東方弔意伝   作:そるとん

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紅霧異変full moon 光の差し込む紅魔館

 

 

ーー

 

ーーー

 

 

 

ーーーーーー

 

 

時は、レミリアが部屋に来る前に遡る。

 

 

 

 

「うわああぁぁーーーーーーーーん!!!!!!」

 

 

自分が犯した過ちに、犯してしまった過ちを悔やみ、フランは大粒の涙を俺の背中にいつくも落とした。

炎を纏った大剣は俺の体をいくつも切り刻み、終いには腹部を深々と突き刺し、体を焼いた。

情けない事に、直撃だ。

床に伏せた俺を見て、フランは泣いた。

感動のシーンのところ悪いんだけど……

 

 

「死んでねぇよ……?」

「うぅ……えっ…?」

 

 

そう、死んではいない。

まぁ、髪の毛真っ白な上に片目が真っ赤に充血していたら説得力なんて皆無なんだが。

……やはり生命に関するとなると使う妖力は膨大だな……。

結果的にレミリアを裏切ってしまったな。

能力使わないって約束したんだが、使ってしまった。

でも、まぁ、誰も傷つけちゃいない。今回ばかりは許してくれ。

 

俺は朦朧とする意識の中、能力である事を覆した。

レーヴァテインで刺された時点で俺は「死ぬ運命」を辿ることになっていた。

 

ーーその"運命"を覆した。

結果的に、俺は「死なない運命」を辿った。

まさか、とは思ったが…まさか本当に死を免れられるとは……。

これ、妖力さえ増やせば結構強いのでは?今度修行しよ。

そのためにも、早く終わらせよう。

 

助けてあげねばな。

だが、俺の言葉では助けてやる事は難しい。今のフランに一番必要なのは愛情だろう。最初までの話で大いにその事を感じた。

なぜなら、フランは家族の話しかしていない。それも笑顔で。

彼女が外で生きた95年は決して良いものでは無かった。そうでありながらも、彼女は笑顔で紅魔館の、家族の話をし続けた。

それは愛のなせる技であった。

なら、今のフランに必要なのは、フランの愛に応える気持ち。

フランへの、愛。

俺はやる事やったぜ。後はお前らだ。

 

ーーレミリア。

 

 

 

 

「なぁ、フラン」

「……ん?」

「姉ちゃんのホントの気持ち、聞いてみたいか?」

「!?……出来るの?」

「あぁ、出来るぜ」

 

 

だが、今の少女フランをレミリアは怒ることが出来るだろうか。

涙を流し、苦しんでいた「少女」を妹を、果たして怒れるだろうか。

多分優しい彼女は慰める。この状況から必死で目を逸らし、妹を選んでくれるに違いない。だが、今はその優しさは必要ない。

そのために必要なのはフランの「狂気」で、フランが道を間違えたという事実を植え付けさせること。

そうすれば、きっと彼女はフランを怒る。狂気に蝕まれ、自分がやってしまった事に苦しんでいるフランを必死に呼び戻してくれるに違いない。

 

だから、少しだけ、

 

 

騙すぞ。レミリア。

 

すっかり泣き止んで目を真っ赤に腫らしたフランに寝転びながら目を向ける。

「フラン、お前はベッドに座っているだけでいい。そうしているだけでいい」

「え、それだけでいいの?」

「あぁ、そうすりゃ全部分かる。そうしていてくれれば……

 

 

 

ーー俺が全部覆してやる」

 

 

我ながら、中々に不敵な笑みだったろう。

フランをベッドに促し、座らせる。

 

すぅー、はぁぁーー。

 

もう残り少ない妖力を回復するために、目を閉じて昔の事を思い出す。

皮肉だな。誰かを助けるためにトラウマほじくり返さんきゃいけないなんて。

まぁ、役に立つってんならいくらでも、だ。

 

 

ーーそこそこ出てきはじめた妖力を溜める。

あとは、能力に全部振ればいい。

 

「いくぜ」

「うん…無理はしないで……」

「善処する…」

 

強張った体を、

一気に脱力させる。

ゴォオオ!!!

と、音を立てて黒い力は溢れ出る。

そして、俺は覆す。

 

 

ーー「少女」フランを、俺の中にある「狂気」フランのイメージに覆す。

 

ーーレミリアの能力で見えるであろう「不幸な運命」を覆す。

 

ーー俺の今の髪色を、目の色を覆す。

 

 

準備は整った。俺はここで終いだ。

あとは紅魔館、お前らで

 

 

 

 

 

 

ーーフランの哀しい感情を、覆してやれ!

 

 

瞼が重く閉じたところで、ドアはノックされた。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーー

 

 

 

 

 

んで、見事思惑通りにいって大変嬉しゅうございます。

死ぬ前に素晴らしいものを見せてもらった。俺に向けられたものではないけど、温かい愛を見せてもらった。

ホントの愛ってああいう事なんだろうな。

思えば幻想郷来て4日程度で、まだ足りないのだが……。

まぁ、誰かの役に立って死んだのならいいか。

 

じゃ、この温かいベッドで俺は、二度目の人生を終え……

 

ベッド……?

 

 

「んぁ……?」

 

温かいベッドで……

 

 

「見た事ある天井だ…」

「んんっ……ん、んぁ…?」

 

ふいに左足に感触がして、目を向けて見ると眠そうに目を擦る、

金髪少女が目に移った。

 

「ふ、フラン……?」

「シオン…?シオン!?わあぁあ!!起きたんだね!!やっと起きたんだねぇ!!ひゃぁぁああ!!」

「おう、待て待て待てでででででで」

 

歓喜なのか奇声なのか分からないが、フランは声を上げながら起き上がった俺に抱きついた。

うん、いい匂いたい痛い痛い痛い痛い痛い。

 

「ふ、フラン…すまないが、今は……」

「あっ!そうだよね!ごめんなさい……皆んなを呼んで来なきゃね!お姉ちゃーーーーーーーん!」

「うん、そんな焦らなくていいぞ。だから休ませてく

「シオンが起きたって本当!?本当だぁあ!起きてるぅううううう!!!!!」

あいだだだだだだだだだだ!!!」

 

ダダダダダダ!!と音を立てて部屋に入ってきた上に満面の笑みで抱きしめてきた。フランより力強くないがやっぱりまだいだだだだだだだだ。

 

「離せっ!レミリア!!」

「嫌よ!!3日も起きなかったもの!心配くらいするわよ!!」

「さもなくば俺死ぬぞ」

「離すわ」

「ありがとう」

 

ようやく離してくれた時には何本か骨が折れてるんじゃないかと思った。

聞き分けの良い子で良かっ……

え?

 

「3日?」

「うん、そうよ?フランの部屋で倒れて、ここに運ばれて3日間寝ていたの!紅魔館の皆んなで看病したわ!!」

「すまない……ありがとう」

「謝る必要なんてないわ!!私達はあなたに返しきれない程の恩を貰ったわ!!」

「え……それって」

「うん…ありがとね、シオン。フランを、私を助けてくれて」

「そうか…そうか……だからフランはここに…」

 

もう、隔たりは無くなったんだな。だからフランはここに居て、ずっと看病していてくれたんだな……。太陽が出ているこの時間に、わざわざ……

レミリアも起きていてくれたみたいで、笑顔で……

本当に……

 

「良かった……」

「シオンが居てくれなきゃこうなって無かったよ!ありがとね!」

「えぇ、ホント!感謝してもしきれないわ!ありがと!!」

「はは…幸せだ……」

 

2人の姉妹が、太陽の差し込む部屋で、微笑み合っている。

夢みたいだ。

命を懸けた分の報酬は、最高なもんだな。

 

「その笑顔が見たかったんだ……恩なんて感じるな」

「……お人好しね。だからこそ、フランに好かれたんだろうけどね」

「それ、おねぇちゃんが言えた事じゃないよ……」

「え?」

 

フランが顔をしかめて、不機嫌そうにいう。

 

「至近距離でシオンの膝の上で座り込んでる退こうとしないお姉ちゃんが一番好きなんじゃ……」

「ちっ、違っ!これはぁ、その…気づかなかったのよ!想いが先走っちゃって……」

「そーいう事だよ!もういいもん!お姉ちゃんのケーキ食べちゃお!」

「ちょっ、やめなさいフラン!あれは今夜の楽しみに……!」

 

ドタバタと忙しなく2人は部屋を出て追いかけっこを始めた。

何とも騒がしくて慣れないけれど、

こういうの大好きだ。

 

「はは……」

「大丈夫なの?」

「ぬおっ!いつの間に…」

「最初から」

「忍者か……」

 

いつの間にやらベッドの背後、俺の死角にいた咲夜に話しかけられた。

ちょっと傷口開いたんじゃねぇか?

見てみれば包帯でグルグル巻きであることに気づいた。

 

「これ咲夜が?」

「えぇ、まぁね」

「ありがとな」

「こっちの台詞よ」

 

咲夜は少し微笑んでそう言った。

 

「あんな楽しそうなお嬢様、中々見れないわよ」

「そりゃあ、幸運だね」

「あなたのおかげよ。ありがとう」

「……嬉しいね」

 

咲夜は揺るぎない忠誠心をレミリアはもちろん、フランにも持ってる。それはフランについての感情を俺に言わなかった事で確信した。

咲夜もあの時部屋に来てくれたんだ。従者として、

フランの家族として。

あの時は介入する余地がなかったみたいだが、咲夜も変わったらしい。

それは常に口角が上がってるのでバレバレだぜ?

咲夜もフランと居れて嬉しいんだな。頑張った甲斐があったよ。

良くできたメイドさんだな。

 

「紅茶飲む?」

「あぁ、頼むよ」

「味は保証するわ」

「!?……え、準備してたの…?いや、でもあったかいし……」

「ふふ、いずれ分かるわよ」

 

頼んだ瞬間紅茶が出て来た。どゆこと?瞬間移動でもなさそうだし……

まぁ、今は咲夜のとびきり美味い紅茶を楽しもう。

 

「……相変わらず美味いなぁ…習いたいレベルだぜ」

「あら?何なら習ってみる?」

「はは……厳しそうだな…」

「いいね!それ!なんならここに住み込みで働いてもらお!!」

「え?」

 

いつの間にやら部屋に戻って来たフランは無邪気にそう言った。

ここの人は何故物音を立てず人の死角に入るのが上手いんだ。俺いつか暗殺されるんじゃないか?

うん、じゃなくて。

 

「それは流石に迷惑だろ……」

「いいわね、それ。傷が治るまでここに居てもらいましょう」

「私シオンといっぱい遊びたぁーい!」

「楽できるわね」

 

こいつら……約2名私情だし最後の方に至ってはパシリにする気満々だろ。

 

「せめてもの恩返しって事で!ね?」

「生憎、まだ動けそうにねぇな……」

「じゃあ…!」

「あぁ、しばらくの間お世話になるよ」

「うん!しばらくと言わず、ずっとでもいいわ!」

 

ま、俺自身、

もっとこの明るくなった紅魔館を見ていたいんだ。

 

 

「ーーようこそ!紅魔館へ!」

「ーーあぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

紅霧異変編〜狂気の章〜

【完】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





最終回感半端ないですが、これで紅霧異変編は終わりです!
長々とすみませんでした……。

ようやく平和な回がかける!!

それでは、また次回!
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