最近忙しいのと……そして何より、ACVDのお陰でなかなか執筆が出来ず仕舞いでして(._.)
いやー、VD面白いです。Vのオンライン速攻で投げた私ですが今回は楽しめてます。マッチング速度も素晴らしいですし。……何か宣伝みたいになってますね。
最後に一つだけ。武器腕のブレードマジでイケメンです。
「……来ましたね」
地面を揺らす衝撃。そして次の瞬間には警報が鳴り響き、赤いランプが点滅する。相変わらず人気の無い通路にその身を置くエレンは、手元の携帯用ディスプレイに映し出される異形のISを見て、小さくため息をもらした。
形状は異質の一言に尽きる。灰色のカラーリングを施されたその姿は今時珍しい
そしてエレンが何よりも呆れたのは、先程アリーナのシールドを一撃で粉砕したその火力である。
「予定スペックより高くなってるじゃないですか、あの駄兎……」
大方、作ってる途中にテンション上がってこうなったのは察しがつく。というか、これでもフィオナ辺りが止めてくれたのだろう。もし彼女がいなかったら、更にデタラメなスペックになっていたに違いない。
若干ながらデータ上のスペックに違いはあれど、今の一夏になら問題無いだろうとエレンは判断した。無論、1人ならば手に余る相手だが今回は僚機として中国の代表候補生がいる。彼女の技量は見た所それなりだし、そこそこの援護は期待出来そうだ。
「お手並み拝見です、一夏」
気付かぬウチに笑みをもらしてた事に気づいたエレンは取り繕うようにそう呟き、万が一の為に移動を開始した。
ーーーーーーー
ーーーーー
ーーー
「何なんだ、アイツ」
突如として現れた未確認のIS。機体登録もされていない、通信にも応じないそれは正しくイレギュラー。一夏と鈴は休戦し、その動向に意識を向けていた。
「鈴。あれ、何なのか分かるか?」
「見た事の無い機体ね。多分、イレギュラー。……一夏、あんたは先にピットに戻りなさいよ」
「お前はどうすんだよ?」
「暫く戦って時間を稼ぐわ。何方にしろ、あの機体がアリーナのシールドを破壊する程の火力を持っている事が分かった以上、放置出来ないしね」
「で、鈴は俺が大人しく引き下がるように見えるのか?」
イタズラっぽく返す一夏に鈴は呆れたような、しかし何処か楽しげな表情を浮かべるとため息をもらす。
昔から一夏が無茶をしようとする時、鈴は決まってこう返していたのだ。
「仕方ないわね。あたしが手伝って上げるから感謝しないさいよ」
昔に戻ったかのような錯覚に、一夏と鈴は思わず笑みを浮かべ、そして互いの武器の切っ先を打ち合わせた。
その表情に恐れは無い。
『織斑君、鳳さん!聞こえますか!?今すぐ教員部隊がISで鎮圧に向かいます!今すぐアリーナから脱出して下さい!』
秘匿通信で焦った様子の真耶から通信が入る。その声には、いつもより何処か厳格さが宿っているように思えた。
『俺と鈴でヤツを足止めします。その間に先生方は生徒の避難を優先させて下さい』
『そっ、そんな事認められません!織斑君達だって生徒なんですよ!?それで貴方達が怪我をしたら元も子もありません!』
『先生も最初の一撃、見ましたよね?ここで俺達が逃げて、アイツが1人になったらあの火力が客席に向かないとは限らないじゃないですか』
『それは!……そうですが』
頭では理解出来ても、心で納得出来ない真耶は言葉を詰まらせてしまう。そんな通信に割り込んだのは千冬だった。
『……織斑、鳳。10分だけ時間を稼いげ。但し少しでも危険だと感じたら直ぐに引き上げろ。いいな?』
『『了解!』』
通信を切った二人は大きく頷くと、未確認機との戦闘を開始した。
ーーーーーーー
ーーーーー
ーーー
「織斑先生!いいんですか!?生徒達にあんな危険な役目をーーー」
「本人達がやると言ったんだ。やらせてみようじゃないか。それに鳳は代表候補生だ。引き際も弁えている」
千冬はすでに犯人の目処を立てている。推測に過ぎないが、護衛として派遣されているエレンが戦闘に介入していない点を考慮すれば十中八九は正解だろう。
無論、それでもただ1人の肉親が危険な場所にいるのだ。まったく心配では無いと言ったら嘘になる。
「でもーーー」
「山田先生。糖分を取れば少しは落ち着くぞ」
コーヒーを注いだ千冬は砂糖の横にある塩を何度かカップにいれる。普段の彼女らしからぬその行動に目を丸くした麻耶だったが、次の瞬間には納得したように手を合わせた。
「やっぱり織斑先生も心配なんですね!織斑君は実の弟さんですし」
「なんでそんな話になる。第一私はーーー」
「だって、さっき入れてたの塩ですよ?」
「……何故こんな所に塩が置いてある?」
「何ででしょうね?で、やっぱり織斑君の事が心配でーーー」
水を得た魚のように幕し立てる真耶に千冬の鋭い眼光が飛ぶ。そしてずいっ、と今しがた多量の塩をいれたコーヒーを突き出した。
「山田先生は疲れているようだな。コーヒーでも飲むといい」
「……い、いや。私は喉乾いてないんで大丈ーーー」
「飲むといい」
「はっ、はいぃ……」
千冬の有無を言わさぬ態度に涙目になってしまった山田先生は仕方無しにコーヒーを受け取ると、まずーと嘆きながらも飲み始める。
そんな真耶を尻目にセシリアが千冬に詰め寄った。
「織斑先生!何故直ぐに助けに行かないのですか!?教員部隊が鎮圧すれば一夏さん達が危険な目に合う必要は無いのでしょう?」
「これを見ろ」
手元のコンソールを叩き、画面を変える。其処に映されたのはアリーナのステータスページ。何処もかしこが真っ赤に染まっており、扉は殆どがロック、更に遮断シールドまで展開されているとの表記が現れていた。
「ハッキング……このIS学園にですか!?相手は誰ですの?」
「不明だ。但し、相当なハッカーなのは確かだ。現在も三年の精鋭と教師がシステムクラックを実行中だが、まだ時間が掛かるだろう」
「そんな無謀な人間がいるなんて……」
信じられないといった様子のセシリアを尻目に、千冬は部屋を見渡す。そして一つの変化に気づいてしまった。
「……篠ノ之は何処だ?」
「箒さんですか?先程まで其処にーーーあら?」
千冬の表情が鋭いモノに変わるが、それに気づいたモノはいなかった。
ーーーーーーー
ーーーーー
ーーー
「ぜえぇぇいッ!!」
零落白夜、起動。接近した白式はその刃を振るう。対する未確認機は各所に取り付けられたスラスターで無理矢理回避機動を行って離脱。
そこから身体を駒のように回転させ、更に掌からレーザーを放って白式を迎撃。其処に甲龍の『龍砲』による牽制が行われ、その隙に白式は離脱する。
このやり取りは既に三回目であり、レーザーの範囲から離脱した一夏はため息を吐いた。
「くそっ、何なんだあの機体!?動きが予測出来ねぇ」
「あたしも初めて見るわ、あんなデタラメなの。にしても一夏、そろそろ決めないとヤバイわよ?」
お互い目立った被弾は無いモノの、当初の戦闘でのダメージも残っておりシールドエネルギーに余裕は無い。零落白夜を使用した白式は特に顕著で、既に3割を切っていた。
「わかってる。もう一回だ」
「またやる気?三回も失敗してるし、作戦を変えた方がいいと思うけど」
此処で一夏の中で何かが引っかかる。
(……そうだ。零落白夜で攻撃した時、アイツの取る行動が毎度同じだったんだ。強引にスラスターを吹かして離脱、回転してレーザーの繰り返し。……なんだ、この違和感は)
「なぁ、鈴。あのIS、変じゃないか?」
「そういえば、あたし達が話してる間は攻撃して来ないわね。まるで話を聞いてるみたいに」
「それもそうだし……あのIS、本当に人が乗ってるのか?動きがワンパターンじゃないか?まるで、予め設定を組み込まれたプログラムみたいだ」
「無人機だって言いたいの?仮にそうだとして、どうなるのよ」
「遠慮無く全開の零落白夜で叩き切れる」
不敵な笑みを浮かべ、一夏は答える。
ISのシールドを無条件で破る零落白夜。それを発動する時、一夏は深い斬撃を入れることを躊躇して使っている。無論、それは彼の技術が未熟だという側面もあるのだが、主な理由はあまりにも高威力な為まともに当てたら操縦者に甚大な被害を被らせてしまうからだ。
しかし、もしアレが無人機ならば。迷い無く剣を振れるならば。一夏は、その刃を未確認機に届かせる自信がある。
「そもそもその攻撃が当たらないじゃないの」
「次は当てるさ。それに策もある」
「ふふふ、言ってくれるじゃない。じゃあ、あり得ないと思うけどアレを無人機だと仮定して攻めてみましょうか」
「頼りにしてるぜ、鈴」
「で、あたしは何をすればいいの?」
鈴はニヤリと不敵に笑う。それは昔の彼女がよく見せた、『もし間違っていたら駅前のクレープを奢らせる』という顔。一夏はこんな状況でも変わらない幼馴染に苦笑いを返す。
「合図をしたら全力でアイツにーーー龍砲だっけ?あれを撃ってくれ。最大威力で」
「いいけど当たらないわよ?」
「いいんだ、それで」
これ以上の問答は無用。一夏が集中し始めた事に気づいた鈴は小さく頷くと、龍砲のチャージを開始する。
そして白式が事を起こそうと突撃体勢を取った刹那。キーンとハウリングが響き、次の瞬間には聞き慣れた少女の声が響いて来た。
「一夏あぁっ!」
驚きつつハイパーセンサーで確認すると、中継室に箒がいる。肩で息をする彼女の表情は憤っているようにも、そして不安そうにも見える矛盾したモノであるが、しかし今の一夏にはそんな事を気にする余裕は無かった。
「箒!?速くそこから逃げろ!!」
未確認機が完全に箒の事をロックしている。両腕を前方に翳し、エネルギーチャージ。その様相に一夏は、未確認機がアリーナのシールドを突破した初撃を放とうとしている事を直感的に理解する。
「鈴、龍砲頼む!」
「まっかせなさい!……って、一夏!あんた邪魔だからどきなさいよ!?」
何故か甲龍の前に立ちはだかる白式に通信を送るも、帰ってくるのは早くしろという淡白な通信のみ。鈴は半ばヤケクソ気味に怒鳴った。
「あー、もう!どうなっても知らないからね!!」
龍砲、最大威力で発射。
白式のハイパーセンサーがそれを伝えると同時に瞬時加速を発動。背後に『丁度』現れた莫大なエネルギーを速度へと変換し、通常の瞬時加速を遥かに上回る速度で飛び出した白式は瞬く間に未確認機に接敵し、そして絶対的な威力を誇る青白いエネルギーブレードでその両腕を両断した。
切断箇所に雷が迸り、そして小爆発。それと同時に一夏は秘匿通信でとある人物へ通信を飛ばした。
『狙いは?』
『完璧ですわ』
刹那、いつの間にか上空にて待ち構えていたブルー・ティアーズによる一斉射撃。
四つのレーザービット、そしてその手のスターライトmk-3から放たれた五つの蒼い軌跡は吸い込まれるようして未確認機へと向かい、そしてその装甲を抉った。
爆音。そして大破した未確認機が墜落して行く。
『流石だよ、セシリア』
『ふふふ、一夏さんこそ。いい作戦でしたよ。賭けの要素も大きかったですけど』
「ふぅ、何にしてもこれで一件落着ーーー」
セシリアとのプライベート・チャネルを閉じた一夏がそう漏らした刹那。白式のセンサーが更なる情報を告げる。
ーーー上方より熱源多数接近。『企業』所属のコアと判明。ロックオンされています。
それは誰も予想していなかった乱入者。新たな侵入者は、バイザー越しに笑みを浮かべた。
ーーーーーーー
ーーーーー
ーーー
待機していたエレンは新たな侵入者を感知すると直ぐに移動を開始し、そして秘匿通信で束へと通信を送った。
『此方エレン。学園上空に『企業』のISが出現しました。数は三機。何れも俺が依然に撃退した機体です』
『こっちでも確認したよ。まさか束さんの包囲網を潜り抜けるとは……やっぱり『企業』には少し出来るヤツがいるみたいだ』
束が他者の能力を認める事など滅多にない。そしてその言葉に込められた苛立ちを感じ取ったエレンだが、追及はしなかった。
『目的は恐らくゴーレムの回収。もしかしたら、白式も狙われている可能性が有り。『ストレイド』を出しますか?』
『……お願いするよ。いっくんと箒ちゃんの安全を第一に、ゴーレムはなるべく企業の連中に奪われないようにして』
『了解です。通信終わり』
通信を終えたエレンはそのまま外に出る。辺りに誰もいない事を確認した彼が『ストレイド』を呼び出したのとほぼ同時に、爆音がアリーナに響き渡った。
ーーーーーーー
ーーーーー
ーーー
「あー、下にいるIS共に告げる。ウチらは『企業』所属の特殊部隊だ。『たまたま』近くで任務活動中、このIS学園が襲撃を受けている事を感知して救援に来た。感謝しろ」
「生憎だが、襲撃は終わったよ。わざわざありがたいが、お引き取り願おうか」
一夏が言葉を返すと、先程と同じ少女が苛立たしげに鼻を鳴らした。
「皆まで言わなきゃわかんねーか、クソガキ。ウチらがその未確認機回収してやるからそこから消え失せろ。さも無くば消すぞ」
それは明確な敵対宣言。幾ら世界に影響力を持つ『企業』と言えども完全中立地帯を貫くIS学園を襲撃したとなれば、それこそ各国から狙い撃ちされ兼ねない。
そんな簡単な事がわからないほど愚かでは無い少女ーーーツヴァイは、ニヤリと不敵な笑みを浮かべて言葉を重ねた。
「言っとくが、IS学園を覗き込んでる各国の監視衛星はジャミングしてる。今ここで何が起ころうと、何とでも理由はつけられんだ。……もう一度言うぞ、ガキ共。退け」
「嫌だね」
「そうか。……フィア、ブチ破れ」
「了解しました」
一夏を一蹴したツヴァイが端的に告げると同時、フィアが背部のレールカノンとグレネードランチャーを発射。アリーナのシールドが音を立てて崩れ落ちて行く中、一夏達に通信が入る。
『アリーナにいる専用機持ち達。聞こえているな?お前達の目の前にいるのは正真正銘の戦争屋だ。一介の学生がどうこう出来る相手では無い。織斑と鳳のお陰で生徒の避難は既に済んでいる。教員部隊が其方に向かうから今すぐに離脱しろ。……いいか、絶対に戦うな。お前らでは、死ぬぞ』
恐らく、その時の千冬の声は今迄聞いた中でも最も重い響きを持っていた。納得がいかないのか鈴とセシリアが何やら抗議をしている隙に、三機のISがアリーナに侵入して来る。
ゆっくりと高度を降ろして行き、やがて着地した。
「お前が世界で初って事になってる男性操縦者か。確か、織斑一夏だったな」
「……だから何だよ?」
一夏はツヴァイに注意を払いつつ、白式のステータスをチェックする。残シールドエネルギーは二割。実体レベルの損傷は皆無。但し先程の無理な加速により背部のウィングスラスターの出力が17%の低下。
まだ、戦える。
「お前の姉は確か、織斑千冬ーーーブリュンヒルデだったよなぁ?こりゃあ、都合がいい。テメェをいたぶればあの女も出てくんだろ」
残忍な笑み。ツヴァイへの嫌悪感を隠そうともせずに睨みつける一夏だったが、そんな二人の間に割って入る影がある。
「ツヴァイ、任務を優先すべきです。いくら雑魚と言っても一応は専用機持ち。無駄な時間を喰えば教職員の部隊まで出張ってきます」
「ウチは『ツヴァイ』だぜ?『フィア』のお前が指図出来る人間じゃねぇんだよ」
吐き捨てるように告げるツヴァイに、フィアはため息を漏らす。反論しようにもツヴァイの意見が正しい。自分は『フィア』で相手は『ツヴァイ』。何方の意見が尊重されるかは明白である。
「……分かりました。ではプランを変更します。今、其方に送ったのでご確認を。ドライも付き合ってくれますか?」
「楽しそうだしおっけ~」
「ではツヴァイ。時間になったら離脱を」
フィア、ドライのアルマデウスが離脱してゆく。ドライは未確認機を抱えてIS学園外へ。フィアはその正反対ーーー学園方面へと飛び去る。
それに気付いた一夏達が慌てて後を追おうすると、その前にツヴァイが立ち塞がる。
「おっと、オメェらの相手はウチだ。月並みだが、ウチを倒して先に進みな」
「お前ら、一体何が狙いなんだよ!?あの未確認機の回収に来ただけじゃなかったのか!?」
「そりゃあ『企業』の目的だよ。ウチの目的は、織斑千冬をぶっ殺す事なんだ。やる事やりゃあ、あのジジイも文句はねぇだろ」
ツヴァイの言葉に唖然とする一夏を庇う様に鈴とセシリアが出て来る。
「一夏、あんたは下がりなさい。アイツはあたし達が受け持つから」
「ええ、それがいいですわね」
鈴は先程までの戦闘により消耗しているが一夏程では無い。セシリアに至ってはほぼ完璧なステータス。最も経験が浅く、そしてエネルギーも減少している一夏を庇うのは当然の事なのだが、しかし一夏は納得出来ない。
「……俺も戦う。アイツの狙いは千冬姉なんだ。それを知って逃げる程俺は腰抜けじゃないし、そんな事したら俺が俺じゃなくなるんだよ」
「はぁ。昔っから強情ね、あんた」
「ふふふ、でも一夏さんらしいですわね」
「……おいおい、そんなチープな青春ごっこをウチに見せんじゃねぇ!本当に殺してやりたくなるじゃねぇか」
バイザーのせいでツヴァイの表情は分からない。それでも三人は目の前の少女の発する濃厚な殺意に思わず身震いしてしまう。
「行くぞ、素人ども」
苛立たしげに告げたツヴァイが瞬時加速を発動しようとした刹那、上空からナニカが物凄い速度で落下。アリーナに激突した。
その正体に気付いたツヴァイは驚きの声を上げ、頭上に顔を向ける。其処には白と黒のカラーリングが施されたISが佇んでいた。
ーーーーーーー
ーーーーー
ーーー
ストレイドを起動したエレンは直様アリーナに寄るつもりだったが、襲撃者が三手に別れた事に気付いて一瞬だけ思考した。
一機はIS学園の方向へ。恐らくは教員部隊への囮だらう。先程、織斑千冬によって保護された篠ノ之箒がいるから優先事項は高い。しかし教員部隊がいる以上、無理にエレンが追う必要は無いだろう。
一機はIS学園を離脱するコースを取っている。四方を海に囲まれているIS学園に急遽出現した三機のIS。恐らく、IS学園のレーダーに感知されない程のステルス性を持った潜水艦か航空機が控えているのだろう。そしてこのISは其処へ未確認機を運搬する役割のようだ。
優先事項は第二位。取り敢えずは保留。
最後の一機はアリーナに残り、一夏達と相対している。『企業』は表沙汰にしていないがエレンのいた頃には既にIS適性を持つ男性の『造り方』を確立している。とは言っても、エレンのように様々な『オプション』を付ける事が出来なかった為、莫大なコストと能力が不釣り合いだとされ殆ど製造はされなかったのだが。
兎も角、そんな関係で『企業』に対する織斑一夏という男性操縦者への執着は殆ど無い。にも関わらず残っているのは束の作った白式が狙いか、はたまたはエレンの推測出来ない別の理由か。
優先事項は第一位。最優先で介入すべき事柄だ。
束からの命令を忠実に果たすならば今すぐに一夏達の元へ向かうべきだろう。しかしエレンは知っている。『企業』には『天災』程じゃないにしろ、『天才』と呼ぶに相応しい人間が何人もいる事を。
そんな彼らの元に束お手製の無人機を強奪されるのは非常にマズイ。データを解析した『企業』が更なる飛躍を遂げ、今以上の脅威を手にするのは今後の事を考えても避けるべきなのだ。
其処まで考えを巡らせて、エレンは目標を学園を離脱しようと動き出したISーーーアルマデウス・アイテールへと狙いを定めた。
固定設置された三機のスラスター、そして背部の非固定浮遊部位のウイングスラスターニ基。それらに同時にエネルギーをチャージ。そして、連続で瞬時加速を行う。
|個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)と呼ばれる高等移動技術を使用。元々のブースター出力の高さも有り、爆発的な速度を瞬時に手に入れたストレイドはアルマデウス・アイテールとの距離をものの数秒で縮めた。
背後からの急な接近に気付いたアイテールが慌てて機体を反転させるが、遅過ぎる。脚部エネルギーブレードを展開したストレイドの二連撃を受けて大きく吹き飛ぶ。
慌ててPICを制御して体勢を立て直すアイテールに、ストレイドは両腕に備え付けられたブレードアンカーを射出した。
「くぅ!?」
一本目のアンカーをシールドて防いだモノの、直ぐに迫る二本目のアンカーがアイテールを捉える。そのまま回転。遠心力を乗せてアリーナの方へ投げ飛ばすと同時に漆黒の長刀を
甲高い音と共に切り捨てられたのはアイテールの物理シールドと、機能を停止したゴーレムのコア。計算通りの結末に内心で笑みを浮かべたエレンは最後の仕上げと言わんばかりに、アイテールの胴体に踵落としを叩き込んだ。
ゴーレムの残骸と共にアリーナへと激突したアイテール。それに驚いた一夏達とツヴァイだったが、それも一瞬。直ぐに上空で佇むストレイドへと注目が集まる。
そしてその姿を見つけたツヴァイは歓喜に口元を歪めた。
「誰かと思えば首輪付きじゃねぇか!さて、どうすっかなぁ。首輪付きと戦るか、織斑一夏を殺るか……」
「また侵入者……お前ら、一体何なんだよ!」
目まぐるしく変化する状況。この場で最も経験が浅く、故に混乱していた一夏は何の策も無く突貫。
標的は目下の敵であるツヴァイ。笑みを深めたツヴァイも大型のバスターブレードを構え、迎撃の体勢に入る。
「一夏さん!?ああ、もうっ!」
「このバカ!考え無しにッ!!」
慌ててフォローに入るセシリアと鈴だが、それよりも白式とアルマデウス・グラディウスの接近の方が早い。焦る二人の視界に写ったのは、両者の間に割って入った黒と白のカラーリングが施された機体であった。
「邪魔を、するなあぁぁあ!!」
白式は構わず突撃。立ち塞がるストレイドに向かって雪片弍型を振るうがそれを綺麗に受け流されると同時に蹴り飛ばされる。
そんな白式に目もくれずに機体を反転、目前まで迫っていたグラディウスのバスターブレードを漆黒の長刀で受け止めた。
「何だ、ウチとはちゃんと遊んでくれんのかよ?そりゃあありがてぇなぁ!!」
力任せにブレードを振り切り、蹴りをお見舞いする。少し後退したストレイドに向けてシールドに内蔵されてるビームマシンガンを放つ。
しかしストレイドは即座に体勢を立て直すと同時に空中へ離脱。長刀の代わりに展開したサブマシンガンをグラディウスにばら撒き、弾幕を形成。その隙にセシリアに秘匿通信を送り、白式と甲龍を戦闘領域から離脱させるように伝える。直ぐに行動を起こした彼女はシールドの修復が追い付いていないアリーナの上空から離脱して行った。
「チッ、織斑千冬と戦えるチャンスだってのにっ!お前、マジでウザってぇ……行けよ、ルシオラぁ!!」
小型ビット兵器『ルシオラ』を四基射出。自身もバスターブレードを手に突撃。
先ずはビットによる牽制射撃。死角をつくというよりも、ストレイドの動きを制限するかのような弾道のレーザーを躱し、身近の一機を脚部エネルギーブレードで両断して見せる。
しかしそれはツヴァイが意図的に仕掛けた誘導。ストレイドが脚部ブレードを展開した瞬間に笑みを浮かべたツヴァイは瞬時加速を発動。一気に距離を詰める。
「おらああぁぉ!!」
振り下ろされるバスターブレード。しかしストレイドは全身に備え付けられた小型スラスターで姿勢を制御。無理矢理蹴りを繰り出して脚部ブレードでその一撃を受け止めた。
しかしツヴァイの表情には尚も笑みが張り付いている。
「甘いぜ、首輪付きぃッ!!」
ハイパーセンサーが背後から迫る物体を捕捉。それが何なのか理解すると共に、背部からの衝撃。同時に目の前のグラディウスがバスターブレードを叩き下ろす。
咄嗟に両手のサブマシンガンを盾にしたものの、サブマシンガンは爆散。勢いを殺しきれずに地面へと真っ逆さまに向かうストレイドに、『ビームによる刃』を展開した二基のビット、更には三基のビットがレーザーを放ちつつ追撃を仕掛ける。
「どうだよ、新作のBT兵器『ゼノ=ルシオラ』のお味はぁッ!?」
五基のビットの同時使用。更にその内のニ基はエネルギーブレード搭載型の特殊ビット。ツヴァイと言えどもフル稼働中は操作に集中しなければなら無い。
故に、次の瞬間に一瞬だけビットの操作に乱れが生じてしまった。
『
無機質な機械音がそう告げると同時に、薄い緑色の粒子が散布。それはストレイドの周囲で球体のような形をとると、迫り来るレーザーを打ち消し、ゼノ=ルシオラの斬撃は弾き返して見せる。
「クソ、またその装備かよ!」
悪態をついたツヴァイは一度ビットを回収。シールドのビームマシンガンで弾幕を張りつつ後退。対するストレイドは武装を召喚。その手に現れたのは漆黒の長刀。
お互いに間合いが空くと、ストレイドはPAを遮断した。
「おい、ドライ!テメェ何時寝てやがる!さっさと援護しろっ!」
「怪我人に鞭打つなんて酷いよ~」
「グダグダ言うな。ウチらはそんな柔に造られてねぇだろうが」
「それもそうか~」
ここでアイテールも参戦。シールドは先程失ったが、その他の装備は健在。シールドの代わりに物理ブレードを召喚し、戦闘態勢をとる。
対するストレイドはとある人物と秘匿通信を行っていた。
『クロニクルだな?此方は織斑千冬だ。現状の把握がしたい。そちらの状況を端的に報告しろ』
『敵戦力は『企業』の第三世代型IS三機。目的は恐らくは例の無人機かと。無人機のコアは破壊しましたが、企業側へ無人機の技術漏洩の危険性があるので出来れば学園で回収して頂きたいですね。
尚、敵機がわざわざ戦闘を仕掛けた理由は不明。現在は此方にニ機、教員部隊の方に囮として一機ですね』
『成る程。お前には後で色々と聞きたい事があるが……今はいい。目の前の二機は鹵獲出来るか?』
『鹵獲となると少々厳しいですね。撃墜なら可能です』
『……分かった。そちらの対応は任せる。私も打鉄で出る。直ぐに囮役のISをどうにかして其方に向かう』
『了解。通信終わり』
長刀を正眼に構える。そして再びPAを展開、そして個別連続瞬時加速による超速度接近を行う。
「チィっ!?相変わらず信じられねぇ速度だッ」
辛うじてその一撃をバスターブレードで受けたツヴァイ。同時に切り離された二基のビットによる射撃を行うも、それを読んでいるかのように上昇。同時に左腕のブレードアンカーを射出しビットの一機を破壊した。
「隙ありぃ~!!」
ロックオンアラート。同時に二門のレールガンが火を吹く。
ストレイドは一瞬だけPICの補助とブーストをカット。自然落下する事で僅かに狙いを逸らさせると同時に再点火。瞬時加速を用いてアイテールとの距離を詰める。
「も~!デタラメな動きだなぁ~」
呆れたような声を漏らし、機体を後退させつつレーザーライフルによる牽制を行う。しかしストレイドはわずかに機体を逸らし、時には長刀で打ち払って距離を詰める。
そして、間合いに入る。
全ての勢いを乗せた刺突。圧倒的な威力を誇る点の攻撃。シールドとISのコアを容易く両断した長刀の切れ味ならば、絶対防御を貫通しても何らおかしくない。
咄嗟に物理ブレードでわずかに切っ先をそらす事に成功。掠めた頬から鮮血が舞い、ドライの背筋に嫌なモノが駆ける。しかしまだ終わらない。
返す刃で袈裟斬りを放とうとしている事に気づいたドライは考えるよりも先に、ミサイルポッドを起動させた。
連続する爆音。多連装ミサイルは至近距離で誘爆し、アイテールへもダメージを与えた。しかし爆発の衝撃で何とかストレイドとの間合いを開ける事に成功。
外部装甲に若干の破損が見られるストレイドが更なる追撃を仕掛けようとした刹那。ハイパーセンサーが捉えた情報に従い機体を反転。更に同時に長刀を二度振るい、今まさに牙を剥かんとしていた二基のブレードビットを切り落とした。
「おっらああぁぁあ!!」
今度は頭上。叩き降ろされるバスターブレードの一撃を長刀で受け流す。続く剣戟を捌いていると、不意にツヴァイがその場を離脱。同時に警告音。それが何なのかを理解するよりも上昇瞬時加速。追跡して来るミサイルをバレルロールで誘爆させ、その間も止む事のないレーザーとレールガンによる砲撃を躱し、叩き切る。
「本当に操縦者は人間か?この量の砲撃をやり過ごせるか、普通?」
「ツヴァイ~。そろそろ時間やばいよ~?一気に行くよ~」
ミサイルポッド、レールガン、レーザーライフルの一斉射撃。当てると言うよりもばら撒くという方が正しい砲撃。同時にレーザーライフルをパージし、両手に物理ブレードを手にしたアイテールがレールガンとミサイルをばら撒きつつ接近。
「おらああぁぁ!行くぜえええぇ!!」
ツヴァイは瞬時加速を発動。アイテールとは真逆の、挟み込むような軌道で迫る。
ストレイドは再びPAを起動。同時に居合の構えを取ると、個別連続瞬時加速を用いて一気に加速した。
狙いは、アイテール。
ストレイドは爆発的な加速を得た代わりに直線的な軌道を辿る。それ故にPAを起動し、砲撃に備えているのだがその防御も完全というわけではなく、一定以上の貫通力を持つ兵装ーーー今回ならば、アイテールのレールガンがそれに相当する装備ーーーは威力を減衰するだけに留まってしまう。
被弾。被弾。被弾。短時間に連続した被弾によりアラートが響く。装甲が抉られるが、まだ行動に支障が出るレベルでは無い。ならば突き進む。
「くっ!?このぉ~!」
至近距離から放たれる二門のレールガン。被弾により響くアラート。しかし間合いに入った今、そんなモノは既に関係無い。ストレイドは、居合を放つ。
「くぅっ!?」
咄嗟に二本の物理ブレードで防ぐモノの、長刀はそれを容易く両断。さらに装甲をーーーその先の肉体をも切り裂き、決して少ないない量の鮮血が舞う。体勢を崩したアイテールに対し、ストレイドは脚部ブレードで二連撃を見舞い、的確に背部の非固定浮遊部位に備えられていたレールガンを破壊する。
緩やかに墜落して行くアイテールを尻目に、機体を反転。目前まで迫っていたバスターブレードの一撃を長刀で受け止めた。
「てめぇ……よくも、よくもドライをッ!」
力任せにバスターブレードを振り切り、ストレイドを弾き飛ばす。同時にビームマシンガンを放ちつつ距離を詰め、バスターブレードを横に薙ぎ払う。
マシンガンをPAで無力化し、バスターブレードの一閃を上昇して回避。長刀を振り下ろす。
グラディウスはシールドでその一撃を防ごうとするが、長刀はバターを切るように容易くシールドを切り捨てて見せる。そして一瞬の隙の内にブレードアンカーを射出。グラディウスを捉え、そのままアリーナの壁に叩きつけた。
「くそっ、ふざけた武器使いやがって!シールドの意味がねぇじゃねぇか」
悪態を漏らしつつ、その瞳に宿る闘志は衰える所か更に増して行く。獣じみた笑みを浮かべるツヴァイが戦闘を開始しようとした刹那。上空から何かが降って来た。
爆音と共に地面に激突したそれは、教員部隊の囮に出ていた企業のISであった。
「フィア。てめぇ、此処で何してる?しくじったのかよ?」
「ええ、計算外の相手が出現しまして。……ほら、アレです」
フィアが指差す先にいる打鉄を見て。その搭乗者を見て。ツヴァイは、雄叫びと共に飛び出した。
「見つけたぜぇ、織斑千冬うぅ!!」
狂気じみた笑みを浮かべたツヴァイの突貫を物理ブレードで受け止めた千冬は怪訝そうに表情を歪める。
「何だ貴様は。私に何か用か?」
「ったりめぇだろうが!テメェが『ツヴァイ』さんを撃墜したんだろう!?」
一瞬驚いたように目を開いたのは千冬とエレン。それぞれが思い当たりがあり過ぎたのだ。
千冬は暫く何か考えるような素振りを見せると、やがて小さくため息を漏らした。
「いい事を教えてやろう。確かに撃墜はしたが、殺してはいない。彼は生きている」
「なっ!?嘘をつくんじゃねぇ!なら何故ウチらの元に戻ってこねぇ!!」
「知らんな。本人に聞け」
面倒くさそうに話を終わらせた千冬がツヴァイを弾き飛ばす。懲りずに再び突撃しようとした刹那、ツヴァイのーーー正確には、ツヴァイ達の元に秘匿通信が入った。
『貴様ら。何を好き勝手やっている』
『黙ってろ、ジジィ!漸くあの人の仇を見つけた!今更引けるか!!』
『……ドライ、フィア。無人機とやらのサンプルはどうした?』
『コアは首輪付きにやられちゃいましたけど、その他の外装は既に拡張領域に量子変換済みです~』
『それぞれの被害状況は?』
『フィア機は攻撃ユニットはほぼ全壊。離脱用の機動パッケージは使用可能です』
『ドライ機は背部の非固定浮遊部位の武装が破損~。通常機動には問題なしです~。ついでに私も一撃貰ってます~。保護機能のお陰で今の所は大丈夫ですが、エネルギーが切れたらヤバイです~』
『……ツヴァイ機はビットが殆どとシールドが欠損。その他被害は無し』
『了解した。ならば帰投しろ。今すぐにだ』
『だから言ってるだーーー』
『黙れッ!!機関の人形風情が偉そうに!貴様らの勝手な行動で既にどれだけの後始末が必要になっているのかわかっているのか!?これ以上の命令違反を行うならば、即刻
生死の決定権は企業にある。ツヴァイ達とてそれがわからない訳ではない。ツヴァイは血がにじみ出る程に唇を噛みしめると、小さく工程の言葉を返した。
『ならば回収地点へ向かえ。貴様らの処罰は追って伝える』
一方的に通信が切られると、グラディウスは思い切り地面にバスターブレードを突き立てる。やがてそれが粒子となって消える頃、憎々しげに千冬へと視線を向けた。
「織斑千冬。今日の所は引いてやる。だが忘れんな……いつか絶対殺してやる。お前もだ、首輪付き!」
吐き捨てるようにそう告げると同時に一気に離脱して行く三機。それを見送った直後、エレンの元に千冬からの秘匿通信が送られて来た。
『……色々言いたいことはあるが、お前はどうする?一応、侵入者という事になっている以上、お前の事を放っておくわけにはいかないのだが』
『一度離脱して適当に学園に戻りますよ。後でまた、連絡下さい』
『わかった。通信終わり』
ストレイドもまたその場を後にする。
半壊のアリーナに取り残された千冬は、これからの事を考えるとため息をつかずにはいられなかった。
次回は文字数少なめの予定なので早めに投稿出来ると思います。
……きっと。