「綺麗だなぁ……」
自宅の屋上で寝そべりながら、煌々と輝く満点の星を見ていた。
冬は空気が澄んでいて星が綺麗に見える。唯一の癒しで、一番落ち着ける時間だ。今となってはたった一つの心の拠り所でもある。
「この星空…ばあちゃんも見てるかな……」
ーーーつい最近までは、ばあちゃんがいたんだ。俺の1番の理解者で、いつも支えになってくれていた。
そんなばあちゃんが、3日前に死んだ。元々冷めきっていた家族が更に冷めた。元々家の中でさえ存在が薄かった俺は、存在意義ですら失った。
もう嫌だ。辛い。つらい。ツライ。
3日は頑張ったんだ。もう終わってもいいよな。
きっと、ばあちゃんに怒られるかもしれないけど……
「今、会いに行くよ」
満点の星の下、右手に握っていた包丁を、
自分の首に突き刺した。
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「……ん、ぁ、あ…あれ?」
起き上がったと同時に出た掠れた嗚咽に思わず疑問を抱く。
なぜ、俺の声がするのだろう?確か俺は屋上で……。
「…っ!!そうだ…!俺は死んだはずで……」
微睡みのような気分から、頭が冴え始めてきた。
包丁を突き立てた首元を触ってみると無傷。血すら出ていない。
「どういう……ここは…」
今の状況を見てみると疑問点だらけだ。
うんざりな高層建築物なんてどこにも見当たらず、なんなら地平線が見えるのではないかというくらい広い草はら。もちろん言葉の綾であって右側には鬱蒼とした木々が生える山がある。
「何処だよ……ここ…」
全く理解できず、座り込んだままボサボサとした髪を無造作に掻いた。
ーーー俯いた拍子に左目に景色が映った。
「……ハッ、俺ぁ天国か何処かに来ちまったのかね……」
思わず皮肉めいた笑みを浮かべてしまうほどに、
綺麗だった。
どうやらここは山の上みたいだ。麓に広がる森に、ちらほら見える小さな建造物。右下の端には不気味な色をした紅い屋敷。
太陽があるにもかかわらず、不気味な程に近い月。
それらを全てをオレンジに照らす、地平線に沈む太陽。
オレンジのTシャツに黒のパーカー、膝下ほどの黒のズボン。
そんな服装の俺は「場違いじゃないか」と思ってしまう。
完全に天国と思った。
「ハッ、ハハハ……ちゃんと死ねたんだな。俺」
クソみたいな世界からおさらばできて、少しテンションがハイになっているみたいだ。笑みが溢れる。
久しぶりに笑えたなぁ……。
「ちょっと、何言ってんのよあんた」
「……え?」
高揚した俺を、すっと現実に戻してくれるような、
凛としていて、けれどどこか幼い声が、俺の耳に届いた。
この日から、俺「 シオン 」の弔いの物語が始まる。