東方弔意伝   作:そるとん

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幽冥の住人と、禁呪の詠唱と、ソレから 〜東方永夜抄〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 随分と呆気ない幕開けだった。

 ミスティア・ローレライを名乗る夜の雀は早々に沈んだ。

 まぁ、確かにその歌声は見事だったし、ずっと聴いていると気がおかしくなってくる感覚も確かにあった。決してやり易い相手ではなかったが勝負は一閃で終幕と相成った。

 

 

「速かったわね〜」

「ふ、ふふ……これが成長……!」

「良かったわね〜」

 

 

 結論から言えば、妖怪が妙に集まる原因はミスティアにあった。

 月明かりを奪われてご立腹な妖怪達はいつにも増して殺気立っているもので、彼女の歌声に釣られるように現れているようだった。

 それを早い段階で片付けたのは大きい功績であった。まるで無限に湧いてくるように思えた妖怪共々も少し落ち着いたようだった。

 

 踏み込んでから一撃までのスピードが格段に上がっていた妖夢は確かな手応えを噛み締めるように斬魄刀を握りしめていた。

 これももしかしたら博麗の巫女のおかげかもしれない、と妖夢は彼女をふと思い出し、

 

「アレはだいぶ経験になったもんな……」

 

 

 と、戦闘中だというのに物思いに耽っていた。

 あの寒い季節から、また寒い季節に移り変わろうとしている。一年経つのだな……と。

 

 

「あれ、そういえばあの人間達は?」

「もぅ〜今更〜?全然動かないから私達が来たのよ?」

「あ、そっか」

「なんなら……今回のこの異変……」

 

 

 幽々子は突然妖しく笑う。

 チャームアイテムとも言える扇子を口元に当てて、

 

 

「それこそ博麗の巫女の仕業だったりしてね」

「えぇっ!」

 

 

 妖夢はお手本のような反応を返す。

 

 

「幻想郷中に偽物の月を見せる方法は、固有の能力を抜きにすると結界以外考えられないわ」

「そうか……高度かつ大規模な結界を張れるような奴は……!!」

「いや、まぁ、博麗の巫女以外にもそういう人が、」

「わっかりました!!幽々子様ァ!」

 

 

 小さく、えっ、と呟く幽々子には目もくれず、

 

 

「不肖妖夢!必ずやこの手で博麗の巫女をぶった斬って見せます!!!」

「いや、だからね?妖夢ちゃん?」

「あぁ……あの冬とは逆になってしまった……私が目を覚ましてやりますからね!!」

 

 

 いやぁ、本当に不肖だな、と幽々子は心の中で思った。

 勇足で目的地も分からないのにズンズンと進む妖夢の後を

 

 

「待ってよ妖夢〜」

 

 

 相変わらずマイペースに幽々子は追いかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○○○

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 静かなようで、なんだか騒がしい気がしないでもなかった。

 それは遠くで誰かが弾幕ごっこをしているような、はたまた漠然とした胸騒ぎのような、とにかく落ち着いていないだけか。

 優雅な夜の飛行も、先へ進むにつれ、増えていく低級妖怪を倒すにつれ、穏やかな気分ではいられなくなってきた。

 魔理沙の予感は痛く当たった。

 

 

「こんな夜更けに未成年が何してるんだ?」

 

 

 月によく映える青色の髪と大きな身長。

 その言葉遣いと立ち振る舞いから相手が大人である事はすぐ分かったが、妖怪に大人も何もないなと思った。

 妖怪であることも、一目で分かった。

 

 

「帰り道だよ。気にするな」

「この先は竹林しかないのに帰宅とはな?」

「おいアリス、コイツめんどくせぇぞ」

「………えっ、」

「人見知り発動すんなよ……」

 

 

 コソコソ耳打ちするように話しかけてみれば、アリスもめんどくさい部類のやつだったと少し後悔する。

 まぁ、弾幕勝負ともなればアリスも気にしなくなるか。

 

 

「とにかく、ここから先は通さんぞ。お家に帰るんだ」

「ガキ扱いしてんなよ?」

 

 

 アリス!と喝を入れるように一声かけると「あ、ひゃい!」と同じく臨戦体制に入る。

 

 

「不用意に危険には近づかせたくはなくてな。上白沢慧音だ。覚悟しな」

「上等だよ」

 

 

 悠然と佇む青色のメッシュ。その内側にあった銀髪が偽物の月光にキラキラと照らされていた。

 

 

「産霊!ファーストピラミッド!!」

 

 

 慧音の叫ぶようなスペルカード詠唱を皮切りに、アリスと魔理沙の初戦の幕を上げた。

 

 

 慧音の色によく似合う青色の弾幕が展開される。その名に恥じぬ三角形を模って、やがて規則的に交差して、次第に一輪の花火のように広がっていく。

 

 

「ほぉー、中々に」

「油断しないことよ、魔理沙。相手は半獣にしてハクタクよ」

「ハクタクって言や、人間の味方じゃ無いわけ?」

「えぇ、その通り」

 

 

 そう話す2人の間を大きく速い弾幕が横切る。

 

 

 やがてその弾幕は空中で突然炸裂する。

 激しい爆風と閃光を伴って弾けたソレは『当たったら致命傷だぞ』と本能に言い聞かせるには十分だった。

 しかして魔理沙は。

 

 

「で?これのどこが味方なんだよ」

「私たちは妖怪扱いね」

「癪だぜ」

 

 

 余裕綽々とした態度を改めることはなく、アリスも同様、落ち着いていた。

 伊達に場数を踏んできたわけでは無い。

 魔理沙はやれやれと肩を竦めるオーバーなリアクションを取る。

 

 

「ひとまず、打開する」

 

 

 そうして、ソレから、大胆不敵に笑みをこぼして見せて、自信満々に八卦炉を構えた。

 

 

 

 

ソレから。

彼女は誰にも聞き取れない声で、そっと呪文を口遊むのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 









本当にごめんなさい。5月はもう一回投稿します。
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