクラスだと所長の説明で聞いた。
なんせキャスターといえば作家の英霊が多く所属していたりするクラスらしくて引き当てても戦力として全く使い物にならないことだって珍しくないとか。
なるほど、リムルにはある意味ピッタリなクラスかもしれない。
外面に踊らされて本当に大切な中身を知らぬままに触ってみたら、実は中身は爆弾でした~みたいなノリだ。
まったくシャレにならない話である。
「とりあえず、ここを離れた方がいいね。俺は平気だけど、藤丸や他の人はそうじゃないだろう?」
「はい、そうですね。私もデミ・サーヴァントになったはいいのですが、この英霊の真名も宝具もわからなくて…」
マシュは申し訳なさそうに言った。
ひどく悔しそうな顔をしていて、こちらにもその歯がゆさが伝わりそうだ。
何か声をかけようと歩み寄ろうとする。
その時、
「あ、それはそうとそこで隠れてるヤツ、出てこいよ」
何の気なしにリムルは俺たちの背後にそう言い出した。
「やっぱバレちまってたか」
すると隠れていたのか、青いローブを着て大きな木の杖を持った一人の男が俺たちの背後から姿を現した。
『な、サーヴァント反応!?そんな、今度はきちんとモニターを確認していたのに』
ロマンが例のごとく驚いているけど実際に目の前に現れたんだから仕方がない。
「いつから気づいてたんだ?」
「勿論最初からだ、こっちの様子をうかがってるみたいで敵かどうか迷ってたけどまだ話が分かりそうで助かるよ」
やっぱりリムルはすごいや。
カルデアの索敵能力だってすごそうなのに、それをあっさりと上回って見せている。
なんか強がってるように見えるけど多分気のせいだよね。うん。
「それで、こちらとしては今ここで起きてる問題を解決したいんだけど、そっちはどうするんだ?」
リムルはローブの男にそう問いかける。
本来、そういう交渉は所長や俺がやったほうが良さそうだとは思うけど、今場の主導権を握っているのはリムルで、俺たちはまだそれを傍観しているだけに過ぎない。
下手に口をだして状況を混乱させるわけにはいかない、というのはこの場で一番無知な俺でも分かる。
それを所長もマシュもわかっているのか黙って男の返答を待っていた。
「テメェらと敵対するメリットが無ぇ。それに、今の
そうローブの男は含みのある言い方をする。
そして、俺たちへと視線を移す。
「あんたの力は十分伝わった。だが、後ろのヤツらのことは何にも知らねぇんでな、実力が知りたい。」
「つまりは俺だけ出しゃばっても他が期待出来なきゃ意味が無いというわけだ。」
「まぁそういうこった。お荷物を3つも背負い込むなんざ俺はゴメンだからな。」
「わかった、そういうことなら俺からは文句ないよ。後は藤丸達が頑張ることだから」
そう言ってリムルはこちらを向いて清々しいほどの笑みを浮かべて
「んじゃ後よろしく!」
と言ってこちらに丸投げしてきた。
「ちょ、そんな丸投げされても!?」
「でも、俺ができそうなことは応援くらいだしさ、マスターである藤丸はサーヴァントのマシュに指示をすればいいさ」
リムルはそう言うや否や近くの丁度いい瓦礫に腰掛ける。
どうやら完全に傍観を決め込む姿勢のようだ。
「話が早くて助かるぜ。んじゃ、こっちはこっちでおっ始めますかね。さ、構えな嬢ちゃん。でなきゃそっちの坊主を今から殺すぜ。」
スイッチが入ったように、男を取り巻く雰囲気が殺気立った鋭いものへと変わった。
本気でこちらを狙っている。
「マシュ!」
「ハイ!」
それをマシュも感じたのかすぐさま前に出る。
こうして、俺とマシュの、初めて本当の意味でのサーヴァント戦が始まった。