召喚したらスライムだった件   作:よと

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ところかわってこちらの事情その2

 召喚されたことを自覚した。

 

 辺りには俺が召喚された残滓であるのか魔素が多少舞っていて、この世界にはある程度の魔素があることを教えてくれる。

 

 見渡せば俺を召喚したであろう黒髪蒼眼の少年、その隣にいるのは鎧のようなものを着込んだ薄ピンク髪の少女と銀髪で見るからに高圧的な見た目をした美少女がいる。

 

 

 初対面の人とはファーストコンタクトが一番大事だ。

 なるべく印象に残るようなユーモアのある自己紹介をしよう。

 と、思った時ひらめいた。

 最近使っていなかったあの自己紹介があるじゃないか!

 思い立ったが吉日。

 今やるしかない!

 

 「僕はスライムのリムル、悪いスライムじゃないよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場の空気が凍った。

 

 あれ?おかしい。

 多少狙いすぎた自己紹介だとは思ったがここまで淡泊?

 ちょ、まずい、やらかした。

 まさかここまで滑るとは思ってなかった。

 

 「藤丸うううう!!」

 

 すると黒髪の少年に銀髪の美少女が噛みつく。

 ふむ、どういうことなのか状況がよくわからない。

 今の状況を鑑みるにまず、俺が召喚に呼ばれる。次に俺のことを少年達が見るや否や、銀髪の美少女が少年に掴みかかってなにやら文句(?)を言っている。

 

 俺放置。

 

 なるほどわからん。

 

 

 「ハハハ、スライム、なんで?何でスライム?」

 

 「フォーウ?」

 

 『僕もスライムは初めてみたよ』

 

 「もう終わりだわ!なにもかも!」

 

 「これが、スライム」

 

 「えっと、ごめん?」

 

 めっちゃ混乱していらっしゃる。

 とりあえず謝っておこう。

 まず、なんで俺呼ばれた?

 世界が崩壊しているのは知っている。

 それは今も目に映る赤々とした炎に包まれ崩壊した都市を見れば嫌でも理解できる。

 それに、このスライム体の視界は360度全方向を見ている今現在も助けを求める人を見かけることも無ければ声も全く聞こえない。

 その事実がこの世界の終わりを告げていると理解するためのさらなる判断材料となっている。

 もし本当に滅んでいるとすれば、生き残りはこの場の3人だけとなるのだ。

 ただ気になるのはこの場の3人以外に、魔素を含んだ肉体を持つ者の存在を感知していることだ。

 シエル先生から送られてきた思念には、この場が今どういった状況なのかということが簡潔に説明されたものもあった。

 魔素の反応は即ち、人間を超越した歴史に名を残す英雄達の分霊のような存在、英霊だ。

 その数は5。

 

その内の2つはこちらに向かってきているのがわかる。

 ひとまずこっちは後回しにしておいて、この状況どうしよう。

 

 銀髪の美少女は何やらヒステリックに少年へ詰め寄り、薄ピンク髪の少女は興味津々とばかりにこちらを覗きこむ。

 何よりこのリスと猫を合わせたような白い小動物は一体なんだ。

 新手の魔物?

 

 まぁいいや。

 まずこの混沌とした状況を何とかせねば。

 あ、状況が混沌になっているのは俺のせいか。

 よくよく考えてみたら召喚したらスライムでした、という話だからな。

 混乱するのもわかる気がする。

 しかも喋るスライムとか何だよってなるか。

 とりあえず仕切り直しとして改めて自己紹介だな。

 

 「えーっと、改めて自己紹介いいかな?」

 

 俺がそう提案すると現実逃避してたらしい少年から返事が返ってくる。

 というか表情めっちゃ暗い。

 なんだろう、このどうにでもなれ感。

 いや、気を取り直そう。

 ここはちょっと張り切っていいところを見せねば。

 

 そう決心すると俺は人化して服を纏い、いつもの姿でこの場に降り立った。

 我ながらスライムから人化するまでの過程をきれいにできたと思う。

 

 「改めまして、俺はリムル=テンペスト。魔王だ。」

 

 やや決め顔で俺は改めて自分の名を名乗る。 

 勿論円滑なコミュニケーションを図るための握手も忘れない。

 

 様子を見てみると皆一様にぽかんとした表情で俺を見ていた。

 

 どうかしたのかと思っていると少年が先に口を開く。

 

 「あ、あぁうん。藤丸立香、よろしく」

 

 藤丸立香と名乗った少年は俺の出した手を握り返してよろしくと一言。

 

 そこから色々こちらの事情に関してつついてきたがそれはあえなく邪魔された。

 

 「フフフ、見つけましたよ。さあ、殺しあいましょう?」

 

 藤丸たちのやや後方、積み重なった瓦礫の上を足場として立っていたのは鎌のような槍をもった女性。

 だが、その肉体は人のものではなく、魔素で構成されたものであり、一目で英霊、サーヴァントだと確信できた。

 

 どうやら藤丸たちの状況は緊急事態みたいだし、ここは大人な俺がひと肌脱ぐときだな。

 

 改めてサーヴァントを観察する。

 まず、魔素量(エネルギー)はさほど高くない。

 俺やヴェルドラからしたら赤子のようなものだ。

 まぁ、比べる相手が相手なだけでこの世界からしたら高い方なのかもしれないし一概には言えないが。

 

 技量(レベル)は戦わなければわからないが、それを含めても精々がAランクに届くかどうかといった感じか。

 これならうちの国の兵士でも勝てそうなまである。

 

 そうこうしている内にどんどん話が進んで彼女は俺に狙いを定めた。

 

 「悪いけど、こういうのは手早く終えたいんだ。しかも相手をしてやれるほどの実力じゃないし。」

 

 コイツにはこの世界でどのくらい俺の力が引き出せるか実験台になってもらおう。

 

 「舐めたことをいってくれますね、精々後悔して死になさい!」

 

 すると俺の言葉に少なからず憤りを覚えたのか瓦礫を蹴って突進を開始する。

 

 藤丸たちにはこれがすさまじい速度に思えるだろうが、俺は違う。

 知覚速度を切り刻んでコマ送りのように引き延ばした俺には遅すぎて欠伸をしてしまいそうだ。

 

 だが、技量(レベル)自体は目を見張るものがある。

 

 体を動かすための最適解を導き出し、一瞬で最高速へと移り変わる様はさながら浜辺に打ち付ける波のように自然的に体が流れている。

 

 なるほど、この世界のサーヴァントは魔素量(エネルギー)こそ少ないと言えるかもしれないが技量(レベル)なら俺たちの世界にも勝るとも劣らないらしい。

 

 まぁ、それもすぐに意味がなくなるのだが。

 

 俺は虚空之神(アザトース)を使いほんの少しだけ『虚無崩壊』のエネルギーを取り出そうと試みる。

 すると、どうやら成功したようで米粒ほどの小さなエネルギーでも超高密度である『虚無崩壊』のエネルギーを取り出せた。

 これでこの世界でもなんら不自由なく能力(スキル)を使えそうだ。

 

 そしてその極小の『虚無崩壊』エネルギーを使って、はるか上空の、高度10000mくらいのところで半径20mほどの疑似太陽を作り出す。

 

 そして熱を逃がさないようにある程度のところでエネルギーの膜を張って疑似太陽を覆う。後はシエル先生にお願いすれば何処へだって神之怒(メギド)を放てる。

 

 よろしく頼むよ、シエル先生!

 

 《仰せのままに、我が主(マイマスター)

 

 「”神之怒(メギド)”」

 

 そうして槍を持ったサーヴァントは俺に槍を届かす直前で飛来した”神之怒(メギド)”によって全身を貫かれ魔素の粒子となって消滅した。

 

 うむ、いくら実験のためとはいえこれは、

 

 「やっぱちょっと大人げなかったかな?」

 

 あっけなく戦闘が終わって出た感想がそれだった。

 

 でもまあ、慢心して勝手が違う世界で油断してやられるよりはましだろう。

 アイツを殴ったとして効果が全くなかったら俺はいいけど後ろの藤丸たちが怪我を負ってしまう。

 それは避けたい。

 だから今のあっけない戦闘でもまぁ問題はないはずだ。

 

 「うーん、もうちょっと手加減すればよかったかも」

 

 でもやっぱり今の敵さんが不憫すぎる。

 

 まぁ気にしないほうがいいな、うん。

 そういえばみんな大丈夫かな。

 一番心配なのがラミリスだ。

 今の子供の姿ではとてもではないが自衛なんてできないだろう。

 そもそも自炊して野宿できるかが一番不安なまである。

 この世界に召喚されることは分かっているがどういった状況、場所で召喚されるかは全くわからないのだ。

 俺はこうして運よく英霊召喚に差し込まれた形で召喚されたが、他もそうとは限らない。

 

 適当な使い魔召喚の儀式に入り込んだりするのも有り得ない話ではないのだろう。

 

 そんなことを考えていると藤丸が俺のクラスを聞いてきた。

 

 クラスってあれか、逸話によって英霊の力を基本7つのクラスに当てはめるっていうあれか。

 俺は何だろう。

 

 ヴェルドラソードを振り回したりしてるけどセイバーという訳でもなさそうだし、アーチャーになれるようなことをしてないしランサーなんてもっとない。

 

 三騎士はないとして、四騎士はどうだろう。

 

 バーサーカー、これはまず有りえない。

 なんせ狂う要素がないからだ。

 え、異世界に来てまで衣食住にこだわりすぎではないかって?

 普通普通、あれくらい普通だって。それでバーサーカーは無いって。…ないよね?

 

 次、ライダー。

 無いね、まず乗り物に乗ってない。

 あ、でもランガと一緒に召喚されていたらもしかしたら有りえるかも?

 

 ということは、

 

 《どうやら(マスター)のクラスはキャスターに該当するようです》

 

 キャスターしかないですよね、知ってた。

 

 「あぁ、一応キャスターらしいよ」

 

 因みにここまで数瞬の思考である。

 思考加速ってこういう時便利。

 

 え?アサシン?

 そんな恐ろしそうな子は知りません。

 

 《これで近くに来ていた二つの反応の内1つの消滅を確認しましたが、もう一つ、そこの瓦礫で隠れている反応は如何いたしますか?》

 

 あ、

 完全に忘れてた。

 

 だって仕方ないじゃん。

 異常事態で思考が纏まってないときに明らかに敵対してそうな反応が5つもあってその内の1つがもうすぐそばにいたんだから。

 

 

 

 まぁいい、なかったことにすればいい。

 ポーカーフェイスは得意なんだ、この場を離れようと提案してる藤丸には悪いけどまだ問題を一つ解決しなきゃいけない。

 

 そうときまればそれっぽいセリフ言わなきゃな。

 

 

 

 「あ、それはそうとそこで隠れてるヤツ、出てこいよ」

 

 

 俺がそういうとシエルが教えてくれた場所がゆらりと揺らめいて一人の男が姿を現す。

 うん、我ながら油断できないすごいヤツとしての風格が出てた気がする。

 心なしか声が震えたような気がするが気のせいだ。

 

 

 

 気のせいったら気のせいだ。

 

 

 男の姿恰好、それと表情にいたるまでさっきの女性とはまるで雰囲気が違った。

 正気は保てている様子で、いきなり「殺す」なんて言わないところをみると話がわかる相手のようだ。

 

 《忘れてましたよね?》

 

 忘れてないよ、そんなことあるわけないじゃないか。

 ただ偶々別のことを考えてただけだよシエルさん。

 

 《…そうですか》

 

  

 ……すいません。ホントはすっかり忘れてました。

 

 

 「いつから気づいてたんだ?」

 

 「勿論最初からだ、こっちの様子をうかがってるみたいで敵かどうか迷ってたけどまだ話が分かりそうで助かるよ」

 

 

 はい、全部シエル先生情報です。

 

 シエル先生がいてくれなかったら俺はやっていけない自信がある。

 

 

 どうやら俺と話がしたい様子だ。

 えっとなになに、協力したいと。

 

 

 ほほう、やはりコイツ正気を保てている様子だ。

  

 俺の強さは分かったから後ろの藤丸たちはどうなんだ、という旨のことを聞いてきた。

 

 まあ俺一人でもなんとかできそうだが万が一、というものがある。

 それで藤丸がやられでもすれば本末転倒だしな、薄ピンクの子と藤丸のことを知るにはいい機会だ。

 

 「わかった、そういうことなら俺からは文句ないよ。後は藤丸達が頑張ることだから」

 

 そう男に言うと、男は「ありがとよ」と一言お礼を言って藤丸の方を向いた。

 

 俺はというとそのままバトンタッチする感じで藤丸の方へと戻って後ろの瓦礫へと座る。

 

 

 

 「んじゃ後よろしく!」

 

 後はそっちで頑張ってね藤丸くん。

 俺は見てるから。

 

 何かいろいろ言われてるけど無視だ。

 これを何とかできなきゃこれから厳しそうだし、丁度いい訓練だと思って青ローブさんにみっちり扱かれてきなさい。

 

 ―――――――

 

 青ローブさんと藤丸たちの戦闘が始まってしばらく、俺はその様を眺めていた。

 

 薄ピンクの子は身の丈ほどある大きな盾を巧みに扱いうまく攻撃を防いで藤丸の方へ行かせないように立ち回っている。

 対して青ローブは空中に何か文字を刻んだと思えば、それがたくさんの火球へと変化し薄ピンクの子へ発射されていく。

 それは、FPSのゲームでマシンガンを撃つかのようにかなりの猛攻だ。

 

 薄ピンクの子はそれを防ぐのがやっとで攻めに転じられていない。

 

 青ローブの魔素量(エネルギー)はさっきのサーヴァントと比べるとやや大きく、藤丸が<キャスター>と言うにふさわしい戦い方を見せている。

 その技量(レベル)はやはり高く、魔導王朝サリオンの”魔法士団(メイガス)”に勝るとも劣らない。

 

 こいつはランクで直すとAはくだらないだろう。

 

 

 

 ん?

 

 

 異なる世界での戦闘を楽しく観戦していると俺の察知能力に引っかかったモノがあった。

 

 その方へ向くと、優に何十もある様々な剣がこちらに飛来してくるのが見える。

 

 どうやら、一つの場所を動かずにいた所為で敵対者に狙撃されたようだ。

 

 それがわかったのは放たれたと思われる場所に一つの魔素量(エネルギー)を持つ反応があったためだ。

 

 《どうやらうまく釣れたようです。虚空之神(アザトース)で攻撃を捕食しますか?》

 

 その提案に俺はなるほどと悟った。

 ここを動かなかったことはどうやらシエルの策だったらしい。

 相手の動向を早い段階で確認してこちらを攻撃するように誘導したってところか。

 

 よし、やっておしまいなさい。

 

 《では、ついでに攻撃してきた射手(アーチャー)も捕食してしまいましょう》

 

 え、そこまでやれるの!?

 

 するとシエルが宣言した通り、飛来してきた反応に続いて狙撃してきたヤツの反応も消えて残す反応は目の前で戦っている青ローブを含め3となった。

 

 とりあず、射手さんには南無さんと合掌。

 

 攻撃したと思ったらいきなり即死攻撃喰らったんだからその驚愕は相当なものだろう。

 FPSゲームとかだったら珍しくないことなんだろうけど現実に起こったら発狂ものだと思う。

 

 あ、青ローブは今の狙撃を感じたのかな?

 この一瞬の間に薄ピンクの子が吹き飛ばされてるけど、追撃を加えずに辺りを警戒をするようなそぶりを見せる青ローブさんは丁度狙撃された場所の方へ顔を向けている。

 

 すごい勘だ。

 

 スキルも無しにあんな野性的な勘を働かせて狙撃されたことに気づくなんて。

 

 でもまあ、俺が虚空之神(アザトース)で捕食したんだけどね。

 

 あ、青ローブさんは気のせいだと思って戦闘を再開しようと魔素を集め始めたな。

 対して藤丸たちは覚悟を決めたようで、吹っ切れた様子のピンク髪の子を藤丸が背中を押すように二言三言囁いている。

 

 恐らく、次の一撃でこの茶番は終幕を迎えるだろう。

 

 無粋な横槍が入りかけたものの、俺はこの戦いの行く末を見守るべくしっかりと座りなおした。

 

 




少し間が空きましたがようやく投稿です。
飽きさせないよう色々頑張りましたが、素人なのであまり自信が…
30件を超える感想ありがとうございます。
このまま特異点F編は頑張って完結させて自分自身も待望の聖杯探索編へと進みたいです(^_^;)

感想待ってます!
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