IS-迷子の首輪付き-   作:メルチル

7 / 17
凄まじく間が空いてしまいました。


というのも、個人的にこれから色々と忙しくなってくる時期ですので……ご理解頂けたら幸いです(._.)


転校生来襲

四月も下旬に差し掛かる。遅咲きの桜の花弁も散った今日この頃、エレンは貸し出し申請を出していた第二アリーナでISを起動させた。

 

 

「さあ、今日もやりますか」

 

 

エレンの言葉に頷いた人影は三人。一夏と箒、そして最近になって合流したセシリアである。

 

 

「一夏と箒さんは昨日教えた瞬時加速の練習からやって下さい。終わったら実体ブレードでの近接格闘戦を。オルコットさんは俺と模擬戦をお願いします」

 

 

言われた通り瞬時加速の練習を始める一夏と箒を尻目にエレンとセシリアは向かい合う。

 

 

「ふっふっふっ……今日こそ、今日こそは勝たせて頂きますわよ!」

 

「ええ、楽しみにしていますよ」

 

 

余裕の笑みを浮かべるエレンに以前のセシリアなら間違い無く噛み付いていただろうが、今となってはそんな事をしない。なんせ、最近の戦歴は7戦7敗と完敗中なのだ。出来るわけが無かった。

 

 

「と言うより、エレンさんは学園に来る前は何をしていらっしゃったの?やけに戦闘慣れしているのは何故かしら?」

 

「俺に勝てたら教えて上げますよ」

 

 

あからさまな挑発。しかしセシリアは激昂するでも無く、扇情的な笑みを浮かべる。

 

 

「あら、言いましたわね。では今日こそ話して貰いますわよ!」

 

 

セシリアの持つ、ロングレーザーライフル『スターライトmk-3』が青白いレーザーを放つ。数週間前よりも更に精密な射撃はエレンを捉えていたのだがーーー。

 

 

「おっと」

 

 

横方向へ急速回避。相変わらずの反応速度に呆れたセシリアだが、再度照準を合わせて射撃を行う。エレンは射撃を躱し、際どいモノは左手の実体シールドで防いで行く。

 

 

(わたくしとて上達してるハズなのに距離が縮まらない。……もしかして、わたくしのレベルに合わせて、少しずつ実力を出しているの?)

 

 

セシリアの推察は正しい。エレンは一夏に対しても、箒に対してもーーー届きそうで届かない、そんなギリギリの戦闘を意図的に行っている。そちらの方がモチベーションが上がるからだ。

 

セシリアは分かっていた。そんな事が出来るのは、エレンが自分達の数段高みにいるが故であると。

 

 

(入学当初、エレンさんにISの事を教えてやると言っていた自分を殴り飛ばしてやりたいですわね……)

 

 

マイナス方面へ向かって行く思考を断ち切るように頭を振ったセシリアは、今度はビットによる多角射撃を行う。

 

 

「相変わらず正確な狙いです。嫌な所を的確について来る。しかしそれだけでは直ぐに読まれてしまいますよ?」

 

「分かっていますわ!」

 

 

力強い言葉と同時に、スターライトmk-3が火を吹いた。これには流石のエレンも驚きを隠せず、思わず被弾してしまう。

 

 

「驚きました……。ビットの制御中に射撃まで出来るようになっていたとは」

 

「何時までも弱点を残しておく程、わたくしは愚かでは無くってよ」

 

 

一矢報いた事が嬉しかったのか、少し自慢げなセシリア。そんな彼女に素直な賞賛の言葉を送ったエレンは、ここに来て漸く武装を召喚(コール)する。

 

 

「……何ですか、その装備?」

 

 

何時もとは違う装備に、セシリアは思わず質問を零す。エレンの手に現れたの武装は普段の彼の装備とはまるで違う。

 

実弾系のマシンガンを多用するエレンには珍しく、エネルギー兵装である荷電粒子砲を一挺。そしてもう片方の手には何時もの実体ブレードでは無く、薙刀のような形状の兵装を手にしている。

 

 

「知り合いの武装テストです。あんまり気にしないで下さい」

 

「へぇ……随分余裕ですわね。慣れてない武装でまともに戦えるのかしら?」

 

「それは、自分の目で判断して下さい」

 

 

挑発的な笑みを浮かべたエレンが放った荷電粒子砲が合図となり、二人の戦闘は再開される。

 

 

「当たりませんわ!」

 

 

鮮やかな空中機動で荷電粒子砲を回避していくセシリアはその合間を縫ってスターライトmk-3での牽制射撃を怠らない。エレンは暫く荷電粒子砲による射撃戦を展開していたが、唐突に瞬時加速を発動。迫っていたレーザーをシールドで受け止めつつ、一気にセシリアとの距離を詰める。

 

 

「ッ!インターセプター!!」

 

 

咄嗟に短剣を召喚(コール)し、迫る実体ブレードの一撃を受け止めたセシリア。エレンは直ぐにもう片方の手に持つ荷電粒子砲を構え、至近距離からソレを放つと同時にその場から後退した。

 

 

「ぐぅっ!逃がしませんわ!!」

 

 

瞬時にPICで体勢を整えたセシリアはビット四基と、ミサイル搭載型ビット二基を迎撃に向かわせる。

 

 

「同時操作出来る数も増えたのですか……。厄介な」

 

「無駄口を叩いてる余裕がありまして?」

 

 

背後から迫るビット1の射撃。上方回避。そこに既に待機していたビット2が頭上から射撃。実体シールドでガード。その隙にビット3、4とミサイルビット1、2が十字砲火。

 

 

セシリアは獲った!と、内心で笑みを浮かべる。しかしエレンはニヤリと悪戯っぽい笑みを零すと「甘いですよ」と一言。直後に、真下に向かっての瞬時加速。ビット3、4のレーザーが虚空を穿つ。

 

追跡を続けるミサイルは真下に移動したエレンを追跡するが、それ等は合流した途端ビット2と共に荷電粒子砲に呑み込まれてしまった。

 

 

一瞬惚けたセシリアを見逃さず、エレンは瞬時加速で一気に距離を詰める。

 

 

「真下への瞬時加速だなんて聞いた事がありませんわよ!」

 

「やり方教えてあげましょうか?」

 

「ええ、ぜひ、お願い、したいですわっ!!」

 

 

無駄口を叩きながらもインターセプターでエレンの薙刀を受け流していくセシリアだが、徐々に傷が目立ち始める。

 

薙刀という特性上、近距離戦闘では若干の取り回し辛さが想像される装備だが、エレンは柄による打撃を上手く織り交ぜている為に近距離戦も難なくこなしている。

 

 

「んー、薙刀って扱いが難しいですねぇ。刃を当てないと決定打になりませんし……あっ、隙ありです」

 

「くぅっ!?柄の打突も凄い衝撃ですからご安心下さい!!」

 

 

半ばヤケクソ気味に叫んだセシリアだが、やがて近接戦でエネルギーを削られ切ってしまい、8度目の敗北を喫することになるのであった。

 

 

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

 

 

二時間程の訓練を終了させたエレンはロッカールームでシャワーを浴びて、第二整備室へと足を向けていた。心なしか、その足取りは軽い。

 

というのも、護衛対象である一夏と箒の成長スピードが速いからである。ついでにセシリアも。一夏へ好意を向けている以上、セシリアも戦力に数えて問題はなさそうである。

 

 

目的地へと辿り着いた。第二整備室と書かれた扉を開き、入室。そこは閑散としていて利用者はエレンを含めて三人のみ。エレンは先に作業を進めていたであろう二人の女子生徒に声をかける。

 

 

「すいません、遅くなりました」

 

 

展開状態の打鉄弍式の側に座っていた二人の少女が漸くエレンの存在に気づき、顔を上げた。一人は簪。もう一人は最近よく手伝ってくれるクラスメイトーーー布仏本音だった。何でも更識の家に代々使える家柄の者らしく、簪の専属メイドという立場らしい。

 

 

そんな本音は常に眠そうな垂れ下がった瞳にエレンを捉えると、何故か異様にダボダボと余っている袖を振るう。

 

 

「おー、えれち~だぁ。訓練お疲れさまぁ」

 

 

妙に間延びした話し方をする本音に返事を返すエレンに、今度は簪から声がかけられる。

 

 

「……お帰り。装備の試験、どうだった?」

 

「ええ、充分なデータが取れましたよ。夢現(ゆめうつつ)はほぼ完成、春雷(しゅんらい)の方は、今回の荷電粒子砲の稼働データを元に微調整ですね」

 

「……私達の方もほぼ出来た。後は……FCS(火器管制システム)だけ」

 

 

整備科コースの本音の協力もあり、既に打鉄弍式はほぼ完成していた。しかし残った厄介な問題がある。FCSだ。

 

 

既存のFCSでも充分動かせるのだが、それだと打鉄弍式の第三世代兵器『マルチロックオン・システム』が実現出来ない。此方は手付かずの為、一から構築しなけらばならないのだがーーー。

 

 

「それなら心当たりがあります。知り合いにマルチロックオンを自分の脳味噌だけで行ってるヤツがいるので、データを提供してくれるよう頼んでみますね」

 

「……それって、もしかして『黒騎士』?」

 

 

若干ながら、期待に瞳を輝かせる簪。どうやら簪も束がアップした動画を見た口らしく、『黒騎士』ーーーつまり、エレンの『ストレイド』に興味津々らしい。

 

元々勧善懲悪モノのヒーローアニメが好きであった簪。世界中から追われる身である篠ノ之束博士とそれを実力行使で捕らえようとする『企業』。そして、そんな『企業』の最新鋭機三機を相手に大立ち回りを演じた謎のISーーー『黒騎士』。その構図は正にプリンセスを外敵から守るナイトのそれであった。

 

 

まるでアニメの中から飛び出して来たかのようなその存在は、彼女ーーーとういよりも、世界中の多くの人々の心に大きな衝撃を与えていたのだ。

 

 

だからエレンがやんわりと否定の意を示した時、簪はその声色に落胆の色を隠せなかった。

 

 

「ねぇねぇ~。そろそろお腹減らないー?私はぺこぺこなのだよ~」

 

「そうですね。時間も時間ですし、食堂に行きますか。簪さんも行きますよね?」

 

「うん……」

 

 

手早く片付けを済ませた彼等は、そのまま食堂へと向かうのだった。

 

 

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

 

 

食堂はいつも通り賑わっていた。しかし、何時もと違うのは奥の一角。『織斑一夏クラス代表就任パーティー』と書いてある暖簾が掛けられている其処は、今日だけは貸切となっていた。

 

 

「……エレンは、行かないの?」

 

 

まるで仇を睨むような視線を、クラスメイト達に囲まれている一夏に送っていた簪の言葉にエレンは苦笑いを返した。本音も食堂に来るまでは一緒だったのだが、簪の勧めを受けてクラスメイトの輪に混ざったようだった。

 

 

「ええ、騒がしいのは苦手なんです。俺はこうして、簪さんとゆっくり食事をするのが好きなんですよ」

 

「……そう」

 

 

俯いてうどんをちゅるちゅると啜っている簪を、優しげな笑みで見守りながら手元のケーキを切り分けて口に運ぶ。エレンの周りには色取り取りのスイーツが並べられており、それは周りの視線を集めていた。

 

 

「……いつも思うけど…エレンは甘いもの以外食べないの?」

 

「そういう訳じゃないんですが……その、好きなんですよ、甘いもの」

 

 

珍しく恥ずかしそうに言葉を詰まらせたエレン。心無しか赤みが差したその笑顔は、中性的な彼の容姿もあってか美しい。盗み見ていた周りの女子生徒から小さな歓声が漏れる。

 

しかし、時折見せるこんな笑顔に漸く耐性が出来て来た簪は別段顔色を変える事は無かった。

 

 

「……昔から好きなの?」

 

「そう、ですね……。知り合いにね、凄く美味しいアップルパイを作ってくれる女の子がいたんですよ。その子影響で好きになったんです」

 

 

まるで遠い昔を思い起こすような、そして大切な何かを思い出すのかようなーーーしかし、深い悲しみと後悔が宿る笑顔。

 

一瞬惚けてしまった簪だったが、紅潮してしまった顔を隠すように俯いて小さく呟く。

 

 

「その笑顔は、ずるい……」

 

「え?何かいいましたか、簪さん?」

 

「……何でもない。…これ、貰う」

 

 

一番近くにあったフルーツケーキを奪い取った簪に疑問を頂いたエレンであったが、直ぐに食事を再開するのであった。

 

 

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

 

 

「ねーねー、織斑君は聞いた?転校生の話!」

 

 

いつも通り登校した一夏は、隣の女子から掛けられたその言葉に首を傾げた。

 

 

「この時期に転校生?」

 

「うん、何でも中国の代表候補生らしいよ」

 

「ふーん」

 

「ふふん、きっとわたくしの存在を危ぶんでの転入ですわね!」

 

 

今日も平常運転のセシリアを他所に、一夏は一年程前に中国に帰った幼馴染の事を思い出していた。

 

 

「別にウチのクラスに来るわけでもないし、あまり気にする必要もあるまい。……というより、一夏。お前にそんな事を気にしている余裕があるのか?クラス対抗戦が来月に迫っているというのに」

 

「……返す言葉も御座いません」

 

 

厳しい幼馴染の言葉に縮こまる一夏。そんな箒から逃げるように、丁度教室に入ってきたエレンに声を掛けた。珍しい事にその表情には一夏達から見てもわかる程に疲れが溜まっている。

 

 

「おはよう、エレン。朝っぱらから何かあったのか?すげー疲れてるみたいだけど」

 

「ええ、ちょっと知り合いのIS設計に精を出し過ぎてしまって……」

 

 

いつも余裕さを感じさせるエレンが人前でこのような姿を見せるのは初めてで、一夏達も少し驚く。そして、少し気になった。

 

 

「ISの設計って……誰のですの?」

 

「四組の更識簪さんのですよ」

 

 

セシリアの問いにサラリと言ってのけたエレンに、聞き耳を立てていたクラスメイト達から非難の声が上がった。

 

 

「クロニクル君、まさか裏切ったの!?」

 

「えー!ライバル増えちゃうじゃん」

 

「えれち~の裏切者ー!私達とは遊びだったっていうの~」

 

 

若干一名、共犯者がいた気がしたが気にしない。エレンはいつも通りの笑顔を貼り付けて、声を上げた。

 

 

「皆さんご心配せずに。ウチの代表は、ブリュンヒルデと同じ舞台に立つと明言した織斑一夏君ですよ?その程度の苦難、乗り越えられないワケがないじゃないですか」

 

 

この言葉で全ての矛先が一夏に向いた。一気にクラスメイトの意識がエレンから一夏に向けられる。一夏が抗議の視線をぶつけるも、犯人は素知らぬ顔で我関せずを貫き通すようだ。

 

 

そんな中、一夏の耳に聞き覚えのある声が響いて来た。

 

 

「その情報、古いよ。二組も専用機持ちーーー中国代表候補生『凰鈴音(ファン・リンイン)』が代表になったの。簡単に勝てると思わない事ね」

 

 

視線をやると、其処には腕を組んだ女子生徒がいた。少し小柄のその少女は茶色の髪を黄色の布でツインテールにしていて、彼女の動きに合わせてぴょこぴょこと動く。ネコ科を連想させる鋭くも愛嬌のある瞳は緑色で、全体的な顔立ちからしてアジア圏の人種だろう。制服は肩に大きなスリットが入った改造制服にミニスカートという、活動的なイメージも抱かせるものだった。

 

 

そんな少女が扉に持たれ掛かって足を立てるその姿は様になっていたが、以前の少女を知る一夏は疑問符を浮かべてしまう。

 

 

「鈴?鈴じゃないか!ひっさしぶりだなぁ!」

 

「久しぶりね、一夏。でも今日は宣戦布告に来たの。だからーーー」

 

「さっきから何格好つけてんだよ。全然らしくねぇぜ」

 

「んなっ!?何て事言うのよ、あんたは!」

 

 

ネコ科を思わせる吊り目気味の瞳を更に釣り上がらせ、猫ならば全身の毛を逆立てているであろう剣幕で一夏に喰ってかかる鈴に、ふとエレンが声を掛けた。

 

 

「凰さん。後ろ、気をつけた方がいいですよ」

 

「後ろ?何よ、鬼でもいるーーー」

 

 

スパァン!

 

 

鈴の頭に炸裂音が響いた。堪らず頭を抑えて蹲る鈴音だが、それは一瞬。直ぐにギラつく怒りの炎を宿した瞳を背後の人物に向ける。

 

「ちょっと、あんた何すんのよ!?あたしを誰だとーーー」

 

 

言いかけて、鈴は固まった。目の前にいる黒いスーツをビシッと着こなす女性の姿を見て。そして怒りに満ち満ちていたその表情はあっという間に消え失せ、代わりに酷く怯えた様子で口をパクパクしていた。

 

 

「あたしを?続きを言ってみろ、凰鈴音。因みに私は世界一になった事のある鬼だが……?」

 

 

最初の言葉を根に持っていたのか、冷たい笑顔を浮かべて鈴音に問う千冬。その光景を見ていたクラスメイト達はブルブル震え、真ん前の鈴音の足は最早産まれたての子鹿レベルで震えている。

 

 

「あっ、あの……そのっ……ごめんなさぁぁぁい!!」

 

 

泣きながら逃げ帰って行く鈴音の姿を見て、一年一組の面々が感じた感情は紛れもない同情の念であった事を此処に記しておく。

 

 

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

 

 

昼休み。今朝の少女がアクションを行すには持って来いのタイミングだろう。それを見越したエレンは一夏とは別行動をとっていた。

 

と言っても、基本的に広く浅くを実行しているエレンには友達と呼べる者などいない為、必然的に独りになる。そして、話題の男子生徒が一人で食事をとるとなればそれを見逃すIS学園の少女達では無い。

 

 

「ねーねー、クロニクル君!私達と一緒に食べない?ていうか食べようよ!」

 

「たまには違うクラスの女子と食べるのもイイと思うの!だから私達と一緒に、ね?」

 

「君がエレン・クロニクル君?良かったら私達と一緒に食べない?先輩だし、色々と教えてあげると思うけど」

 

 

グイグイ来る女子達の対応に手を焼くエレン。苦笑いを浮かべてやんわりと断るのだが彼女達は一向に引く気配を見せない。そんな感じに話が堂々巡りを始めた頃、エレンにとって救世主が現れた。

 

 

「えれち〜?どうしたのさー。んん?いや、本音さんは分かってしまったのだよぉ。ズバリ、お昼ご飯を一緒に食べてくれる人がいないんだ〜」

 

「……まあ、そんな感じですね」

 

 

突如として現れたのは布仏本音。この場においてもゆったりした彼女特有の雰囲気に周りの女子達もペースを乱されたのか、その乱入を咎めるものはいなかった。

 

 

「仕方ないなぁ〜。そんな可哀想なえれち〜を私達のお食事会に招待してあげるのだよぉ」

 

「ええ、ありがとうございます。では、お言葉に甘えさせて頂きましょう」

 

 

途端に周りの女子たちから非難の声が上がるが、エレンの懇切丁寧な謝罪と愛想のいい作り笑いで事態を収束させ、本音に連れられて席を移動する。

 

 

 

「お待たせ〜。えれち〜捕獲してきたよぉ」

 

「……エレン?なんで…」

 

 

テーブルにはすっかり見慣れた水色の少女がいた。今日も今日とてうどんをちゅるちゅると啜っていた彼女は顔を上げ、少し驚いたように視線をエレンへと向けた。

 

 

「仲間外れにされて可哀想だったから拾ってきた〜。かんちゃんがヤなら、戻して来るよぉ?」

 

「べっ、別に嫌じゃない!……たっ、ただ珍しいだけ。…いつも、織斑一夏と一緒にいるから……」

 

 

不満そうに頬を膨らませてしまった簪を宥めるのは本音に任せ、取り敢えずエレンは席につく事にした。

 

 

パンケーキを切り分けていたエレンだが、不意に視線を感じてそちらへ視線をやる。

 

 

「俺の顔に何かついていますか、簪さん」

 

「なっ、何でもない。……今日は、何で独りだったの?」

 

「今日来た二組の転校生が一夏の知り合いでしてね。恐らく、昼休みに接触を計ってくると思ったので離れたんですよ」

 

「えー、何で〜?」

 

「朝の一件を見る限りだと癖のありそうな方でしたから。面倒ごとは極力回避したいんですよ」

 

「その割にはかんちゃんのIS開発を手伝ってるよね〜」

 

「うっ!」

 

 

エレンが珍しく笑顔を引き攣らせた。この布仏本音という少女、ゆったりしているように見えて中々確信をついて来る。

 

 

「ええ、まあ……そう、ですね。簪さんだけですよ、そういうのは。今の所も、きっとこれからも」

 

 

少し憂いを帯びたエレンの表情に気付いたのは本音だけだった。簪はと言うと、その言葉を少々違うニュアンスで捉えてしまったのか顔を真っ赤にして席を立ち上がった。

 

 

「……わ、私は先に戻るからっ」

 

 

エレンが呼び止めるも、そそくさと食器を片付けに行ってしまった簪はそのまま食堂を出て行ってしまった。

 

 

「簪さん、どうしたんですかね」

 

「えれち〜はねぇ、言葉が素直過ぎるよ〜。かんちゃん、きっと勘違いしちゃったよぉ?」

 

「……え?」

 

「えれち〜もおりむーの事バカに出来ないね〜」

 

 

本音のその言葉に結構傷ついたエレンは、ヤケクソ気味にパンケーキに噛り付くのだった。

 

 

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

 

 

「えっと……」

 

 

放課後。いつも通り第三アリーナで訓練を行う予定だったエレンは、目の前の息巻く二人の少女に間抜けな声を漏らしてしまった。

 

 

「本日は実戦形式での訓練を提案致しますわ!クラス対抗戦は最早目前。その為にも、一夏さんには実戦を積んで貰わなければなりません。……あのチャイニーズには、絶対に勝って頂きませんませんとッ!!」

 

「私もセシリアに賛成だ!大体なんなのだ、あの女はッ!一夏、お前もそれでいいな!?」

 

 

恐らく、噂の転校生と昼間に何かあったのだろう。偉くご立腹な二人に気圧され気味な一夏は苦笑いを浮かべながらエレンに助けを求める。

 

エレンは呆れたようにため息をもらすと、額を抑えた。

 

 

「そうですね、そろそろ実戦も良いでしょう。三人の成長具合も気になりますし、今日は四人でバトルロワイヤルにしましょうか」

 

 

その提案に嬉々とした様子で頷く二人の少女。取り敢えずは満足してくれたようでエレンも一安心である。

 

四人はそれぞれのISを起動させると、アリーナの四方に散らばる。

 

 

「準備はいいですか?」

 

「ええ、勿論ですわ」

 

「うむ、何時でもいいぞ」

 

「おう、準備オーケーだ」

 

 

アリーナの中央にカウントが投影される。

 

 

『3』。

 

セシリアがスターライトmk-3を、エレンがサブマシンガンをアンロックする。一夏と箒は実体ブレードを正眼に

構える。

 

 

『2』。

 

各々が戦闘体勢へ入る。セシリアはスターライトmk-3の狙いをエレンへ向かわせる。箒と一夏も、剣の切っ先をエレンの方へと。意図を悟った彼は、一人苦笑いを浮かべる。

 

 

『1』。

 

白式、打鉄、アルファートのスラスターにエネルギーが充填される。それは、瞬時加速の予兆。

 

 

『0』。

 

ブルー・ティアーズのスターライトmk-3が放たれる。少し遅れて白式、打鉄が弾かれるようにその場から飛び出した。

 

 

「まったく……弱い者イジメは感心しませんよ」

 

 

呆れたような言葉を残し、アルファートも瞬時加速を発動。ブルー・ティアーズの放つレーザーを半身を逸らして避けると、弾丸のように飛び出した。

 

 

ほぼ同時に飛び出した白式と打鉄だったが、スラスター出力の関係上若干の誤差がーーーそれは本当にコンマ数秒の誤差であるのだが、生じてしまう。

 

そして先にエレンに接敵したのは、一夏の駆る白式であった。

 

 

「おおおおぉッ!!」

 

 

勇猛な雄叫びと共に、青白いエネルギーブレードと貸した雪片弍型ーーー『零落白夜』が迫り来る。

 

 

(いきなり単一仕様能力(ワン・オフ・アビリティー)、零落白夜ですか。自分のエネルギーすらも攻撃へと転化する諸刃の劔だって分かってるんですか?)

 

 

零落白夜は自分のシールドエネルギーを攻撃に転化する代わりに、相手のエネルギーを無効果出来る超攻撃特化の能力だ。故に喰らえば一撃で絶対防御が発動してしまい、大量のシールドエネルギーが奪われてしまうのだ。

 

 

(まあ、当たらなければ問題無いんですけどね)

 

 

横薙ぎに振るわれた零落白夜を紙一重の所で回避し、無防備となった所へ回し蹴りを叩き込む。弾き飛ばされる白式を尻目に、目前に迫る箒の打鉄が放った上段からの斬り下ろしを実体ブレードで受け止めた。

 

 

「素晴らしい太刀筋ですね。誰かさんを思い出しますよ」

 

「ふん、余裕ぶってられるのも今のウチだ。このまま押し切ってーーー」

 

 

打鉄が両手持ちの実体ブレードに更に力を込め、刃を届かせんとしたその瞬間。アルファートはワザとブレードを引くと同時に高速回転を行って打鉄の斬撃を避けると同時に、その勢いのままブレードを打鉄に叩き付けた。

 

 

「くぅっ!!」

 

 

苦悶の声を上げた箒。そしてそんな彼女の打鉄に更なる追い打ちを掛けるべくサブマシンガンの銃口を向けた刹那。真横からの青白い閃光が、アルファートを穿った。

 

 

「……やはり、貴女が一番厄介ですね」

 

「あら、今更気付きましたの?」

 

 

ターゲットをブルー・ティアーズへ変更したアルファートが瞬時加速を行おうとした刹那。背後から迫る白式をハイパーセンサーに捉え、反転。サブマシンガンを放ちつつ、後退してゆく。

 

 

「エレン!男なら正々堂々、剣で勝負しろよ!」

 

「三対一で俺を潰すのが男のする事なんでしょうか?」

 

「……ぜええぇい!!」

 

 

白式が瞬時加速で強引に距離を詰めてきた。上方へ急速回避すると同時に機体を反転。迫っていたレーザーを実体シールドで回避すると同時に、真下から迫る鋭い切り上げを実体ブレードで受け止めた。

 

 

「なーんか、妙に手慣れたコンビネーションですね」

 

「べっ、別に訓練後居残って練習してワケでは無いぞ!?断じて違うからな!」

 

「なるほど。よく分かりましたよ」

 

 

打鉄の繰り出す連撃をのらりくらりとやり過ごしていたアルファートだったが、不意にブレードを思い切り投げ付ける。咄嗟に手元のブレードで叩き落とした打鉄の目前には、サブマシンガンのニつの銃口が向けられていた。

 

 

「行きますよ」

 

 

瞬間、凄まじい衝撃が打鉄を襲った。箒が蹴りによりブレードを弾き飛ばされ、更に踵落としをお見舞いされた事に気づく頃には弾丸の雨が更なる衝撃を与えていた。

 

 

「箒いいぃぃ!!」

 

 

しかし、それを黙って見ている一夏とセシリアでは無い。

 

白式が瞬時加速によって急速接近、ブルー・ティアーズがスターライトmk-3での精密射撃。ハイパーセンサーに入ってきた情報を元に瞬時に判断を下したエレンは左手のサブマシンガンを白式に投擲した。

 

 

「こんなものおおぉぉ!!」

 

 

一夏はまだ、瞬時加速中に回避機動を取る事が出来ない。故に迫るサブマシンガンを叩き落す以外の選択肢は無い。

 

エレンの予想通り、雪片弍型でサブマシンガンを叩き落とした白式に、瞬時加速で接近した。同時に背後からブルー・ティアーズのスターライトmk-3が火を吹いた事も知らされるが、計算通りである。

 

 

「一夏、ちょっと痛いと思いますが我慢して下さいね」

 

「何のーーーへぶぅあ!?」

 

 

顔面への回し蹴り。その衝撃に白式が体勢を下した刹那、空いている手で白式を引き寄せ、そのまま盾のように構えて振り返る。

 

一瞬、目を眩ませていた一夏の視界に入ったのは目と鼻の先に迫る青白いレーザーであった。

 

 

「おっ、おい!待て!!セシリア、これ止めーーーふぐぅあぁぁぁ!!」

 

 

またしても顔面に直撃。フラフラと浮遊する白式に、アルファートは実体ブレードを二刀召喚(コール)する。

 

 

「我が身を呈して庇ってくれるなんて……流石はブリュンヒルデの弟ですね」

 

「盾にした張本人の言葉とは思えねぇ!」

 

 

実体ブレード二刀流によって繰り出される連撃。瞬く間に削られ行くシールドエネルギーに顔を顰める一夏だが、セシリアは先程の誤射から射撃を躊躇っているようで援護は期待出来ない。残りはーーー。

 

 

「はあああぁッ!!」

 

 

瞬時加速によって飛び出してきた箒の打鉄。アルファートは一夏を蹴り飛ばして距離を空けると同時に実体シールドでその一撃を受け止めた。

 

 

「セシリア、誤射になっても構わんから援護を頼む!」

 

「ッ!?誰に言ってますの!このセシリア・オルコット、同じ過ちを二度繰り返す程愚かでは有りませんでしてよ!」

 

 

ブルー・ティアーズからの精密射撃を回避、しかしそこに箒の打鉄が迫り、実体ブレードがアルファートに叩き込まれる。

 

 

「一夏!!」

 

「おう、任せろッ!!」

 

 

体勢を崩したアルファートに、白式が瞬時加速で迫る。その手の雪片弍型は零落白夜を発動している。勝負を決めるつもりだ。

 

 

「貰ったああぁぁ!!」

 

 

嬉々とした表情の一夏が零落白夜を振るう。そして、直撃。エレンのアルファートは絶対防御を発動させてしまい、急速にシールドエネルギーを削り取られてゼロになる間際。

 

ポロッと手から球体が滑り落ちた。

 

 

「一夏。貴方は道連れですよ」

 

 

ポカンとした刹那、爆音と共に凄まじい衝撃が一夏を襲った。そのままシールドエネルギーがゼロになった一夏は、エレンと共に緩やかに墜落して行く。

 

 

「お前なぁ……自爆とかマジかよ!これからセシリアにリベンジしたかったのに!!」

 

「三体一とはいえ、流石に一機も堕とせないのはショックですからね。手荒な手段でしたが成功して良かったですよ」

 

 

結局、その後は箒を封殺したセシリアの独り勝ちだったのは言うまでは無いだろう。

 

 

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

 

 

「では、今日はこの辺りで終わりにしましょう」

 

「おー、今日も疲れたなぁ」

 

「まあ、最初の頃に比べればだいぶマシだがな。これもエレンの訓練のお陰だな」

 

「いえいえ、二人の呑み込みが早いからですよ。では、俺はお先に失礼しますね」

 

「あら、わたくしもご一緒してよろしくて?」

 

「ええ、構いませんよ」

 

 

エレンとセシリア。珍しい組み合わせだが、二人が並んで歩くその様は絵になる。

 

一夏はそんな事を考えてボーッと二人を見送りながら、隣の箒に声を掛ける。

 

 

「なあ、箒。あの二人、付き合ってんのかな?」

 

「……はぁ。一夏、お前という奴は、本当にどうしようもない」

 

「え?何だよ、それ」

 

「何でも無い。それよりピットに戻るぞ」

 

「おうよ」

 

 

ピットに戻った二人はISを解除。同時にISの補助が無くなり、疲れがドッと押し寄せる。

 

自分と同じように汗に濡れた箒の横顔が何時もとは違い、何処か艶めかしい。一夏は頭をブンブンと振って、その考えを頭の片隅に追い払った。

 

 

「今日もシンドかったなぁ。でもまあ、エレンの特訓のお陰で俺も大分強くなったよな?」

 

「そうだな、セシリアと三人掛だったとは言え、エレンを撃墜出来たしな」

 

「……でもよ、代表候補生でも無いのにセシリアより強いってどういう事なんだろうな」

 

「……噂だが、エレンのアルファート、未登録のコアが使われているらしいぞ」

 

 

規格外の操縦者。そして、未登録のコア。二人の頭にとある人物が連想されてしまう。

 

 

「いやー、まさかなぁ。そんな分けないだろ~。大体、あの人とまともに会話出来る人、殆どいないしな」

 

「それもそうか。心配のしすぎたな、私達は」

 

 

あはは、と声を重ねて笑っていると、 不意にスライドドアが空く。其処には本日、劇的(?)な再会を果たした一夏のセカンド幼馴染ーーー鳳鈴音がいた。

 

 

「おつかれ。はい、タオルとスポーツドリンク。温いのでいいんだよね?」

 

「おー、助かる。サンキューな、鈴」

 

 

常に厳しいファースト幼馴染とは正に正反対。これが幼馴染の気遣いってヤツか……などとくだらない事を考えてみたり。

 

 

「にしても変わらないねー。一夏は。その健康マニアっぷり」

 

「何を言うか。若い頃から不摂生な生活をしていると歳取ってから苦労するんだぞ」

 

「はいはい、相変わらずジジくさいんだから」

 

 

ケラケラと笑う鈴に釣られ、一夏も笑みを零す。思えば、こうして話すのも中2の冬に彼女が転校して以来になる。何処か懐かしく、そして変わらぬ彼女との掛け合いが、一夏は純粋に好きだった。

 

 

「ねえ、一夏。あたしがいなくて寂しかった?」

 

「ん?ああ、まあな。やっぱ遊び友達が減るのは寂しいだろ」

 

「そうじゃなくってさぁ。もっと、こう言う事があるでしょ?ほら、例えばーーー」

 

 

心なしか少し照れているような鈴に首を傾げる一夏。しかしそこで、完全に空気になっていた箒がワザとらしく咳払いをした。

 

 

「一夏、私は先に戻る。部活棟のシャワーを使って帰るから、今日は先にシャワー使っていいぞ」

 

「おう、サンキューな」

 

「うむ。では、また後でな」

 

 

そのままスタスタと更衣室を出て行く箒。二人からしたら別段何時もと変わらぬ光景であったのだが、それは鈴に大きな衝撃を与えていた。

 

 

次の瞬間、鈴の怒声が一夏を貫き、更に一悶着あったのは言うまでも無い。

 

 

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

 

 

場所は変わり、反対側のピットにはセシリアとエレンが佇んでいた。

 

 

「どういう風の吹き回しですか?俺に用だなんて。貴女はてっきり、一夏の事を好いているとばかり思っていたのですが」

 

「なっ!?ななな何を仰っているのかしら?わたくしは、別にそんな風に一夏さんを見ているワケではーーー」

 

「ふふふ、冗談です」

 

 

悪戯っぽい笑みを浮かべるエレンに気付き、更に顔を真っ赤にさせるセシリアであったが、一度深呼吸。終える頃にはいつも通りの彼女にーーー否、何処か冷たい雰囲気を纏っていた。

 

 

「率直に聞きますわ。先日、我がイギリスが開発していた第三世代型IS『サイレント・ゼフィルス』が何者かに強奪されましたわ。それについて、何か知っていまして?」

 

「……あの、それって機密じゃないんですか?」

 

「質問の答えになっていませんわ」

 

 

冷淡な返答に、エレンの表情から笑みが消えた。同時に思考を巡らせ、直ぐに答えに辿り着いた。

 

 

「……そうですね。結論から言いますと、俺は関係がありません。いや、全く関係が無いとは言えませんがーーーそれはまあ、置いときましょう」

 

「いえ、其処が重要なのですわ。不躾ですが、貴方の調査は我が祖国の誇る諜報員達により済んでおりますの。出生から現在までの動向、全てがデタラメという事もです。

 

単刀直入に聞きますわ。エレン・クロニクル、貴方は『企業』の関係者では無くって?」

 

セシリアは口ではこう言っているが、実際エレンの経歴に関しての調査結果では何一つ怪しいものが出てくることはなかった。なんら特徴のない平々凡々な人生を送ったどこにでもいる少年、しかしセシリアはえれんの卓越した戦闘技術を目の当たりにして、その結果に違和感を覚えていたのでカマをかけたのだ。

 

エレンはそうとは気づかずに、めんどくさそうにため息を零す。

 

「……はぁ。分かりました、話しましょう。しかし、一夏とーーー特に、箒さんには内密にお願い致します」

 

「それは内容次第ですわ」

 

 

更に強まる疑惑の眼差しに苦笑いをもらし、エレンは話し始めた。

 

 

「俺は、篠ノ之束博士によって送り込まれた織斑一夏と篠ノ之箒の護衛です」

 

「……それを証明出来るものはありまして?」

 

「ええ、誠に不本意ながら」

 

 

そう言ってセシリアに見せたのは、首から下げていたドッグタグであった。首を傾げるセシリアにエレンは言葉を繋げる。

 

 

「オルコットさんは、『黒騎士』を知っていますか?」

 

「ええ、勿論ですわ。篠ノ之束の護衛として存在する、未確認ISの通称です」

 

「では、見ていて下さい」

 

 

瞬間、エレンの身体が光に包まれる。そして次の瞬間、目の前に展開されたISにセシリアは目をパチクリさせた。

 

 

「まっ、まさかそのISはーーー」

 

「ええ、世間一般で『黒騎士』と呼ばれるISです」

 

 

白と黒のモノトーンカラーと、鋭角的なフォルムの完全装甲(フル・スキン)。そこには確かに、『黒騎士』と呼ばれるISがいる。

 

 

「ちょっ、ちょっと待ってくださいまし!エレンさんのISはアルファートでは無くって?」

 

「ええ、そうですよ。単純な話ですが、俺はコアを二つ持ってるんですよ」

 

「なっ!?そんな事がーーー」

 

「俺の飼い主はあの天災ですよ?ISのコア位で驚く事も無いでしょう」

 

 

ISを解除、『ストレイド』をステルスモードに移行させたエレンは左手のアームバンドーーー待機状態の『アルファート・カスタム』を見せながら、さも当たり前のように言う。

 

 

ISのコアは完全なブラックボックスと化しており、篠ノ之束博士以外には製造が出来ないと言われている。しかもとある日を境に製造中しした為、その絶対数は467個。未登録とは言え、コアを二つも保有している個人ーーーそれがこの世界に於いてどれだけイレギュラーで危険な存在かは説明するまでも無いだろう。

 

 

「どうですか?信じて頂けましたでしょうか」

 

「えっ、ええ。一夏さんは兎も角、箒さんまで訓練を行ってる理由も漸く理解出来ましたわ。……そして、わたくしを鍛える理由も」

 

「気を悪くしたのなら謝ります。すいませんでした」

 

「いえ、わたくしは感謝こそすれど恨んでなどいませんわ。貴方からしたら、手駒が増えた程度にしか考えていないのでしょうけど……。それで、貴方のような強者からご指導頂けるなら安いものでしてよ」

 

「意外としたたかですね、貴女は」

 

「女ってそういうものでしてよ」

 

 

二人は顔を見合わせ、笑い合う。この日、セシリア・オルコットは本当の意味でエレン・クロニクルの共犯者となった。

 

 




文字数が多めになってしまいました(._.)


次回はクラス対抗戦でお送り致します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。