東方弔意伝   作:そるとん

10 / 117
紅霧異変 失われた存在意義

 

やけに静かだ。

シオンはそれを不思議に感じた。

異変解決は話し合いでするのか?そんな訳ないだろう。

たしかに、話し合いで解決しているというのならこの静けさは納得がいく。

だけど、あの霊夢と魔理沙が話し合いという性分ではないだろう。

だとするのなら、

 

 

 

 

 

ーーこの変な胸騒ぎは、的中している。

 

 

 

 

崩れた門を飛び越え、大きな玄関を恐る恐るあける。

 

「うわぁ……」

 

目に飛び込んで来たのは一面紅を基調としたエントランス。

…に倒れる一人のメイド。

 

「おい!どうした!大丈夫か!!」

 

横たわるメイドを抱きかかえ、呼びかける。

このメイドはどちらかというと紅魔館側だろう。大きいお屋敷だし、メイドくらいいると考えたからだ。

だからと言って、無視はできない。

目を覚ますことを祈って、全力で呼びかける。

 

「……んっ、ごほっ…あなたは、誰?」

「!!目が覚めたか!大丈夫か?」

「え、えぇ…大丈夫ですけど……」

「はぁ…良かった……」

 

ひとまず安心した。霊夢か魔理沙と戦ったのだろうけど、殺してしまっていたらどうしようかと……。

メイドは、尚もシオンに疑問をぶつける。

 

「それより…あなたは…?大方、霊夢を追って来たんでしょう?」

「え、あぁ、まぁ…。あまりに帰りが遅いからな。俺はシオンだ。何もできない外来人だ。それより、手当てしよう。医務室とか……」

「あぁ、いえ…お構いなく、少し休んだらもう大丈夫なので。私は十六夜 咲夜。紅魔館のメイド長をしております」

 

ボロボロの見た目とは裏腹に流暢な敬語で喋るメイドは本当に大丈夫そうだ。

ほんと、ここの女性はみんな逞しいや。

 

「それより、霊夢を追わなくていいのですか?」

「あ、あぁ……止めないのか?」

「えぇ、あなたを止めろと命ぜられてないですしね」

「そうか…ありがとう」

「……変な人ですね」

 

去り際に罵倒された気がするけど構うもんか。

それより、霊夢の元へ……!!

 

「ど、どこだろ……」

 

迷いそう。たくさん部屋があるし、何しろデカイ。これは困っ…

 

「一番奥の大広間ですよ」

「!!……ありがとう…!」

「……えぇ」

 

敵にもかかわらず手助けしてくれるとは、この恩はいつか返そう。

 

 

シオンは一番奥を目指して、全速力で飛んだ。

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーー

 

 

 

咲夜はここに霊夢がいると言っていたよな。

ホントか?

だったら何でこんな静かなんだ?

 

「……そんな、まさかな…」

 

最悪の場面が思い浮かぶ。クソッ!そんな訳ないだろう!

思わずそんな事を考えた自分を強く叱る。

大丈夫だよな。

きっと、

霊夢なら……。

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーー

 

 

 

目の前で血を流して倒れるているのは博麗の巫女という少女らしい。

中々手強かったけれど……

 

「私の相手では無かったわね」

 

巫女を置き去りに玉座へと向き直る。

一歩踏み出そうとしたところでふと思った。

このまま死なれても困る。やつの運命はどうなるのかしらね。

この一件で幻想郷中を敵に回しでもしたら傍迷惑だ。

能力を使い、この後に起こる運命を見てみる。

 

「っ!?」

 

運命を見た途端、頭痛が走る。

見える運命は……

 

ただただ闇。

 

「何っ…かしら…この運命は……!」

 

何も見えない。感じ取れるのは……

 

ーー憎しみ。

 

それに加え、強烈な怨念や殺気まで伝わってくる。

 

レミリアは、その運命に恐怖した。

深淵に引き摺り込まれるような。そんな恐怖。

 

ふいに扉は開かれる。

大広間に静かに冷たく響き渡る、ドアを開けた音。

 

そして、重たくのしかかるように響く

 

ーードアの閉まる音。

 

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーー

 

 

 

 

一体これはどういう事だ。

 

なぜ、霊夢は血を流して倒れている。

鼻には鉄の匂いがこびりつく。鬱陶しいほどに赤、紅、緋。

目が痛い、鼻が腐りそうだ。頭が痛い。胸が苦しい。呼吸が止まりそうだ。

 

誰の仕業だ。

 

絶望したシオンの目に入るのは、一人の少女。

 

いや、ただの少女じゃないな。

コウモリの羽のようなものが生えている。

 

吸血鬼。

 

 

そうか、お前が。

 

 

ようやく、出来た居場所を、

 

 

俺の居場所を、

 

 

 

「奪うのか……」

 

 

吸血鬼は絶望する俺に強気で、

 

「あら?来客?でも、ごめんなさいね。もう終わっちゃったわ」

 

けれど、その言葉は耳に入らない。

周りの音は消え、目には倒れ伏せた霊夢しか入らない。

フラフラとした足取りで、霊夢に近づく。

 

 

ーーどうして、こうも世界は俺の邪魔をするのだろうか。

 

 

ーーどうして、こうも俺は居場所を取られていくのか。

 

 

ーーどうして、みんな消えていくのか。

 

膝をついて、倒れた霊夢に触れる。

 

 

こいつもまた、俺の邪魔をするんだろうか?

 

 

 

また、俺を殺すのだろうか?

 

 

 

俺から存在意義を奪うのか?

 

 

 

ようやく生きようと思えたのに。

 

ハイライトを失った目で、前方の吸血鬼を見据える。

お前も、"あいつら"なんら変わらないのか。

なら、話は早い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー殺す。

 

 

 

 

 

 

 




シオンの枷が外れました。
次回あたりで能力も分かると思います。

タイトルの「弔意」の意味が分かってくる思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。