東方弔意伝   作:そるとん

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紅霧異変編。完結です。





紅霧異変 居場所

 

 

 

紅を基調とした絨毯に汚れ1つ無い純白の壁。大人数のパーティなら容易いであろうと思うほどに広い部屋に置かれた洋風な縦長テーブル。並べられた椅子に座り、完全で瀟洒なメイドが淹れた極上の紅茶を嗜み、

優雅なひとときを過ご

 

「さ!全部吐いてもらうわよ?シオン」

 

せる訳などなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今から始まるのは「シオン君尋問大会。主催レミリア」である。

一体何がどうなってこうなったのか説明すると……

紅魔館を出ようとしたところを紅魔館のメイド「十六夜咲夜」に呼び止められた後、何事か聞いてみれば紅魔館で一泊してけとのこと。そのちょっと前に同居人兼神社の麗しい巫女さんこと霊夢と微妙な空気になってしまい、帰るところがなくなり、かつ、もう日が沈んで危ないからという理由で泊まらせてくれた。自分としても損は無いし大変ありがたい話だったのでお言葉に甘えさせてもらうことにした。

そのまま客室に連れられた俺はとりあえず休もうとベッドに倒れこんで、数秒後、レミリアが入ってきた。咲夜がテーブルと椅子と紅茶を一瞬で用意ーー時間を止めている間にやったらしいーーして、終わり。

かと思えばその後には霊夢と魔理沙が入ってきた。霊夢の俯いた顔と何も知らない魔理沙の顔がダブルで俺の良心を刺しに来る。

パチュリーと門番以外の人を集め、一体何が始まるのかと思ったら、

 

 

 

「さ!全部吐いてもらうわよ?シオン」

 

 

で、今に至る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え…吐いてもらうとは一体…何を…」

「あなたに関してよ!早く言いなさいよっ!理由も無しに私を襲ったわけじゃないでしょう!?」

 

可愛く足をバタバタして話を急かす。

そんな楽しいものじゃないんだが……。

すると、よく通る声で、

 

「私も知りたいわ」

「……そう、か」

 

霊夢は短くそう言った。

結構バレてるな。霊夢に話した事で全部じゃない事が。

それに他にも色々ある、と、思う。

実際、あちらの世界の事はあまり覚えてない。覚えていたくないだけかもしれんが。

 

 

じゃあ、話そうか……。

 

 

「ーー俺の元いた世界は地獄のようだったよ」

 

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーー

 

 

 

「ーーんで、俺は自殺。そしたらここにきたって感じだ」

「…………あの

「おぉっと!謝るんじゃねぇぞ。俺が覚悟を決めて話したのが馬鹿みたいだろ」

ご、ごごごごめんなさい」

 

結局謝ってんじゃねぇか、ちびっこ吸血鬼。

だが、まだ今ここで話すべき事はまだ話していない。

同じ事を思ったのか、霊夢が口を開いた。

 

「そっちはもう聞いたわ。私が気になるのは

「あの姿の事だろ?」

……えぇ」

 

そうだ。この事はもう霊夢には話した。霊夢が気になっている事は化け物の「シオン」の方。ちなみにレミリアは俺の能力が気になってるみたいだが、行き着く先は同じだ。まとめて話そう。

 

「……俺の能力が出始めたのは、多分…ばあちゃんが死んだ時だ」

「おばあ様が?」

「あぁ…あの頃にはもう既に居場所なんてなくて、ずっとばあちゃんの遺影の前でボーッとしてた。通夜とかに来た親戚達にも気味が悪いやら何やら好き放題に言われた。普段なら受け流してたけど、ばあちゃんが死んですぐだったもんだから俺も荒んでてね。思わず言ったんだ。

 

ーーなら、その目潰すぞ。

 

って。そしたら無意識に能力が発動したみたいで、その親戚の1人は急に目を抑えてね。悶え始めたかと思うとあちこち暴れまわった挙句、二階から転落した。

その一部始終を見ていた家族と親戚のやつら全員が口々に「人殺し」やら「悪魔」やら「気持ち悪い」やら言うもんでさ、流石にキレたんだ。

 

『だったら本物の悪魔になってやるよ』

 

始めて人間を辞めた瞬間はその時が初めてだな。文字通り「悪魔」になった俺は……」

 

「俺は?」

 

言葉に詰まった俺に続きを促すように魔理沙は問いた。

俺は……

 

「どうしたんだっけ……」

「え?」

「思い出せない……その後、俺は…何をしたんだっけ……」

 

レミリアが思わず困惑の声を上げた。

思い出せないのだ。思い出そうとすると、頭が痛むし、呼吸が苦しくなる。

しかし…そうなった後、考えられる事といえば……

 

いや、だが、俺が死ぬ直前まで両親の怒鳴り声が聞こえていた。

急に力を使って気でも失ったか。

ともあれ、申し訳ない事にこれより先は話せない。

 

「すまない…みんな…」

「いや、いいわよ。それより、私はあなたの能力が気になるわ」

 

レミリアが興味津々に聞いてくる。いや、たしかに話す前に重っ苦しい話になるけど気にすんなとは言っといたが、ここまでメンタル強いかぁ……。泣きそう。

まぁ、言ったところで問題は無いだろう。

 

「『覆す程度の能力』。ここではそういう言い方になるかな」

「え?それがどうやって失明させたり、悪魔になったりするんだ?」

 

魔理沙の疑問は最もだな。だが、まだ考えが甘いっ!

俺は発想力は豊かなんだぜ。こう見えて。

 

「覆す事に関しては万物の物に通用するし、それは事象に関しても同じだ。失明したのは、そいつにとって"目が見えて当たり前"っていう事実を覆してやった。そいつにとって"目が見えないのは当たり前"になった」

「マジかよ……」

 

魔理沙が唖然とする。ふふふ、驚いてもらえると中々楽しい。

 

「んで、悪魔とか化け物になるのは、"シオンは人間である"っていう事実を覆した。人間じゃなくなった俺は、俺の心の中をそのまま異形ながらも生物の形にした、ただの化け物になる。つまりレミリアに見せたのは俺の中の「殺意」の塊」

「えぇ、めちゃくちゃ怖かったわ」

「うん、ごめんなさい」

「うん」

 

レミリアは表情、仕草はカリスマを保ったまま、めちゃめちゃ情けない返答をする。

さては、あれか。かりちゅまだな。こいつ。

 

「ま、真相はそんな所だ。どうだ?気持ち悪いだろ」

 

今更、何を失ったってもいい。幻想郷は受け入れてくれる、そう言ってくれた。

だから、いっそ見放してくれ。

 

 

 

 

ーーだけど、やっぱりここの女性は逞しいみたいだ。

 

「え?いや別に」

「え?」

 

まずは霊夢。

 

「そんなやつ幻想郷にいっぱいいるぜ?ま、シオンの能力はその中でも強い方だがな!」

「うそ?」

 

次に魔理沙。

 

「逆にそれぐらい出来ないと張り合いないわ!」

「張り合いたくはないけど…」

 

そしてレミリア。

 

「何なら私は少しとはいえ助けてくれたことに感謝してますよ?」

「感、謝……」

 

最後に咲夜。

 

「つまりはぁ!あんたぐらいどうって事はないって事よ!暴走なり何なりした時は退治してやるから安心なさい!」

「は、はは……そりゃ頼もしいや…」

 

そうか。そうだった。

ここは常識の通用しない幻想郷だった。

 

こんな俺ですら受け入れてくれる"非常識"は、

ここでは俺の能力ですら覆せない"常識"で、

それはここの魅力だった。

 

「そう…だよな……」

 

 

 

やっぱ好きだなぁ。幻想郷。

 

 

 

「ありがとな」

 

溢れ出そうな涙を堪え、ちゃんとした声で、

ありったけの感謝をぶつけた。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーー

 

「それじゃあ、おやすみ」

「あぁ、おやすみ」

 

夜も更け、同じく紅魔館に泊まることになった霊夢と魔理沙は先に部屋へ戻った。

暴露大会ーー主に俺だけーーが終わった後は普通に楽しい会話に花を咲かせた。その際に色々知れた。うん、有意義な経験だった。おかげでコミュ力も上がった。気がする。

ちなみに明日の夜には異変解決による宴会が行われるらしい。幻想郷では異変の首謀者も被害者も、解決したらもう仲間なんだと。

俺の歓迎会も兼ねているらしく、俺は断ったんだが拒否権はなかった。

まぁ、ありがたく歓迎されておこうと思う。

また一つ、幻想郷の良い所を見つけられた気がする。

とはいえ、もう夜も深い。俺もそろそろ眠い。

 

「えぇ〜、もう寝ちゃうの〜…」

「そうか…吸血鬼は夜が活動範囲だったな…」

 

だが、徹夜はキツイよなぁ……。

 

「あなたは起きてなさい!じゃないと私1人じゃない!」

「レミリアも寝たら…?」

「何言ってんのよ!夜はこれからよ!」

 

気づけば咲夜もどっか行ってしまった。咲夜に関しては既に夜行性となっているため問題はないみたいだ。

ふむ、2人きりか……

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょうどいい。

 

 

 

 

 

 

「…何よ。変な笑みを浮かべて…はっ!まさか襲おうなんて

「ちげーよ」

何よ、ヘタレ」

 

完全に酔いが回ってるレミリアはカリスマのかけらもなく、かりちゅまとなっていた。めんどくさいな。

でも、まぁ、聞きやすいや。

 

 

 

 

「なぁ、レミリア」

「んん〜?」

「何で異変を起こしたんだ?」

「ん〜、外を歩くのに太陽が邪魔だったのよ〜……」

「へぇ……」

 

多分、それも理由の一つだろう。

だが、それだけかと言われれば、違うね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーそれは嘘だろう。

 

 

 

 

 

「俺が紅魔館に入った時、お前と最初に会った時、俺が能力を使った時、なにかを感じたんだが…何か知らないか?」

「……知らないわねぇ、あなたの力が何か呼び寄せたんじゃないの?」

 

わずかだが反応したな?だとするのなら俺の予想は当たりだ。

 

 

「そうか。下の方から感じたんだけどな。そうだなぁ…この広い紅魔館の事だ。例えば……

 

地下とか」

 

「!!…流石に地下は作らないわ。使い道ないもの」

 

さっきより反応が大きい。当たりも当たり。大当たりかな?

 

「何を感じたのかと問われれば具体的には言えないがな。強いて言うなら、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー狂気。とか」

 

 

「……お見通しかしら?」

「いーや、ふとそう感じただけだ」

 

 

大当たりのドストライクか。

 

 

「今度は、私の暴露大会ね」

「全部話してもらうぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅霧異変。

 

二次会の始まりだーー。

 

 

 

 






シオン軽くチートになっちゃった。

次回、紅霧異変編〜狂気の章〜
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