東方弔意伝   作:そるとん

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そういやそんな事言ってたな

 

 

 

目を覚ました日の翌朝、初対面ではあるがどうやら幻想郷で有名な烏天狗とやらが俺に会いにきた。黒髪の女性だ。

何でも、「明日の夜、博麗神社に来てください!」との事。

紅魔館のメンバープラス俺を博麗神社に呼び寄せて一体何事……?

 

そんな訳で、先に博麗神社に向かったレミリア達に合流すべく、

空をふよふよと飛んでいるところである。

烏天狗のいう「夜」が一体何時なのか分からないがとりあえず月が上り始めてから向かった。

にしても、何だろう……なんかしたかな…?

少しの不安を胸に飛んでいると、博麗神社が目に入る。

ただ、その博麗神社からは何とも賑やかな声が聞こえる。

雰囲気ですら賑やか。

 

「え…?何事……?」

 

こんな騒がしい幻想郷は何とも初めてである。紅魔館は抜かして。

 

 

恐る恐る博麗神社に降り立つと、静かな神社は何処へやら、

宴会会場みたいになっていた。

 

「な、何事……?」

「おぉー!遅いじゃんかシオン!!」

「ま、魔理沙?なんかいつもよりうるせ…酒飲んでる!?お前」

「あったりまえだぜ!」

「あったりまえなのか……」

 

頬を赤くした魔理沙が俺を大声で迎えるもんだから大量の人で溢れかえる宴会会場は一気に俺に注目した。

こっちに目を向けたかと思えばとんでもない速さで俺に近づいてきては、「ほぉー!これが新しい外来人か!」とか「今度弾幕ごっこ(殺し合い)とやらをしようぜ!!」など、鬼やら何かの妖怪やらが話しかけてくる。

まさしく、「怒涛」。

 

「ちょっ、まっ…助けっ…おい、揺するなっ、傷口、あっ」

「おー、シオンは人気だなぁー」

「くそっ…何とかしろ…まっ、おっ、魔理沙っ…」

「うーん、無理だな!」

 

にこやかに言うな、こんちきしょう。

そうだ、そうだった。

紅い霧の異変が終わったすぐ後に、霊夢は宴会やら歓迎会やら言ってたっけ。

なるほど…これが。

うん、手厚い歓迎ありがとう。

でも、流石妖怪なだけある。

 

「うっ、腕とれっ…」

「おぉぉっと、すまん」

「い、いえ……」

 

揺すられ持ち上げられ、完全に瀕死だったのだが、どうにか死ぬ前に離してくれた。気づけば、周囲の妖怪達も離してくれていた。

ふぅ…何とか生きてる。この人は…鬼だろうか?

 

「で、でけぇ……」

「お前とそんな変わりないけどな!それよりアンタ!人間なのに吸血鬼2人とやり合って勝ったんだってな!すごい奴だな!」

「い、いや…勝ったなんて…実際死にかけてましたし…」

「まぁ、そんな謙虚になんなって!私は『星熊 勇儀』。鬼だ!」

「お、ぉぉお鬼ぃ…」

 

額から生えた立派な一本角が鬼であることを物語っている。

つ、強そう……。

 

「山の四天王って呼ばれててな、それなりに実力はある!だから、どうだ?私と一勝負……」

「すいません。遠慮します。許してください」

「いや、そんな謝られてもだな……そ、そんな嫌か?」

「嫌っていうか、軽く死ねるんで」

 

治り始めてるとはいえ大怪我負って、四天王とか呼ばれてる最強種「鬼」と勝負とか一撃で死ぬ。衝撃波くらいで死ねる。

だって、俺能力使えなきゃ普通の人間だし。能力使っても人並み以下に戦えないポンコツだし。

だから、マジで勘弁……

 

「しょうがないか…じゃ!また今度やろうな!傷が治ってからでいいよ!」

「あ、あはーはははははー……」

 

傷を負うことがない日は来るのでしょうか。

とりあえず、早く座りたいなぁ……。

 

「ま!とりあえずこっち来なよ!みんないるよ!」

「あ、はい、ありがとうございます」

 

星熊さんに付いていくと、幻想郷の人全員いるんじゃないかってぐらい人がいた。神社に入ったら入ったで、「おっ!主役がきた!」「あいつが吸血鬼をねぇ…」「今度一勝負…」とか色々声をかけてくれる。だからやらねぇって。鬼と勝負とかやらねぇって。自殺行為だって。

隅っこに適当に空いてるところがあったので座ると、霊夢が宴会場の全員に聞こえるように言った。

 

「はい、じゃあ自己紹介して」

「………え、俺?」

「あんた以外に誰がいんのよ」

「じ、自己紹介かぁ…」

 

恐る恐る立ち上がり、やんややんやと囃し立てる人たちを向いて立った。

…どうしよう。紹介するような事がない。

自己紹介なんて今の今までした事なんてない。

何言えばいいの…?

 

「ん…えと…シオンです。最近幻想郷にやってきたばかりの、まぁ人間です。これから幻想郷を色々見て回りたいのでよろしくすると思います。

えと…よろしくお願いしま…」

 

ひゅー!よろしくぅー!いえぇぇぇ!!

と、挨拶を言い切る前に騒ぎ始める。

よ、良かった。よろしくできそうだ……。

よく分からんが、上手くいったなら…

 

よっこいせと、座ると、またしても質問コーナーみたいなのが始まった。

主に鬼やら天狗から。

「吸血鬼倒したって本当!?」「どうやったの!?」「ここに来る前は何だったの!?」とか、まるで漫画の転校生みたいな気分だ。

うぅーん…なんで知ってるんだ?

俺の疑問の表情を読み取ったのか、いつのまにが隣にいた霊夢が話しかけてきた。

 

「あんた、烏天狗に会ったでしょ」

「え、あ、あぁ…」

「あいつ新聞記者やっててね、レミリアとかフランにあなたの情報も聞いてたみたいで、それを新聞にしてばら撒いてたわ」

「…は?」

 

俺…目立つのあんま得意じゃないんだが……

呆れの感情を浮かべるとどこからともなくその烏天狗がやって来た。

 

「呼びましたかー!?」

「おうお前どういう事だ。プライバシー保護法ってのがな……」

「あやややや!これはこれはシオンさん!どうもー!」

「はーい、どうもー、それよりも人の話聞こうなー」

 

俺に博麗神社に来るように言ってきたあの烏天狗だ。

ふぅん、こいつがね…仕事熱心だこと。

 

「あ!自己紹介してませんでしたね!私は『射命丸 文』って言います!新聞記者をやってます!どうですか?あなたも買ってみますか…?文々。新聞……」

「捏造ばっかするから気をつけた方がいいわよ」

「ヤブ記者じゃねぇか」

「なっ…!失礼な!」

 

新聞記者が捏造とはなんたる事か。

大方、吸血鬼を倒したとか、先程からチラホラ聞こえる「新発見の最強種」とかいう単語はその捏造だろう。だからさっきから鬼に喧嘩売られんのか。

とりあえず、新聞を見せてもらうことにした。

 

「霊夢、その新聞あるか?」

「あるわよ。はい」

「さんきゅ」

 

題目に「文々。新聞」と書いてあり、すぐ隣の大見出しには

「最強種の外来人か!?」とドデカく書いてある。

うん、違う。

本文を読んでみると、たった1人で2人の吸血鬼姉妹を撃破。挙句、紅魔館内の家族問題を命を懸けて解消。などと書いてある。

うん、ちが…

 

「いや、でもそれレミリアさん達から直接聞きましたよ?」

「取材受けてるやつも捏造ってどゆこと?」

 

盛ってるだろこれ。

俺がしたのは怒りに身を任せ悩みを抱える女の子を殴った挙句、罪滅ぼしと言わんばかりにフランに関わっては姉妹間仲直りの仲立ちをしただけだ。

ここに書いてあるのはなんというか…恩人とか、大げさにいうと英雄みたいに扱われている。

決して、そんな事は無いのだが……

 

「ううん、あなたは恩人よ?シオン」

「れ、レミリア……」

「フランにとっても大切な人だよ!シオンは!」

「フラン……!!お前外にっ…!」

「えへへ…これもシオンのおかげだね!」

「良かったな……」

 

 

そうか、俺のおかげ、か。

そう言ってくれると、込み上げてくるものがある。

自然と笑みがこぼれる。

ふいに、飄々とした天狗の声が聞こえた。

 

「じゃあ、ここにある事は本当なんですね!」

「紛れもなく本当よ!」

「うん!ホントホント!」

 

そういうと、2人は楽しそうに、宴会へと戻っていった。

こいつらは……ここまで俺を想ってくれたのか…。

シオン、感動……。

優しいやつらだよ、ホント。

2人が見えなくなると、また天狗の声が聞こえた。

 

「ホント情報には困りませんでしたよ!2人ともシオンさんにぞっこ、ふぐっ

「……え?射命丸?」

……」

 

射命丸の声が途切れたかと思うと後方から聞き覚えのある姉妹の声と天狗の叫び声が聞こえた。

言ってはいけないことを言いそうだったんだな。うん、納得納得。

それが一体何だったのかは知り得ないがな。

じゃあ、質問に答えようか。ずっと待ってたのかこいつら。

 

「よし、聞きたいことあったら答えるぞ」

 

今夜ばかりは、俺もノリノリだった。

 

 

 






霊夢「いつになったら宴会開けるのよ…あいつ生きてるのかしら」

何だかんだで心配だった霊夢さん。ひさびさに出せました。ごめんね、出番少なかったよね。

次回から平和です。
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